2017
04.02

怪談:17.4.2『姉弟掛け合い怪談-その11』


「はぁー。」
「ふー。」
 今の弟の話…。
 面白かったのは、面白かったんだけど…。
 な~んか、いい加減疲れてきたかも…。
 見れば、弟も今にも椅子から滑り落ちそうな座り方で、グダーッと。背もたれに後頭部を乗せ、天井見て放心している。
 ていうか、今まで何でキッチンでずっと話してたんだろう。
 居間でソファーにでも座って、ゆっくりすればいいのに…。

 夕方、あれほど強かった雨音は、今はすっかりなくなっていた。
 今聞こえるのは、シュンシュン言ってるストーブの上のヤカンの音だけ。
 蛍光灯は消して、スタンドだけしか点けてないから、ストーブの炎で周りが赤々と照らされている。
 はぁ…
 部屋の中はぽっぽと暖かいのに、外のキーンと冷え込んだ空気がしみ込んでくる真冬の夜。

 うん…
 そう…
 面白いのは面白かったんだけど…、なんかなぁ…
 イマイチ、引っかかるっていうか…
 ふふっ。怪談好きの弟が、いかにもそれっぽいお話にしちゃったって気もするんだよなぁ…
 まぁ、でもしょうがないのか
 怪談なんて、それぞれの人の頭の中を通過してしゃべられるわけだもん。同じお話でも、話す人によって微妙に違うからこそ面白いんだろうな
 あー、ていうか、疲れた。ふぅー。
 そう。なんかさ、いい加減、ちょっと重くなっちゃったのよね。
 そう、そう。この弟が怪談好きなもんだから、バッカみたいに張り切っちゃうもんだからさー。
 オバケだってさ、おどかしてばっかりじゃ疲れちゃうのよ……


「あのさ。これは、H叔父さんに聞いたんだけどさ。」
「え?H叔父さん!?」
 H叔父というのは、前にも出てきたが、本日、ウチの両親がお邪魔したあげく、叔父に捕まって、結局(予定通り?)泊まることになった家の主だ。
「H叔父さんってさ。実は、カワウソだったのよ。
 しかも、妖怪の…。」
「は、はぁ?
 あ、あぁ、そういうこと?
 そうだよね。H叔父さんって、ちょっとカワウソに似てるよね。アハハ。」
「でね。H叔父さん、ある日、プラモデルを作ってたんだって。」
「あー、H叔父さん、好きだもんねー。プラモデル…。」
「でね。その作ってたプラモデルっていうのが可笑しいの。
 なんと、笠地蔵。アッハッハ。」
「か、笠地蔵!?
 なに、それ?そんなプラモデルあるの?」
「わたしが知るわけないでしょ、そんなこと。
 気になるんだったら、アンタ、H叔父さんに聞いたらいいじゃない。
 でね。お地蔵さんに笠をかぶせてたら――。」
「あー、やっぱりその場面なんだー。へー。」
「お地蔵さんに笠をかぶせてたら、
 ふと、自分でもかぶってみたくなったんだって。」
「え、何を?」
「笠に決まってるでしょ。アンタね、ちゃんと話聞きなさいよ。」
「き、聞いてるって。でも――。」
「で、かぶっちゃったらしいのよ。H叔父さん。」
「…!?」
「そしたら、その恰好が可笑しいって。
 みんなに、もぉバカウケしちゃったらしいのよ。
 H叔父さん、それにすっかり気をよくしちゃって。
 その恰好のまま、近所をねり歩いちゃったら、
 H叔父さんの行くところ、行くところ、もぉ大喝采。」
「……。」
「H叔父さん、あれはカワウソなどという地味な妖怪である俺の、
 一生に一度あるかないかの晴れやかな場面だったって、
 すっごく嬉しそうに話してたんだけどね。
 でもさ。一生に一度あるかないかのって、
 H叔父さんって、カワウソっていう妖怪なわけじゃない?
 一生、二生もないじゃんね。だって、妖怪なんだもん。」
「な、なんなんだよ、その話っ!全然わかんないよっ!」
「そんなこと言われたって、わたしだってわかんないよ。
 だって、夢だもん。」
「ゆ、夢ぇ?はぁ?」
「昨日、そんな夢見たの、今思い出したの。わかった?
 だから、怪談はもぉ終わりっ!もぉ寝るのっ!」
「ちょ、ちょっと…。
 なんだよ、それぇーっ!せっかく面白くなってきたのにぃっ!
 あ、ていうか、そぉ。ねーちゃん、まだ風呂入ってないだろ?」
「あ…。
 やだ。忘れてた…。」
「だから、今から沸かすことにして、その間――。」
「もぉいいよぉー、風呂はぁー。
 めんどくさいし、寒いし…。
 ていうかさ。実は、アンタの話、聞いてたら一つ思い出したんだけど、
 でも、結構長い話なのよ。
 アンタの話で、疲れちゃったのにさ。
 これで、さらにわたしが話すって思ったらさぁー、ねぇ。アハハ。」
「で、H叔父さんはカワウソで…。」
「そう、妖怪。しかも、地味ぃ~なって。ケラケラケラ。」
「どんな夢だよっ!
 もぉいいっ!オレが話すよ!。」
「いよっ!B美さんも惚れ直しちゃうイケメン!
 でも、バカだけど…。キャッハッハ。」
「うるっさいよ、もぉっ!
 だからっ!これは、会社のJ原さんから聞いた話っ!」
「えぇぇ~。なに、怒ってるのぉぉ~。」



 それは、たぶん、俺が小学校低学年の頃だったと思う。
 冬か、もしくは春先のよく晴れた日の午前中のことだった。
 僕は、居間のソファーに座って本を読んでいた。
 日のよくあたる部屋で、そのポカポカとした暖かさに、僕はいつしかまどろんでいた。
 
 ふと目が覚めて。
 その半分だけ開いた目が見ている先。それは、テーブルの上一面にレースのカーテンの模様の影が広がっている様。
 かすかに風があるのか、それは左に右にゆっくり、ゆっくりと動いている。
 僕は半分だけ目が覚めたような頭で、それをぼんやりと眺めていた。
 レースのカーテンの影が、テーブルの上にある物の表面をなぞるように動いていく様子はなんだか面白かった。
 開いたまま伏せた本の表面、灰皿、そして色とりどりの一口サイズのチョコレート等々。
 レースのカーテンのギザギザした影は、それらの表面の凹凸を余すことなく丁寧に舐めていく……

 ただ、その動きはどういう加減によるものなのか?すーっと流れるような動きではなく、どこかジリっジリっとした感じの小刻みな動きで。
 そんな、ジリっジリっと動くレースのカーテンの影を、ぼーっと見ている僕の目。
 突如、その視界の端に、レースの模様のない黒一色の影がふわーっと入り込んできた。
 それは、ひらひら、ひらひらと…。
 その真っ黒な影は、テーブルの上でジリっジリっと動いているレースの模様の影を、ひらひらと侵食していく。
 陽の光の明るさに慣れていた僕の目には、それはテーブルの上があっという間に真っ黒に染まってしまったように見えた。
 ついに、テーブルの上が真っ黒になった、その瞬間。
 何だったのかはわからない。僕は矢も楯も堪らなくなって、「わっ!」っとソファーから体を起こした。
 でも、そのテーブルの上は元通り。レースのカーテンのギザギザした模様の影が、テーブルの上にある全ての物をなぞっているだけ。
 あの、ジリっジリっと小刻みな動きで。
 開いたまま伏せた本の表面、灰皿、そして色とりどりの一口サイズのチョコレー―-。
「あれっ!」
 思わず声を上げた僕は、辺りをキョロキョロ見回す。
 だって、テーブルの上のチョコレートがどこにもない。

「あれぇぇぇ…。」
 そんな素っ頓狂な声をあげながら、僕は四つん這いになってテーブルの下も見たんだけど、テーブルの上にあった、一口サイズのチョコレートはどこにもない。
 はっとして、窓の隅を見れば…。
 レースじゃないカーテンは、左右ともちゃんと束ねられてあった。

 あとで、部屋のゴミ入れを見たら、そこには色とりどりの一口サイズのチョコレートの包み紙が。
 でも、それは何枚もあって、今日食べたチョコレートの包み紙なのかどうかはわからなかった。


 今の話は冬のことだったか春先のことだったかあやふやなのだが、今度の話は間違いなく真冬のことだった。
 でも、それが何歳くらいのことだったかとなると、よく憶えていない。
 とはいえ、あまりにバカバカしい話だから、もしかしたらそれより前。幼稚園の頃のことだったかもしれない。

 その日、僕は近所のK一クンの家に遊びに行こうと家を出た。
 家の前の細い道を通り過ぎて、角を曲がって。向こう側が田んぼに面しているちょっと広めの道を歩いている時だった。
 その日は、北風のとても強い日で、しかも鈍色の曇天の空。
 しきりと電線が鳴っていた。

 K一クンの家は、僕が歩いている片側が田んぼに面した道を、真っ直ぐずーっと行って。
 真っ直ぐな道が右に緩やかに曲がった向こうにあった。

 北風は家を出た時から強かったけど、田んぼに面した道に出た途端、さらに強くなった。
 もっとも、その頃は、「子供は風の子」っていうのが当り前。
 だから、僕も寒いのは寒いんだけど、そんな強く吹く北風を楽しんでもいた。
 道の左側、遥か向こうまで広がっている田んぼ。
 その上に広がっている、重いグレーの空。
 その遮るものが全くない空間を、北風は自由に吹き回っていた。

 そんな北風に向って駆けたり、歩いたりしていると、僕の着ているジャンパーの腕の部分やお腹のあたりが風でボワーっと膨らむ。
 それは、手を広げれば、そのまま風にのって飛べそうな……
 そんな風に、僕が空を飛んでいることを想像していた時だった。
「あれ…。」
 それは、僕が歩くずっと先を歩いているおじさんの後姿。
「あんなおじさん…、えー、いたっけ?」
 おじさんは、僕のお父さんが会社に行く時に着るようなコートを着ていた。
 ただ、それはお父さんが着ているようなねずみ色のコートじゃなくて、真っ黒なコートで。しかも、裾がやけに長かった。
 僕の着ているジャンパーの袖がはためいているように、前を歩いているおじさんの黒いコートの裾も、風でバタバタはためいていた。

 ところが、急にその黒いコートの裾のはためきが激しくなって。
 ゴォォォーーー!
 いきなり、空で風がすごい音で鳴ったと思ったら。
「うわっ…。」
 それは、今までにない強い風。
 ゴォーっというその風に押し返されかけ、思わず腕で顔をブロックする僕。
 ブロックした腕の下に見えたのは、一際バタバタはためいているおじさんのコートの裾。

 それを見たと思ったその時だった。
 おじさんのコートの裾がすーっと。掻き消すように見えなくなったのだ。
「えぇぇーー!」
 驚いてブロックしていた腕をどけた僕が見たのは、黒いコートのおじさんが両手を広げて、ブワーンって空に舞い上がっていったところ。
「かっ、かっ、かっくいぃぃーっ!」
 ゴォォォーーー!
 また空で風が鳴ったと思った途端吹いてきた、さらに強い風。
 それは、空を飛ぶおじさんの姿に見とれていた僕にドカンとぶつかってきて。
「うわっ!」
 僕は、その強い風に、半ば風に押さえつけられるように地べたに手をついていた。
 その強い風が収まって見た空には、もぉおじさんの姿はなかった。

 その後、いったん家に戻って、お父さんのコートを持ちだしてきた僕は、K一クンと一緒に空を飛ぼうとしたのだ。
 でも、お父さんのコートは、あのおじさんのコートみたいに裾が長くないからダメだった。


 今度の話は、わりと最近。何年か前のことだ。
 でも、その話をするには、私が中学生の時に流行った町のウワサを話す必要がある。

 ウワサの元――場所と言った方がいいのか?――は、町を通る国道の下を通る地下歩道だった。
 そこは、僕もそこはよく通る所だった。だから、ウワサを聞く前からそのシミのことはなんとなく気づいていた。
 地下歩道だからそこを通るには緩やかなスロープを下に降りていくわけだが、その入り口を囲む壁にそのシミはあった。
 それは、地下に降りていくスロープの真正面。入口を囲む3方の壁の内側にあった。
 つまり、通路を通ろうとする人は、そのシミが嫌でも目に入っているはずなのだが、ただ、それはたんなる壁のシミなわけだ。
 そんなもの、目に入らない人や、目にしても気にもかけない人の方が多いのだろう。現にウワサを聞くまで、そんなシミは全く気づいてなかったという友だちも多かったくらいだ。
 ただ、僕はソレをかなり前から気づいていたし。
 気づいた時には、ソレが壁の縁から逆さの人がバンザイするようにぶら下がっている形に見えると思っていた。
 というよりは、そのシミがそんな風に見えるから、ソレに気づいたという方が正しいのだろう。

 もっとも、僕にとってもソレは、あくまでコンクリートの壁によくあるただのシミだった。
 怖いとか、気味が悪いとか、たぶんそんな風には思ってなかったと思う。

 その地下歩道に変なウワサがたったのは、前にも言ったように中学生の頃だった。
 なんでも、夜中にその地下道を1人で通ると、そのシミの人が落ちてくるのだと。
 後ろから聞こえた物音に振り返ると、例のシミの人が後ろから覆い被さってきて。その重みで、地下道を歩いてた人は転んでしまい、必ず鼻に怪我するのだと……。

 いや。シミの人にとり憑かれて、1週間以内に死んでしまうとか。
 あと、その人はシミの人と入れ替わってしまって。その人は壁のシミになって、地下歩道を通る人と入れ替わろうとするのだというバージョンもあった。

 当時、中学生とはいえ、さすがに「1週間以内に死ぬ」だの、「壁のシミと入れ替わる」だのという時点でそれは嘘だとバカにしていた。
 ただ、「転んで鼻をケガする」と聞いて、なんで鼻なんだろ?とそこのところだけ不思議に思ったからだろうか。
 その地下歩道を通る時、そのシミの真下はなんとなく避けて通っていたような記憶がある。

 そう。今思えば、私はその後も無意識にそれを続けていたのかもしれない…


 話は現代に戻る。最初に言ったように何年か前のことだ。
 その夜、私は同僚と飲んで、帰りは結局最終かその1本前になった。
 私の今の住まいは、駅からは国道の向こう側だ。だから、いつも通り国道の下を通る地下歩道を通った。
 私は酒は強い方だし。また、その時酔いはもうすっかり醒めていた。
 でも、地下歩道を歩いてたら、突然後ろで大きな物音がして。
 そのただならぬ物音に、ビクッと振り返りながら。なにかこう、異様な気配のようなものを感じて、とっさに通路の端に避けたのだ。
 そう。ガツンと、背中が激しく通路の壁にぶつかったのを感じたのと同時だった。
 びゅん!と。まるで、棒を宙で激しく振るような音ともに、黒いモヤのような物が地下歩道を通り過ぎて行った…

 その後、家にたどり着くまでの記憶はない。でも、間違いなく言えるのは、中学生の時に聞いた地下歩道の例のウワサをずっと思い出していたことだ。
 いや。別に鼻は怪我しなかった。
 ただ、黒いモヤのようなものを避けた時、地下歩道の壁にぶつけた背中は1週間くらい痛んだ。

 すっかり酔いは醒めたと思っていたけど、まだ酒が残ってたのかなーとも思ったのだ。
 なのに、夜遅くなってからはその地下歩道を通らなくなったのは、そのことを妻に話したからだった。
 聞けば、妻は前々からあの地下歩道を通るのが妙に嫌だったとかで。
 そうは言っても、今まで通ってきて別に何もなかったわけだし。また、夜中に地下歩道のスロープを一人で降りていく人を見かけたりもするのだが…。

 そう。最近、その地下歩道の入り口の壁に、いまだに逆さの人がバンザイするようにぶら下がっている形のシミがあるのに気がついて。
 今までなんで気がついてなかったんだろう?と、なんだかそれも不思議な気がして。
 今も地下歩道を通る時は、私も妻もその真下だけは避けて通るようにしている。

                            
                    ―― 『姉弟掛け合い怪談:その11』〈つづく〉

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2017
04.02

四月(も)馬鹿


 昨日の朝方、なにやらエッチな夢を見て。
 まぁ夢にはありがちな、具体的な内容は思い出せないんだけど、なんとなーくニカニカしてたら。
 今日がエイプリルフールだって気がついて、夢とはいえ、とんでもなくヤバイ間違いをしでかしちゃったような気がして、もぉーどうしよう!って。
 夢の内容を思い出せないのが、またミョぉぉぉーにコワい(笑)



 

 エッチな夢とは関係ないんですけど、スーパーの2階にあるバッタもの屋みたいなとこでパンツがお手頃価格だったんで買ってみたら。
 なんともまぁ履き心地の悪いこと!悪いこと!
 変な話、縫い目が集まったトコが、ある部分にあたって。
 そのうち、痔ぃ~になっちゃうんじゃないかってくらいの最悪の履き心地!(爆)

 パンツくらいはちゃんとしたモノを買うべきなんだなぁーと、大いに反省しましたとさ(泣)



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