--
--.--

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

2016
03.21

怪談16.3.21

Category: 怪談話-番外

 それは、終電かその1本前くらいで帰宅し夜のこと。
 とりあえず風呂に入って、頭を洗おうとしていた時だった。
 シャンプーを泡立て頭をゴシゴシしだしたら、急に怖くて堪らなくなった。

 どういうことなんだか、さっぱりわからない。
 とにかく、ただただ堪らなく怖い。
 そのわけのわからなさに、慌ててシャワーで泡を洗い落として、周囲を見回した。

 何にもなかった。
 自分の家だ。そんな不穏な何かがあるわけない。
 目が見える状態になって辺りを確認してみれば、つい今感じていた怖さなんてどこへやら。きれいさっぱり胡散無償。
 型板ガラス(型模様のついたガラス=曇りガラス)の窓も、外の暗さを透かして、ただ真っ黒なだけ。
「何だったんだ。今のは…」

 ところが、また目を瞑って頭をゴシゴシやりだすと…
 怖い!
 もう堪らなかった。
 言いようのない怖さが、次から次へと湧いてきて、気持ちがどうにも押さえられない。
 もう、シャワーをかけるなんて、まどろっこしいことやってられなかった。
 風呂のお湯を適当にザバザバ何杯かかけ、風呂から飛び出して。
 脱衣場で着替えとバスタオルをひっつかむと、びしょ濡れのまま一目散に台所に逃げ込んだ。

 台所でホッと一息ついていると。
 振り返れば、それは風呂から続く廊下の濡れた足跡。
 相当慌てていたのだろう。
 風呂の電気は点けっぱなし。さらには、風呂の戸まで開けっぱなしで、その薄暗い廊下に湯気が明りにモワモワ照らされていた。

「あー、ヤバイなぁ…」
 濡れた足跡は、そのままにしておくと染みになる。
 風呂の戸だって閉めないと湿気てしまうのでマズイのだが、今すぐというのはちょっと…
 風呂場に行くのが、なぜかどうしてもイヤだった。

 とりあえず、落ち着こうと。椅子に座って、冷蔵庫から冷たい飲み物を出して。それを飲みつつ、タオルで頭を拭きながら「何なんだろ?今の感覚は?」って思っていたら。
 ふっと。なぜか台所の窓が気になった。

 台所の窓は、風呂の窓と同じく家の裏に面していた。
 当時住んでいた私の実家は、丘の斜面にひな壇のように広がる住宅街の一番下にあった。
 だから、裏の家はウチよりも一段高くなっているのと、また、庭木やら物置やらもあって、そこは夜になると真っ暗だった。
 ちなみに、裏の家は、泥棒に何度か入られているのだが。
 どうも、泥棒はまず私の家の裏に忍び込んでから、裏の家の様子を窺った上で侵入していたふしがあるくらいだった。
 あの怖さの正体って、えっ!もしかして泥棒!?
 げげっ!
 そぉーっと窓のそばに移動した私は、何か物音がしないかと耳を澄ませる。
 しかし、窓の向こうからは真夜中の静けさが伝わってくるばかり…

 その時、窓に虫が…、そう、ちょっと大きめ蛾か何かが、貼り付いたような気がした。
 型板ガラスみたいな模様入りのガラスは、遠くは見えないんだけど、それが窓に貼りついたり近くにくるとボンヤ~リと見える。
 だから、その虫を追い払おうと窓を叩いたのだ。
 こぶしで、結構力入れて、ドン!と。

 その途端。
「ギィェェェーーーーーっ!」
 窓の外から上がった女の絶叫。
 それは、女の声にしてはやけに野太く、その野太さゆえにとても野卑に聞こえた。

 そんな予想だにしない展開に、その場に固まってしまった私。
 しかし、その後の展開は、さらに予想を超えていた。
 台所の型板ガラスがはまった窓のすぐ向こうにボンヤ~リ見えたのは、額のところでまっすぐ髪を切りそろえた日本人形。
 それが、中空で長い髪と着物の袖を振り乱して、のたうちまわっているのだ。
「っ!?」
 それは、何がそんなに苦しいのか。中空でのたうちまわりつつ、窓ガラスにカツンカツンとぶつかってくる。
 そうやって窓にカツンカツンと音をたてながら当たる度、人形の表情がガラス越しにハッキリ見える。
 それは、もう表情というより形相と言ったほうがぴったりな、苦しそうな、そして憎々しげな表情で…
 さらに、そうしている間にも続く、野太い野卑な女の絶叫。

 いや。ここから先は、ちょっと話しにくい。
 が、しかし、まさかここで終わらすわけにもいかないだろう。
 窓ガラスの向こうの、その到底信じられないような異常な事態に、私はもう堪らず大声をあげていた。
 それは、ホント無意識だった。
「わぁぁぁーーーーーっ!!!」
 その自分でもビックリするくらいの大きな声。

 そのあまりの大声に、飛び起きちゃったと。
 それこそ、布団を剥いで立ち上がっていたくらいだから、その声がいかに大きかったかだ。
 つまり、あんなにリアルに怖い夢をみたのは、後にも先にもあれっきり…というお話。



 そんな、禁断の夢オチの後に、また就寝中の怪異を語るというのは大いに気がひけるのだが、それはある蒸し暑い夏の夜のこと。夜明けまであとわずかという時刻のことだった。

 寝ていて、ふと意識が半覚醒した。
 いや、ふとというのは間違っているかもしれない。
 半覚醒したのは、明らかに異常を感じた…、というよりは、身の危険を感じたからと言ってもいいかもしれない。
 さっきから、冷たい何かが私の顔を撫でてる。
 ぬらぁ~、ぬらぁ~、ぬらぁ~っと…
 そして、それはこうしている今も撫でて続けている。
 ぬらぁ~、ぬらぁ~、ぬらぁ~っ。

 手だった。
 顔に、のったりと力なくあたるその触感でわかるのだ。
 ぬらぁ~、ぬらぁ~っと冷たいそれが、私の口元、鼻、目、額へと力なく撫でていくその度、一本一本の指が顔の輪郭に纏わりつくように動いているのが感じられる。
 しかし、怖くて目を開けられない。
 でも、開けないと何をされるか……

 意を決した私は、顔を撫でるその手から逃れようと、体を横に素早くスライドさせた。
 そして、勇気を奮い起こして目を開けようと…
 でも、何も見えない。
 だって、そのぬらぁ~、ぬらぁ~っと顔を撫でる手は、顔にペタンと貼りついて。私のことを逃すまいとくっ付いてくるのだ。
「うっぅぅぅー。」
 もう怖いなんて言ってられなかった。
 反射的にその手を右手でパッと払った。
 しかし、ソレを右手でを触れた時の、その何とも表現のしようもない冷たさときたら…
 
 ソレからやっと逃れたと思った私だったが、でも、それは甘かった。
 ソレは顔からは離れたものの、今度は私の左肩をガッチと掴んできたのだ。
 その、左肩にズッシリと感じられる重み。
 重さからいって、それは手だけの重さではない。
 おそらく腕も…、いや、もしかしたら、その上もくっついているのかもしれない。
 不気味に笑った顔が、私の目の前に今にも……

 あまりの恐怖で声なんか出やしない。
「ハぁあーっ、ハぁあーっ」って。声にならない声が喉の下の方で擦れるばかり。
 左肩を掴むその冷たい手からなんとか逃れようと、壁の方に逃げる私。
 しかし、その冷たい手は、左肩とガッチリ掴んで離さず、私の動きにピッタリついてくる。
 背中が壁について、もうこれ以上逃げられないと知った時、私はおそらく観念したのだろう。
 もう逃げていてもしょうがない。その追ってくるソレをきっちり見極めようと、カッと目を開いたのだ。

 目に映ったのは、障子から透けるぼんや~りとした外の光に青黒く浮かび上がった部屋の中。
 その青黒いモノトーンの中に浮かぶのは、グシャグシャになった布団、そして暗く沈んだ部屋の隅。
 部屋の中は、意外なくらいシーンと静まり返っている。
「…!?」
 あの冷たい手の主は、いったいどこに……
 その時、何気に私が右手で左肩に触れたのは、あの冷たい手にずっと掴まれていたそこを庇う無意識の行動だった。
 しかし、そのひんや~りした冷たさはいったい……

 しかも、右手は左肩から腕を触っているというのに、その感覚がまったくない!?
「えぇっ!?」
 慌てて見ると、左腕はちゃんとある。
 私の右手が、私の左腕をちゃんと触っていた。
「…!?」


 ま~、一言でいうなら、寝相が悪かったということなのだろう。
 たぶん、寝ているうちに左手がずっと体の下になっていて。その結果、左手の血が止まった状態になっていたんじゃないかと。
 そんな血が止まって感覚が無くなるくらい冷えきった左手が、体が仰向けになって自由に動かせるようになったことで、勝手に動いていたのだろう。
 それは、恐らく動くことで、血の流れを戻そうとする体の反射的な動作なのではないだろうか。

 何やらわかりにくい話で申し訳ないが、どうもそういうことのようだ。
 とはいえ、これで寝ぼけ半分で金縛りもセットだったりしたら、恐怖度レベルの相当高い「怪談」になっていたのは間違いない(笑)

 そんなわけで、怪談っていうのは腕の血が止まっただけでも起こるもんなんだなぁ~と感慨にふけってしまうわけだが…。
 とはいえ、世に出回る「怪談」の中には、この手のネタに尾鰭をつけて、チョー怖くしちゃったお話が相当あるはずだ(爆)



                      ―― 『あれも怪談。これも怪談。』〈了〉


注!無断転載禁止
  断りなく転載されるのは非常に不愉快です。やめてください
  ブログの記事は全て「著作物」であり、著作権法の対象です
        ↑
   ちょっと剣呑で、ゴメン(^^;)


 
 子供の頃。怪談を話してくれる親戚の叔父さんがいて、よく従兄弟と一緒に聞いたものでした。
 その叔父さんは怪談を話す時、ちょっとしたクセがありまして。
 それは話す前、一瞬目玉をギョロっと上にして。ちょっと凶悪に、ニヤリと笑ってから話し出すんです。

 あの表情って、今思えば、話そうとするソレを脳裏に思い返す中で、自然と出る表情だったんでしょう。
 ただ、そればかりではなくて。
 「さぁどうやってこのガキどもを怖がらせてやろうか」と、自分の話で怖がらせるのを、それこそ舌なめずりするように楽しんでいたその気持ちがつい顔に出ちゃったんじゃないのかなーって気がするんです(笑)

 怪談の本質って。
 もしかしたら、まさにソコにあるんじゃないかって気がするんですよね。
 つまり、聞き手を楽しませてやろうとする、語り手の“悪意に満ち満ちた好意”という余計なお節介(笑)
 
 って、それ。
 一歩間違えたらストーカーになっちゃいそうで、とってもコワい(爆)
 

スポンサーサイト

トラックバックURL
http://kaidansweets.blog.fc2.com/tb.php/597-fe5eec89
トラックバック
コメント
最初のお話。わけもない恐怖感って、一番リアルな気がします。
まさかああ落ちるとは思いませんでしたが(^-^;
今回は正統派の怪談だと思ったら(笑)

2番目のお話。自分の唯一の金縛り体験『霊(?)にくすぐられた』を思い出しました。
この体験は説明がついたから安心できますが、説明されないから落ち着かないんですよね~。あ、正に『オチ』つかないのか。

ちなみに、くすぐられたのが何だったのかは謎のままです(笑)
椿dot 2016.03.22 02:46 | 編集
椿さん、コメントありがとうございました

> 今回は正統派の怪談だと思ったら(笑)

全然臆面もなく夢オチやる人も珍しいですよね(爆)
ていうか。
〝正統派の怪談だと思ったら”みたいなコメントするなんて。
椿さん、それは怪談好きになってきた傾向ですよ(笑)

> 自分の唯一の金縛り体験『霊(?)にくすぐられた』を思い出しました。

ふふふ。
で、どこ、くすぐられたんです?(笑)

> ちなみに、くすぐられたのが何だったのかは謎のままです(笑)

もぉー。
〝くすぐられたのは何だったか”って、
くすぐられたのは椿さんでしょう? 謎なのは、くすぐった方!(爆)
3:22なんて、そんな夜更かししてないで、早く寝てください(笑)
(ちゃんと寝ないと、おっきくなれませんよwww)
百物語ガールdot 2016.03.26 18:29 | 編集
管理者にだけ表示を許可する
 
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。