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2016
03.27

怪談16.3.27➀

Category: 怪談話-番外
 昔、昔の3月、友人と北八ヶ岳に行った時のこと。
 それは、白駒池にベースキャンプを張って。
 近くの山小屋でクロスカントリースキーの板を借りて、3日間くらい辺りを楽しんで。その後は、黒百合平に移動して天狗岳を目指すというご機嫌な計画だった。

 しかし、その冬は大雪で。例年だったら膝下程度という雪が、深いところでは胸の上までくる始末。
 そんなわけで、時間を大幅にオーバー。やっと白駒池畔にテントを張ったのは3時半くらいだったと思う。
 
 そんな大変な1日だったが、夕食も終わって。お茶を飲みながら友人とおしゃべりの後、寝ようかとなったのは9時半頃だったか。
 テントの外に出れば、雪はいつの間にか止んでいて、風もない。
 空には、真っ白な月が冴え冴えと輝いていた。
 凍って雪原となった白駒池は、その光を受けて真っ青。
 その周りに広がる針葉樹の森は、藍色から闇のグラデーション。
 そのファンタジー映画さながらの光景に、私と友人は声もなく、ただただ突っ立っているばかり。
 冬の八ヶ岳だというのに、ホンっト何の音もなかった。

「なんか、妖精でも出てきそうだなー。」
「うん。いまにも雪の女王の歌声とか聴こえてきそうだよなー。」
 まさに、そんな冗談を言っていた時だった。

 ♪Uhu~~~~ ♪Uhu~~~~ ♪Uhu~~~~ 
 それは、どこからともなく。
 女性の歌う声が聴こえてくる……

「へっ!?」
「えっ!?」
 思わず顔を見合わせてしまった私と友人。でも…
 ♪Uhu~~~~ ♪Uhu~~~~ ♪Uhu~~~~ 

 耳を澄ますと、間違いない。それは聴こえてくる。
 それは、どうやら目の前の雪原と化した白駒池の向こう岸、その針葉樹の森の奥から聴こえてくるような…
 そう。木と木の間にある藍色の闇の彼方から……

「な、何だ、アレ!?」
「ゆ、ゆ、雪の女王!?」
 しかも、その歌声。だんだんハッキリ聴こえてきているような。
 えっ。もしかして、こっちに近づいて来てるということか……

 厳冬期の北八ヶ岳の夜。
 おそらくマイナス10度ほどの気温だったはず。
 しかし、私も友人も寒さなんてこれっぽっちも感じなかった。
 ♪Uhu~~~~ ♪Uhu~~~~ ♪Uhu~~~~
 恐怖の歌声は、やむことなく続いている。
 それは、この青に染まった白駒池とその周りの森で、何かを探すようにひたひたと……

 たぶん、今までの人生で一番ヤバイ状況であるのは間違いない。
 そんな時、思い出したのはそこから十分くらいのところにある山小屋。
 一刻も早く人がいる場所に逃げないとヤバい!と考えていた時だった。

 ♪Uhu~~~~ ♪Uhu~~~~ ♪Uhu~~~~

「…!?」
「うん!?」
「はぁ?」
「な、なんじゃこりゃ?」
 三たび顔を見合わせる私と友人。
 その表情には、お互い「?マーク」が無数に浮かび上がっていた。

 だって、その歌を知ってるんだもん。
 気がつけば私も友人も、思わず一緒に口ずさんでたくらい。
 それは、なんとその頃流行っていたアイドル歌手の曲だった。
 雪の女王は、たぶん…、いや、絶対っ!アイドル歌手の歌なんて歌わない。


 事件の全貌が明らかになったのは、次の日、山小屋にスキーを借りに行った時だった。
 聞けば、昨日の昼間に小屋の掃除をしていたら、壊れたラジカセが出てきたんだと。
 夜になって、いじっていたら、ちゃんと鳴りだした。
 山小屋の親父さんは、そこではたと思いだした。
 あー、そういえば、今夜は対岸にテントの学生さんが2人いたっけ。
 この寒空にテントで2人じゃ、さぞ寂しい思いをしてるだろう。
 そうだ!
 というわけで、山小屋の親父さん。あの寒い中、わざわざ窓を開けて。
 対岸のテントの私たちに向けて、ラジカセを大音量でアイドル歌手の歌声を流していたんだとか(笑)

 そう。あの時のあの光景っていうのは、そんな山小屋の親父さんの(意味不明な)サービスですら、雪の女王の歌声に聴こえてしまうほどファンタジックだったのだ。


 そうそう。
 そういえば、私たちが黒百合平に移動する前の晩のこと。
 親父さん、「泊まってけよ。タダでいいから」と小屋に泊めてくれたのは、その一件のせいもあったのか?(笑)
 とはいえ、あの大雪の夜、小屋の中で暖かい布団にくるまって寝れたのにはホントありがたかったです。
 実は、次の日の朝、雪降ってる最中にテント撤収するイヤだなぁ~って結構憂鬱だったんです。
 ま、今さらですけど、あらためてお礼を言わせてもらいます。



              ―― 『オレと雪の女王(あと、山小屋の親父さん)』〈了〉


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コメント
高校生で雪山登山とかすごい……。さすが新田次郎を読んでらっしゃっただけのことはありますね。(「武田信玄」しか読んでない;;)

夜の山の描写が美しいです。これは体験した方だからこそ書けるものなのだろうな、と思ったり。

最後のタイトルで爆笑しました。
椿dot 2016.03.27 18:19 | 編集
椿さん、コメントありがとうございました

ていうか、椿さん。
新田次郎の『武田信玄』読んでるなんて、スゴイ!
(もしかして、山梨出身?)
私、新田次郎は、高校ん時に8割くらいは読んだと思いますけど、
武信は読んでません。 ←略すな!
だって、山の話じゃかったんだもん(笑)

タイトル。
実は、山小屋の親父さんをつけるかどうかで、ずいぶん迷いましたねー(笑)
百物語ガールdot 2016.04.02 17:17 | 編集
「武田信玄」は、大河ドラマ見てたんですよ(笑)
大河って、全部見られたの今までで4本くらいしかないんですが、そのうちの貴重な1作(笑)

まあまあ面白かったんだけど、後半に行くにつれみんながエスパーになっていき、最終話辺りでは信玄と謙信がそれぞれ甲府と越後にいるのに魂で対話始めちゃって、これ一体どんな話なんだよ、と。

原作から乖離しているのは想像つきましたので、どれくらい違うのか見たくて読んでみたという。
案の定、ヒロイン(信玄の側室)の名前以外、ほぼオリジナル展開でしたね(笑)
椿dot 2016.04.03 19:56 | 編集
椿さん、コメントありがとうございました

> 「武田信玄」は、大河ドラマ見てたんですよ(笑)

おーっ!今宵はここまでにしとうございます!!(笑)

> 大河って、全部見られたの今までで4本くらいしかないんですが、そのうちの貴重な1作(笑)

全部見たのは、私。
何を隠そう、最低視聴率の栄冠に輝く『平清盛』のみだったりします(笑)

> 最終話辺りでは信玄と謙信がそれぞれ甲府と越後にいるのに魂で対話始めちゃって、これ一体どんな話なんだよ、と。

あった、あった(爆)
でも、面白いですね。
あれって、大河ドラマファンの人たち(というか戦国オタク)には、一応名作ってことになってるじゃないですか。
というか、私みたいなアンチ戦国ですら、中井信玄はカッコよかったって印象があるんですけど、
でも冷静に見ちゃうと、“後半に行くにつれみんながエスパーになっていき…”なんだなーって(笑)
そういえば、アレって、「今宵はここまでにしとうございます」も、途中からユーレイになっちゃったんだっけ(爆)

> 原作から乖離しているのは想像つきましたので、どれくらい違うのか見たくて読んでみたという。

えー、何です?そのヤーな性格!(笑)
もぉ最高に楽しいです!
百物語ガールdot 2016.04.09 17:36 | 編集
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