2017
04.30

LED電球


 洗面所の明かりがまたたくようになってきたんで、LED電球に替えたんです。
 やっと(笑)

 そしたら……

 あ、あ、あっかるーーーい! 


 ていうか、明るすぎ。
 そこだけやたら明るいもんだから、他がみょーに暗く感じちゃうんですよねー(泣)



 いや、そのLED電球。
 明るすぎなのにも驚いたんですけど、797円という価格にもビックリでした。
 いやー、値段下がったなーって。

 洗面所の電球って、思い起こせば、震災の後の電力不足の時、使用電力1/3だって買った蛍光灯電球だったんですけどー。
 あの時、LED電球は高かったんだもん

 いやー、6年もったんだなーって。
 白熱電球は100円ショップで2つ108円なわけで、確か350円くらいだった蛍光灯電球は完全に元とったなーってニンマリ。

 てことは、797円のLED電球はその倍、つまり12年はもってもらわないと!って話なんですけどね。
 ただ、そんなにもったらLED電球屋さん、倒産しちゃいそうですよね(笑)
 倒産しちゃったら12年後困るんで、皆さん、LED電球をイッパイ買ってね(笑)
 もっとも、12年後には人魂の電球化が実用になってたりしてwww

 …って、何でLED電球の宣伝しなきゃなんないねん(笑)
 あ、これがアフィリエイトとってヤツか! ←絶対違う







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2017
04.30

怪談:17.4.30『姉弟掛け合い怪談-その15』


「その後。M岡さんは、上体を起こしたまま、部屋の中を見回したらしいんだ。
 でも、敷いた布団に乱れはないし。入り口の前に移動したテーブルの空き缶やらを見ても、
 倒れてたりってこともなくて、特に変わった様子はない。
 もしかして夢だったのか?と、なおも部屋を見回していて。
 そんな中ふと目がとまったのは、特に何があったという様子もない部屋の中で、唯一……
 布団が部屋の隅に、まるで投げつけられたようにあったとかで。
 そのぐちゃぐちゃな布団を見ていて、M岡さん、
 そうか。夢なんだとしたら、普通に寝てるはずだから、
 布団が昨夜敷いたままになってること自体変だって気がついたと…。」
「ふーん…。
 でもさー。なーんか、イマイチ納得できないっていうかー。
 ていうか、宿がなくて、唯一空いてた部屋に泊まったら出た話って…
 しかも、出てきたものが鎧兜姿って、あまりに定番っていうかー。」
「ふふっ。だからさ、その定番なトコがいいんだって。
 聞いてて、安心するっていうのかな?ハハハ。
 でね。M岡さん、そのN原さんに言ったらしいんだ。
 アレはホントのことだったのか?って。」
「そしたら?」
「そしたら。ひと言、そのことは誰にも言わないことにしようって。」
「えぇっ?どういうこと!?」
「うん。だから、そのM岡さんもどういうことかわからなくって。
 そのN原さんに聞いたらしいんだよ。
 そしたらN原さん、だって、そんな話を彼女たちにしたら、
 旅行、続けらんなくなっちゃうだろって。」
「えぇー。そういう話!?」
「うん。彼女たちと旅行を続けるんだったら、
 何もなかったふりをするしかないじゃないかって言ったらしいだよ。」
「えぇっ!?なんかよくわかんない。」
「うん。まぁ…、ねぇ。
 ただ、そうは言ってもさ。
 それを聞いて、M岡さんは、そうか、って思っちゃったらしいんだよ。」
「え?ていうかさ。そう!さっきから、な~んか納得いかないって思ってたのはさ。
 彼女たちの方は?その鎧兜姿の人が彼らのとこに出たなら、
 彼女たちのとこに出た可能性だってあるわけでしょ?」
「だから…。
 ま、わかんないけどさ。そこまでは思い至らなかったんじゃない。
 やっぱり、何だかんだ言って、2人とも動転してたんだろうし。」
「ま、それはあるか…。」
「でさ。そうこうしてるうちに、彼女たちが部屋に入って来たわけ。
 朝ごはん食べに行こうって。
 で、そのN原さん。彼女と笑っておしゃべりしてたらしいんだけどさ。
 じゃぁご飯に行こうって立ち上がったら、フラフラって。
 あとは、ばったーんって倒れちゃって。
 慌てて助け起こした彼女が言うには、スゴイ熱だって。」
「あ…。いわゆるお化け見た後、熱を出しちゃうって、まさにそれ?」
「そうそう。
 で、結局、病院に行ったんだか、運ばれたんだか。
 それこそ旅行どこじゃなくなっちゃって、帰ることになったんだけど。
 M岡さん、その帰りのことは、いくつか断片的な記憶はあるけど、
 でも、ほとんど憶えてないって…。」
「あらあら。かわいそうに。
 彼女たちを怖がらせないために黙ってようなんて健気だったのに…。」
 でも…。な~んか、スゴイ話よねぇ。
 いや、うん。いろんな意味でさ…。」
「でね。」
「え?なに、まだ続きがあるの?」
「うん。
 M岡さんと彼女。その後、別れちゃったらしいんだ。」
「えぇっ?何で…。」
「ううん。そのM岡さん、その出来事のせいで、ちょっと変になっちゃったとかでさ。」
「えぇっ。つまりそれは、いわゆる呪いとか、祟りとかってこと?」
「あ、それはどうだろ?
 ほら、だから話の最初。オレの友だちのK五がそのM岡さんが最近、
 元気がなくて付き合いがわるいことに気がついたって言ったじゃん。
「あぁあぁ。話が長いから、そんなの忘れてた。
 あれでしょ?そのK五クンからすれば、元気ない=失恋した、で。
 だから、そのM岡クンが元気ないのはフラれたって思い込んじゃって。
 で、合コンに誘ったって、もぉ最悪よね。
 そりゃ熱だって出ると思うわ。ていうか、それこそ祟りよ。」
「だから、熱を出したのはN原さんの方だって…。」
「いいのよ、そんなのどっちだって。この世で何が迷惑って、
 オバケと人に恋愛を押し付けてくるヤツくらい迷惑なのはないんだから…。」
「な、な、な、な、なんだよ、それ?
 でさ。まー、ねーちゃんの論理は、オレにはわかんないからさ。
 続けるけどさ。K五のバカが怒りだしちゃったもんだから、
 しょうがなく、M岡さんはその話をしたんだろうけどさ。
 M岡さんは、そのことがあって以来、またソレが現れるんじゃないかって、
 もぉ怖くて怖くてしょうがなかったんだって。
 だから、その旅行に一緒に行ったN原さんとも、そして彼女とも、
 もぉ会いたくない…、ていうか、会えないってことなんだろうね。
 ま、たぶん別れるとかって話をしたわけではないんだろうけどさ。
 限りなく自然消滅に近いみたいな。
 実はさ。それは、そのM岡さんとN原さんの関係もそうみたいで。
 今はM岡さん、N原さんとも友だち付き合いないらしいって…。」
「ねぇ…。」
「えー。」
「それってさ。だから、そのN原クン。
 実は、旅行前からM岡クンの彼女とデキちゃってて。
 M岡くんとその彼女が後腐れなく別れられるようにって、
 彼女の友だちを、M岡クンの彼女ってことにして。
 その3人で、旅行からその出来事まで仕組んだってこと、ないの?」
「うぷっ!
 な、な、な、な、なんてこと言うんだよ。」
「だって、その話ってさ。みょーに合点がいかないトコ、多くない?
 鎧兜の人だってさ。M岡クンは廊下にいるとこしか見ていないわけよね。
 部屋は真っ暗で、頭の後ろ引っ掻いてたのが何かは見てないわけだもん。
 そう。そもそも、なんでN原クンは明かりを消したの?
 そういう時って、普通、明かり消す?」
「いやー、だから、そういう時って、そもそも普通にはないから…。」
「ていうか。そんな鎧兜なんて大層な恰好で出てきたくせして。
 なんで、やることは、頭の後ろをカリカリするだけなのよ。
 ダッサい…。
 それじゃぁ、まるでアライグマのお化け……、あっ!」
「な、なんだよ?突然大きな声――。」
「もしかして、タヌキに化かされたとか、そういうこと?」
「あー、うん。それはオレも思った。
 刀身が3本、放射状に突き出した刀とかさ。そんな刀、あるわけないじゃん。
 そういうのからしても、タヌキっぽいなーとは思ってた。」
「えー。でも、タヌキのせいで失恋んん!?
 それって、泣くに泣けないっていうか…。」
「いや、それも泣くに泣けないんだけど、オレとしてはねーちゃんの、
 彼女と友だちが仕組んで、後腐れなく別れさせようとしたなんて。
 ねーちゃんって、もしかして、恋愛で相当な修羅場を見てきたのかなーってさ。
 なんだか、そら恐ろしくなっちゃってさー。」
「あ、あ、あ…。」
「弟として、泣くに泣けないっていうかー。」
「あ、あ、あのねーっ!」

 その後わたしは、例によってバカの弟とあーでもない、こーでもないとしばらく……
 ま、それはどうでもいいことだ。
 そんなことより、次はわたしの番なわけで、どうしようかと思ったのだが、まぁバカの弟とあーだ、こーだやってたのは、何を話そうか考えてたというのもあったのだ。

「怪談で定番と言ったらさ、学校の怪談よね。
 さっき、古墳の博物館の話があったでしょ?
 その人から聞いた話なんだけどね……。」


 その日、私は外回りを終え、会社へと自転車をこいでいた。
 辺りが薄青く染まってきた夕方の国道。狭いわりには、上り下りともクルマの往来がひっきりなし。
 それでもまだ、私が自転車に乗っているこっち側は歩道があるからまだマシだった。
 なのに、向こう側ときたら、道の脇に白い線が引いてあるだけ。
 歩道を走っていても、脇をダンプカーが通り過ぎる時は恐怖を覚えるほどなのに、向こう側なんか走ってたらどんな気分だろう。
 道に落ちているゴミを避けるのに、ちょっとでも道路側にはみでようもんなら、たちまちガァーっとダンプの下に引きずり込まれて……
 
 道の向こう側をさーっと走っていくスポーツタイプの自転車に気づいたのは、そんなことを考えていた時だった。
 見れば、自転車に乗っていたのは、半袖半ズボンの体操着を着た小学校高学年くらいの少年。
 買ってもらったばかりなのだろうか。自転車は、この薄暗くなってきた中でもピッカピカに光ってた。
 その少年の乗ったスポーツタイプの自転車は、道の向こう側を軽快に走って行った……
 はずだった。

 その一瞬というのは、何が何だかわからない。
 とにかく、いろんな音がいっぺんにガーッとやってきたのは憶えている。
 通り過ぎていったダンプカーの、ドドドドド!っと路面に叩きつけるようなエンジン音。
 無数の急ブレーキの音。
 クラクションの音。
 それ以外にも判別できない音がグワーン!って、一斉に放出されて──。

 音は全てが一斉だったのに、見えたものは全てがバラバラで、そしてスローモーション。
 少年の頭の上を、コマ送りの映像のように通り過ぎて行くダンプカーの巨大なタイヤ。
 タイヤと道路の間で、少年の頭がスッと消えたかと思ったら…
 ダンプカーが通り過ぎた後、急にプクンって現れた。
 それは、なんだか手品でもしてるかのようで。
 さらに、タイヤに弾き出され、勢いよくゴロンゴロンと。それは、弾むように跳ねるように転がっていく少年の体。
 さっきまでピッカピカだった少年の自転車は、今はグシャグシャの残骸。
 はるか向こうで停まったダンプ。
 開いたドアから、飛び出した運転手。
 目を戻したそこにあったのは、道路の上でひしゃげたような恰好で倒れている少年の姿。
「っ!」
 いきなり、映像や音やが正常に戻って、「大変だ!」と慌てた時だった。

 少年が動いたのだ。
 ムクッって。
 上半身を起き上がらせたかと思うと、ヨロヨロっと立ち上がった。
 ほっ…
 その場にいた誰もが、その目の前の奇跡に安堵のため息を洩らした。
 そう。その時そこにいた人は、立ち上がったその男の子を見て、ほっと胸を撫で下ろしていた。
 なのに、立っている男の子の頭が破裂したみたいに、赤黒いものが溢れだして…
 道にコテンと倒れて、それっきり。

 後で聞いた話では、あのピカピカのスポーツタイプの自転車は、やっぱり買ってもらったばかりだったそうだ。
 来年は中学生だからって、親御さんに。
 少年はその自転車で、自分が来年から通うはずの中学校を見に行く途中だったらしい。

 そんな事故を見てしまった何日か後。
 私は、薄暗くなってからはその道を通るのをやめた。
 いや。昼間だってなるべく通らないようにした。
 あんな危険な道を通っていたら、いつ自分だってあの少年のようにならないとも限らない。
 あの少年は、立ち上がった時、何を考えていたのか?何を見ていたのか?
 いや、あの時はもう意識なんてなかったんだろうと思う。思うのだけれど…。
 それを考えるのを止められないのは、あの時ダンプに巻き込まれ死んだのが自分だったとしたらと考えてしまったから。
 もし、あれが自分だったら、あの瞬間何を見て、何を思ったのだろう?
 そして今は何を見て、何を思っているのだろう……

 そんなことを思ってしまうのは、たぶんあの事故の何日か後の夜、あの場所をフラフラ歩いている1人の少年を見てしまったからだろう。
 数日前のように、その場を自転車で通りかかって。
 道の向こう側の電柱の下の、萎れかけた花束。
 泥埃にまみれた缶ジュース。
 そして、そんな場所で、所在無さげにウロウロしている1人の少年。
 その首は、暗がりに溶けてしまったようにどこにも見あたらない。

 不思議と怖さみたいなものはなかった。
 ただひたすら、やりきれない思いと、絶対拒否の思いがとめどもなく行きつ戻りつするばかり。
 それは、首が見あたらないあの少年の佇まいにどこか似ているようで……


「って、どこか学校の怪談なんだよぉー。
 全然学校じゃないじゃんかー。」
「えぇっ?あぁ…。」
「学校の怪談ってったらさ。やっぱり学校が舞台じゃないと――。」
「アンタってさ。あれ?
 エッチなビデオ見る時は、裸が出てくるとこまで早回ししちゃうってタイプ?」
「は、は、は、はぁ?」
「そういう人って多いらしいじゃない。
 だから、アンタもそんな風に見るタイプなのかなーって思って。」
「見るかよ。そんなもん。
 ったくー。なにを言うかと思えば…。」
「えぇっ?だって、アンタ。こないだ夜中、そこのTVで見てなかったっけ。」
「うぷっ。
 あ、あぁあぁ、あれ?あの時か…。
 そうか。あの時のこと言ってるのか。
 だから…、あの時は違うよ。あれは、普通の映画だって。」
「アハハ。あんな裸ばっかの映画はない。」
「見てたのかよ!」
「だって、アンタ。ヘッドフォンして、もぉ夢中でさ。
 あ、大丈夫。ジャマしちゃワルイから、すぐ部屋に戻ったから…。
 ぶぶっ。アッハッハ。」
「うるせーよ!もぉー。
 ねーちゃんなんか、早くアパート見つけて、とっとと引っ越しちゃえ!」
「それを言うなら、アンタは早くB美さんと結婚しちゃって、
 新居で好きなだけ見たらいいじゃない。
 2人でさ。ケラケラケラ。」
「あー、あー、あー。どーでもいいよ、そんなこと。
 ったく、バカな姉を持つと苦労ブツブツ…。
 そう。だから、次はオレの番だよね。えーと…。」
「あのねっ!」
「な、な、なんだよー。
 いきなり大声出したら驚くだろー。
 ったく、それでなくたって、こっちはドギマギしちゃって――。」
「だから言ってんでしょ。そういう性急な男はダメだって。
 って、え、なによ?ドギマギしちゃってって…。
 だから。知らないわよ。すぐ部屋に戻ったって言ってるでしょ。
 ぶぶっ。あっはっは。」
「だから、その話はもぉいいだろ!
 ねーちゃんは武士の情けってもん、ないのかよ!」
「だから、さっきから続きを話そうとしてるんでしょ。
 なのにアンタが蒸し返すから…。」
「続きぃ~!?
 え、話、終わってないってこと!?はぃ?」
「ったく、アンタは…。
 そのK五クンを笑う前に、自分のソレを直しなさいよ。
 アンタこそ、自分の基準を他の人にあてはめまくりじゃない。」
「あのさ。オレ、K五と一緒にされるのは心外なんだけど。」
「だったら、少しは人の話は大人しく聞きなさいよね。」


 冬の夕暮れ時。いつものように練習が終わった後、部室でダベっていたら、気がついたらもうすっかり暗くなっていた。
 わたしたちは、4人とも2年生で、入部した時から一緒に練習してきた仲のいい友だちだった。

 北風が吹き抜けていく、校舎と校舎の間の通路。
 今日は部室で少しはしゃぎすぎたのかもしれない。どの部の生徒も、もう帰ってしまったみたいだ。
 いつもなら、いろいろな運動部の男子が集まって、ニヤニヤとエロ談議に夢中になっている野球部の部室を横目にしながら帰るのに。
 教室のある校舎には、灯りひとつ見えない。
 それと対照的なのは、職員室のある建物。
 キーンと澄んだ空気の中で、その窓から洩れてくる黄色味がかった光がやたら明るい。
 そのクッキリとした明るさは、外の寒さをより実感させる。
 ふいに変に醒めた風が吹き抜け、落ち葉がいっせいにカラカラと音をたて転がっていった。

「ちょぉーっと。もうっ!なぁーに1人黙ってんのよ!」
 いきなり背中を叩かれ、ビクッと振り返るとO実が笑ってた。
「もーっ!驚かさないでよー。」
「R代はね、あの片思いの彼のことで物思いにふけってたの。ね。
 だからぁ、ジャマしちゃダメよー。」
 そう言って、キャッキャ笑ってるのはS子。
「えっ!R代?アンタ、まだあの彼、あきらめてなかったの?
 だから、無理に決まってるって――。」
 そう言うO実をT子が遮った。
「もぉ、だからぁー。それを言ったらお終いでしょ。」
「コラぁ、オマエらぁ。勝手なことばかり言ってんなぁー!」
「キャハハハー!」

 ふざけながら校内の通路を歩いている、わたしたち4人。
 煌々とした職員室から洩れる明かりは、いつしかはるか後ろ。
 今は、校舎と校舎の間の所々で点っている薄ボンヤリとした外灯だけ。
 その通路は、体育館へと通じる渡り廊下を横切って。さらに体育館を大回りに回るようにして左に折れ、その渡り廊下に沿うように通じていた。

「それでね。O実ったらさ、全然気がつかないのよ。
 だから、ボールがもろお尻にあたってさ。
 ギャー!って。キャーじゃないわよ、ギャーっ!。
 わたし、もぉおっかしくてさ。」
「だからあん時は、ボールじゃなくってさ。
 なんだか、誰かに叩かれたような気がしたんだって。
 だから、もぉいいでしょ。その話はー。」
 練習中、O実が起こした大騒ぎに4人で大笑いしていた時だった。

「あれっ?なに、あの子…。」
 4人のうち、一番外側を歩いていたS子が、体育館の方を指さした。
「えっ、なに?」
 S子が指さす方を見ると。そこは、渡り廊下から4、5段上がったところにある体育館の入り口。
 そのドアに、一人の男の子の姿が。
 小学生…、そう。高学年くらい?上下白の半袖半ズボンで…、そうだ。あれは、確かQ小学校の体操服。
 ということは、あの男の子はQ小学校の子?
 でも、なんでQ小学校の子が…
 何を見ているのだろう?
 体育館の中を覗き込んでいるその後姿。
 開いた左のドアのガラスがはまっている枠に左手をかけて。その手でぶら下がるように体を斜めに。
 よっぽど夢中なのか頭をドアの中に突っ込んで、夢中で見ている。

「あれっ?そうよ。なんでドア開いてるの?わたしたち、閉めたよね?」
 うん。ドアは間違いなく閉めた。
 体育館のドアは、左右のドアが微妙にズレていて鍵がかけにくい。
 だから、さっき鍵をかけるのに、わたしはS子と何度もドアをバタンバタンとやってたので、ハッキリ覚えていた。
「うん。間違いなく閉めたよ。ねぇS子。」
「うん。わたしも覚えてる。間違いなく閉めた。」
「じゃぁなーに?あの男の子が開けちゃったってこと?」

 そんなことを言っている間も、男の子は体育館の中を覗き込んでいるばかり。
 いったい何をそんなに夢中になって見てるのか?
 だって、左側のドアだけが開いている体育館の中は見た感じ、外よりも真っ暗。明かりが点いているようには見えない。
 しかし、あの子。この北風吹きすさぶ中、半袖半ズボンで寒くないのだろうか?
 いくら、小学生くらいの男の子は元気だとはいえ…

「ちょっとヤバイよー。」
 ドアが開けっ放しだったらマズイと最初に気づいたのはT子だった。
「今日、体育館のドア最後に閉めたの、わたしたちなんだもん。
 ドア開いてたら、明日の朝、先生にまたドヤされるよ。
 ちょっとあの子に言ってさ、さっさと帰ってもらってさ。
 それから鍵をかけ直しとかないと…。」
「えぇー。職員室、また戻るのぉー。」
 素っ頓狂な声で不満そうなO実の顔。

 体育館の鍵は、その日最後まで体育館を使っていた部が鍵をかけて職員室に戻しておく決まりだった。
 間違いなく閉めたはずの鍵が、なぜ開いているのかわからない。
 でも、鍵をかけ直すということは、また職員室に鍵を取りに行って。体育館のドアの鍵をかけた後、再度職員室に戻って鍵を返しておくということだった。

「そんなこと言ったってさー。
 じゃぁさ。わたしと誰かで職員室に行って鍵取ってくるからさ。
 残った2人はあの男の子に注意する?」
「えぇぇー。注意するのはさ。4人でやろうよ。ねぇ?」
 そう言いながら3人の顔を見回すO実に、わたしとS子はうなずいた。
 いくら小学生とはいえ、こちらは女だ。それに、体育館の中にあの男の子の仲間がいないとも限らない。
 わたしがそう言うと、強気だったT子も「あ、そうか」とうなずいて。
 結局、わたしたちは、その場所から4人で男の子に声をかけることにした。

「ねぇ!」
「ねぇったら。」
「ねぇ!キミさぁー。」
 声が聞こえないはずはない。でも、その男の子はよっぽど体育館の中に夢中なのか、全然振り返る様子がない。
「なんなんだよ、あのクソガキ…。」
 気が短いT子は早くもカッカしてきたのだろう。ふいに、1人でつかつかつかとそっちに歩きだした。
「キミさ。どこの小学生?こんな時間に何してるの?
 早く帰りなさいよね!」
 そう言いながら歩みを止めなかったから、T子は男の子のいる体育館の入口のすぐ傍まで来ていた。
 体育館の入口は、渡り廊下から4、5段高くなっていた。だから、いくら小学生とはいえ、T子にとっては見上げるほどの高さだった。

「ひ、ひ、ひィっ──」
 何が驚いたって、わたしたち3人は、T子のその悲鳴に驚いた。
 だって、それは普段気が強いT子とも思えない声だったから。
 T子の声の異常さに、「えぇっ!」って、思わず立ち竦んでしまったわたしたち。
 一方、その場でのけぞるようにひっくり返っていたT子。でも、たちまち体を捻ったかと思うと、半分四つん這いでわたしたちの方へ逃げてくる。
「ひィィー。ひィィー。」
 そんなT子を抱えるように迎えつつ。いったい何が起きてるのかと、体育館のドアの所を見つめるわたしたち。
 それは、あの男の子が、左手をドアのガラスの枠にかけたまま体を振り返らせたところ。
 だらーん、って。
 わたしたちの方を向いた、体操着姿の男の子。
 でも、その姿は首から上が夜に滲んじゃったように真っ暗で…
 男の子はこちらに向かって、1歩、2歩、さらにもう1歩。
 ぶらん、ぶらんと上体が左右に揺れてる、変な歩き方。

 その後は、もぉよくわからない。
 ただ、その瞬間、左右から、そしてわたしの体の奥から、つんざくような悲鳴が轟いて。それがずっと聞こえていたのだけは憶えている。
 我に返った時には、わたしは保健室の椅子腰かけ、先生に傷の手当てをしてもらっていた。
 体中がヒリヒリ、ズキズキ痛かった。
 それは、擦り傷やら、痣やら様々。
 耳には、私の悲鳴の残響がまだあった。

 後ろから聞こえていたすすり泣く声に気づいて、ドキッと振り返れば。
 それは、先生に抱きかかえられている背中を震わせているT子の姿。
 さらにその奥、S子とO実はベッドで眠っているのか、ピクリとも動かない。
 わたしの手当てをしてくれている先生のすぐ後ろ。そこに先生が2人立っているのに気がついたのはその時だった。
 でも、先生の姿は、他にも入口のところ、窓際。さらの狭いこの保健室のあちこちにあって。
 しかも、なにやら、ヒソヒソと。まるで、わたしにヒソヒソ声をわざと聞かせるみたいに、ずっと何かを話している……


 
                   ―― 『姉弟掛け合い怪談:その15』〈つづく〉

注!無断転載禁止
  断りなく転載されるのは非常に不愉快です。やめてください
  ブログの記事は全て「著作物」であり、著作権法の対象です
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   ちょっと剣呑で、ゴメン(^^;)
 

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2017
04.22

今週は妖元帥!(笑)


 なんと!
 次の「スターウォーズ」の悪役のデザインを永井豪がすることになったとかで。

 へー、スゴ~いとか言ってたら、なんと永井豪は、「妖元帥」みたいに下半身から怪獣が生えた女(怪獣から女の上半身が生えてる?)にするつもりなんだとか。

 あー、最近のスターウォーズって、悪役がいまひとつパッとしなかったからなー。
 そのくらいインパクトあってもいいのかも…なんて呟きながら。
 ネットで、みんながいろいろ言ってるのを見てるところで、目が覚めたと(笑)


 いやもぉ自分ながらに、ホンっトくっだらねー夢!とか思っちゃったんですけどね。
 ただ、そういえば「妖元帥」って、ミョーに懐かしいよなーって。
 そんなわけで検索して見てみたら、えー!こんなダっサいヤツだったっけぇ~!?って(笑)

 妖元帥といえば、子供の頃は迫力だったのになぁ…
 今見ると、ドロンジョさまとどこが違うんだ?って(爆)
 もー、ほっとんど間違い探しレベル!www

 手下にあの2人を従えて、デビルマン対ドロンボーとか、ちょっと見てみたいかなーなんて思っちゃいましたとさ。
 めでたし、めでたし(笑)


 

 で、まぁこれは夢じゃなくって。
 買い物行って。帰ってきて、ちょっと昼寝して起きたら、いつの間にか雨が降ってて。
 しかも、なんか寒い!

 春はさ、こうしてカゼひくんだよなーって。
 いくらなんでも…とは思ったんですけど、とりあえずファンヒーター点けて温まっちゃいましたとさ(笑)
 いやはや。さすがに5分も点けてたら、もぉ充分!ってwww

 春は昼寝には向かない季節と、つくづく実感!(泣)



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2017
04.22

怪談:17.4.22『姉弟掛け合い怪談-その14』


 その後、オレたちは観光に出かけ、Q旅館には夕方に戻った。
 再び、宿のおじさんとおばさんの愛想のいい笑顔に出迎えられたオレたちは、まずは風呂にのんびり。さらにうまい食事と、ゆっくり楽しんだ。

 宿に戻ってきた時は、やっぱり疲れていたのだろう。オレもみんなも、ちょっととろーんとしていた。でも、風呂入って夕飯食べてゆっくりしたら、いつもの調子に戻った。
 そんなわけで、食事の後は、彼女たち2人もオレたちの部屋に来て、4人でずっとおしゃべりをしていた。
 そんな楽しい時間が終わったのは、0時をとうに過ぎた頃だった。
 2人の女の子の声が聞こえなくなった部屋はガラーンとしちゃって。やけにうら寂しかった。


「あぁーあ…。
 オレたちも寝るか?」
 さすがに眠くなっていた。
 誘うように歯磨きとトイレに行ったオレとN原。でも、部屋に戻ってきて、初めて部屋のそのひどいニオイに気がついた。
 窓をずっと締め切っていたからだろう。煙草の匂い、ビールの匂い、つまみの匂い。その他なんだかわからないが、とにかく部屋は匂いで充満していた。
「こんなとこで寝たら、髪の毛とかに匂い付いちまうぜ。」
「いや、もぉそれ以前。オレ、なんか気持ち悪くなってきた。」
 ただ、5月とはいえ、この夜中に窓を開けたらさすがに寒そうな気がして。とりあえず、部屋の出入口の引き戸を開けておくことにした。

 前にも話したように、この部屋は廊下の突き当りにあった。
 出入口の引き戸を開けてしまうと、部屋の中が丸見えなのだが、まぁこんな時間だ。他のお客は寝ちまったろうって。
 それに、どうせオレたち男2人しかいない部屋。別に誰に見られたところで、どうってこともないって思ったのだ。
 今になって思えば、それは間違いだったのだろう。

 歯を磨きに行く前はとにかく眠かったのだが、部屋に戻ってきたら眠気が覚めてしまったみたいで。
 それに、戸を開けっ放しで寝てしまうわけにもいかない。
 そんなわけで、オレたちは布団をひくのに出入口の前に寄せたテーブルの両脇になんとなーく座っていて。
 そんな風に、なんとなーく座ってしまえば、あとはなんとなーく煙草に火を点けて。
 結局、なんとなーく、またおしゃべりをしていた。

 廊下から入ってくるひんやりした空気で、背中が妙に気持ちよかった。
 一方、オレと向かい合わせに座っていたN原。オレと話しながらも、ぼーっとドアの外に視線を向けている。
「どうしたぁ?」
「うん…。なんだか目が回るみたいっていうかさ。
 しっかしすごい廊下だよな。オレやオマエの家じゃ考えらんない。」
「あぁーぁ…。」
 オレはそう言って振り向くと。
 その途端、ストーンと真っ直ぐ目に飛び込んできた、廊下のあの光景。
 それは、中心に向って収縮していく床と天井の4隅の線。
 さらに、鴨居や転々と連なる各部屋の戸や柱……
 昼でも外の光がほとんど入らないその廊下は、夜になっても雰囲気はあまり変わらない。
 それでも、夜になって…、そう、薄暗くなった…、と言ったらいいのか?
 ただ、明かりが点いた分、昼間よりは明るいような気もするのだが…。
 そう。天井に点々と並ぶ赤っぽい明かりに照らされ、飴色めいた黒が濃さを増したのだろう。
 あと、影になる部分が仄暗くなった分、柱や梁を浮き立たせていたというのもあるのかもしれない。
「なんだろ?昼間より目が回る気がする。」
「しっかし、スゴイよな。そのうち重要文化財とかになったりして。」
「まぁよ。そん時はみんなに自慢しようぜ。
 ヘっヘー、重要文化財に泊まっちまったんだぜーってさ。」
 それにしても、ついさっきはあんなに眠かったのに。今は眠くなるどころか、ますます目が冴えていた。


 それにしてもこの旅館の中も、そして外も、ホっント何の音も聞こえない。
 ここは山の中だから、夜になって風の音でもしそうなものだが、それすらなかった。
 まるでこの旅館全部のシーンという音が、この部屋に集まってきたようで。その静けさが逆に耳に纏わりついてきて、気がつけばオレもN原も言葉が止っていた。
 2人とも、ただただ煙草をふかして…
 そんな時だった。

「あれっ!?」
「うっ。
 な、なんだよ。いきなり…。」
 この深閑とした空気の中だ。いきなり聞こえた声に、目をパチクリさせながらその顔を見ると。
「うん。いや、今さ…。」
「…?」
「うん。今、誰か通った…。」
「はぃぃぃ?
 誰かぁ~って、誰っ!?」
 N原の目が、オレのずっと後ろで止っているのを見て。つられて振り返ると、ストーンと伸びた廊下が。
 その手前から、一気に奥の突き当たり進んでいくオレの視線。
 しっかしまぁ。なんでこんなに静かなんだろう…
 天井の明かりが点々点々…と小さくなってく分、昼見た時よりもさらに奥深くなったような。
 その奥の奥。突き当たりの天井には例の非常口の緑色のランプがあるのだが、そのやけに現代的な色が、逆にこの廊下では幻想的に見える。

「お、おい。どうしちゃったんだよ?」
 廊下を奥からこちら、そして部屋へとやっと戻ってきたオレの目。
 なのに、まだ廊下のどこかで止まったままのN原の目。
「ほら、あそこ…。
 突き当たりのとこに、非常口の緑色のランプがぶら下がってんだろ。
 今さ、あの前を誰か通ったんだよ…。」
「えぇぇ?」
 思わず、また振り返ってみても、そこにまっすぐなあの廊下だけで。
「誰かが通ったみたいにさ、あの緑色のランプが一瞬翳ったんだよ。
 右から左にさ…。」
 そうは言っても、廊下はほの暗く静まり返っているばかり。人の気配なんて微塵もない。
「あぁ、中の蛍光灯が切れかかってんじゃねーの?
 だってさ、あそこはこっちの廊下から行っても、
 向こうの廊下から行っても突き当たりなんだぜ。
 そこを右から左に通り過ぎるなんて出来るわけないだろ。
 中の蛍光灯が一瞬切れてさ、そう見えたんだって…。」
 ここは旅館。こんな時間でも客がトイレに行くことはあるだろう。
 でも、あの場所は突き当たり。もし、人が前を通ることでランプが右から左に翳ったんだとしたら、N原はこの真っ直の廊下のどこかで人の姿を見ているはずだった。

「うぅーん、そうだよなぁ…。
 右から左に行ったら、壁にぶつかるしかないもんな。
 でも、ヘンだなぁー。
 確かに誰か通ったように見えたんだよなー。」
 まだ、しきりと首を傾げてるN原。だから、オレはそんなN原の疑問を吹っ切るように言った。
「そんなことよりよ。オレ、完全に眠気が覚めちまったよー。
 そうだ。ビールって、もう残ってなかったっけ?」 
 テーブルの上に並んでいるビールの缶を探り始めると、幸いまだ空けてない缶が1本残っていた。
「へへヘ。あったぜ、ラッキー。」
 オレは、ビールの缶を顔の横で振って。N原におどけてみせてからプルタブに指をかけた。
 プシュっ。
 それは、なんだか久しぶりに聞いた現実の音のようで…。
 それはN原も同じだったのだろう。
「今のプシュって音…。
 なんだかさ。オレ、それ聞いた瞬間、妙にホッとした。ハハハ…。」
 その疲れたような苦笑い。
 そんなN原はさらに何か言おうとしたのか。口を開きかけ…、でもその瞬間、いきなり表情が豹変した。
「えっ!えっ?えぇーっ!?」
 いきなり変わったN原の顔と切迫した声。驚いたオレは、危うくビールに咽るところだった。が、それがまたN原が非常口の蛍光灯が切れて瞬いたのを、人が通ったと勘違いしたんだと気づいた。

「だっからさー。あの非常口のランプ。
 きっと蛍光灯が古くて切れかかってるんだって。
 ほら、この旅館古いだろ?
 だからさ、あの非常口のランプも、
 江戸時代からずっと使ってるんだって。ハハハっ。」
 オレはそんなバカを言ったものの。それでもN原の表情が表情だけに、無意識に廊下を振り返っていた。
 でも、そこは、やっぱりあの廊下が黒く伸びているだけで…。

「だってさ、オマエ。あの非常口のランプの前を横切るってさ。
 アレは、天井のすぐ下にぶら下がってるんだぜ。
 そんなデカイ奴いるかよ?」
「あ…。
 そっか。そう言われてみればそうだよな…。」
 やっと腑に落ちたって顔になったN原。
「あの前を通ってアレが翳るくらいデカイ奴って…。
 うん。まぁいねぇこともねぇだろうけど…、まぁジャイアント馬場とかぁ?ハハハっ。
 でも、普通いねぇよな。」
「確かにそうだよな。ハハハ。」
「そうだよ、オマエ!ジャイアント馬場が泊まってたら、
 宿のあのおじさん、絶対教えてくれはずだって。そうだろ?」
「だーから。ジャイアント馬場が泊まってるわけねーだろ。
 ハハハ。でも、変だなぁ…。
 さっきはさ、右から左に翳ったように見えてさ。
 今度は、左から右に翳ったように見えたんだよ。」
「だーから、もーいいじゃん。
 そんなことよりよぉ、オレ、今さら気がついたんだけどさ。
 明日って、どうすんだ?
 さっきは、4人でバカやってて、あんまり楽しかったもんだから、
 スッパリ忘れちまってたけどさ…。」
 今日のオレたちは、ホントに行き当たりばったりでここまで来ちゃって。そのくせ、意外なくらいうまくいったのだが…。
 いや。もちろん明日もそれでいいというならそれまでなのだが。でも、何か適当な案があれば、出足で無駄な時間を使わなくてすむ。

「あっ…。
 そうか。そういえばそうだよな…。
 なんだよM岡ぁ。オマエ、今日は何だかやけに冴えてんじゃん。」
「夜中に人のことおだてて、小バカにしてんじゃないのっ。」
「そういえばさ。下にロープウェイのポスターが貼ってあったぜ。
 あれ、すっげーいい景色だったし。しかも、ここの近くみたいだったけど…。」
「ロープウェイ?あ、いいじゃん、それ!
 あとさ、せっかく旅行に来たんだしよ。明日は温泉に泊まんねぇ?なぁー。」
「うん、うん。温泉!温泉!それ、絶対いい。
 M岡ぁ。ますます冴えてんじゃん、オマエ。ハハッ…。
 そう。確か貰ってきたパンフレットに載ってたはずだけど…。」
 そう言って、バッグをゴソゴソ探り始めたN原。パンフレットを引っ張り出すと、テーブルの上に広げようとして……、その手がふっと止まった。
 見れば、また廊下の方を見ているN原。
 やっぱり、つられてオレも廊下を振り返った。
 でも、それはチラッと目を走らせただけ。すぐにN原の顔に視線を戻して言った。
 そう。その時のオレは、ちょっとイラついた声で言ったと思う。
「なんだよ。またかよー。
 だから、蛍光灯が切れ──」
「ハハハ。わりぃわりぃ。目ぇ、疲れてんのかなぁ…。
 でも今日ってさ、ほとんどオマエが運転してたよなぁ…。
 うん。でさー。
 あっほら、載ってんじゃん。ロープウェイ。な、景色いいだろ?
 ふーん…。上がったとこにホテルがあるんだな。」
「ロープウェイで、上がったとこにホテル?
 あ、それって、こないだテレビやってなかったか?
 うん。あれ、すっげー景色よかった。
 おい!行こうぜ、行こうぜ。明日、絶対!」
 でも、それは夢だった。


「うん。あれ、すっげー景色よかった。
 おい!行こ──。」
「ヤバイっ!」
「え…。」
 いきなりのN原のうわずった声に、その顔を見直したオレ。
「こっちに来るっ!」
 その顔が悲鳴のような声を発して。
 え!と思った時には、もぉ飛び上がるように立ち上がっていたN原。
 でも、オレは何が何だかわからなくて、ただただポカーン。
「え?え?え?な、何?」
 その間、オレの目は、ずっとN原の目に吸いつけられていた。
 でも、尋常でなく見開かれた目の玉が、オレのことなんかまったく見てないことに気がついて。
 やっと、それが後ろらしいと振り返ったオレは、開けっ放しの戸の先にある廊下へと視線を走らしていく。
 後ろで、N原が「早く戸ぉ閉めろ!」と叫んでいたのは聞こえていた。
 が、オレの目は、またもやあのズーンと伸びた廊下に吸いつけられてしまったのだ。
 だって、そこは、ついいましがた見た廊下とは何かが違っているから…
 え…
 廊下のずっと向こう。非常口のランプの下に誰かが立っていて…
 するするする…
 するするする…
 少しずつ、少しずつ。
 廊下の右の端を。かと思えば、今度は左の端を。
 そう。それは、こっちに向かってくる。
 それは、まるでこちらに来るほど広がっていく廊下の線に合わせるように。こちらに近づいてくるにしたがって、徐々に大きく姿を成してきて……

 なんだ、あれぇ!?
 あ、そうか。宿の余興ってこと?
 その瞬間、こんな真夜中に宿の余興なんてあるわけないことに気がついたオレの頭。
 でも、こちらに歩いてくるアレが宿の余興じゃないっていうんなら…
 じゃぁいったい何だっていうんだよ!
 だって、アレは頭には兜、その下は鎧で身を固めて。
 右手には刀身が3本、放射状に突き出した刀。
 それを持った右手を、頭の高さで振りかざして。
 するするする…
 するするする…
 こっちに向かって歩いてくる!

 オレは、その時悲鳴をあげたのか、叫んだのか。そんなことは全く憶えていない。
 憶えているのは、そんなオレの視界にいきなりN原が飛び込んできて。
 開けっ放しだった戸を飛びつくようにして閉め、さらに鍵をかけたこと。
 そのN原の手はオレの手をつかむと。オレは、そのまま引きずられるように部屋の隅へ。
 辺りがいきなり暗くなったと思ったら、その直前にパツン、パツンと、N原が蛍光灯を消していたのを思い出した。
 そう。気がついた時には、オレはN原と2人、布団を被って震えていたのだ。
 たぶん、真っ暗になった部屋の隅で……


 カチカチカチカチカチ…
 ふっと、自分の歯がずっと鳴っていたことに気がつけば…
 それ以外は何の音もない、真っ暗な空間。
 そんな中で、布団を被って震えているオレとN原。
 二人とも、そうやって抱き合って感じられるお互いの体の感触だけが頼りだった。
「な、な、な、な、何、何なん──。」
「しーっ!」
 耳元で聞こえたN原のそれもやっぱり震えていた。
「へ、へ、部屋には、は、入ってきてないはずだ。鍵閉めたから…。
 で、で、でも。も、もう少し様子みよう…。」
 N原のそんなヒソヒソ声を、かぶった布団の中で聞いた直後だった。
「っ!」
 もちろんその瞬間っていうのは、何がなんだかわからない。
 いきなり、かぶっていた布団が暴力的な力で引き剥がされたのだ。
 何が起きたのかと周りを見回しても、そこは全部真っ暗闇。感じれるのはN原の触感だけ。
 そのほんのわずかな間の後だった。
「うわぁーっ!や、やめてくれぇぇーっ!」
 いきなり耳元で上がったN原の絶叫に、たぶんオレも悲鳴をあげたんだと思う。
 と、同時に、ガツンと衝撃があって。それを感じたと思った時には、今の今まで抱き合っていたN原の体の触感がパッと消えた。
 N原の体の感触が一瞬で消えたというのに、そこは何の音もなく。ただただ、真っ黒で…。
「はぁー、はぁー、はぁー。」
 ドク、ドク、ドク…
 もはや、自分の心臓の音以外、何にも感じることが出来ない…

 廊下にいたアレへの恐怖はあったが、その瞬間はN原はどうなっちゃたんだ?って思いの方が強かった。
「お、おい…。
 お、N原。N原ったら…。おい!。」
 それは、まるで真っ暗闇が顔にべたーっと張り付いて取れなくなっちゃったようだった。
 今の今まで抱き合っていたN原の体を探そうと、夢中で両手を振り回しているオレ。
 だけど、その右手も左手も、何にも触れることはなく。
 それどころか、目の前で振り回しているはずのオレの両手すら見えない。発狂しそうな怖さに耐えられなくて、やみくもに声をあげた時だった。
「わぁぁーっ!わぁぁーっ!わ──。
 っ!うぐぐ…。」
 真っ暗な中からいきなりやってきた驚きに、断ち切られたオレの絶叫。
 でも、その直後。信じたくない触感を感じたオレは、前にも増して大きく叫んでいた。
「うぅぅわぁぁーっ!」
 それは、オレの後ろ…、頭の後ろ。
 髪の毛を、次々と毟るように引っ張っているソレの触感。
 カタカタカタカタ…。
 カタカタカタカタ…。
 たぶん、それは2つ!?
 
 カタカタカタカタ…。
 決してそんな音を聞いていたわけではない。それは音でなく、頭を這いまわる触感だった。 
 その硬質な感触と、変に不器用に感じる動きの気持ち悪さ。
 ソレはオレの後ろから、オレの髪の毛を、カタカタ、カタカタと。
 頭の上かと思えば、今度は耳の後ろ。かと思えば、後ろから顔の方にも伸びてきて。
 今度は、右耳の上の髪の毛を掻き毟り、同時に額の左側からも。
 カタカタ、カタカタと、間断なくオレの頭を掻き毟ってきて…
「うぅわぁーっ!!や、やめろぉーっ!」
 その時、オレはそれを払いのけようと、両手をむやみやたらと振り回しただけだった。
 なのにその時。こともあろうに、オレの右手はソレの一つをつかんでしまったのだ。
 ぎゅっと。
 でも、それは…
 …っ!?
 骨…
 骨だった。
 この、不気味な細さ。そして、ひんやりした硬さ。
 今、オレの右手がつかんでいるモノ。それは骨だった。
 ほ、骨の手首っ!
「うぐっ!」
 な、な、なんなんだよっ、これはっ!
 オレは慌てて、それを放るように離す。
 いや、もちろん。人の手首の骨をつかんだことなどあるわけない。
 でも、それをつかんだ瞬間、オレは右手に伝わってきたその触感でそれが骨の手首だとわかった。
 その信じがたい細さときたら…
 
 つかんだそれが右腕だったのか、左腕だったのかは知らない。
 でも、オレがそれをつかんだ時も、もう片っ方の手はオレの髪の毛を掻き毟るのをやめなかった。
 カタカタ、カタカタ…。
 オレの頭をやたら掻き毟っていた。 
 その意味不明な恐ろしさ…
 もはや、骨をつかむのが気持ち悪いなんて言ってられなかった。
「うぅぅわぁぁーっ!!」
 気がつけば、オレは叫びながら両手を振り回して、必死にその2本の腕を近づけまいとしたのだが…。
 でも、今度は逆。オレの右腕は、その骨の手首の先にあるモノに、ガッチリと握られてしまったのだ。
 オレの右腕に絡みついてくる、その冷たく硬い指の骨。
 それは、あの骨の腕よりさらに不気味に細く。そして、ぎりぎりとオレの腕を締め上げてくる。
 その絶望的な怖さに、オレは暗闇すら見えなくなって…
 ガッツーン!
 そう、あの時。全身にそんな衝撃を感じたことだけは憶えている。
 でも、何があったのか?
 たぶん、アレはオレの手首をつかんだ状態のまま、オレを下に思いっきり叩きつけたんじゃないかと思うのだが……

 気がついた時には、部屋の中はすでに明るくなっていた。
 はっと、上体を起こしたそこには、座って煙草を吸っているN原の姿があった。
 


                   ―― 『姉弟掛け合い怪談:その14』〈つづく〉

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2017
04.16

知らない言葉が出てくる夢


 コーヒーを飲みたくて、地階にある喫茶店の階段を降りてドアを開けると、あいにく混んでいる。

 男性の店員に1人だと言うと、「なら(L字型になってる)カウンターに沿って奥に入って、“みそう”になる席が空いてる」と。

 思わず、「みそう?」と聞き返すと、後ろからまた客が来てたみたいで。
 「とりあえず入って」と急かされるように案内されて座ったのがL字型のカウンターの一番奥の席。

 お冷を持ってきた先ほどの店員に「みそうって何?」と聞くと。
 「その席から真っ直ぐ前にある収納庫が見えるでしょう?その位置で座ってくださいという意味です」とのこと。

 「どんな字を書くの?」と聞くと、収納庫を見るで「見倉」だと。
 そんな言葉があるのか?と、ケータイで見ようとしたところで目が覚めたわけだけど……


 いくらデタラメな言葉とはいえ、夢の中で全然知らない言葉が出てくるなんて、そんなことがあるもんなんだって。
 そりゃ夢というのは何でもアリだから、オバケだの怪獣だのが出るのが全然OKなわけだけど、でもそれはそういうものをTVだったり小説だったりで知ってるからそれらを見るんだと思うんです。
 「見倉」なんて、そんな今までに全く接したことのない言葉(ただしデタラメ)が出てくるっていうのは、ちょっと不思議な気がします。

 もちろん、昔どっかで聞いていて、憶えてないだけっていうこともあるんでしょうけどね。
 でも、それならそれで「見倉」って言葉が本当にあることになるわけで、それはそれでビックリです(笑)


 

 しっかし、今週末はやたらめったら暖かかった(現在形なので暖かい?)ですね。
 買い物に行っても、歩いてる人がやたら多かったです。
 公園なんて、つい2か月前くらいまで野良白鳥がうろついてるくらいだったのに、今日はもぉウジャウジャ、ウジャウジャ(笑)
 今日は野良白鳥の代わりに野良子供がいっぱいウロウロしてたっけwww

 あと、バイクって、普段こんなに走ってたっけ?って。
 でもまぁこれで暑くなったら、全員家の中なんだろうなぁ…(爆)

春の赤IMG_3269

春の緑IMG_3279

春の黄IMG_3269

 ま、あと1ヶ月もしたら、「そろそろ梅雨だなぁ…」なんて言ってるわけでー(笑)
 


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2017
04.16

怪談:17.4.16『姉弟掛け合い怪談-その13』


「古墳時代の人のユーレイかぁ…。
 イメージがさ、イマイチ湧いてこねぇんだよなぁ…。」
「えー、たまにはいいんじゃない。
 だって、ユーレイっていうとさ。
 まずは、髪の長い白いワンピースの女。次に、おかっぱ頭の少女。
 あとは、鎧着たざんばら髪の落ち武者って決まってるんだもん。
 日本のユーレイにおける三大コスプレに挑戦してるって意味で、
 かなり斬新な怪談だと思うんだけどなー。
 ぶぶっ。アッハッハ。」
「あのね。怪談はね。斬新とか、別になくていいの!
 お決まりのシチューエーションで、お決まりのヤツが出てくれば、
 それでみんな、全然OKなの!」
「あぁー、それはマニアの意見よ。
 そういうのはダメよ。わたしはキライ。」
「なにがダメなんだよー。
 娯楽なんだもん。楽しければそれでいいんだよ。
 そりゃーね。変わった珍しい話が聞きたいって、みんな言うよ。
 でもね。その“変わってて珍しい”は、
 いつもの話からは逸脱しない程度の“変わってて珍しい”でしかないんだよ。」
「なによそれ。ワケわかんない。」
「それの中の、それをさらに狭めた特定のパターンにこだわるからこそマニアなんじゃん。
 それは、別に怪談だけじゃないよ。
 マニアというのは、どんなもののマニアでもそんなもんだって。」
「あぁ…。
 そう言われてみれば、そんなもんかもねぇー。」
「へっへっへ。」
「なによ、そのエラっそうな笑い。
 ていうかさ。そのマニアたるアンタは、じゃぁどんな話がいいって言うのよ?
 マニアのマニアによるマニアのための怪談っていうの、話してみなさいよ。」
「え、いいの?ホントに?ヘヘーっ。
 じゃぁさ。これは大学ん時の友だちのK五から聞いた話。
 大学の3年の6月くらいのことだったらしいんだけどさ。
 そのK五の中学ん時からの友だちのM岡って人が、
 その頃、変に元気がないことに気がついたんだって。
 というのも、なんだか付き合いが妙に悪いんだとかでさ。
 でね。まーさ、K五っていうのは、よくも悪くも自己中心的っていうか、
 自分の基準を他の人にもあてはめちゃうとこがあってね。
 つまり、K五にとっては、元気ない=女にフラれた、なわけ。
 だから、まー、K五からすれば純粋に親切なんだけどね。ハハハ。
 そのM岡クンを合コンに誘ったわけよ。
 ところが、そのM岡クンが断っちゃったもんだから――。」
「あー、怒りだしちゃったんだ。」
「そう、それ。」
「いるよねー、そういう人。ふふふ。」
「ま、本人はそうは言わなかったけどさ。
 でも、たぶんそのM岡クンってさ。
 K五から、せっかくオレがお膳立てした合コンを断ったことで、
 オレはオマエにこんなにも傷つけられたんだってさ。
 ネチネチと延々文句を言われたんだと思うんだ。
 いやさ、K五ってそういうヤツなのよ。アハハ。
 まー、わるいヤツじゃないんだけどねー。
 だからさ、そのM岡クン。
 K五を宥めるのに、この話、仕方なくしたんじゃないかって……。」
 

 あの日、オレたち4人が古い町並みで有名なQ町に行ったのは、ホントたまたまだった。
 Q町って、もちろん名前くらいは聞いたことはあった。その古い町並みをテレビか何かで見たことだってあったかもしれない。
 ただ、そこに行きたいと特に思ったことはなかった。
 それは、一緒に旅行に行った3人も同じだったと思う。
 
 その旅行の日。
 オレとN原、さらにそれぞれの彼女という4人が乗ったクルマは、高速道路をずっと走っていた。
 というのは、どこに行くかまだ決まってなかったからだ。
 旅行に行くのに目的地が決まってないって、そんなことあるのかと思うかもしれないがその時は本当にそうだった。
 そう。そういえば、そんな当日になっても目的地が決まってない旅行にオレたち4人が行くことになったのも、ホントたまたまだった。

 その何週間か前、4人で居酒屋で飲んでいた時だった。
 「旅行に行きたい」と最初に言ったのって、誰だったのだろう?全く思い出せない。
 その「旅行に行きたい」って話は、いつの間にか「いつ行きたい?」って話になって。
 やっぱり、誰だったか憶えてない誰かが「今度のゴールデンウィーク、空いてるけど」と言うと、たまたま全員空いていた。
 急にテンションが上がったオレたちは、その瞬間ゴールデンウィークにクルマで旅行に行くことが決まっていた。
 そのくせ、具体的にどこに行こうという話にはならなかった。

 でも、まさか行くその日クルマに4人が乗り込んだ時点でも、行き先が決まってないとは思ってもみなかった。
 当日の朝、4人が集まったら、オレもみんなもとにかく楽しくって。いつものごとくしゃべったり笑ったりしていたのだが、クルマに乗り込んで、やっとそのことに気がついたのだ。
 「あれ?今日って、どこに行くんだっけ!?」って。
 あの時っていうのはオレたち4人、思わずきょとんと顔を見合わせて。
 でも、その一瞬後、オレたち4人はクルマの中で、それこそ腹を抱えるようにして笑っていた。
 そんな、5月の朝だというのに夏のような色鮮やかな日の光が差し込んでいたクルマの中。
 オレたちは、旅行に行くっていうのにクルマを1センチも動かすことなく、ただただ笑い転げていた。
 そう。あの旅行は、そんな風にメチャクチャ楽しく始まったのだ。

 そんな楽しく始まったオレたち4人の旅行だったが、クルマをどこへ走らせたらいいのかさえ決まってないというのはさすがに困った。
 でも、それはN原が変な、しかし面白い案を出したことで、たちまち解決した。
 つまり、オレたち4人に、それぞれ東北道、関越道、中央道、東名と割り当てて。ジャンケンして勝った高速をとりあえず走って、その後も途中途中でジャンケンして決めるという…。
 そんなわけで、ある高速をずっと走ったオレたちだったが、サービスエリアでたまたま目に留まったパンフレットが、古い町並みで有名なQ町だったというわけだ。


 オレたちがQ町に着いたのは、お昼過ぎだった。
 まずは食事をしようってことになって。郷土料理の店でソバをすすっていたのだが、その混雑ぶりにやっと気がついたのだろう。N原が今夜泊まる所と確保しないとヤバイと言い出した。
 何気に店員のおばちゃんに聞いたら、近くに宿泊案内所があるということで、とりあえずは落ち着いて食事を終えた。
 ところが、店を出ると観光客はさっきより増えていて。
 さすがに慌てたオレたちは、もう半ば走るように宿泊案内所に向かった。
 でも、そこはお客なんて一人もいなくって。ちょっと拍子抜けした。
 というか、普通、旅行というのはあらかじめ宿泊先を決めてから来るものなんだろう。
 そんなわけで、「泊まる所を紹介してほしいんですけど」って、オレたちが入っていくと、よっぽど暇だったのだろう。ずっと小さなテレビを見ていたらしいお爺さんが慌てて応対してくれた。

「えっ!今日かい?うーん。どうだろう?今日だよねぇ…。
 それで部屋は1部屋?2部屋?
 あー、まー、アベックさん2組だもん、そりゃ2部屋だよねぇ…。」
 宿泊案内所のお爺さんはそう言いながら、何やらノートの上からずーっと指をなぞっている。
「いえ。ないならまぁ1部屋でもしょうがないんですけどー。
 でもまぁなるべく2部屋あると助かるっていうかー。
 ないと、ちょっとヤバイっていうかー。」
 ちなみに、オレたちは──少なくとも今日は──オレとN原で一部屋、彼女たちで一部屋という組み合わせで泊まるつもりでいた。
 つまり、オレもN原も彼女とはまだそんな関係ではなかったということだ。

「あっ!お兄さんたち…。」
 ノートを眺めていたお爺さんが、嬉しそうに顔を上げた。
「あ、ありました?」
「お兄さんたち、運がいいよー。
 Q旅館で、今日キャンセル出てるねー。うん。2部屋。」
「えっ、ホントですか。やった!
 おい、大丈夫、あるってよ。うん、2部屋!」
「やったーっ、ラッキー!お爺さん、さすがっ!」
 N原とオレが振り返りながらそう言うと、彼女たち2人もやっぱり手を取り合って大喜び。調子よく、宿泊案内所のお爺さんをおだてたりしてていた。

「あれ?そういえば、お兄さんたちって何で来てるの?クルマ?」
「はい。クルマですけど…。」
「うん。ならいいや。
 いやね、このQ旅館っていう旅館、ここからちょっと離れてるんだよ。
 つったってね、クルマなら5分くらいのとこなんだけどね。
 まぁクルマだってことだし…、いいよね?」 
「ええ、全然。」
「うん。じゃあさ、ちょっと待ってよねぇー。
 電話しちゃうからさー。」
 宿泊案内所のお爺さんは、まだ相手が出ない電話の受話器を耳につけたまま、顔をこっちに向けた。
「Q旅館って、ちょっと離れてんだけどね。
 でもこの辺より静かだから、かえってゆっくり出来ていいと思──。
 あ、出た。ちょっと待ってねー。」
 そう言って、今度は旅館の人となにやら話しだした。

「あれ?そういえば宿泊料金っていくらなんだっけ?」
 と、オレがN原の顔を見ると。
「うん。だから…。そういうのも含めて、
 今、お爺さんが確認してくれてんじゃねーのか?」
「あ、そういうことか…。」
 ちょうどそのタイミングだった。
「お兄さんたちさ。
 飛び込みだからおまけして、一人、一泊朝夕付きで5500円だって言ってるけど…。
 どうだい?」
 それから3分も経たなかったろう。
 オレたちは、そのQ旅館に向かってクルマを走らせていた。

 オレは旅行とかあまりする方じゃなかっから、旅館の相場なんてよくわからない。
 ただ、5500円って聞いた時は、いくらなんでも高いとは思わなかったけれど、でも特に安いとも思わなかった。
 でも、その当時5500円という宿泊料金は「まぁそんなもんだろ」っていう感じだったように思う。
 現にその時、オレ以外の3人もその料金について、特に何も言わなかった。


 宿泊案内所のお爺さんが「静かなところ」と言っていた、そのQ旅館だったが、実際、クルマを走らせると、辺りはあっという間に山々に囲まれていた。
 ただ、そこに着いて。そのQ旅館を見た時は、思わず言葉が止ってしまったのを憶えている。
 というのも、「泊まる所」というとリゾートホテルとかペンションみたいなのを想像していたオレからすると、それは時代劇のあの旅籠に近かったのだ。
 それが木造2階建で、やけにこじんまり見えるのもその印象を強くしていたのだろう。
 もっとも、オレを除く3人、特に女性2人なんかは、「なんだかいいムード」とはしゃいでもいたんだけれど。
 
 ところが…
 本当に驚いたのは、そのQ旅館の玄関の格子戸を開けた時だった。
 戸を開けた瞬間向こうにあった、その黒ずんだ色合いの深さときたら…
 そして、その飴色がかった黒の柱や天井をはしる梁の太さ…
 それは自分の家のペラペラな柱や梁をそれと思っていたオレたち4人からすれば、なんだか圧倒されるような迫力で。
「うぅっわぁぁーっ!すっごーい!」
「なんか素敵…。」
 いや。女性2人からは、やっぱり感嘆の声があがっていたのだが…。

 そんな声が聞こえたのだろう。
 大きな暖簾をひらりと翻ったかと思ったら、50代くらいのおじさんとおばさんが微笑みながら出てきた。
「あぁお待ちしてました。
 今、案内所から電話あった方ですよね?
 どうぞ、どうぞ。まずお上がりください。」
 2人とも、とにかくニコニコ笑顔で愛想がいい。
 そんな愛想のよさと、宿泊案内所の話がちゃんと通っているらしいことに、すっかり安心したオレたち4人。おじさんおばさんと世間話をしたり、圧倒されそうな室内を見回したり見上げたり。

 格子戸を開けた時も驚いたが、中に入ってさらに驚いたのは、この旅館、実はかなり奥があったことだった。
 ウナギの寝床というのか?表のこじんまりした様子とは裏腹に、階段の手前向こうに真っ直ぐな廊下がかなり奥まで伸びていて。そこは、元々あまり陽の光が入らないのか、それともこの壁や柱の黒の色が光を吸収してしまうのか、奥まで見通せない。

「お部屋、もう入れますんで、まずご案内しましょう。
 ただ、申し訳ないんですけど、
 キャンセルのお部屋なんで、二つは離れちゃっているんですよ。
 それは、大丈夫ですかねぇ?」
 その宿のおじさんの言葉を聞いて、N原が振り返った。
「うん。別にいいだろ?」
「うん。ま、いいよな?」
「申し訳ないですねぇー。
 じゃぁお部屋、ご案内しましょう。」
 宿のおじさんはそう言うと、相変らずのニコニコ顔で振り返り、振り返り、階段を上がりだした。
 つられるように階段を上るオレたち。
 何気に振り返ると、階段の下では宿のおばさんがやっぱりニコニコと笑って見送っていた。


 階段を上がったそこには、やっぱり下と同じく長い廊下があった。
 それは、1階と同じような静々とした暗さが、ずぅーっと奥まで続いていて。奥までは視線が届かないような、そんな感覚があった。
「うわっ!すっごい奥…。」
 思わず出てしまったのだろう。ちょっと遅れて上がってきたN原の彼女がつぶやくと。
 その声が聞こえたのだろう。また宿のおじさんが例のニコニコ顔で振り返って言った。
「みなさん、そうおっしゃるんですけどー。
 いえね。実際は、それほど長くもないんですよ。
 とにかく真っ直ぐなせいなんですかねぇ?
 こう、ずーっと線が延びている感じが、みなさんそんな風に思われるじゃないかって、
 ウチの者たちは言ってるんですけどね…。」
「あー、そう…。
 なんだかさ、2階に上がった瞬間、
 まるで遠近法の見本でも見せられてるみたいだって思ったんだよなぁ…。」
 そのN原の言葉に、宿のおじさんはまた振り返って笑顔で答えている。

 遠近法の見本…。
 まさにそんな感じだった。
 廊下の両端の線。天井の両端の線。そして梁の線。
 等間隔で並んでいる部屋の戸が、奥に行くにしたがってそれらの線に従うように小さくなっていって…
 あと、柱や廊下の色がとにかく黒くて濃くて。さらに壁も濃い沈んだ色であるせいもあるのかもしれない。
 天井と廊下の四隅の線と、鴨居の線。さらに所々にある部屋の戸の線をずぅーっと目で追っていくと、何だか廊下の奥に吸い込まれてしまいそうな…。
 そんな錯覚を覚えるほどだった。

 そんなことを、やっぱりみんなも思っていたのか?
 それとも、さっきまでの5月の太陽がウソのようにヒンヤリと暗い、この廊下の雰囲気に呑まれてしまったのか。
 つい今まではしゃぎまわっていたのがウソのように、オレたち4人は宿のおじさんの後ろを静々と歩いていた。
 それは、話す時でさえ、思わずヒソヒソ声で話しているような有り様。
 そんなオレたち4人とは対照的だったのが、宿のおじさんだった。
 歩きながら何度も振り返っては、例の笑顔でオレたちに話しかけてきた。
 それは、その廊下を3分の2も歩いたところだったか。
 おじさんが、またくるっと振り返ったと思ったら、今度は足を止めた。
「一つ目のお部屋は、ここになります。
 こちらは、どちらさまがご利用になります?」
 
 その声につられるように入った部屋は、意外に普通の部屋だった。
 もちろん、廊下や1階と同じように柱や梁は、太く黒ずんでいた。
 でも、壁や畳は新しかったし。窓からは、5月の太陽の光が燦々とさしこんでいた。
 部屋の端の床の間のようになった所には、お決まりの100円を入れて見る小さなテレビもあって。
 そんな、どこにでもある旅館の、どこにでもある部屋だった。

「どうする?どっちが泊まる?」
 N原が女性二人を促すと。彼女たちは顔を見合わしていたが、「ねぇ、もう一つの部屋も見てから決めない?」と言ったのを、宿のおじさんが素早く引き取った。
「あ、そうですね。そのほうが…。
 それじゃぁすみませんけど。先ほども申し上げましたように、
 もう一つのお部屋はちょっと離れちゃってるんですよ。
 ホントごめんなさいねー。」
「いえ、そんな。空いてただけでありがたいんで…。」
「じゃぁ、ご案内しましょう。
 実はね、そっちは別棟でして。
 ま、一応新館ってなっているんですけど…。
 でもまぁお客さんたちみたいなお若い方からしたら、
 あまり新館って感じじゃないかもしれないなぁー。ハハハ。
 いえ。すみません。じゃぁさっそく…。」
 宿のおじさんはそう言うと、招くようにオレたちをあの暗く長い廊下へと連れ出して。そして、またあの廊下を歩き出した。


 その部屋から出てちょっと歩くと、そこは廊下の突き当たりになっていた。
 あれ?この廊下、いつの間に…
 思ったよりも全然早く廊下が終わっていたことに怪訝に思うより早く、その廊下が左に直角に曲がっているのに気がついた。
 宿のおじさんが言っていたように、この廊下は長く見えるだけなんだな…とオレは見まわしていて。
 その時、ふと目がいったのは、天井からぶら下がっていた非常口ランプ。
 その、例の緑色の場違いな感じ…。
 見慣れてるはずのソレがここではとても異様にさえ見えて、思わず見入ってしまったのだ。

「ここから新館になるんですよ。
 お部屋は、この廊下の突き当たりになります。」
 宿のおじさんについて直角に曲がった廊下の先は、新館とはおおよそ名ばかりだった。
 そこは、今まで歩いてきた廊下――本館?――の古さと全く変わらない。
 いや。というより、いつの間にか今までの廊下に戻ったのか?と思ってしまうくらい、やっぱり遠近法の見本のような廊下がずーっと。奥まで伸びていた。

 それは、曲がる前の廊下と同じく、天井と床の四隅の直線、その他の直線がすぼまるようにずぅーっと伸びていて。
 等間隔に並んでいる各部屋のドア、柱…。
 飴色を帯びた黒の柱や壁も、外の光が入ってこないのも、それらをじっと見ているとクラっとくる感覚があるのも、それはまったく同じ。
 さらには、あちこちキョロキョロさせながら一人遅れて歩いていたN原の彼女が、「うわっ!まったすごい奥…。」ってつぶやいたのも、やっぱり同じ。
「ハハハ…。
 ほんと、先ほども言いましたけど、
 みなさんがおっしゃるほど、この廊下って、長くはないんですよ。」
 そう言って、相変わらずニコニコ笑っている宿のおじさん。
 …って、考えてみればそれまで同じだった。

 そんなことを考えていたら、前を歩いていた宿のおじさんが急に振り返った。
 そして、例のニコニコ愛想のよい顔で、オレの顔を見て言った。
「ほら、ちょっと後ろを振り返って見てください。」
「えっ!?」
 見れば、あの非常口の緑色のランプがぶら下がっている直角の曲がり角が、意外なくらいすぐそこにある。
「あれぇ!?」
「ね?」
 その声につられるように前を向いた途端ぶつかったのは、なんとも嬉しそうなおじさんの顔。
「えー、なんだろ?
 ずいぶん歩いた気がしたんだけど…。」
「いいえー。わたくしどもの旅館は、
 そんな大旅館ではございませんから。ふふふ…。
 さ、お部屋はすぐそこですよ。」

 入った部屋は、先ほどの部屋とほとんど同じだった。
 しいて言えば、この部屋の方がちょっとだけ広いような。
「なぁM岡。オレたちがこっちの方がいいんじゃねぇかぁ。
 こっちの方が少し広いみたいだから、みんなで話するのにいいしさ。
 あと多少声が大きくなっても、ここって一番奥だしさ。」
 N原にそう言われると、オレも女性2人も特に異存はなかった。
 というより、部屋自体はほとんど一緒で、異存も何もなかったのだろう。

「お兄さん方がこちらになさいますか?
 それじゃぁ、私はお茶をお持ちしますんで。」
 そう言って、いそいそ部屋を出かけた宿のおじさんに、N原が慌てて声をかけた。
「あ、すみません。宿代って…。」
「あれ?案内所の人、言ってませんでした?
 すみません。お客さんたち飛び込みなんで、
 サービスさせていただいて5500円ってことでお願いしたいんですけど。」
「あ、いえ。聞いてはいたんですけど…。
 ただ、ここ、ずいぶん立派なんでー。
 ホントにそれで大丈夫なのかって、ちょっと心配になっちゃって…。」
「そうっ!そう。
 実はさ、オレもそれずっと心配だったんだよー。
 玄関入った時、一瞬、回れ右しようと思ったくらい。ハハハ。」
「そうそう。さっきね?」
「うん。」
 それは、うなずき合っている女の子2人。
「わたしたちも、それ言ってたのよ。」
 なんのことはない。実は4人とも、この宿に入った時からずっとそれを心配していたらしかった。
「ハハハ。大丈夫ですよ。お一人5500円で間違いないですよ。
 じゃぁ、わたしはお茶をお持ちしますんで。
 あっ。あと、お嬢さんたちを先ほどのお部屋にご案内しないと。
 じゃ、よろしかったら行きましょうか?」
「あっ、そうだった。
 うん、じゃぁ。荷物置いたらまた来るから…。」
 彼女たちはそう言うと、宿のおじさんと一緒に笑いながら部屋を出て行った。

「ふぅぅー…。」
 それは、彼女たち2人と宿のおじさんが出ていった途端だった。
 いきなり、畳にドサっと大の字になったN原は、寝転がった状態で思いっきり伸びをした。
そのままの格好で天井をじっと見つめているN原が、ちょっと離れた所に座っていたオレの顔を見た。
「いやー、ホント行き当たりばったりで、一時はどうなるかと思ったけど…。
 でも、結構どうにでもなっちゃうもんだなぁー。」
「うん。しっかしなんて言うか…。
 今ここにいることが考えられないって言うのか…。」
「そう!ホントそれだよ。なぁM岡さ。
 オマエ、今日オレたちがQ町に来て、ここでこうしてるなんて、今朝、思ったか?
 いやぁ思わねぇよなぁー、そんなこと…。」
 その時には、やっぱりオレも畳に大の字になっていた。
「うん。そう、まぁなんとかなっちゃうもんなんだな。
 まーよ。明日もこの調子でさ、よろしくな!」
「おぅ。こっちこそ…。」
 そう。あの時オレたちは、そうやってしばらく天井を見ながらずっと笑っていたのだ。
 その夜起こることなんて露ほどにも考えもしないで……


「あ、そうだ。」
 いきなり起き上ったN原。
「どうしたんだよ?」
「うん。ちょっと家に電話してくる。」
「えぇ?そんなの夜でいいだろ。」
「ウチ、今日、夜は出かけるとか言ってたんだよ。
 うん。めんどくさいから、ちょっと行ってくるわ。」
 そう言って立ち上がったN原は、引き戸を開けて廊下へ。
 それを寝転びながら見送っていたオレは、ふと起き上って。四つん這いのままズルズルと部屋の戸を開ければ──。
「っ…。」
 それは、あの遠近法の見本のような廊下の線の中で、どんどん小さくなっていくN原の後姿。
「おい!なぁ、おい、N原!N原ってば!」
 変な話だけれど、どのくらいの声を出せばN原の後姿に届くのか、感覚がつかめないのだ。
「N原!N原ってばっ──。」
 それは廊下のどの辺りなのか、やっと振り返ったN原。
「あのさー、お茶!お茶さ、みんなで飲もうぜぇー。
 だから湯呑み、4人分貰って来いよぉー。」
 オレが言ったことがわかったのだろう。
 廊下の四隅の線の中で、うなずきながら手でOKサインしているN原の姿。しかし、それはすぐに後姿となって、OKサインは手を振る仕種に。
 それは、天井と廊下、4本の線がすぼまっていくのと一緒に小さくなっていくN原の後姿……

 いや。この廊下はそんなに長くはない。
 N原の姿がだんだん小さくなるように見えるなんて、そんなことあるわけないのだ。
 なのに、その時。オレは、すっかり小さくなったN原の姿が廊下の奥を曲がるまで、それをずっと見つめていた。



                   ―― 『姉弟掛け合い怪談:その13』〈つづく〉

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2017
04.15

愛しのポテトチップス(笑)



 ジャガイモがなくてポテトチップスが食えないなら、 
 他のもん食えばいいじゃねーか! 

 ドンタコスだってウマイし。せんべいだってウマイ。
 ていうか、成型ポトテトチップスだってあるじゃんね(笑)
 ま、何でもある今の世の中で「ポテトチップスがない」って騒ぐのが楽しい!っていうのはわかるんだけどね(爆)




 
       春だもん。
       たぶん、もうすぐ新ジャガがゴロゴロ出来てくるって!(笑)
       いやもぉ今日の暖かいこと! クビキリギリスが鳴いてたんでビックリ! もはや初夏!?



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2017
04.09

雨、雨、雨…。明日は晴れ?


 いやもぉホント、今週末は3日連続の雨!
 いやはや、いやはや…

 春は天気予報がハズレても、とりあえず「今日はどこそこで桜が開花しました」って言えばとりあえずごまかせるから、気象庁も楽だよなぁ…なんて(笑)


 そういえば、今朝起きて窓開けたら、なんと!裏のカエルは鳴いてるし。
 空では、ペチャクチャペチャクチャ、ギィィィーッ!って、例のツバメの鳴き声と。
 なんだかホント春のてんこ盛り!

 とかなんとかブログに書くと、「あー、この人って春が好きなんだなー」って思う人もいるんでしょうけどねー。
 でも、春、私はどっちかというとキライですね(爆)


 そんな春ですが、今、世は安倍さんが総理大臣になった2012年12月に始まった“景気回復局面”が、なんと!51ヶ月続いていて。
それは、あの(もはや伝説のwww)バブル期と並んで、戦後3番目の長さになったとみられるという、なんともこの世の春のような状態なんだとか(笑)
 ワ~オ!
 *時事ドットコムニュース
 http://www.jiji.com/jc/article?k=2017040701048&g=eco


 …て、え?それってどこの国の話?って気もしないでもないわけですけどねー。
 とはいえ、まぁ考えてみれば2000年代最初にあった(らしい)「いざなみ景気」の時もそうだったわけで、まぁ政府の言うところの“景気がいい”っていうのは、つまり“景気が悪い”の符丁みたいなもの?(爆)

 なぁ~んて、まぁ確かに景気はよくないことは確か(というか悪い)ですけど、ただ、そうはいってもここ数年、世の中の空気感がどこか違うのも確かですよね。
 でもまぁ思い返してみれば、その辺りも、蜃気楼のようだった(つまり、見えるんだけど絶対手に届かなかった)、あの「いざなみ景気」に似てるよなーとか思っちゃうわけですけどね(笑)

 ただー、ただ。
 ここ数年…、というか、今年は特に世の中がみょぉーに80年代っぽい気がするよーな?
 それは、ファッションとかTVCMの感じとか、ていうか、世の人の変な浮かれ加減も、なーんか妙な既視感?(笑)
 まー、たんに世の中の風俗が一巡しただけなのかもしれませんけど

 ただ、「景気が悪い」って言うのが当たり前になっちゃった今ですけど、でも今の暮らしって、バブルの頃なんかよりはるかに贅沢なのも確かなわけで。
 というか、贅沢があまりに当たり前になりすぎちゃって、ある意味貧乏ごっこしてるような面もあるんじゃないのかなぁーなんて(笑)

 ま、そんなこと言ったら、もちろん怒られちゃうんでしょうし、ていうかそんなこと書いてるヤツ自身も毎日 じっと手を見ちゃってるんですけどね(笑)
 あ、だから、ほら、手荒れ用のクリームを塗る時とかwww

 ただまぁアゾマンのマーケットプレイスとか、ユニクロサンボとか。
 その手の、90年代半ば以降のビンボーな時代(格差の時代)に大きく伸びたビジネスモデルって、これでもし景気がよくなったらどうなっちゃうんでしょうね?
 今は、「シェアリングエコノミー」なんて、TVに出てるエコノミストが、これこそ未来の経済スタイル!みたいな口調で言ってますけど、でも、もし景気がよくなったらそんなわけないですよね。お金があったら、シェアなんかしないで、絶対みんな買うわけじゃないですか。
 だって、誰だって、買うのは楽しいんだもん!(爆)

 まー、なんだ。
 景気よくなろうよ。もぉいいかげんさ(笑)


 

        世の中がまたこうなっちゃったら、それはそれでイヤかも(爆)


 で、まぁ話は違うけど、例の「テロ等準備罪」法案。
 岡嶋二人みたいな、共同執筆している作家が2人、もしくはスタッフも含めた組織(執筆チーム)で、犯罪小説を書くのに、舞台と想定する場所を下見してたら、もしかして捕まっちゃうの?(爆)

 ま、いつものごとく、政治家やお役人の都合がいいように考えられてるのは確かなんでしょうけどね(笑)
 ただ、例の「安全保障関連法案」を“戦争法案”って言って一部の人が言って反対してたように、“戦前の治安維持法の復活”だとか、わざとカリカチュアして反対してるのも、ホンっトいつものニッポンの風景で…。
 ま、反対するのが役割だとはいえ、あの手の人たち廃止しちゃって、その分、景気対策とかにまわせないモノ?(爆) 
 と、思いつつも、ニッポン(人)は平和なわけで、なんだかんだ言われつつもあの人たちって、それなり程度には仕事してるのかなぁ…www



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2017
04.09

怪談:17.4.9『姉弟掛け合い怪談-その12』


「へぇーんな話…。」
「だね。」
「面白いんだけどー、でも変。みたいな。」
「そうそう。そんな感じ。ハハハ。」
「2つ目の風に吹かれて飛んでっちゃったおじさんの話なんて、
 そう、子供の頃って、オバケとか超能力とか、それこそTVのヒーローとかも、
 全部ウソだった、子供ながらにわかってるのにさ。
 でも、心のどこかでは、ちょっとだけ信じてるっていうかさ、
 ピンチの時に心の底から願ったら出来るって思ってるみたいなとこ、あるのよね。
 だから、あぁなんかわかるーって思った。
 ていうかさ。それ、ホントに知り合いから聞いた話なの?
 2つ目もそうだけど、1つ目の話なんて、すっごくアンタっぽいんだけど…。」
「そ、そんなわけないだろ。
 だって、ウチの近くにそんな道ないじゃねーか。」
「近くになくたって、片側が田んぼに面した真っ直ぐな道なんて、
 ちょっと行けば、普通にあるじゃない。
 ていうか、そんなこと言ったら、
 アンタって子供の頃、ソファーで寝っ転がってるの、大好きだったじゃない。
 チョコレートも大好きだったし…。」
「えぇぇー。そうかなぁ…。」
「お母さんに、ご飯だからP太呼んできて言われてさ。
 呼びに行くと、アンタ、暖かい季節は大体ソファーで寝てるのよ。
 子供のくせにTV見ないで寝てばっかりって、変わってるなーって、いつも思ってた。」
「な、なんだよー。人をなんだか年寄りみたいにー。」
「幼稚園の入園式で、先生に好きな食べ物を聞かれて。
 他の子供は、カレーだ、唐揚げだ、ハンバーグだって言ってるのにさ。
 一人、シシャモ!って。しかも、人一倍元気に答えたって聞いた時は、
 わたし、子供ながらにそれは恥ずかしいなーって思ったわよ。
 ていうかさ。そうっ!あれ――。」
「ストップ!もぉいいから。それは言わなくていいから――。」
「幼稚園入って、最初の身体測定でさ。」
「ワーっ!ワーっ!」
「家帰ってきたら、女の子のパンツ履いてたって、それこそ怪談じゃない?
 だってさ。いくら幼稚園だからって、身体測定でパンツ脱がないよねー。
 ねぇ。いったい何がどうなったら、他の女の子のパンツ履けるのよ?」
「知るかよ!」
「今だったら、絶対大問題になってるよね。
 変態幼稚園児とかなんとか…。ブブッ。ケラケラケラ。
 あ、でも、変態の方も幼稚園児なんだもん。
 同年代なんだから、そんなに変態でもないのか!?うん?」
「どーでもいいよっ、そんなこと!」
「その話聞くたび、いつも思うだけどさ。
 アンタが履いてきちゃったパンツの主ってどうしたんだろ?
 やっぱり、アンタのパンツ履いて帰ったってこと!?
 いやー、そんなわけ…。ていうか、それは絶対ない!ない!あるわけない!」
「くだらねーことばっか言ってないで、早く次の話しろよ!
 ねーちゃんの番だろ!」
「えー、面白いのにぃー。
 あ、そう。ていうかさ、この話、B美さんは知ってるの?ねっ!
 知らないんだったら、今度来た時、絶対教えてあげ――。」
「いいよっ、別に!だって、知ってるもん。」
「は、はぁ~?
 な、な、なんでB美さんがそんなこと知ってるのよぉ~!?
 えぇっ?つまり、話したってこと!?
 うそぉ!?え、なんでそんなこと話するのよ!?」
「知らねーよ。知るわけねーだろ!
 そんなの話の流れだよ!」
「は、話の流れって、どんな話の流れよ?
 あ…。
 もぉいい。話する…。」
 ったく…
 つまり、人に男と女がいるのは、オトナになっても子供の頃に戻ってバカをするための方便ってことなのだろう。
 はぁ……


「東京にいた頃の知り合いでさ。
 友だち…、まぁ友だちなるのかなぁー。
 ううん。学生の頃の友だちじゃなくってね。
 社会人になってから知り合った人なんだけど、
 その人、小学校の社会科見学で縄文時代の遺跡の博物館に行ってから、考古学にはまっちゃったらしくって。
 以来、休みになると一人でちょくちょくその手の博物館に行ってたらしいの。
 でね。中一の夏休み、近くの町の古墳の博物館にに行った時……。」


 その博物館には、展示館が2つあった。
 そんなわけで1号館を見終った私は、さて2号館へというところなのだが、1号館の展示物の圧倒的な量にさすがに疲れて。
 博物館というのは気力と、そして意外に体力が必要なのだ。
 疲れてしまうと、それらをちゃんと見ることが出来ない。ちゃんと見なければ、少ない小遣いをやりくりしてここまで来た意味がないというものだ。
 というわけで、その時私は1号館を出たところにあるベンチに座って休んでいた。
 もっとも、古墳時代の遺跡の博物館なんて流行らないのか。
 夏休みだというのに入館者は私だけ。アブラゼミだけがやたらジリジリ鳴いていて、それ以外は物音ひとつない。
 そんな夏のカンカン照りの昼下がりだった。

「暑いねー。」
 ふいに声をかけられて。ちょっと慌てて私がそちらを見ると、博物館や園内を整備する方なのだろう。作業着に麦藁帽子という格好のおじさんが、タオルで顔を拭きながら微笑んでいた。
 たぶん、今日のあまりの暑さにひと休みがてら、ちょっとおしゃべりでも…、みたいな感じだったのだろう。
 というか、あまりにも客がいないのでヒマだったというのもあったのか。
 とはいえ、そういう私だって夏休み中の中学生だ。別に急ぐわけでもなし、しばらく、そのおじさんの話に付き合うことにした。

 結構長々と話をしていたのだが、その間もお客の姿は全くなく。
 聞こえるものといえば、例のアブラゼミの鳴き声だけ…。
 と思ったら、こうして座ってゆっくり話をしていると、それ以外にも動いているものの音がすることに気がついた。
 それは、バッタの跳ぶキチキチという音、蜂の羽音等々。
 とはいえ、この真夏のカンカン照りの中だ。そんな暑さの中では、さすがにそんな昆虫たちの気配以外、何もなかった。
 風は、そよともなびかないし。まわりの濃い緑の上には見事な入道雲が立ち上がっていて、まさに盛夏だった。

「まぁ、なんといってもさ、ここは古墳。つまり昔の人のお墓なわけ。
 だから、結構気味が悪い時もあるんだよね…。」
「へー。そんなもんですかねー。」
 古い墓って言うと、ちょっと薄気味悪いが。同じ古い墓でも、古墳というとあまりそんな感じはしない。
 ましてや、私、当時は考古学マニアなわけだ。

「1号館はさ、埴輪や土器ばかりだし。
 建物も新しいから、全体に明るい感じだったろ?
 だから、別にどうってことないんだけどさ…。」
 お客がいなくて人恋しかったのか何なのか、おじさんはやけに饒舌だった。
「2号館の方は、人骨とかも展示してるんだよね。
 だからなのかなぁ?時々、不思議なこともあってねぇ…。」
 お爺さんはそう言いつつ、視線をすーっと向こうに。
 つられてそちらを見ると、そこにあるのは2号館。
 ついさっきまではそんなこと考えもしなかったのに、今は心なしかちょっと陰気な感じに見えてくる不思議だ。
「2号館の脇に木が茂った小山があるだろ?
 実は、あそこも古墳の墳丘でさー。
 もっとも、ここはもぉそこらじゅう、古墳だらけなんだけどね…。」

 見れば、こちらから見て2号館の右側6、7mくらいのところに広葉樹が密生した小山があった。
 ただ、その小山。この博物館の公園内が手入れの行き届いた芝生等いかにも公園然としているのとは対照的に、木々がザワザワザワザワーって生い茂っていて。
 なんだろう?そう、緑の密度と量がちょっと異常なくらいなのだ。
 ただ、よく見ると、広葉樹の茂り方はそれはそれでスゴイのだが。それよりも、そこをスゴク見せているのが藤の蔓だとわかってきた。
 生えている木の幹や枝にのたうつように巻きついている、太くごつごつした木の幹のような蔓。さらに、その周りでは無数の緑の蔓がまるで宙に纏わりつくようにゆらゆら揺れている。
 それは、変に馴染めない風景だった。凄愴な感じがするといったらいいのか…。

「スゴイ藪ですね。なんだか、ジャングルみたい。」
 そう言った私の方を振り返って、おじいさんが言った。
「本当は、少し切ればいいんだろうけどねー。
 でも、なんかね。なんか…。」
「えっ?なんかって!?」
 今さら気がついたのだが、このおじいさん、さっきから何だか妙にひっかかる話し方をする。

「何年か前のことだったんだけどね。
 やっぱり、こんな感じの暑い日でさ。
 そこんとこでさ、草むしりしてたんだよね…。」
 おじさんはそう言って、今いるベンチの傍の花壇を指差した。
「やっぱり、こんな風にお客のいない日でさ。
 こんな風にこっち向いて、草むしりしてたのさ…。」
 おじいさんはそう言いつつ、体をちょっと捻ってみせた。それは、2号館に背を向けた格好になっていた。
「なにせ、あの日は暑くってさ。
 そう。今日よりも暑かったかもしれないなぁ…。」

 その視線につられるように空を見上げると、その途端、太陽のあまりの眩しさに一瞬何も見えない。
 やっと見えるようになっても、おじさんの顔もまわりの景色もしばらく青のモノトーン。
 そんな私のことを見つつ、おじさんは話を止めた。
 それは、あいかわらずのアブラゼミの大合唱。
 その、耳がウワーンとなってくる鳴き声は、逆にあたりの深閑さを際立たせ、辺りに私とこのおじさん以外人っ子一人いないことを感じさせる。

「こう、あっちに背を向けてさ。
 せっせせっせと草むしりをしてたのさ。
 なにせ、草ってやつはさ。
 こう陽気がいいと、むしっても、むしっても、すぅぐ生えてくるんだから…。」
 今度はそこにしゃがんでしまった、そのおじさん。2号館に背を向けたまま、しきりと草をむしる動作をしてみせる。
「疲れてきてさ。
 ここが終わったら、休もうかなぁって思った時だったんだよなー。
 なんだかさ。人の騒めきのような、そんな感じがあってさ。
 あぁ、やっとお客が来たんだなーって思ったんだよ…。」
 おじさんはそう言って、しゃがんでいて腰を伸ばすように私の方を見てきた。
「お客が来たんなら道を空けなきゃって思ったんだけど。
 でも、たまたまキリが悪くってさー。
 ついつい草むしりを続けてたわけよ。
 お客が来たら、どけばいいやって思って。
 ほら、ここって細かい砂利が敷いてあるだろ?
 だから、人が来れば音がするからすぐわかるからさ…。」
 そう言ったおじさんは、踵で砂利を蹴ってザッザッザと音をたてる。

「草むしりを続けてたんだけどさ。
 でも、お客なんていつまでたっても来なくってさ。
 あれ、先に2号館に行ったのかな?なんて思ったわけさ…。」
 また、そこで話を止めたおじさんは一瞬ピクッと。やにわに何かを確認するかのように向こうを振りかえり、そしてまた私に視線を戻してきた。
「でね、その時だったんだ。
 なんだか、急にさ。背筋がゾクゾクゾクゾクーっときてさ。
 えっ!って思ったんだよ。
 えっ!なんだっ?って感じさ。もぉ…。」
 おじさん、今度は私に背中を向けて。その右手を自分の背中にまわして、背筋に沿ってその手を小刻みにゆらしつつ、すーっと下ろしてみせた。
「こうね。なんかスーっって。
 背中を冷たいものが落ちていく感じっていうのかなー。
 でもさ、その後すぐだよ。
 今度は、右耳の下あたりにさ、シューって。
 何かが前に通って行くような、そんな触感があってさ。
 うん、うん。視線、視線…。視線なんだよ。
 視線が、シューっと耳の下から頬を撫でていく感じっていうの?
 まぁさ、そんな感じがしたわけさ…。」
 おじさんは、私の目をガッチリ見つつ。自分の右耳の下から頬にかけて、指先をゆっくりスーっと移動させる。
「……。」
「何かが俺のこと見てる!って思ったのと、後ろを振り向いたのは同時だったと思うよ。
 さっと振り向いたんだ。
 そしたら、その視線とぶつかったのさ。
 そこ、そこだよ。2号館の入口があるだろ?
 そこんとこから、つーって横に行ってさ。
 あの木がいっぱい生えてる古墳と、ちょうど真ん中ぐらいのとこ…。
 あの辺り、あの辺り…。」
 おじさんは、身を乗り出すようにしてその場所を指し示した。
 そこは、ここから10mくらいのところ。今は、ギラギラした夏の太陽の下、青々とした芝生がツヤツヤ光っている……

「そこにさ。白い服を着た何かが、ぼぉーっと立っててさ。
 俺のことを見てるんだよ。
 あぁいや、睨んでるとかそういうんじゃなくってさ。
 なんかこう、ただ見てるって感じ…。」
「えっ、それって、ゆ、幽霊だったんですか!?」
 いくらこの真昼の太陽の下とはいえ、今いる場所のすぐ傍で出たなんて聞くとやっぱり怖くなる。
 ましてや、それは今日と同じような陽気の日のことだったというのだから。
 ところが、そのおじさん。私の「幽霊だったんですか?」には、まったく答えようともしない。

「体は、こう、あっちの古墳に向けててさ。顔だけ、こっち向いてるの。
 で、こう俺のこと、ぼんや~り見てるって感じだったんだけどさ。
 でも、それが今度は、足元からすーっと、ゆ~っくり霞んでってさ。
 足、腰、腹、胸って、だんだん霞んできたなぁと思っていたら、
 だんだん見えなくなっていってさ…。
 でも、そんな状態でも顔だけはオレのこと見ててね。
 うん、そう。ぼんやり、ただ見てるって感じの視線でさ。
 そのうち、顔も消えちゃって、何も見えなくなっちゃたんだけどさ。
 なのに、視線だけは残っているような感じだったんだよなぁ…。」
「えっ?えっ?えっ?
 それって、やっぱり幽霊…!?」
 その問いにも、さらっと無視を決め込むおじさん。
「でね。それが消えてから、気がついたんだよ。
 オレのことを見ていた、ソレの格好っていうのがさ。
 展示してある埴輪と同じだったってことにさ。
 頭がさ。両脇の髪の毛を、こう結った“みずら”だったことにさ…。」



                    ―― 『姉弟掛け合い怪談:その12』〈つづく〉

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2017
04.08

うーん…。イマイチ!(笑) ~でも、次“も”期待してま~す(爆)


 いよいよ、本スタートで、3/25に放送された『ローカル路線バス乗り継ぎの旅Z』。
 なんで「Z」なんだかよくわかりませんけど(さらにメンバー変わったら、今度は「グレート」と付くとか?)、見終わってみれば、出演者の新コンビ+マドンナには申し訳ないけど、うーん。イマイチ?(笑)


 そもそも、スタート地点とゴール地点の距離が短すぎ!
 いくら新コンビ(特別編に続いて)第一回目とはいえ、伊豆下田~知多半島師崎って、成功させるのが前提になっちゃってる気がします。
 だって、前コンビの2回目なんて、東京日本橋~京都三条大橋ですよ。
 伊豆、知多両半島部分があるとはいえ、今回のお題って、それに完全含まれちゃうじゃないですか。

 まー、路線バスがどんどんなくなってるわけで、しょうがない部分はあるんでしょうけどねぇ…。
 とはいうものの、面白くなきゃだよなぁー(笑)
 蛭子さんだったら、絶対冒頭で「余裕。2日で着いちゃうね」って言ったと思うwww


 さらに今回は、そのスタート地点とゴール地点の距離が短い上に、静岡県の2日間があまりに順調すぎちゃって…。
 あれじゃぁホントにローカル路線バス乗り継ぎの旅(乗り継いでるだけの旅?)です(笑)
 ていうか、薩埵峠で3人の前を歩いてた女の人!あの人、あの急な坂を何であんな早く登れるの!?

 まぁ愛知県に入ってからはいろいろあって面白かったんですけどね。
 ただ、今回は、いかんせん前半2日間の順調ぶりが鼻についちゃって(笑)
 変な話、3日目途中の歩きで、駐車場の屋根がバスに見えた場面で、あー、今回コレが一番面白いかも!とか思っちゃったくらいでした(爆)

 で、最後の最後。ヘタなどんでん返しミステリー小説が恥ずかしくなっちゃうような大どんでん返しは、まぁドラマチックっていえばドラマチックだったんですけどねぇ…。
 失敗した回の方が面白いと思う私としては、ゴールに着いたからって別にどうってこともないよね?なんて(笑) ←ヒドイ


 でー、次に、まぁこれは新コンビのパーソナリティの話なんで。それを言うのは反則だとは思うんですけど、とはいえ、2人ともテンション、低すぎ!です(笑)
 田中さんのグダグダぶり(浜松駅前の高級ホテルに泊まって、「もったいないから明日10時まで寝てよう」発言は笑った)と、羽田さんがのぼーっとしてるのは、まぁいいと思うんです。
 だって、それが新コンビの個性なわけですもんね。
 いくら前コンビが面白かったからって、それと同じものとものを違う人で見せられてもしょうがないと思う

 ただ、見ていて、なーんか、盛り上がらない!盛り上がらない!(笑)

 ま、羽田さんは、時々急に一人で盛り上がって、バス停のポールの前で慟哭したりもするんだけど。
 でも、去りゆくバスを怒鳴って追いかけるのは、近所迷惑だと思うな(笑)
 あれ、羽田さんだよね?

 (ま、これも言うのは酷なんだろうけど)新コンビは太川蛭子コンビと比べて若いから、歩いても青息吐息でぶぅたれないから、可笑しくないっていうのもありますよね(笑)
 結局、見てる方は、3人がヒーハー、ヒーハー苦労して、ブツクサ文句言ってるのを見るのが楽しいわけですよ。
 浜松駅前の超高級ホテルに泊まるのを見ても、面白くもなんともありません。そこは、あの番組の基本中の基本だと思うんですよねー(爆)
 現場スタッフは、なんでそこだとツマンナイからダメ!って言わなかったんだろ?


 さらに思うのは、番組編集の雑さですよね。
 なんで、わざわざつまらなくするような編集をするかなーっていう場面、結構多いんですよね。
 例えば、3人とも違う方見て黙ってバスに乗ってる場面なんか、何でわざわざ使うのかなぁ…。
 あの場面は見ていて、この3人、とってもつまんなそうだなーって。
 もしかして、今回の3人の仲って最悪状態だったのかな?なんて勘ぐっちゃったくらいです(笑)

 最後の大どんでん返しなんかも、今回の最大の見どころだったはずなのに、見ていて、イマイチ面白くないんですよね。
 みょぉぉぉーに淡々としてるっていうのかなぁ…。

 編集の雑さは、いつ頃からだったか、太川蛭子コンビの頃からありましたよね。
 出演者が視聴者から批判されるような場面をわざわざ使ってみたり。
 現場の人たちは、おそらく相当酷な状況の中、頑張っていい仕事してるんだから、編集等のスタッフはやっつけ仕事じゃない仕事をしてもらいたいものです。


 まー、そんなこんなで、あの番組の大ファンとしてはいろいろ文句も言っちゃうわけですけど、ま、それもこれも毎回楽しみにしてるからで(笑)
 ホントかどうか知らないですけど、太川蛭子コンビが卒業したのは蛭子さんが太川さんを嫌ってるからなんて話もあるらしいですが、それならそれで1回、太川&羽田と蛭子&田中コンビでそれぞれバス旅なんて企画、面白いんじゃないかなーって(笑)
 まぁ太川&羽田コンビはともかく、蛭子&田中コンビはグダグダすぎて絶対ゴールにたどり着かない気がしますけど(爆)
 でも、マドンナにやたら目的意識の強い人を据えたら、意外に相当面白いんじゃない?
 御殿場~直江津の回のマドンナみたいなタイプと蛭子&田中コンビでやったら面白いと思う

 そう。そういう意味じゃ、田中羽田コンビは、あの2人を上手くリードし、かつキャッキャと盛り上げてくれるマドンナを持ってきたら、もっと面白くなるようにも思うんだけどなぁ~。

 てことで、次回も期待してま~す!(笑)
 ただし、次回は思いっきり難しくて、鬼のようにキッツイの、ね♪(爆)



 



 そーいえば、どっかの会社のバカなサイトが例によって、あっちこっちのサイトから切り張り記事を書いてましたけど、ホントああいうのなんとかなんないもんですかねぇ…。
 芸能ライターの意見をやたら引用してるのは別にいいんだけど、その引用元を提示しないのが例のその手のサイトの大問題になったんじゃなかったのぉ~(爆)

 そもそも、その芸能ライターって、(例によって)ホントに存在するんだか?っていうのは大いにありつつ(笑)
 田中さんがゴールを早く目指す気が全くないだの、羽田さんが地方の知名度は低いだの。
 そもそもあれは、お題のコースを“4日”かけて行く“番組”なの!早く着いちゃったら、番組になんね―じゃねーか!
 芸能ライターのくせに、そんなこともわかんないんだろうか?
 え?芸能ライターは、そのネット記事を書いたライターの想像の産物だから、わかるわからない以前だって?(爆)

 羽田さんだって、いくらTVに出てるからって、所詮は作家。それも文学系の作家だもん。一般の人に知られてないのは当たり前ですよね。
 ていうか、蛭子さんだって、あの番組に出てから他の番組にも出るようになって一般的に知られるようになったんだと思いますけどね。
 他にも、視聴者の意見も(例によって)コピペしてたけど、要は自分の記事に都合いいようにネガティブな意見を選んでコピペしてるだけじゃん!
 え?コピペしなかったら書けないって?(爆)

 ただまぁその手の人って、別にネットの世界だけのことじゃないんでしょうけどねー。
 ただ、そういうたんなるバカな人の意見が、いざネットの記事になってみると一応もっともらしく見えちゃうとこがネットの怖いとこなんでしょうねぇ…。

 あー、イヤだ、イヤだ。
 パソコン消して、TV見よーっと!(爆)


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2017
04.02

怪談:17.4.2『姉弟掛け合い怪談-その11』


「はぁー。」
「ふー。」
 今の弟の話…。
 面白かったのは、面白かったんだけど…。
 な~んか、いい加減疲れてきたかも…。
 見れば、弟も今にも椅子から滑り落ちそうな座り方で、グダーッと。背もたれに後頭部を乗せ、天井見て放心している。
 ていうか、今まで何でキッチンでずっと話してたんだろう。
 居間でソファーにでも座って、ゆっくりすればいいのに…。

 夕方、あれほど強かった雨音は、今はすっかりなくなっていた。
 今聞こえるのは、シュンシュン言ってるストーブの上のヤカンの音だけ。
 蛍光灯は消して、スタンドだけしか点けてないから、ストーブの炎で周りが赤々と照らされている。
 はぁ…
 部屋の中はぽっぽと暖かいのに、外のキーンと冷え込んだ空気がしみ込んでくる真冬の夜。

 うん…
 そう…
 面白いのは面白かったんだけど…、なんかなぁ…
 イマイチ、引っかかるっていうか…
 ふふっ。怪談好きの弟が、いかにもそれっぽいお話にしちゃったって気もするんだよなぁ…
 まぁ、でもしょうがないのか
 怪談なんて、それぞれの人の頭の中を通過してしゃべられるわけだもん。同じお話でも、話す人によって微妙に違うからこそ面白いんだろうな
 あー、ていうか、疲れた。ふぅー。
 そう。なんかさ、いい加減、ちょっと重くなっちゃったのよね。
 そう、そう。この弟が怪談好きなもんだから、バッカみたいに張り切っちゃうもんだからさー。
 オバケだってさ、おどかしてばっかりじゃ疲れちゃうのよ……


「あのさ。これは、H叔父さんに聞いたんだけどさ。」
「え?H叔父さん!?」
 H叔父というのは、前にも出てきたが、本日、ウチの両親がお邪魔したあげく、叔父に捕まって、結局(予定通り?)泊まることになった家の主だ。
「H叔父さんってさ。実は、カワウソだったのよ。
 しかも、妖怪の…。」
「は、はぁ?
 あ、あぁ、そういうこと?
 そうだよね。H叔父さんって、ちょっとカワウソに似てるよね。アハハ。」
「でね。H叔父さん、ある日、プラモデルを作ってたんだって。」
「あー、H叔父さん、好きだもんねー。プラモデル…。」
「でね。その作ってたプラモデルっていうのが可笑しいの。
 なんと、笠地蔵。アッハッハ。」
「か、笠地蔵!?
 なに、それ?そんなプラモデルあるの?」
「わたしが知るわけないでしょ、そんなこと。
 気になるんだったら、アンタ、H叔父さんに聞いたらいいじゃない。
 でね。お地蔵さんに笠をかぶせてたら――。」
「あー、やっぱりその場面なんだー。へー。」
「お地蔵さんに笠をかぶせてたら、
 ふと、自分でもかぶってみたくなったんだって。」
「え、何を?」
「笠に決まってるでしょ。アンタね、ちゃんと話聞きなさいよ。」
「き、聞いてるって。でも――。」
「で、かぶっちゃったらしいのよ。H叔父さん。」
「…!?」
「そしたら、その恰好が可笑しいって。
 みんなに、もぉバカウケしちゃったらしいのよ。
 H叔父さん、それにすっかり気をよくしちゃって。
 その恰好のまま、近所をねり歩いちゃったら、
 H叔父さんの行くところ、行くところ、もぉ大喝采。」
「……。」
「H叔父さん、あれはカワウソなどという地味な妖怪である俺の、
 一生に一度あるかないかの晴れやかな場面だったって、
 すっごく嬉しそうに話してたんだけどね。
 でもさ。一生に一度あるかないかのって、
 H叔父さんって、カワウソっていう妖怪なわけじゃない?
 一生、二生もないじゃんね。だって、妖怪なんだもん。」
「な、なんなんだよ、その話っ!全然わかんないよっ!」
「そんなこと言われたって、わたしだってわかんないよ。
 だって、夢だもん。」
「ゆ、夢ぇ?はぁ?」
「昨日、そんな夢見たの、今思い出したの。わかった?
 だから、怪談はもぉ終わりっ!もぉ寝るのっ!」
「ちょ、ちょっと…。
 なんだよ、それぇーっ!せっかく面白くなってきたのにぃっ!
 あ、ていうか、そぉ。ねーちゃん、まだ風呂入ってないだろ?」
「あ…。
 やだ。忘れてた…。」
「だから、今から沸かすことにして、その間――。」
「もぉいいよぉー、風呂はぁー。
 めんどくさいし、寒いし…。
 ていうかさ。実は、アンタの話、聞いてたら一つ思い出したんだけど、
 でも、結構長い話なのよ。
 アンタの話で、疲れちゃったのにさ。
 これで、さらにわたしが話すって思ったらさぁー、ねぇ。アハハ。」
「で、H叔父さんはカワウソで…。」
「そう、妖怪。しかも、地味ぃ~なって。ケラケラケラ。」
「どんな夢だよっ!
 もぉいいっ!オレが話すよ!。」
「いよっ!B美さんも惚れ直しちゃうイケメン!
 でも、バカだけど…。キャッハッハ。」
「うるっさいよ、もぉっ!
 だからっ!これは、会社のJ原さんから聞いた話っ!」
「えぇぇ~。なに、怒ってるのぉぉ~。」



 それは、たぶん、俺が小学校低学年の頃だったと思う。
 冬か、もしくは春先のよく晴れた日の午前中のことだった。
 僕は、居間のソファーに座って本を読んでいた。
 日のよくあたる部屋で、そのポカポカとした暖かさに、僕はいつしかまどろんでいた。
 
 ふと目が覚めて。
 その半分だけ開いた目が見ている先。それは、テーブルの上一面にレースのカーテンの模様の影が広がっている様。
 かすかに風があるのか、それは左に右にゆっくり、ゆっくりと動いている。
 僕は半分だけ目が覚めたような頭で、それをぼんやりと眺めていた。
 レースのカーテンの影が、テーブルの上にある物の表面をなぞるように動いていく様子はなんだか面白かった。
 開いたまま伏せた本の表面、灰皿、そして色とりどりの一口サイズのチョコレート等々。
 レースのカーテンのギザギザした影は、それらの表面の凹凸を余すことなく丁寧に舐めていく……

 ただ、その動きはどういう加減によるものなのか?すーっと流れるような動きではなく、どこかジリっジリっとした感じの小刻みな動きで。
 そんな、ジリっジリっと動くレースのカーテンの影を、ぼーっと見ている僕の目。
 突如、その視界の端に、レースの模様のない黒一色の影がふわーっと入り込んできた。
 それは、ひらひら、ひらひらと…。
 その真っ黒な影は、テーブルの上でジリっジリっと動いているレースの模様の影を、ひらひらと侵食していく。
 陽の光の明るさに慣れていた僕の目には、それはテーブルの上があっという間に真っ黒に染まってしまったように見えた。
 ついに、テーブルの上が真っ黒になった、その瞬間。
 何だったのかはわからない。僕は矢も楯も堪らなくなって、「わっ!」っとソファーから体を起こした。
 でも、そのテーブルの上は元通り。レースのカーテンのギザギザした模様の影が、テーブルの上にある全ての物をなぞっているだけ。
 あの、ジリっジリっと小刻みな動きで。
 開いたまま伏せた本の表面、灰皿、そして色とりどりの一口サイズのチョコレー―-。
「あれっ!」
 思わず声を上げた僕は、辺りをキョロキョロ見回す。
 だって、テーブルの上のチョコレートがどこにもない。

「あれぇぇぇ…。」
 そんな素っ頓狂な声をあげながら、僕は四つん這いになってテーブルの下も見たんだけど、テーブルの上にあった、一口サイズのチョコレートはどこにもない。
 はっとして、窓の隅を見れば…。
 レースじゃないカーテンは、左右ともちゃんと束ねられてあった。

 あとで、部屋のゴミ入れを見たら、そこには色とりどりの一口サイズのチョコレートの包み紙が。
 でも、それは何枚もあって、今日食べたチョコレートの包み紙なのかどうかはわからなかった。


 今の話は冬のことだったか春先のことだったかあやふやなのだが、今度の話は間違いなく真冬のことだった。
 でも、それが何歳くらいのことだったかとなると、よく憶えていない。
 とはいえ、あまりにバカバカしい話だから、もしかしたらそれより前。幼稚園の頃のことだったかもしれない。

 その日、僕は近所のK一クンの家に遊びに行こうと家を出た。
 家の前の細い道を通り過ぎて、角を曲がって。向こう側が田んぼに面しているちょっと広めの道を歩いている時だった。
 その日は、北風のとても強い日で、しかも鈍色の曇天の空。
 しきりと電線が鳴っていた。

 K一クンの家は、僕が歩いている片側が田んぼに面した道を、真っ直ぐずーっと行って。
 真っ直ぐな道が右に緩やかに曲がった向こうにあった。

 北風は家を出た時から強かったけど、田んぼに面した道に出た途端、さらに強くなった。
 もっとも、その頃は、「子供は風の子」っていうのが当り前。
 だから、僕も寒いのは寒いんだけど、そんな強く吹く北風を楽しんでもいた。
 道の左側、遥か向こうまで広がっている田んぼ。
 その上に広がっている、重いグレーの空。
 その遮るものが全くない空間を、北風は自由に吹き回っていた。

 そんな北風に向って駆けたり、歩いたりしていると、僕の着ているジャンパーの腕の部分やお腹のあたりが風でボワーっと膨らむ。
 それは、手を広げれば、そのまま風にのって飛べそうな……
 そんな風に、僕が空を飛んでいることを想像していた時だった。
「あれ…。」
 それは、僕が歩くずっと先を歩いているおじさんの後姿。
「あんなおじさん…、えー、いたっけ?」
 おじさんは、僕のお父さんが会社に行く時に着るようなコートを着ていた。
 ただ、それはお父さんが着ているようなねずみ色のコートじゃなくて、真っ黒なコートで。しかも、裾がやけに長かった。
 僕の着ているジャンパーの袖がはためいているように、前を歩いているおじさんの黒いコートの裾も、風でバタバタはためいていた。

 ところが、急にその黒いコートの裾のはためきが激しくなって。
 ゴォォォーーー!
 いきなり、空で風がすごい音で鳴ったと思ったら。
「うわっ…。」
 それは、今までにない強い風。
 ゴォーっというその風に押し返されかけ、思わず腕で顔をブロックする僕。
 ブロックした腕の下に見えたのは、一際バタバタはためいているおじさんのコートの裾。

 それを見たと思ったその時だった。
 おじさんのコートの裾がすーっと。掻き消すように見えなくなったのだ。
「えぇぇーー!」
 驚いてブロックしていた腕をどけた僕が見たのは、黒いコートのおじさんが両手を広げて、ブワーンって空に舞い上がっていったところ。
「かっ、かっ、かっくいぃぃーっ!」
 ゴォォォーーー!
 また空で風が鳴ったと思った途端吹いてきた、さらに強い風。
 それは、空を飛ぶおじさんの姿に見とれていた僕にドカンとぶつかってきて。
「うわっ!」
 僕は、その強い風に、半ば風に押さえつけられるように地べたに手をついていた。
 その強い風が収まって見た空には、もぉおじさんの姿はなかった。

 その後、いったん家に戻って、お父さんのコートを持ちだしてきた僕は、K一クンと一緒に空を飛ぼうとしたのだ。
 でも、お父さんのコートは、あのおじさんのコートみたいに裾が長くないからダメだった。


 今度の話は、わりと最近。何年か前のことだ。
 でも、その話をするには、私が中学生の時に流行った町のウワサを話す必要がある。

 ウワサの元――場所と言った方がいいのか?――は、町を通る国道の下を通る地下歩道だった。
 そこは、僕もそこはよく通る所だった。だから、ウワサを聞く前からそのシミのことはなんとなく気づいていた。
 地下歩道だからそこを通るには緩やかなスロープを下に降りていくわけだが、その入り口を囲む壁にそのシミはあった。
 それは、地下に降りていくスロープの真正面。入口を囲む3方の壁の内側にあった。
 つまり、通路を通ろうとする人は、そのシミが嫌でも目に入っているはずなのだが、ただ、それはたんなる壁のシミなわけだ。
 そんなもの、目に入らない人や、目にしても気にもかけない人の方が多いのだろう。現にウワサを聞くまで、そんなシミは全く気づいてなかったという友だちも多かったくらいだ。
 ただ、僕はソレをかなり前から気づいていたし。
 気づいた時には、ソレが壁の縁から逆さの人がバンザイするようにぶら下がっている形に見えると思っていた。
 というよりは、そのシミがそんな風に見えるから、ソレに気づいたという方が正しいのだろう。

 もっとも、僕にとってもソレは、あくまでコンクリートの壁によくあるただのシミだった。
 怖いとか、気味が悪いとか、たぶんそんな風には思ってなかったと思う。

 その地下歩道に変なウワサがたったのは、前にも言ったように中学生の頃だった。
 なんでも、夜中にその地下道を1人で通ると、そのシミの人が落ちてくるのだと。
 後ろから聞こえた物音に振り返ると、例のシミの人が後ろから覆い被さってきて。その重みで、地下道を歩いてた人は転んでしまい、必ず鼻に怪我するのだと……。

 いや。シミの人にとり憑かれて、1週間以内に死んでしまうとか。
 あと、その人はシミの人と入れ替わってしまって。その人は壁のシミになって、地下歩道を通る人と入れ替わろうとするのだというバージョンもあった。

 当時、中学生とはいえ、さすがに「1週間以内に死ぬ」だの、「壁のシミと入れ替わる」だのという時点でそれは嘘だとバカにしていた。
 ただ、「転んで鼻をケガする」と聞いて、なんで鼻なんだろ?とそこのところだけ不思議に思ったからだろうか。
 その地下歩道を通る時、そのシミの真下はなんとなく避けて通っていたような記憶がある。

 そう。今思えば、私はその後も無意識にそれを続けていたのかもしれない…


 話は現代に戻る。最初に言ったように何年か前のことだ。
 その夜、私は同僚と飲んで、帰りは結局最終かその1本前になった。
 私の今の住まいは、駅からは国道の向こう側だ。だから、いつも通り国道の下を通る地下歩道を通った。
 私は酒は強い方だし。また、その時酔いはもうすっかり醒めていた。
 でも、地下歩道を歩いてたら、突然後ろで大きな物音がして。
 そのただならぬ物音に、ビクッと振り返りながら。なにかこう、異様な気配のようなものを感じて、とっさに通路の端に避けたのだ。
 そう。ガツンと、背中が激しく通路の壁にぶつかったのを感じたのと同時だった。
 びゅん!と。まるで、棒を宙で激しく振るような音ともに、黒いモヤのような物が地下歩道を通り過ぎて行った…

 その後、家にたどり着くまでの記憶はない。でも、間違いなく言えるのは、中学生の時に聞いた地下歩道の例のウワサをずっと思い出していたことだ。
 いや。別に鼻は怪我しなかった。
 ただ、黒いモヤのようなものを避けた時、地下歩道の壁にぶつけた背中は1週間くらい痛んだ。

 すっかり酔いは醒めたと思っていたけど、まだ酒が残ってたのかなーとも思ったのだ。
 なのに、夜遅くなってからはその地下歩道を通らなくなったのは、そのことを妻に話したからだった。
 聞けば、妻は前々からあの地下歩道を通るのが妙に嫌だったとかで。
 そうは言っても、今まで通ってきて別に何もなかったわけだし。また、夜中に地下歩道のスロープを一人で降りていく人を見かけたりもするのだが…。

 そう。最近、その地下歩道の入り口の壁に、いまだに逆さの人がバンザイするようにぶら下がっている形のシミがあるのに気がついて。
 今までなんで気がついてなかったんだろう?と、なんだかそれも不思議な気がして。
 今も地下歩道を通る時は、私も妻もその真下だけは避けて通るようにしている。

                            
                    ―― 『姉弟掛け合い怪談:その11』〈つづく〉

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2017
04.02

四月(も)馬鹿


 昨日の朝方、なにやらエッチな夢を見て。
 まぁ夢にはありがちな、具体的な内容は思い出せないんだけど、なんとなーくニカニカしてたら。
 今日がエイプリルフールだって気がついて、夢とはいえ、とんでもなくヤバイ間違いをしでかしちゃったような気がして、もぉーどうしよう!って。
 夢の内容を思い出せないのが、またミョぉぉぉーにコワい(笑)



 

 エッチな夢とは関係ないんですけど、スーパーの2階にあるバッタもの屋みたいなとこでパンツがお手頃価格だったんで買ってみたら。
 なんともまぁ履き心地の悪いこと!悪いこと!
 変な話、縫い目が集まったトコが、ある部分にあたって。
 そのうち、痔ぃ~になっちゃうんじゃないかってくらいの最悪の履き心地!(爆)

 パンツくらいはちゃんとしたモノを買うべきなんだなぁーと、大いに反省しましたとさ(泣)



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