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2015
10.19

怪談15.10.19 -仮題「山伝説」前編

Category: 怪談話-番外

 怪談15.10.19 -仮題「山伝説」前編 


 怪談界の七不思議に、「山の怪談」というものがある。

 …というのは全くのウソなんですが、ただ、個人的には“山の怪談って、なぜ人気があるんだろう?”って、かねがね不思議に思ってました。


 だって、山ですよ、山。
 山といえば、私が学生の頃は“ダサい”、“キタナい”、“死ぬほどかったるい”と、若者がやりたがらないコトの最たるモノだったじゃないですか(笑)

 とはいえ、現代では、なにをとち狂っちゃったのか、山ブームだとかで、それこそ「山ガール」なる珍奇なモノまで現れる始末で。
 いや。今じゃ、さすがに「山ガール」も廃れたのか?

  
 ま、山ブームの話はともかく、その山ブームに便乗したのか、何なんか。
 怪談の世界まで「山の怪談」ときたもんだで、怪談オタクが辛気臭い顔して、何かといえば「山は異界…」なんてのたまっていたり(笑) 
 いや、ね。
 その怪談心というか、怪談ロマンティズムみたいなのはスッゴクわかるんです
 でも、ホントに山が「異界」なら、“槍ヶ岳だの白馬岳だののテッペン近くにあんなにバカデッカイ宿泊施設建てて、せっかくの景観台無しにしちゃえるわけねーじゃねーか”なんて。
 ま、昔々にコキタナイ恰好で山に行った私なんかは思っちゃうわけなんです(笑)


 ただ、思うんですけどね。
 「山の怪談」っていう言い方は、ちょっと変な気がしません?
 妙に違和感があるっていうか…。

 例えば、ほら、「水(辺)の怪談」という言葉はあるにはあるわけですけど、でも、それほどよく耳にする言葉ってわけではありません。
 それこそ、お話はたくさんあるのに。

 ましてや、「駅の怪談」とか「マンションの怪談」なんて、特に言いませんよね(ま、駅の階段、マンションの階段なら普通に言いますけど)。
 また、(実話)怪談で一番多い系統のお話というのは、金縛り等の就寝中の怪談じゃないかと思うんですけど、もちろん「就寝中の怪談」という言葉も聞きません。

 なのに、「山の怪談」という言葉は、普通に流通している。
 怪談オタクが言うように「山は異界」なら、“異界ならわざわざ「山の怪談」ってカテゴライズする必要ねーじゃねーか”なんて、つい毒づいちゃうのは、ま、私が学生時代よく山に行っていたってことで、たぶん意識しすぎなだけなんでしょうね(笑)


 ま、それはさておき。
 人が集まる「都市」に“都市伝説”があるように、実は、山にも都市伝説みたいなものがあります。

 でも、それは当然なんですね。
 だって、山に行っている人たちはみんな、町(都市)で“都市伝説”を形作っている「都市(町)の人」が山に行くんですから。
 都市と同じように、“都市伝説”が生まれるのは必然なわけです
 ただ、ま、山で“都市”というのも変なので、ま、「山伝説」とでも言いましょうか。

 そんな「山伝説」でよくあるのが、“霧の中歩いていると足をつかまれる”というパターンです。
 これは、ホントあちこち無数にあります。

 それこそ、ありすぎて紹介する気にもならないくらいですが、それと並んで多いのが、“○○岳の××沢では△△という歌を歌うな”というパターンです。
 確か、山岳小説で有名な新田次郎も、そんな「伝説」をテーマにした――確か“♪おー寒む こ寒む 山から小僧が飛んできた”だったか?――短編があったはずです。

 そんな「山伝説」、歌はやっぱり「雪山賛歌」が多いんですかねー。
 ただ、「伝説」の中身は、その場所で歌っちゃうと、“雨が降る”から、“吹雪く/嵐になる”といった天気が変わるみたいなのが多いようです。
 でも、中には“遭難死する”や“雪崩が起こる”みたいな不穏なのもあったはずです。


 ただ、そういうジンクス系の「山伝説」っていうのは、古い話のような気がするんですよねー。
 思うに、60年代か50年代、もしくは戦前に流行ったパターンなんじゃないですかね。
 だって。私がよく山に行ってた頃、山で「雪山賛歌」歌うようなそんなベタ人、まずいなかったもん(爆)
 もっとも、最近は情報先行ですから。逆に“山に行ったらそれは歌うもの”みたいになってたりして?(笑)


 「山の怪談」って。
 いや、別にいいとは思うんです。
 というか、全然いい。それというのも、山が好きな人っていうのは、大体において怪談も大好きだからです。

 ただ、その山の怪談に(いまだに)「雪山賛歌」出すのは、ちょっと勘弁してほしいかなぁ…。
 だって、山で「雪山賛歌」って、いつの時代の話だよ?って。
 よっぽど、そっちの方が“異界”って気がしちゃいます(笑)





 と、まぁそんなながーい前振りはともかく(笑)
 
 そんな、“どこそこ山では○○を歌うな”という「山伝説」のひとつに、“北アルプスのQ岳の近くにあるZという岩稜では「木綿のハンカチーフ」を歌うな”というのがある…、んだそうです。
 
 だそうです、っていうのは、つまり、そんな「話」、私は聞いたことがないからなんですが、ま、「山伝説」というか、「山の怪談」というのはそういうものなんですね。

 荒天で行動を取りやめ、山小屋やテントで停滞(山用語で“沈殿”、略して“チンする”と言います)していて、暇な時。
 誰からともなく始まる話、それが「山の怪談」なんです(もしくは「山の猥談」)。
 同室になった人や山仲間からから聞いたその話。
 それが、あるものは、やっぱりそんな荒天時に話されることで人伝えで広まり(当然尾鰭眉唾ベッタリ)、あるものは消えていく。
 「山の怪談」っていうのは、そういうものです。


 で、ま、その「木綿のハンカチーフ」の話です。
 歌が「木綿のハンカチーフ」なだけに、70年代の中頃か後半頃の話らしいのですが、面白いのはその内容です。
 というのも、“Q岳のZという岩稜では「木綿のハンカチーフ」を歌うな”と、それだけなんだそうです。
 つまり、その後の“歌ったらどうなる”という部分がない。
 しかし、その代わりにこんな「話」がついているんだそうです。
 
 当時は、北アルプスに行くとなれば、新宿から夜行の急行列車アルプスに乗っていくのが普通だった。
 シーズン中は混雑するので、新宿駅のアルプス広場で出発の何時間も前に並んでいた。
 当時、並んでいる時に友人知人、あるいは山岳部のOBや後輩等が差し入れをするという習慣があった。
 物は、ウィスキーだったり、菓子だったり。
 その時も、あるパーティーに差し入れがあった。
 差し入れの主は、会社帰りらしい若い女性とその友人。
 実は、その女性はパーティーのある男性と付き合っていた。
 女性は、パーティーには山で飲むためのウィスキーを差し入れし、男性にはその頃流行っていたバンダナをプレゼントしていった。

 翌日。その男性はそのバンダナを頭に巻いて登った。
 嬉しそうに笑って、当時流行っていた「木綿のハンカチーフ」を歌いながら。
 パーティーのみんなはそのことを冷やかしたが、男性は照れながらも、でもちょっと得意気だったらしい。

 事故が起こったのは2日目のお昼過ぎだった。
 場所は、Q岳のZ岩稜。
 霧で見通しがきかない中、滑落したその男性に上から仲間が声をかけた時には確かに応答があった。
 なのに、救助隊がそこに着いた時、男性はこと切れていた。
 その手にぎゅっとあのバンダナを握りしめて。

 男性は、滑落する直前にも「木綿のハンカチーフ」歌っていたらしい。
 そのパーティーの中には、男性が歌っていたその歌声がしばらく耳を離れなかったという人もいたくらい。

 それ以来。その場所、つまり“Z岩稜では「木綿のハンカチーフを歌うな”と言われるようになった。



 とはいえ、「歌うな」と言われると、逆にそれが気になってしまうもの。
 山に行く前、大学の山岳部の先輩から「こういう話があるからZ岩稜では木綿のハンカチーフを歌うなよ」と話を聞かされたAさん。
 それこそ、夜行急行に乗っている時から、「木綿のハンカチーフ」が頭の中で延々ループ状態。
 登っている時っていうのは、頭が何も考えない状態になることがあるが、そんな時につい口ずさんでいるような有り様。
 そのたんび、「あー、ヤバいヤバい」と。

 いや。Aさん、別にその話を信じたわけではなかった。
 信じたわけではないが、ただ、そのZ岩稜では過去滑落による死亡事故が何度か起きているのも事実。
 そんな場所で「歌うな」とされている歌を歌うのは、やっぱり嫌ぁな感じがあった。

 とはいえAさん、次の日の朝には不思議とそれは頭から消えていた。
 なのに、その日のお昼前。
 Z岩稜に差し掛かった途端、Aさんの頭にそれが流れてきて…

 そのたんび、Aさんは「ヤバい、ヤバい」と。それこそ、声を出して別の歌を歌ってみたり。

 それは、Z岩稜でも特に危険といわれる場所を超えた、あるピークで休んでいた時だった。
 頭の中でそれがずっとループしていたAさんに、友人が「オマエ、今木綿のハンカチーフ歌ってたろ」と言ったのだ。


 実は、それを言った友人自身も、ずっと頭の中から「木綿のハンカチーフ」が離れなかったらしい。
 それこそ、つい口から出てしまうのを、やっと抑えているような有り様だったと。
 AさんがZ岩稜でそれを歌っているのに気づいた時なんか、つい一緒に歌ってしまいそうで。
 「何だか、呼ばれてるんじゃないかって。変に気味が悪かった」と言った友人。

 いや。そんな友人たちも、別に本当にそう思って言ったわけではなかった。
 「オマエ、勇気あるなぁ」的に、冗談にして笑っていただけ。
 なのに、Aさんはその時、不思議なくらい笑えなかった。
 それどころか、ふいにゾクっときて、思わず振り返った後ろ。
 そこは、ずんと何十メートルも切れ落ちた空間。
 霧が次から次へと昇ってくるばかりで、ただただ真っ白なだけだった。




── 本日これまで!
  怪談15.10.19 ― 仮題「山伝説」前編〈了〉/中編に続きます


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     ちょっと剣呑で、ゴメン(^^;)

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