2016
06.26

Book! Book! Book!

Category: R&R

 ここ最近、知り合いから本をもらったんで、その感想…、ていうほど、ま、御大層なもんでもないんですけどね(笑)


 まずは、望月諒子の『壺の町』。

壺の町IMG_3078

 作者の望月諒子って記憶があったんで、あれ?なんだっけー。読んだことあるのかなーってアマゾン見ていて思い出しました。
 もぉかれこれ10年くらい前かなー。本屋で手書きのポップの推薦が付いて並んでたのを見かけた本の作者だったんですね。
 最近見かけなかったけどなーって思ったら、解説によると作者は本を書くのやめようかと思ってた期間があったとかで。
 まぁ何というか、めぐりめぐって…って感じですかね(笑)

 大体のストーリーは、こんな感じ(ネタバレあり)。
 お話は、神戸のわりといい住宅街に住む年配の夫妻と娘が自宅で焼き殺されるという事件があって。
 容疑をかけられた娘(結婚している)と不倫関係にあった、今は本を出してない作家が容疑をかけられると。
 そんな結構長い前振りの後、その作家が主人公になることで、容疑を晴らすため、さらに殺されたその不倫相手の娘の言葉が心にひっかかって、犯人捜しをしていくことになる。 
 すると、その年配の夫婦はバブル期に不動産屋をしつつ、裏では地上げ屋をしていて。しかも従業員やヤクザをつかって嫌がらせや脅し、さらには放火までやっていたという黒い過去が現れてくる。
 殺された娘の旦那は、実は一連の地上げ行為の中で嫌がらせされた結果死に追い込まれた飲食店の子供で。そのことを知ってしまった結果、復讐のための人生を歩むこととして、付き合っていた女性と別れて地上げ屋夫妻(元)の娘と結婚しする。
 ミステリー小説のポイントとしては、アリバイのある娘の旦那がどうやって地上げ屋夫妻(元)と娘をどうやって殺したのか?ということとになるんでしょうけど、ま、それはお話としては重きを置いてなくて。
 旦那が付き合っていた女性との幸せな人生と復讐のどっちを取るかで悩んでいたのに、なぜ復讐を選んだのかということにお話の焦点が絞られていくわけですけど、それは阪神淡路大震災(の後に起こった出来事)が関係していた。


 個人的に、『火車(宮部みゆき)』のような、死んだり失踪したある人の過去を遡っていくとその人の意外な過去が現れるみたいなストーリーが大好きなもので。
 裏表紙のあらすじにある「夫妻の秘密の過去にたどり着く」にもぉ大期待だったんですけど、そっちはうーん…みたいな(笑)
 ただ、このお話の一番の謎(肝)である、犯人が普通の幸せでなく、復讐という人生を選んでしまった「偶然」という展開はすごく好きですね。

 ただ、この本って、みょぉーっに読みにくいんですよねー。
 ストーリーも展開もいいのに、でも、なぜか読んでいて面白くない(笑)
 何でこんなに面白くないんだろ(くどいようですけど、ストーリーと展開はいいと思う)と思っていて、はたと気がついたのは、「あ、そうか。これって、登場人物がツマンナイんだ!」って(笑)

 いや。この本の前に読んでいたのが京極夏彦の「お漏らし鬼」だったんで。
 そっちの登場人物が面白すぎちゃうっていうのはあるんで(大いに)、多少は割り引かなきゃいけんないんでしょうけどね(爆)
 ただ、それにしてもツマンナイかなー。
 そもそも、主人公が出てくるの、遅くな~い?
 元地上げ屋の娘と不倫してるんだから、冒頭にその不倫のシーンとか持ってきて(あ、だから、あ~ん、とかうふ~んとかっていうんでなくねwww)。
 そこで、主人公が犯人捜し(というか真相探しですよね)をするきっかけとなる、不倫相手の娘の言葉とか持ってきてもよかったんじゃないかなぁ…。

 あと、真相探しの中で、若い看護婦さんが出てくるんだけど、2回も出すなら、いっそ主人公と一緒に行動させたり恋愛感情を持ち込んだらいいじゃない(笑)
 変な話、それだけでもお話の印象、全然違うものになったと思うけどなぁ…。

 いや。作者の望月諒子氏。たぶん、その辺は意図がある、というか作者なりのこだわりがあってそう書いてるような気がするんですけどね。
 でも、そこにこだわるんなら、それは読者の評価のハードルを上げるってことになるわけですからねー。
 
 実は、この本の感想を書いておこうと思ったのは、ソコなんですね。
 お話っていうのは、読む人を楽しませてやろうっていう色気みたいなのは、やっぱりあった方がいいってことなんだろうなーって(笑)
 せっかく面白いのに、もったいないって。
 ちょっと勉強しちゃいました(爆)



 てことで、次は奥田英朗の『邪魔』。

邪魔IMG_3082


 これは、もらい物でなく、積読本。
 いや。なにを思ったかギックリ腰になっちゃって(爆)
 一番楽な姿勢が、仰向けだったんで。じゃぁひっくり返って本を読むか!思ったわけですがー。
 でも、読もうと思って買った京極夏彦の「ジャムの雫」、あんな馬鹿厚い本、ひっくり返って読めないわけですよ。
 いつあれが顔に落っこってくるんじゃないかって気が気じゃないていうのもあるし、そもそも重みで本が開けねーでやんの!(笑)

 て、ことで、『邪魅』といえば、あーそう『邪魔』が積読だったなーって読み始めたわけですね(笑)

 あらすじは…
 まー、なんだ。最近は巷でもさんざん流行った“セコイ”旦那を持った主婦がバタバタ音をたてて転落していくその様を描いたお話ってとこですかね(笑)
 これは別にミステリー小説でも何でもないんで、別にネタバレも何もないと思うんですけど、ま、なんだ。アムロ・レイがわーって叫びながらガンダムに乗り込んだんだけど。
 でも、ニュータイプでも何でない普通の人だったんで、操縦の仕方がわからなくって、結局、攻撃されて死んじゃったみたいな(笑)
 まぁ世の中、実際はそんなもんだよねーみたいなお話って言ったら、当たらずとも遠からずでしょうか。

 主要登場人物は、その主婦(及川恭子)以外に、それを追う(過程でやっぱりクルクル落ちてっちゃう)九野刑事。
 さらに、その2人から比べると登場頻度は減る、ありがちなアホバカヤンキー高校生の祐輔(やっぱりバタバタ、これでもかと振り回される)がいるわけですがー。
 いやもぉ及川恭子の存在感がスゴイのなんのって(笑)
 ホント、(ぶっちゃけ)変な意味で“愛おうしい”って(爆)
 それこそ、もし映画やドラマになったら、その及川恭子をやる女優さんがイメージにあてはまるかどうかで出来の良し悪しが決まっちゃうんじゃないかってくらい、時に“かわいい”し、時に“いじらしい”んですねwww
 
 なんだろ?ほら、今の世の中って、“正しくなきゃダメっ!正解じゃなきゃ悪っ!”みたいなとこあるじゃないですか(笑)
 だから、正しくなろうとネットやTVの情報番組でいろいろ調べたりしてそれを盾に生きちゃうわけですけど、でも、そのよかれと調べた情報って実はたんに世間のウケ狙いで相当テキトーだったみたいな。
 でも、この及川恭子はなぜかその真逆を行っちゃうんですね。
 行って、行って、行って、さらに行って…、結果意味不明な暴走しちゃって。
 気がついたら、とんでもないとこまで行っちゃったんだけど、なんで?
 みたいな、そこがホント、もぉー愛おしい、愛おしい(爆)

 いや。奥田英朗の『最悪』から続くこの『邪魔』も、前のそれと同じように途中展開が加速した瞬間コメディーに変わるんで。
 やっぱり笑って読めるんですけど、でも、よくよく考えるとラストは相当哀れですし。
 また、そこに至る過程も普通の主婦だったら陥らないような事態(今は意外と普通だったり?www)にも直面しちゃうわけですけどね(笑)
 でも、自分でいろいろ考えて、結果踏み間違えちゃうとこが、ある意味共感しちゃうんでしょうね。すっごくかわいくて、いじらしいんですよー(爆)

 まー、なんですかねー。
 人間って、結局、人と人の関係やしがらみがあるからこそ人生踏み間違えない、みたいなとこあるんだろうなぁ…って。
 何だか、みょーに詠嘆口調になっちゃうって言ったらいいんですかねー(笑)

 ていうかこの際、あの弁護士の家に火ぃつけたら、読む方はもっとスッキリしたのになーっていうのは、たぶんネタバレです(爆)
 でも、ネタバレにならないくらいのネタバレwww

 まぁ人間。
 人生踏み外さないためにも、“正しい”なんてクソくらえ!
 なんだなーって、やっぱりちょっと勉強しちゃいました(笑)



 というわけで三冊目は、木内昇の『新選組 幕末の晴嵐』。

幕末の晴嵐IMG_3083


 これは、あらすじはいいですよね。だって、新選組の話ですから。ある意味スタンダードですもん(笑)

 あ、ていうか。
 スタンダードっていう意味では、これ。全然スタンダードな新選組小説ではないです(笑)
 たぶん、新選組の始まりから終わりまでそれなりに知ってないと、読んでもよくわからないんじゃないでしょうか。
 だって、新選組といえば「池田屋事変」なわけですけど、それ、半分しか書いてないんですもん。
 それも、縦に半分(爆)

 なぁ~んて書くと面白くなかったみたいですけど、いや全然逆。
 これは面白かったですね。
 新選組が出来る経緯、つまり試衛館時代から、土方歳三から始めにいろんな面々の視点や思い(想い?)でお話が進んでいくわけですよ。
 例えば、最初の章の面々は、土方、佐藤彦五郎、沖田総司、清河八郎、近藤勇、鵜殿鳩翁、山南敬助、土方、近藤、山岡鉄太郎で場面はやっと京都に残るとこなわけですが、しっかし鵜殿鳩翁って、これまったシブい人の視点をいれたなーって(笑)
 しかも、鵜殿鳩翁のパートのサブタイトルが「今の若い者は」ときたもんだ(爆)

 いや。目次を見た時は単純に(爆)だったんですけどね。
 実際そこを読んでみると、あー、これって、新選組を借りて現代の若い世代の代弁をしてるのかもしれないなーって。
 特定の人物を主人公に話を進めるのでないスタイルは、たぶん例の『壬生義士伝』がヒントだったのかな?とも思うんですけど、新選組に面々に現代を代弁させるっていうのは、ありそうでなかったお話で面白いし。
 また、あぁー、意外にそんなとこかもなーって、逆に新選組が見えてくる気がしますね。

 ただ、この木内昇って人、実は女性なんですけど、やっぱり…、なのか何なのか(そこはわかりませんけど)、主人公は結局土方歳三なんですよね。
 私、土方歳三ってあんまり好きじゃないもんでー(笑)
 お話全体を通じて土方歳三があまりにオールマイティすぎるんですよねー。
 そこが鼻につくっていうかー(爆)

 とはいえ、ま、新選組=土方歳三なわけで。
 そりゃしょうがないのか?というのもありつつ、まぁ所詮はそこまでの人だったんだろうなーなんて貶めてみたり(爆)
 とはいいつつ、土方歳三って、新政府に召し抱えられてたら…、ていうか薩長に生まれてたらどうだったんだろうなーとも思いましたね。
 ていうか、長州に生まれてたら真っ先に死んじゃってそうですけどね(爆)
 そういう意味じゃ、新選組の面々ってもう少し遅く生まれてれば…ってことなんでしょうね。
 つまり、世代間格差って、あっ、まさに現代の若者の代弁!って、まぁ世の中なんて結局どの時代に生まれても大同小異ってことでもあるんでしょう(爆)

 読んでて、いいなーと思ったのは、お話も終盤、会津戦争での土方歳三と斉藤一の会話。
 斉藤一はこのお話で「人を斬ることにしか興味がない」、「自分が生き延びることにしか興味がない」と言わせてる人物なわけですが、その斉藤一に土方歳三が言うわけです。
 「てっきり、永倉と一緒に(新選組を)抜けると思ってたんだが…」と。
  すると、斉藤一は沈黙の後。
 「永倉のことはいいじゃねぇか。
  新選組を抜けることが俺には考えられなかっただけだ」
 「一匹狼だと思っていたが、どういう風の吹き回しだ」
 「あんたにはそう見えたのかもしれないが、そんなことでもなかったんだ。
  近藤さんやら沖田やら、あんたはこれと決めた他人のことは信用するくせに、
  そいつらから自分が信用されてるとは思えねぇんだな。
  完璧に采配を振るうことだけが相手を救うと思ってる。
  采配なんぞ間違っていても、自分が信じた奴がしたことなら、
  俺はどんな結果でも受け入れるが」

 もー、なんと言うか。
 いやはや、この本って、これに尽きるんじゃない?なんて(笑)
 ただ、その反面。例えば現代のアメリカではイラクやアフガニスタン、さらにはベトナムに行った兵士の方々の心の傷が問題視されてるわけで、そういう意味で新選組の面々ってどうだったんだろうなんて思いましたね。
 だって、それこそ日常的に人を殺し、新選組という組織を維持するために隊士の粛清も日常茶飯っていう状況だったわけじゃないですか。
 ま、今より人の死というものが全然日常だった時代の人たちだったとはいえ、その辺はどうなんだろうなーって考えちゃいました。
 ただ、第二次大戦に行った親戚の人を見ても、全然普通なわけで。
 昔の人っていうのは、何か根本的に違うとこがあるのかなーとも思うわけですが、まぁどうなんでしょうね。

 そういえば、この本には続編…、というか姉妹巻みたいな『地虫鳴く』という本があるとかで。
 それは、ごくごく普通の、特に剣が強いってわけでもない平隊士、それも伊東派の隊士が主人公のお話だとかで、それはちょっと読んでみたいなーって思っちゃうわけですが、でも、「ジャムの雫」はいつ読むんだろう?(爆)

 ま、つまり。
 世の中なんてもんは、絶対思い通りにいかない!ってことなのかな?(笑)

 



スポンサーサイト
Comment:4  Trackback:0
2016
06.26

怪談:16.6.26

Category: 怪談話-番外


 今週(先週)の6/21は夏至だったそうですが…。
 で、夏至といえば、もう何年も前、ていうか90年代の頃に、英会話学校に通ったことがありまして。そこに、気が合う先生が何人かいたんですけど、そのうちの1人、カナダ人のケイト先生が話してくれたのが、夏至にまつわる“ちょっと変”な伝説(お話)でした(笑)


 それはわたしが17歳の時のこと。
 6月初めの日曜日。
 その日はボーイフレンドとデートの約束をしていて、朝ウキウキで目が覚めた。
 今日はこれを着けようと昨日から決めていたお気に入りの下着をクローゼット)の引き出しから出そうとしていて…
「あれっ!?」
 下着がなかった。
「どこか別のとこに置いたのかなぁー?」
 別の引き出しを見たり、ベッドに置き忘れたかとあちこちさがしてみてもどこにもない。
「変ねー。」
 ふと時計を見ると。
「えぇっ!もぉこんな時間?」
 まだ顔も洗ってなかった。

 結局、わたしはその日のデートはお気に入りの下着をあきらめ、別の下着を着けてデートに出かけた。
 その別の下着でデートに行ったことで、本来の使用目的以外で下着を使用しなかったとか、お気に入りだったら使用しただろうとかそれはあまり大事なことではない。
 ここで大事なのは、わたしのお気に入りの下着が、昨日の夜にはあったのに朝になったら見あたらなかった、そのことだ。


 その日の夜遅く。
 わたしが楽しかった今日のデートのこと、約束した来週のデートのことに思い馳せながら家に帰ってくると。
 ドンドンドン
 それは、わたしの部屋のドアを荒々しくノックする音。
 入ってきたのは、姉のサラだった。
 サラは、入ってくるなり、
「あんた、またわたしの下着を着けてるでしょ!」

 実は、わたしには前科があった。
 その何年か前、サラの部屋に忍び込んで下着を無断で借りて、その下着でデートに行ったことが確かにあった。
 でも、今日はそんなことはしていない。
 だって、サラはわたしより2歳年上のくせして、どう見ても要所要所肝心なところがわたしにはキツそうなんだもん。
 なぁ~んてことは、まさか口に出来るわけもない。
 だから、わたしは服をまくって今着けている下着をサラに見せた。
「あれっ?あんたじゃないんだ…。
 うーん。じゃぁどうなってるんだろ?」
 わたしへの疑いが晴れても、サラはまだ釈然としない様子だった。
 ただ、それを見ていて、わたしははたと気がついた。
「えっ!もしかしてお姉ちゃんも、朝になったら下着が見あたらなかったとか?」
「そうなのよぉー。せっかく先週買ったばかりなのにさ。
 今朝着けようと思ってみたらないのよぉー。
 だからさ。絶対あんたの仕業だって思ったのよぉー。」

 もしかしたら、カナダの女性って姉妹で下着を貸し借りするものなの?なんて疑問に思う人もいるかもしれないが、それはここでは大事なことではない。
 というか、そういうことはカナダの女性とか、日本の女性みたいに国単位で考えるべきでははなく、カナダでも日本でも、貸し借りする人もいれば、しない人もいると考えるべきだ。
 それはさておき、ここで大事なのは下着の貸し借りの話ではない。
 大事なのは、サラの下着もその日の朝見あたらなかった、そのことだ。


 そして、次の日。学校の昼休みだった。
「もぉ聞いてよ、ケイトぉー。
 昨日さ、ムカついちゃってさぁー。
 ウチのお母さんったらさ。昨日帰ったらやたら怒っててさ。
 聞いたら、あたしの下着勝手に着けてるでしょって。
 もぉさぁ、なに言ってるかわかんないよね。
 お母さんの下着なんてブカブカダサダサで、
 あたしが着れるわけないじゃん。
 もぉイヤんなっちゃうぅぅ~。」

 最初はなんでもオーバーに言うスーのことだから、わたしはほとんど聞き流していた。
 しかし…
「ち、ちょっと、スー。
 えっ、なに?あなたの家でも下着がなくなったの?」
「いや、だっからー、あたしんじゃなくってー、お母さんの。
 まったくヒラヒラスケスケなんていい歳こいてやめてほし──。
 えっ!なに?あなたの家でもって…。
 えぇーっ!ケイトんちでもなのぉぉ~!?」

 スーの声はいつも大きい。
 でも、この時の声ときたら、いつもの何倍も大きかった。
「ねっ!ちょっと、スー、ケイト。」
 その時2人に話しかけてきたのはカレン。
 カレンは真面目な子で、普段ならケイトはともかく頭がパッパラパーなスーとはほとんど話さないはずなのに。
「ウチもなのよ。わたしのとお母さんの…。」

 スーの女子高生言葉がなんか変とか、フツーそんな言い方しないとかっていうことは、ここでは大事ではない。
 大事なのは、下着が忽然と姿を消していたのがわたしの家だけでなく、スーやカレンの家でも起きていた、そのことだ。
 いや。実は、この下着消失ミステリー。
 この時既にわたしやスー、カレンの家だけでなく、町中で起きていたらしい。
 もっともそれは後になってわかった話。その時点では特に話題になっていたわけではないので、わたしたちたちが知るわけなかった。


 ところが…
「ねぇ、ケイト。あんた、まさかわたしの下着──。」
「ええっ。やっぱりお姉ちゃんも!?わたしのもなんだけど…。」
 そして、わたしたちの大騒ぎを聞きつけて来たお母さんも。
「あんたたちもなの?お母さんのもないのよー。」
 そんな風に2度、3度なくなる家も次々に出てきて。
 さらには、最初の頃はショーツやブラジャーと比較的小さ目のものだけだったのが、だんだんキャミソールやスリップ、ガードル、ストッキングと大き目の下着までなくなっていくようになっていって。もぉ町中大騒ぎ。

 なにこれ?下着泥棒の話?って思う人もいるかもしれないが、実は、下着泥棒ってカナダではあまり聞かない。
 日本に住むようになって友だちから被害に遭ったと聞いて、「そんなもの盗む泥棒がいるんだ」と初めて知ったくらいだ。
 とはいえ、これは下着泥棒のお話ではない。
 いや、泥棒といえば、まぁ泥棒なのかもしれないのだが…
 とにかく、そのことはかなり大事だ。


 本当の騒ぎが起きたのは、夏至の夜が明けた次の日のことだった。
 いや。その噂がどこから始まったのかはわからない。
 でも、気がついた時はわたしを含め、町中の人が知っていた。

 どこの誰かはわからない。それが男なのか、女なのかも。
 その誰とも知れない誰かは、その夏至の真夜中、家の窓から外を眺めていたらしい。
 まだ、鳴く虫のいない季節。
 音の消えた、いい夜だった。

 そんな夜にその誰とも知れない誰かが窓から外を見ていると、何かが浮かんでいた。
 それは、屋根より高い中空をフワフワ、ヒラヒラと。
「…!?」
 何だろうとよく見てみれば、それはなんとブラジャー!
「えっ!なに、妖精!?」

 その誰とも知れない誰かがいった誰なのかはともかく、夜にフワフワ飛んでいるブラジャーを見て妖精の仕業と思ってしまう感覚というのは、もしかしたら日本人にはわかりにくいのかもしれない。
 西欧では、夏至の夜に妖精たちや妖精王が丘に集まって宴をするという伝説があるのだ。
 そう。大事なのは、これが夏至の夜だったということだ。

「えっ!?なに、妖精!?」
 その誰とも知れない誰かは、そのフワフワヒラヒラ飛んでいくそのブラジャーを追いかけたのだという。
 空飛ぶブラジャーは、やがて町外れに。
 さらに町の外にある草原に…
 しかし、なおもフワフワヒラヒラと宙を飛んでいくブラジャー。
 今度は森に入って、抜けて。また森に入って、抜けて。
 そして、その遥か向こうでブラジャーはポトッと落ちた。
 駆け寄った誰とも知れない誰かが、その場所で見たものとは……

 妖精?
 まさか。

 もちろん、その噂にはその後がちゃんとある。
 でも、その噂を聞いたわたしは、実際にそれを見たのだから、ここはわたしが見たそのままをお話するとしよう。
 そう。大事なのは、まさにそこだ。


 そこにあったのは……

 ミステリーサークル!?
 のような……
 そこは、森を抜けたところにある、ポッカリ空いた緑の草原。
 そこにあった無数の下着。
 それらは、まるで大きな渦を巻くように敷きつめられていた。




                     ―― 怪談:16.6.26『夏至の夜』〈了〉


注!無断転載禁止
  断りなく転載されるのは非常に不愉快です。やめてください
  ブログの記事は全て「著作物」であり、著作権法の対象です
         ↑          
     ちょっと剣呑で、ゴメン(^^;)




Comment:4  Trackback:0
2016
06.25

おったまげーしょん! ←古っ(笑) ~6/26(日)に、修正・追記入れました


 

 ほら、ブログをやってると、日々何となくネタ探しちゃぁ、「あ、これネタにしちゃお!」なんてこと、誰でも多かれ少なかれもあると思うんですよ。
 当然、私もそうでして、つまり「今週はこれをネタにしちゃおっかなー」みたいに。
 やっぱり今週も、ある程度予定をたててたわけです(笑)

 ところが…

 昨日(6/24)のまさかのイギリスのEU離脱には、そんなもん、もぉ吹っ飛んじゃったって感じです。
 ま、正しくは、イギリスこ国民投票の結果が「離脱」だったってことなわけですが、いずれにしたって、「いっやぁー、まさか」って感じですよねー。

 そもそも、残留か離脱かを問う国民投票なんて、「あ、それって、いわゆる英国風ジョーク?」って感じあったし。
 そのうち、「ブリグジット」なんて符丁が流通しはじめたんで、あぁこれは投資家連中が世の不安をあおることで動く金で一儲けしようという、いわゆる連中のイベントであって。
 国民投票そのものは、もぉ出来レースなんだろうなーなぁ~んて思ってたわけですよ(笑)

 ところが…

 …ですよ。もぉー(爆)
 いや、あれって。
 国民投票の結果が「離脱」って予想してた人、どれだけいるんでしょう?
 あの、賭けのオッズっていうんですか?
 あれだって、ずっと「残留」の方が低かったわけでしょ?
 ていうか、その賭けで「離脱」のみに賭けてた人って、どのくらいいるんでしょうね?
 いくら儲かったか聞いてみたい(笑)

 今日朝やってたTV番組でも、英国政治の専門家の方々全員「残留」だと思ってたんで驚いたなんて言ってましたけど、もしかして「離脱」が決まって一番驚いたのは離脱派の議員だったりしてね(笑)
 それこそ、「やべっ。どうしよう…」みたいなー

 ただまぁ結果が出てみれば、「トランプ旋風と同じ」っていう解釈で100%納得しちゃえるのが面白いですよね。
 つまり、それが現在の「世の流れ」で、それがそのまま表れただけってことなんじゃないでしょうか。
 トランプさんを見てると、「あぁ…。あー、戦争ってこんな風に始まるんだろーなー」って実感出来ちゃうとこ、あるんですよね。
 つまり、こんな風に為政者が一般庶民のネガティブな思い汲み取って。それを利用して一般庶民を煽ることで、社会全体が興奮することで戦争は始まるんだろうなーって思っちゃうわけですが、そういう意味でも今回の一件は、もしかしたら「あれが時代の転換点だったよね」って言われるようになるのかもしれませんね。


 今朝見ていたTV番組では、「これからどうなるかは全く予想がつかない。なぜなら、誰も投票が離脱だった場合の青写真描いてないから」みたいなことを言ってましたけど、とりあえずはスコットランドが独立するのかって辺りが注目点でしょうねー。
 というか、キャメロン首相の後って、離脱派の元ロンドン市長とかいう人が首相になるの?

 スコットランド独立の国民投票の時は、バルセロナが独立でスペイン政府ともめているみたいな話がありましたけど、それも再燃するわけですものねー。
 ヨーロッパはそんな独立問題があちこちにあるらしいですから、EU分断以前にそっちの方が問題になってくる可能性がありますよね。

 EU分断の方も、例のギリシアの借金の返済がまた迫ってるわけでしょ?
 今回のイギリスの結果を見て、また国民投票って話になる可能性大ですよね。離脱になったら、即金返さなきゃならないわけですけど、でも金なんてないわけですもんね。
 そうなると、なんでもギリシアにはすでに中国の金が入ってるわけですから、その中国なり、あるいはEUと対立しているロシアも援助ってことになって。最悪のシナリオは、ヨーロッパの分断、つまり冷戦時代に逆戻り、もしくは「その前」にってことだって充分あり得るんじゃないでしょうか。
 さらには、現代はそこにISや、宗教を隠れ蓑にした一般市民による格差テロという状況が絡んでくるわけで……


 しかしまぁこうなってみると、「えー、参院選、誰(どこ)に投票するのぉ!?」って話ですよね。
 いや、ぶっちゃけ。
 いくらなんだって、今は与党が強すぎだから。参院選で「ねじれ」にした方がいいんじゃないのかなーなんて思ってましたけど(爆)

 こうなっちゃうと、政権を担当する用意のない今の野党(の議員)に投票するって正気の沙汰じゃないかも?って気もしてきますよねー(笑)

 いやはや…

 
 https://www.youtube.com/watch?v=G82q8Yds0hA
 * John Lennon - Nobody Loves You (when you're down and out)

 *16.6.26追記
 そういえば、EUには、曲がったバナナはダメとか、子供だけで風船を脹らましてはダメ(飲み込まないように)みたいな、EU(政府)が決めてEU諸国に押し付けられるルールがあるんですね。
 そういうのを聞くと、EUって、理想主義を掲げすぎて、結果、過激だったり、過剰だったりな正論がまかり通ってしまうみたいなとこがあったんでしょうね。
 そう考えると、今回の英国の国民投票による余波はともかく、毒を出すって意味でよかった面もあるのかもしれませんね。



Comment:6  Trackback:0
2016
06.19

怪談:16.6.19

Category: 怪談話-番外

 A辺さんは電気関係の仕事をしている方ですが、それは30代前半の頃。東京近郊のある街に住んでいた時のことだったそうです。

 あれは、その街に住むようになって2年目で、どこに行けば何があるとかわかってきて、また顔馴染みの店なんかも出来た、そんな頃だった。
 住んでいたアパートは契約更新するんだろうなーなんて、特に考えていたわけではなかったが、逆にいうと引っ越したいとは思ってなかったということだろう。
 可もなく不可もなくというよりは、可もあったし不可もあった。それは当然だろう。ただ、引っ越したいと思うほど不可ではなかったということだ。
 
 比較的新しい建物で、住人もごくごく普通で。
 もっとも、特に親しくしてたわけではないので何となくでしかないのだが、単身者用のアパートだったからそんなものだろう。
 アパートといっても、いわゆる木造モルタル2階建てのヤツじゃなく。コンクリの、しっかりした造りの3階建てだった。
 もっとも、マンションという風ではなかったから、コーポといったらイメージしやすいのかもしれない。
 ただ、大家が古風なのか。建物の名前は第二Z荘と、大家の苗字がついていた。
 
 俺が住んでたのは3階の角部屋だった。
 戸建てが多い住宅街だったから、比較的眺めもよかった。
 駅からも近かった。歩いて10分かからないくらいで、建物の端にある階段からよく見えた。
 
 駅のこっち側は完全に住宅街だったが、向こう側に行くとスーパーなどのある商業地になっていた。
 その一角には、小さいながらも居酒屋やカラオケスナックだのが集まってる場所があった。中には怪しげなマッサージの店などもあって、普通の住宅が広がるその街の中で、そこだけは猥雑な感じがあった。
 当時、俺は飲むのが唯一の趣味と言っていいくらいだったので、休みの日や会社が早く終わった日などに行った。
 熱烈な巨人ファンの親父がやってる店があって、やっぱり巨人ファンだった俺は常連だった。

 あの時っていうのは野球のシーズンは終わっていたから、11月も中旬を過ぎていたんだろう。
 土曜日で、特にすることもなかった。夕飯を作るのも面倒なので、俺はいつものごとくその巨人ファンの親父の店に行ったのだ。
 北風が強く吹く寒い日で…、そう考えると、もう12月に入っていたのかもしれない。
 とにかく、店の戸を開けて、親父の「いらっしゃい」という声を聞いたのと、店内のもわっとした空気が顔にあたったのを感じた時、思わず大きく息を吐いたのを憶えている。
 
 いつもならカウンターに座るのだが、その日はいっぱいで店の隅のテーブル席に座った。
 俺は常連だったから、いっぱいでも招き寄せられて詰めて座ってしまうのだが、テーブル席に座ったということはその時カウンターに座っていたのは常連客ではなかったのか。それとも、たまたまそういう気分ではなかったのか。
 いずれにしても、オレの前にふいと座ったB田さんと話し始めたのは、店に来てそんなに時間が経ってない頃だった。

「どぉ?A辺さん、最近。」
 どぉ?最近って、B田さんとは確か先週もここで会っていた。
 確かというのは、酔っぱらって記憶が定かでないことも多いという意味で、つまり、B田さんもここの常連だった。
「どぉって…。あぁそう、すっかり寒くなっちゃいましたねー。」
「今年はダメだったからさー。余計寒く感じちゃうね。」
 ダメというのは、もちろん野球のことだ。常連だけあって、B田さんも当然熱烈な巨人ファンだった。
「こう寒くなっちゃうと、B田さんも仕事大変でしょう。」
 B田さんは、この街で建設業だったか何かを営んでいた。
「うん、まぁねぇー。
 ただまぁ夏は暑い、冬は寒いは毎度だからさー。
 で、どうなのよ。A辺さんとこは?」
「どうって?」
「景気、景気。ま、当節、どこもお寒いか?ハッハッハ。」
「ハハハ。聞くだけ野暮でしょ。」
 
 俺もB田さんもそう言って笑いながら、2人とも何となくビールを飲んだりつまみをつついたりしていた。
 そんな途切れた会話に気詰まりになって、話の接ぎ穂を探していた時だった。
 ススーっと息を吸う音に、見ればB田さんは何やらしかめっ面。目はあらぬ方を見て、何かを思い出しているような顔をしていた。
「どうしたんです?」
「あぁ。あれ…、あの、ほら…。」
「えー、何です?もう酔っぱらっちゃいました?」
 何を言いたいんだかさっぱりわからないB田さんの顔を見ていたら、俺は思わず笑いだしてしまった。
「あぁだからさ。A辺さんって、確かウチは…。」
「えぇ。駅の向こっかわですよ。」
「そう。確か、駅の近くだって言ってなかったけ?」
「うん。そうですよ。第二Z荘…、って言ったってわかんないか。
 ハハハ…。」
「うん。わかんない。アハハハ…。
 いやね。実は、最近、ちょっと変な話聞いてさ。」
「変な話?」
「うん。仕事仲間に聞いたんだけどさ。
 駅の向こうに、呪われたマンションがあるんだって。」
「の、呪われたマンション!?
 何ですかそれ。この寒いのに…。」
「いやね。何でも、そのマンション。不幸が続いてるって言うんだよ。」
「不幸が続いてる?
 不幸が続いてるって、えっ?それは、亡くなってるってこと?」
「うん。まさに、そういうことらしいんだけどさ。」
「駅の向こうでマンションって、そんなにないんですけどねー。
 駅からちょっと行ったとこなのかな?」
 前にも言ったように、駅の向こう側というのは戸建ての住宅の多いエリアだった。マンションは…、といっても最近のタワーマンションやマンモスマンションみたいにデカいものではないが、たぶん4、5軒くらいあった。
 でも、不幸が続いてるみたいな、そんな感じは特に記憶はなかった。といっても、俺は昼間は会社だから詳しいことはわからないのだが。

「うん。駅からずっと行った、あの大きなマンションではないらしいんだな。
 駅の近くだって言ってたなー。」
「駅の近く、ふーん…。
 いやぁ、でも、ウチの周りはそんな感じないですけどねぇ。」
 俺は頭の中で、もう一度最近の辺りの風景を思い起こしてみたが、やっぱりそんな風景、つまり葬式の風景なんて記憶になかった。

「何でもさ。女の幽霊が出るんだって。」
「女の幽霊ぇっ!?」
「それがさ、夜中、マンションの通路を歩いてんだってさ。」
「マンションの通路をねー。
 え?じゃぁつまりその幽霊を見た人が死んじゃうってこと?」
「あ…。いっやぁ、そうは聞かなかったけど…。
 でもまぁそういうことなんじゃねぇーの、普通。」
「えぇっ?そういうことなんじゃねーのって、もぉー、ハハハ。
 やだなー、B田さん。
 もしかして、相当曖昧な話だったりします?」
 10は軽く年上で、しかもやたらガタイのいいB田さんに、まさか、それって相当いい加減な話でしょ?とは言いにくかった。

「あー、いや。違うって。
 俺が聞いたのは仕事仲間からだけど、
 その話の大元は、その仕事仲間のとこにいる若いのからだから。
 何でも、その若いの。
 そのマンションの近所に住んでて、その女の幽霊を見たことあるって言うんだもん。
 まー、そんなアヤしい話じゃないと思うよ。」
「えぇっ!?
 その人、そのマンションの住人じゃないのに、どうして幽霊を見たんです?」
「あぁ。だから、通路に出るんだって。
 通路だったら、外から見えるだろ。」
「あ、そうか通路か。それなら見てもおかしくないのか。」
 俺は、女の幽霊が通路を歩いているのを外から見ている絵面を思い浮かべていたのだが、ふと思った。

「えー、でも、その人は何で幽霊だと思ったんです?
 何で、そこの住人だって思わなかったんだろ…。」
「あぁ、うん。だからそのマンションで葬式が続いてたからだろ。」
「あー、そういうこと。
 えー、でも、それじゃぁ幽霊かどうかは定かじゃないんですよねー。」
「あ、違うんだって。
 その若いのは、近所の人から聞いたらしいんだ。」
「えぇっ。近所の人に聞いたんですか?
 何だ、その人が幽霊を見たわけじゃないんだ。」
「あー、いや。だからA辺さん、違うって。
 若いのは見たんだよ。幽霊を、さ。
 あー、いや、違う。悪ぃ悪ぃ。
 夜、たぶんこんな風に飲んで、家に帰ったんじゃねぇの?
 そしたら、そのマンションの通路に女が歩いてたと。
 それを見て、幽霊と思ってビックリして近所に聞いたら、
 いや、あれはホントに幽霊だと言われて、またビックリ。
 たぶん、そういう話なんじゃないかな?
 あ、いや、違うか。
 幽霊が出るって聞いてて、見ちゃったってことなのかな?」

 その時俺は、つい吹き出してしまった。
 B田さんが聞いた話も曖昧なら、それを語った大元が聞いたことも曖昧だったからだ。
 そんな曖昧に曖昧を重ねた話に、さらにB田さんやB田さんの仕事仲間が推測を重ねた話なもんだから、何がホントで何が後から付け加わったのかわからなくって。
 なんと言うか、ちょっとB田さんらしいなーって、もぉ可笑しくてしょうがなかった。

「だから、これはホントなんだって。
 その若いのが言うには、近所の人も何人も見てるって言うんだからさ。」
「えぇー、でも、B田さんは、
 直接それをその人から聞いたわけじゃないんでしょう?
 ハハハ…。」
「あぁもちろん、もちろん。俺は仕事仲間から聞いたのさ。
 でも、その若いのって、
 俺の仕事仲間が自分のとこで使ってるヤツだからさ。
 ていうか、俺もそいつのことはよく知ってるし…。」
「だから、幽霊は幽霊でいいんですけどー。
 そこで不幸が続いてるっていうのがちょっとなぁ…。
 だって、幽霊と不幸って、何で一緒になっちゃうんです?フフっ。
 そっこが、ちょっとなぁー。」
「いや。そりゃそう…。
 あー、まぁそういやぁそうかぁー。
 ま、確かにな。それはA辺さんの言う通りだわな。ハハハ。
 ただまぁさ。そこは一緒にしちゃうのが人情ってもんなんじゃねーの?」
「あっ…。
 ま、そりゃそうか。ハハハっ。
 そうですよね。そう言われると、俺も理屈っぽく考えすぎてたな。
 確かに、幽霊みたいな話ってそういうもんですよね。ハハハ…。」

 あのB田さんが妙に神妙な顔して話すから、俺もつい真面目に聞いてしまったが…、というかその頃にはB田さんも酒の席のあの全てが冗談って口調に変わっていた。
 というか、たぶん、その頃には俺もB田さんもいい加減酔いが回ってきてたのだろう。
 その後も私はB田さんと、名残のようにその幽霊を酒の肴にして話していた。
 今度は、ちょっと下卑たニヤニヤ笑いを浮かべながら。
 
「でさぁ。なんでもねぇ、A辺さん。
 その幽霊っていうのがさぁ、小娘ってんでもなくぅ。
 かといって熟女っていうんでもなくぅ。
 30前後くらいのいい女らしいんだなぁ、こっれがぁ…。」
「あぁいいですねぇー。俺もちょうどその位が好みですねぇー。」
「ストレートの長い髪でさぁー。」
「あぁ、ますます…。
 って、ちょっと待ってください?
 それって、ウチの近くの話なんですよねぇ~?
 いっやぁ~、見たいなぁ。見たい!見たい!ハハハ。
 そうだ!どうですぅB田さん。
 これから、その幽霊さんを見に行っちゃうなんていうのはぁ?
 行ってさ、ちょっとナンパしちゃうとかぁ?ヘヘっ。」
「へっへー。それがダメなんだなぁ。」
「えー、ダメって何でぇ?やっぱり幽霊だからですぅ?
 幽霊は、生きてる男には興味ないんですかぁ~。
 こんなにいい男なのにぃ~。もぉっ!」
「いや、そうでもないらしいぜぇ。
 そっちが好きなのもいるって話きいたぜ~。」
「じゃぁいいじゃないですかぁー。」
「だからぁ。ダメなの、幽霊とはぁ。」
「何でですかーっ!」
「何でもぉ。幽霊としちゃうとアレがダメになっちゃうって…。」
「えぇーっ!?ダメなになっちゃうって…。
 うーん。それはヤだなぁ~。」
「だろぉ?
 俺は、もぉ息子も娘もいるからいいけどさぁ。
 A辺さんはまだ独り身なんだからさ、ヤバイぜぇ~。」
「あっ!」
「何だよぉ?」
「ズルい、B田さん。
 そんなこと言って、自分だけいい思いしようとしてーっ!」
 いやホント。自分のことながら、酔っ払いというのはどうしようもない。

「だからっ、言ってんじゃん。
 あの幽霊は、ダメなんだってぇ。」
「だーから、ダメとか言って言って、
 B田さんは、自分だけいい思いしようとしてるんしょぉ?
 ズルいよー、ズルい!
 奥さんに言いつけちゃいますよぉ~。ハハハー。」
「あぁー、アレはコワい。ユーレイよりコワいっ!
 この世で一番コワい!閻魔さまよりコワい!
 なぁ~んて、ハハハ。だからぁっ!そういう話じゃなくって。
 いい?A辺さん、よく聞きなよぉ。
 あの幽霊はね、子供がいるのっ!子供が…。」
「えぇっ、子持ちなの?てことは、旦那も?
 あぁー、ショックぅ~。
 俺、幽霊にフラれたぁ~。ハハハ…。」
「何でもさぁ。仕事仲間の若いのが言うにはさぁ。
 あの、ほら、ベビーカーって言うの?」
「ベビーカーぁ?」
「ベビーカーを押して歩いてるんだってさぁ。」
「……!?」
「きゅる、きゅる、きゅる…って。
 マンションの通路をさ、そんな風な音たててぇ。
 ね?聞いてる?
 女の幽霊がベビーカーを押して歩いてたんだって。
 きゅる、きゅる、きゅる…って。
 あれ?どうしたのよ、A辺さん。
 いきなりそんな怖い顔してぇ…。」
 

 その時。そう。B田さんの言ったそれが頭の中で像を成した時。俺は、それが記憶だったことに気がついて、一瞬で酔いが醒めてしまったのだ。
 というのも、B田さんが話していたソレ、実は俺も見たことがあったから。
 それも…、そう。もうわかってると思うが、俺の住むアパートで……

 やっぱり、こんな風に飲んで帰った時だった。
 巨人が逆転勝ちした夜で、すっかりいい気持ちでアパートの階段を上っていた時だった。
 きゅる、きゅる、きゅる…
 耳慣れない音に目をやれば、そこは2階の通路。
 そこに、ベビーカー押す若い女性の後姿があった。
 きゅる、きゅる、きゅる…とベビーカーを押しながら、通路の向こうに…

 あれ?あんな女の人、住んでたっけ…
 その時、ちょっと怪訝に思ったのは憶えている。
 でもまぁ単身者ばかりのマンションだ。
 誰かを訪ねて来たのかもしれないし、引っ越してきたのかもしれないし…

「こんばんは。」
 つい口から出てしまったのは、やっぱり酔っていたからだろうか?
 たぶん、それが若くてきれいそうな女性だったから、顔を見てみたかったからかもしれない。
 俺の声に、ベビーカーの音がふっと止んだ。
 そして、女性が一瞬振り返った。
 いや。振り返ったというよりは、目だけでこっちを見たのかもしれない。
 というのも、その長い髪がちょっとこっちを見るように振り返っただけで、顔を見た記憶はない。
 とにかく、その長い髪が…、あぁそう。もしかしたら、頬から顎にかけてだけチラッと見えたかもしれない。
 確かなのは、俺がまた階段を上りだしたら、また、あのきゅる、きゅる、きゅるという音が聞こえたこと……


 その女を見たのは、それ一回だった。
 だから、そんなことはすぐに忘れてしまったのだ。
 俺が見たソレが、B田さんの言っていた幽霊なのかはわからない。
 だって、少なくとも俺の住んでたあのアパートで不幸が続いたなんてことはなかったわけだし…
 実は、それは不動産屋を通じて大家に確認したのだ。
 その後、引っ越し先を探す時に。


 
 そんなA辺さんのお話ですが…
 ま、それはそれとして。
 変な話、怪談的な出来事っていうのは、例えば隣りの家に毎晩幽霊が出ていたとしても、それはたぶんわからないと思うんです。
 そんな風に、あなたの家の近所でそういうことが起こってるなんてこと、あなたが知らないだけでもしかしたらあるのかもしれませんよね。
 そしてそれはある日噂として、あなたのところに届くのかもしれません(笑)
 



                      ―― 怪談:16.6.19『ご近所伝説』〈了〉


注!無断転載禁止
  断りなく転載されるのは非常に不愉快です。やめてください
  ブログの記事は全て「著作物」であり、著作権法の対象です
       ↑
   ちょっと剣呑で、ゴメン(^^;)




Comment:2  Trackback:0
2016
06.18

梅雨の晴れ間


 今日は、梅雨の晴れ間で、ちょっと夏みたいな日でしたねー。
 
16618_梅雨の晴れ間IMG_3076

 夏といっても、ウチの辺りは風が北よりだったせいか、爽やかな夏って感じでかなり気持ちよかったです(笑)


 そ~んな爽やかな夏っぽくていい日だったんですけど、でもまぁ私、性格が爽やかじゃないもんでー(爆)
 いつものごとく、どーでもいい話なんですけど、なんでもニュースによると、最近玉ネギが高いんだとか。

 玉ネギが高いってー。
 えー、確か5月の下旬くらいに八百屋に行ったら、玉ネギが安いんで、つい買っちゃった記憶あるけど、どういうことぉ!?って、見ていたんです。

 何でも、この時期出荷の多い佐賀県で病害が発生したことで値段が上がっているんだとか。
 ちなみに、今日八百屋に行ったら、まぁ確かに一袋3つ入って190円とかあって、ちょっと高いのかなって感じ?
 ただ、反面、その隣では3つで100円もあったり
 というか、6つで128円というのもありました(ただし、玉ネギの形が丸じゃなくて三角だったwww)


 いや、まーねー。
 佐賀県の生産者にはこんなこと言ったら申し訳ないですけど、でも、それって一般の生活者が知らなきゃいけないことなのかなぁ…とも思うんですよね。
 だって、野菜の何々が高いなんて報道するとさ。それを見た人が、つい付和雷同しちゃって。特に必要もないのに玉ネギ買っちゃうなんてこと、絶対ありそうじゃん(爆)

 だって、前に、八百屋の人も言ってましたよ。
 野菜は地域特性も微妙にあるんだから、ああいう東京目線のニュースは迷惑だ!って。

 そもそも、この季節だもん。安い野菜なんて、他にいくらでもあるじゃん(笑)
 とか言って、今年はずっと全般に高いだよなー(泣) よっぽどそっちの理由の方が知りたいぞ!
 やい!ニュース。掘り下げが足りないぞ!そっちもちゃんと調べろ!(笑)

 玉ネギが高いなら、他の安い野菜をイッパイ食えばいいじゃん。
 そんな高い玉ネギをわざわざ買って、一般庶民が日銀の物価目標に協力したってしょーがないと思うけどな(笑)

 ていうか、最近野菜がやけに高いのは、もしかして農協が日銀とつるんでる……
 なぁ~んてこと、まさかないよねー(爆)
 いや。意外とあったりして?(笑)


 …って、あれ!?何の話だっけ?(笑)




 ニュースて言えば、今週は「AIが作曲した」っていうのが印象深かったですね。
 ニュースの人は「聞きやすい」って言ってたんですけど、私は、ミョーっにクセのあるメロディを作るんだなーって、ちょっと意表をつかれました(笑)
 *DigitalFan(曲が聴けます)
 https://digitalfan.jp/126874



Comment:2  Trackback:0
2016
06.12

タコが言うのよ… ←樹氷か!(笑)

都市伝説じゃないですけど、いや、ある意味怪談(怪しい話って意味で)なんですけど、タコが大根を盗むという話がありますけど、あれ、どうなんでしょうねー(笑)


 なんでも、真夜中、タコが陸地に上がってきて。
 ヌラヌラ、ヌラヌラ大根畑に向かって行く。
 大根畑に着いたタコは、目ぼしい大根を見つけると。
 植わっている大根の上からすっぽり被さるような状態で、大根の上の部分を口で咥える。
 タコが大根の上部を咥えたまま、8本の足をピーンと伸び上らすと、あら不思議、大根は畑からスッポリ(笑)
 かくして、タコは大根を抱えて海に帰って行く。

 という話なんですがー。
 私がそれを知ったのは、西丸震哉という旧水産庁で官能研究という味覚の研究をしていた人の本なんですけど、今ネットで見てみるとTV番組でも実験をしたなんてありますね。


 まぁ、そもそも基本海の中に住んでるタコが、何で陸にしか存在しない大根を知ってるんだ?というのはあるし。
 知ってたとしても、何で海に住むタコが陸地の大根のありか(畑)がわかるとも思えないし。
 ていうか、それを言うなら、何で海に住むタコがわざわざ陸地に上がってくるんだよ?って話ではありますよね(笑)

 いや、その通りです。
 その通りなんですけど、でもその話(伝説?)って、昔から日本のあちこちにあるようで、なーんか、とっても不思議で。
 不思議なとこが、ミョーっ!に大好きです(笑)

 海辺に大根畑がある地域の人なら(それこそ三浦半島の人とか)詳しいこと知ってるんじゃないのかなーと思うんですけど、でも、そういとこ、タコはミステリアスなままにしておきたいようで。意外と、そういう知り合いいないんだよなー。


 まー、何にしても大根を盗むタコ。
 人として生まれたからには、一生に一度は見たいものです(笑)



16_6_11_月と木星IMG_3071

昨日の夜、月の上にやたら明るい星があるんでなんだろう?と思ったら、なんと、また木星(笑)  
同じこと、今年の初めにもやったんだけど、ていうか、あれからもぉ半年経っちゃったって、えーっ!ホントかよ!?   


    ていうか、明日の朝どしゃ降りだって…(泣)



Comment:2  Trackback:0
2016
06.12

怪談:16.6.12

Category: 怪談話-番外

 都市伝説といえば、そう!やっぱり「口裂け女」ですよねー。
 ぶっちゃけ、アレ(あの話)が日本中を駆け回ってた時の、あの感覚を味わえなかった人って、人生、ちょっと損してると思う…、なんて言ったら、やっぱり怒られちゃうんですかねー(笑)

 口裂け女のウワサが広まったのは、世間一般的には1979年の春から夏ということになっているようですが、私が初めて噂を聞いたのもやはりそのくらいでした。
 たしか、79年の5月の下旬か6月くらいだったと思います。
 いや。最初に聞いた時は、ホント驚きました。
 だって、初めて聞いた時点で、それを話していた友だちは「口裂け女」なるものを“常識として語ってる”んですもん(笑)
 いやもぉ、「何なんだ、その話!?」って。
 完全に虚を突かれたという感じで、結構信じちゃいました(爆)

 その後も、毎日毎日、学校に行く度に新しい情報が入ってきたり(!)
 その新しい情報も、一人じゃないんですよね。いろんな友人から入ってくる。
 あの時のあの情報の源って、一体何で、そしてどこから来たんだろうと、今でも不思議に思います。
 「口裂け女」は、そんな風に情報が常に更新されていたことも、それを信じさせられる理由だったのかもしれません。

 そんな日々更新されていた情報の中で、私が一番記憶に残っているのは、ある昼休み後にパーッと広まった情報。
 それは、夏を思わせるカーっと晴れたある梅雨の日のことで……


 昼休みが終わって、とうに5時間目が始まっている時間だというのに先生がやってこない。
 遠くの方から、せわしないパトカーのサイレンが聞こえる。
 サイレンなんてそんなこと、クラスの誰も気にもとめなかったが、いつになくサイレンの数が多かったのは誰もが気がついていた。

 5分、10分、20分と時間が過ぎていき。クラスのガヤガヤも最高潮に達した頃、いきなり教室の前の戸がガラガラって開いた。
 見れば、どこかのクラスの男子生徒。
 その男子生徒が、入口のそばに座っているAクンに何か話している。
 なんだろうと、見ているとAクンが立ち上がって、
「Bクン。彼が学級委員長に話があるって。」
 学級委員長のBクンを呼んで、入口に立っている男子生徒を指差した。
「えっ、何?」
 今までにない出来事に、ちょっと慌て気味のBクン。いそいそと入口に立っている男子生徒の方に歩いていった。

 Bクンがそばに来るのを見たその男子生徒。
 すると、今度はBクンを手で廊下に招き寄せ。今度はドアの向こうで話しだした。
 もちろん何を話しているかは聞こえない。
 でも時々、「ホントかよ!」とか、「Z町だろ?うん、いるよ。オレたちのクラスにも」とか。
 はたまた、「でも、警察も出てるんだろ?」など、途切れ途切れにBクンの声が廊下から飛び込んできた。

 授業中に他のクラスの生徒がやってきて、学級委員長を呼び出し話をするというだけでもいままでにない事だった。
 それだけでも、もう何なんだ?って興味深々なのに、「警察」やら「Z町」といった刺激的だったり、具体的な地名だったりする言葉が聞こえてくるのだから堪らない。
 2人の会話をなんとか聞き取ろうと、教室はシーンと静まり返っていた。

 そんな中。
「じゃ、オレは次のクラスに伝えるから。
 Bクンは、クラスのみんなに説明しておいてくれないか。」
 なぜか、その言葉だけはよく聞こえた。
 そして、隣のクラスの方に向っていくパタパタという足音も。
 やがて、教室に入ってきたBクンは、何やら顔をしかめていた。

「おい!何なんだよ、B。何があったんだよ?」
 みんなが口々に叫ぶ中、Bクンは何か考えながら教卓の方にゆっくり歩いていく。そして、教卓の所に立つと。
「おい!ちょっと静かにしてくれよ。」
 途端に今までのざわめきがウソのように静まった。
「今来たの、10組の学級委員なんだけど、
 アイツが言うには、昼頃にZ町の辺りに口裂け女が現れて、
 今Z町辺りを逃げまわっているらしい。
 ほら、さっきからパトカーの音がずっとしてるけど、
 パトカーが何台も出て、追いかけているところなんだってよ。
 先生が来ないのは、そのことで緊急の職員会議が開かれているかららしいんだ。」
「えーっ!」
「ホントかよっ!」

 もぉクラス中がとんでもない興奮状態だった。
 「ホントかよー」「どうやって帰ったらいいのよ?」などと不安そうに顔を見合わせているのは、当のZ町の生徒。
 Z町以外の生徒も、「ついに、口裂け女も捕まるのかなー?」「パトカーじゃ口裂け女捕まえられないんじゃない?」などと口々に話していた。

「おい!ちょっと静かにしろよ。
 でさ、先生が来たらまた詳しい話や指示があるんだろうけどさ。
 今日って、早退の予定のあるヤツいるか?いないよな?
 今来た10組の学級委員長のアイツが言ってたのは、
 早退するヤツがいても、先生が来るまで帰らないようにしとけってことなんだけど…。」
「あ、Bクン。オレ、今日早退するんだった。」
「バーカ。Cクンの家は校門の真ん前だろ。
 Cクンなら今すぐ帰ってもいいよ。」
 そんな風におどけている生徒もいる一方、Z町をはじめそっち方面に住んでいる生徒や、家が学校から遠くの生徒は、気味悪そうにしていた。

 先生が来たのは、そんな騒ぎの真っ最中だった。
 教室の戸がガラガラって勢いよく開いたかと思うと、
「こらっ!お前ら、うるさいぞ。
 先生が来ない時は静かに自習してろって言ってあるだろ!」
 そう怒りながら教室に入ってきた先生に、あれほど騒々しかったクラスは一瞬でシーン。
 しかしすぐに。
「先生、口裂け女はどうなったんですか?」
「捕まったんですか?」
 もぉ口々にワーワー大騒ぎ。
「静かにしろっ!馬鹿モンっ!」
 あまりの騒々しさに、先生は教卓を激しくバンバン叩く。その激しい音にやっと静まった教室。
「なんだぁ?口裂け女だぁ…」
 教室を端から端まで睨め回しながらの先生のその口調に、思わず全員がピーンと緊迫した。
 先生の怒りが爆発したのはその瞬間だった。
「お前かーっ!今、口裂け女って言ったのは!」
 いつものことながら災難なのは、教卓の前に座っている生徒。
 まさに真上からの怒鳴り声と睨みの圧力。なんにも言えずに、ただただ下を向くしかない。
「お前ら、今何の時間なんだと思ってるんだ?
 おい!Bっ!お前、今は何の時間なんだ?言ってみろ!」
 怒りの矛先は、学級委員長のBクンに…。

「じゅ…、授業の時間です。」
「ちゃんとわかってんだな。
 なら、授業中に口裂け女なんて言っていいのかもわかるよな。
 どうなんだ?あぁっ!」
 先生は、言葉の最後に教卓をバーン!と叩いた。
 そっとBクンの方を見ると、あのBクンですら、今日の先生の怒りの迫力の前にはずっと下を向いているばかりだった。

 しかし、そのBクンがおずおずと口を開いた。
「あのー。さっき10組の学級委員長が来て。
 Z町に口裂け女が出たから、そのことで緊急職員会議が開かれてるからって──。」
「口裂け女ぁ?緊急職員会議ぃ?
 お前、何ワケのわからないこと言ってんだぁ?」
 教室に、静かに響き渡っていく先生の怒りの声。
 そして、バーン!という教卓を叩く音が轟いた。


 当然といえば当然だが、結局デマだった。
 Bクンはじめクラスのみんなから詳しい話を聞いた先生は、「口裂け女だとかそんな話はまったくない。緊急職の員会議が開かれていたのは事実だけど、それは林間学校の件でだ」と。
 とはいえ、10組の学級委員長が来てそう言ったという話を聞いて、これは捨てておけないと思ったのだろう。
 「静かに自習してないと、今度こそ全員居残りだからな」と、クラス中を睨みまわして教室を出て行った。

 そんな教室を出た先生が真っ先に目にしたもの。
 それは、10組の教室の前に立っていた何人かの先生の姿。
 そこにいたのは1組から5組までの担任の先生と10組の担任。
 そして、10組の学級委員長の女子生徒……



 結局。1組から5組の教室をまわってデマを伝えた10組の学級委員長を名のった男子生徒というのは、誰だかわからなかったんです。
 いやそんなわけないだろうと思うかもしれませんが、なぜだかどうしてもわからなかったんです。

 それはともかく。
 何より不思議なのは、なぜこうも簡単にみんながそのデマを信じ込んでしまったか?ということです。
 まぁ、つまりそれが「口裂け女マジック」なんだよと言ってしまうならば、それはその通りなんでしょう。
 いや。それは、もしかしたらあのタイミングでアレをある程度リアルなモノとして体感してない人はわからないのかもしれませんが…。

 実は、「口裂け女」というのは、地域によってその話を信じる度合いが微妙に異なっていたようです。
 その年の夏休みに、東京の下町に住んでいた友人の話を聞いたんですが、そちらでは口裂け女の噂というのは、はなっから冗談のネタみたいな感じで広まっていたんだそうです。
 それに対し、私の通っていた学校のエリアでは、かなり信憑性のある話としてウワサが広まっていたように思うんです。

 もともと信憑性のあることとしてウワサが広まっていた地域に、緊急の職員会議、昼休みに聞こえたパトカーのサイレンといった関係のない因子が同時に紛れ込んで。そこに、スーっとデマが入り込んで、たちまち燃え広がっていく…
 それは、例えば関東大震災の時におけるデマからはじまった朝鮮人の虐殺事件だったり、情報番組で放送した食品が放送した次の日にスーパーで売り切れといったこと。はたまた、あるタレントのブログがアクセス数トップとなると、たちまちみんながそのブログにアクセスしさらにアクセス数が上がる等々、それらの構造とたぶん同じなのでしょう。

 ある意味不思議だけど、でも意外と当たり前のことで、そのくせみんな当たり前とは思わないから時としてヤバかったりするんでしょうね。



                        ―― 『口裂け女逃亡中(爆)』〈了〉


注!無断転載禁止
  断りなく転載されるのは非常に不愉快です。やめてください
  ブログの記事は全て「著作物」であり、著作権法の対象です
          ↑
     ちょっと剣呑で、ゴメン(^^;)




Comment:2  Trackback:0
2016
06.12

ギックリ・ウィーク(泣)


 今週は、何を思ったか久しぶりにギックリ腰やっちゃって。
 いやはや、もぉ地獄の一週間でした(笑)

 ギックリちゃんは何年か前に初めてやって。
 ま、身動きとれない!って意味で、その時が一番最悪だったんですけど。
 今回のは、身動きはまぁ出来るんだけど、でもひょんな時に来る痛みが、もぉ激痛で(爆)
 いやもぉ、こんなイタいならいっそ身投げしちゃおっかな?ってくらいでしたねー。
 ネットでニュースになったら、「わかる!」とか「バカだ」等々、喧々諤々になるんだろうなー(笑)

 いやね。笑いごとじゃなくって。
 夜に寝てても、ちょっとした体の動きでビキーン!とくるんで、そのたんび「うぉーっ!」なんて、大絶叫。
 かなりデカイ声だったんで、もしかして隣りに聞こえちゃって。
 隣りの人、「え?何?オバケ!?」なんて、アセってたかもなーなんて(爆)


 まー、そんなギックリちゃんだったんで、今週は結構ニュースを見ました。
 でも、今週はニュース、つまんない!つまんない!
 都知事の政治資金問題なんて、そんなローカルニュースにばっかり公共の電波使ってんじゃねー!なんて(笑)
 
 あれって、まぁあの手の話はマスコミは大好きなんだろうけど、でも、東京都知事の話なんて、見てる人、いいとこ一都三県の人くらいなんじゃない?
 ていうか、MXテレビでやってれば充分!って?(爆)

 ていうかさ、東京都知事って、何で誰も彼も問題が起こるの?
 ていうかていうか、東京都知事って、みんな何であんなに嫌われてるの?(笑)
 他の県は…、まぁたまにそういう人もいるけど、でも毎回毎回そんなことないのになぁー、なんで?(爆)

 都知事のこと、みんなあんなに嫌いならさ、いっそ、みんなが大好きなアイドルとかにやってもらえばいいのにー。
 お金の話じゃ、どーせ、議会の面々も五十歩百歩なんだろーし。
 この際、知事と議員、みんなアイドルにしちゃって。
 TGK48とか名前付けたら、世界の日本好きの人たちに「さすがはニッポンだ!」ってウケると思うけどな(笑)
 CD売ったり、握手会やったりで税収も増えるよ!
 もしくは、都知事と議員、みんなゆるキャラにしちゃったらどう?「知事にゃん」とかさ(爆)

 意外と今までの知事よりいい都政しちゃったりしてさ(笑)
 ニュースも東京のローカルなニュースばっか時間さかなくていいから、視聴者は他のもっと有意義なニュースを見ることができてハッピ~♪なんてね(笑)

 あんなに騒ぐのは、結局、こき下ろして辞任に追い込むことが目指すとこで。
 そういう不祥事が起きない・起こさせない仕組みづくりなんて、マスコミも議会も都民も誰も望んじゃいないだろうなぁ~なんて思ってしまったんですけどー、ま、さすがにそんなことない?(爆)

 まー、なんだ。
 ギックリちゃんで腰が痛いと、人は世の中に向かって文句たれたくなるってことなのかな?
 


 
      ギックリちゃんで寝てたら、スキーに行った夢を見ました
      やっぱり、腰痛くて自由に体が動かせないからスキーの夢とか見るのかなぁ……




Comment:2  Trackback:0
2016
06.05

梅雨入りとか、火星とか…


 なんでも、気象庁が言うには、「本日6/5。関東地方が梅雨入りしたとみられる」だとかで。
 しっかし、梅雨入りしたとみられるって、梅雨なんて情緒の定義なんだもん。“みられる”もなにも、気象庁が「梅雨入り」って言うなら梅雨じゃんね(笑)

 まー、なんだ。
 気象庁って、陰陽庁時代のご託宣気分からいまだ抜けきれないってこと?(爆)


 でもって、梅雨になって雲だらけになっちゃうと、困るのが火星大接近ですよね。
 でも、先週は天気のいい夜も多かったので、火星、ちゃんと見れましたねー。

火星大接近16 (1)

 いっやー!火星、真っ赤っか
 タバスコ、かけすぎだと思う
 ていうか、写真を写したらほんとタバスコのシミみたい(笑)



 でもって、金曜日。例の七飯の行方不明の子供。見つかったのは間違いなくよかったんですけどねー。
 ただ、1週間、明かりも火の気もない自衛隊の演習場の小屋に一人でいたなんて話を聞いちゃった日にゃぁ、思わず「それ、ホントの話ぃ?」って(笑)
 ま、1週間経ったし。ウソついたお灸の効果もあったみたいだし…みたいなー
 
 ま、こんなこと言ったら怒られちゃうんだろうけどさ。でも、親に怒られて1週間も人里離れた小屋に籠ってるなんて、なんて依怙地な子供なんだろーって(笑)
 まぁそんなこと言っちゃいけなんでしょうけどねー。
 でも、見つかったと聞いた途端、よくよく考えたら親がやったことって、そんなに責められることだったんだろうか?って思っちゃったのは、何んなんだろう!?
 いや。山菜採りではぐれたと言っちゃったことは別としてね

 だって、あのがさ藪の森の中の一本道ですよ。
 ま、林道は脇道とか結構あることが多いから、実際は一本道でないのかもしれませんけどねー。
 普通、あの森の中に子供が入り込んじゃうとは考えないだろうし。
 一本道ならすぐ見つかるわけだから、おしおきでちょっと置き去りにしちゃうなんて、誰だってひょいとやっちゃうことなんじゃないのかなー。

 まー、なんだ。
 こんな事件さっさと忘れて、これからもガンガン子供を叱ってほしいですね。
 ですよね?ていうか、これから何よりそれが大事なんだと思うな!

 というか、ニュース等々の話での予断は禁物なんだなーって。
 私もそうですけど、例の教育評論家なんかもとっても学んだんじゃないでしょうか(笑)
 ニュース等も、見つかった時点で匿名報道に切り替えるべきだったんじゃないかな?

 ま、北海道は梅雨がないってことですし。
 今週は、タバスコかけすぎな火星を親子でじっくり見たらいいんじゃない?なんてね(笑)
 え、余計なお世話? すみません(笑)


 *Tom Waits - Grapefruit Moon
  https://www.youtube.com/watch?v=TKQaSZXEK2s
  誰か、タバスコマーズって曲、つくってくれないかな!



Comment:4  Trackback:0
2016
06.05

怪談:16.6.5

Category: 怪談話-番外

 伝説といえば、学校は伝説の宝庫ですよね。
 そういえば、私の小学校にも「○○小七不思議」なんていうのがありましたっけ。
 ま、御多分に漏れず、七つ全て知っている人はいないんですけどね(笑)
 そんな、学校の伝説ですが、それはAさんが小学校2年生の時のことだったそうです。


 雨の降り続く灰色の雲が厚く広がった6月のある日。
 火曜日か、水曜日か、木曜日か、あるいは金曜日か…。
 とにかく、その日の前日、そしてその日の次の日に学校がある曜日だったことは間違いない。

 その日の朝、ボクはいつもより遅い時間に学校に着いた。
 それは、雨のせいで集団登校のメンバーが集まるのが遅れたせい。
 とはいえ、そもそも集合時間が早目だったから遅刻の心配はなかった。

 いつもより遅い時間に着いた学校は、なんかどこか違う雰囲気
 いつもの時間なら、学校にはほとんど誰もいないのに
 教室のある2階に向う階段に他のクラスの生徒が何人もいて、何やらヒソヒソ話している
 なんだかそいつらの目が、やけに刺さってくるような気がするのは気のせい?
 ちょっと心細くなったボクが同じクラスの誰かがいないかと見上げた階段の上には、のっぺりとした灰色だけの空が写っている窓があった。

 それは、教室に入った瞬間にわかった
 昨日とは、何か明らかに違う教室の雰囲気
 いつもより遅く来て、クラスメートがたくさんいるせい?
 そんなわけはない
 なら、朝から降り続いている雨のせい?
 そんなわけはない
 なぜなら、昨日だって、その前だって同じような天気だったから
 そもそも、小学2年生の子供が天気でコロコロ気分が変わるものではない。

 とにかく、荒涼?、殺伐?、刹那的?
 もちろん、当時はそんな言葉なんて知らなかった。
 でも、昨日までの教室の空気とは異なる、どうしても好きになれない空気感があったのは確か。


 ボクが自分の席まで来た時だった。
 向こうで何人かで話していたBクンが、ボクの顔を見るなりパっと喜色を浮かべて駆け寄ってきた。
「Aクン、Aクン。あのさ、ちょっとこの話聞いてくれよ。」
 その時ボクは、仲のいいBクンが話しかけてきたことで、ちょっとホッとしたんだと思う。
 だから、いつものように笑って。「なんだよー」って言おうとしたら、いきなり、横から誰かに肩を組まれ横に引っ張られた。

「うわっ!な、なんだ?
 あ、もぉおどかすなよぉー。Cクンかー。」
「Aクンさ。いいから。
 オレの話、オレの話を聞いてくれよ。
 あのさ…。」
 Cクンの変に切羽詰まったような口調に何も言えないでいると、後ろからBクンの怒った声がした。
「Cクン、ずるいぞ。Aクンはオレが先に見つけたんだからな!」
 その口調に慌てて振り返ると、Bクンはスゴイ目をしてCクンを睨んでいた。
 もぉ何がなんだかさっぱりわからなかった。
 でも、Bクンも、Cクンも、ボクにとっては仲のよい大事な友達
 よくはわからないけどケンカはしてほしくない

「なんだよー、二人ともー。順番に話せばいいじゃんかー。」
 ボクは、何気なくそう言った。
 でも、この時。その順番に大きな意味があるなんて、まさか思わなかった。

「ほら。Aクンだって順番だって言ってるぞ。
 順番ならオレが先だよな。」
 Cクンに顔をグイと突き出して、嬉しそうに言っているBクンの顔。
 Cクンは、上目遣いで睨むようにBクンを見ていたが、おもむろにプイって向こうに行ってしまった。
「なんだよー、Cクン。
 どうしたんだよ?Cクンも話、教えてくれよ。」
 しかしCクンは、ボクの言葉には何も答えなかった。ただ教室の入口をジッと見ている。
 そんなCクンに何か言おうと思ったら、Bクンが腕をボクの肩にまわしてきた。
「なぁAクンさ、オレの話を聞いてくれよ。
 階段の横のトイレ、あるだろ?
 ほら、あのトイレの女子トイレ側──。」

 それは次のような話だった。
 今朝、朝一番で来た女子生徒(もちろんそれが誰かはわからない)が、学校に来てすぐトイレに入った。
 自分の教室にも、他の教室にも誰も来ていないような時間。当然トイレにだって誰もいるわけない。
 雨のせいで普段より薄暗いトイレの中。
 その女子生徒はちょっと怖い気持ちを抑えながら一番手前のトイレに入ろうとしたらしい。
 でも、その時。隣のトイレから、物音が聞こえたような気がして。
 首を伸ばすように、開いていた戸の隙間を覗いてみた。

 そこにいたのは…
 まだ羽がついているカラスを両手でつかんで、ガツガツ喰らいついている幼稚園児くらいの男の子。
 女子生徒に気がついたその男の子は、ウゥゥーっと歯をむき出して。
 女子生徒を捕まえようと、今までカラスを貪り食べていたその手を伸ばしてきた。
 慌てた女子生徒は、ドアを投げつけるように閉めて駆け出し、すんでのところで逃げることができたらしい。

「なんなんだよー、その話…。
 ホントの話なのかよー。」
 疑いの言葉を一応言ってみたものの、悲しいかなそこは小学2年生。そんなバカバカしい話を、その時点でボクはほとんど信じていた。

「ホントだって。疑うならさ、階段のトイレ見てこいよ。
 女子側のトイレの右から2つ目。
 便器の中、今でもソイツが食べていたカラスの血で、真っ赤らしいぜ。」
「えぇっ!血ぃ?
 本当かよー…。
 え?でも、Bクンはそれを見たのかよ?」
「いやだよー。
 そんなの見ちゃったら、怖くて夜トイレ行けなくなっちゃうだろ。
 でも、6組のDクンと、あとどっかのクラスの女子が見たって、誰かが言ってたなー。」

 ボクは怖がりのくせして、いや怖がりだからこそそういう話を信じてしまう方だった。
「なんよ、それ。怖いなー。やだなー。
 階段横のトイレ、もう行かれないじゃん。」
 その時ボクは、ホントに怖かった。
 でも、そんなことよりもっと怖いことが次に待っていたなんて知るわけもなかった。

「でさ、Aクン。これから先が大事なんだぜ。
 これから先を聞かないと、Aクンはヤバイんだぜ。」
 すごく怖い話なのに、何だか嬉しそうに話すBクンの顔。
 その時ボクは、ちょっと怪訝な思いでその顔を見つめていた。

「なんだよー。ヤバイって…。」
「Aクン、いいかい?
 これから言うことをしっかり聞けよ。
 Aクンはね。今の話をこれから24時間以内に5人に話さないと、
 夜、カラスを食ってた子供がやってきて殺されちゃうんだ。
 いいかい?24時間以内に5人だぜ。わかった?」
 そう言い終わるより早く、Aクンにクルリと背を向けたBクン。
 そして、両手を上にあげ、まるでバンザイでもするようなポーズ。
「やったー!オレ、5人に話した。これで大丈夫だ。」

「えっ!?なんだよ、それ!おいっ、Bクン!」
 5人に話をして呪いを解いてすっかり安心のBクンとは反対に、ボクはその時、暗黒の淵に突き落とされたような気持ちだった。

 24時間以内に5人に話さないと殺されちゃうって…、まっさかなぁー
 でもぉ。もし本当だったらどうしよう…
 本当のわけない……、よなぁー
 5人に話さなければ死んじゃうなんて、本当のわけ…、
 ないよなぁ……

 ボクは、Bクンの話を信じ込んで真剣に落ち込んでいた。
 もちろん、100%信じたわけじゃなかった。
 信じたわけじゃないけど、でも、もしかしたら本当かもしれなくて…
 でも、そんなことウソに決まってる
 じゃぁ誰にも話さない?
 でも、それは怖すぎる。だって、もし本当だったら…
 でも、ズルイなぁー、Bクンのヤツ
 自分さえ助かれば、ボクはどうなってもいいって言うのかよー
 クッソー
 よし、Bクンとはもぉ絶交だ!


 そう思ったボクだったが、でもその一瞬後には、今登校してきたばかりのEクンに話しかけていた。
「いいかい、Eクン。
 これから言うことをしっかり聞けよ。
 Eクンはね。今の話をこれから24時間以内に5人に話さないと、
 夜、カラスを食ってた子供がやってきて殺されちゃうんだ。
 いいかい?24時間以内に5人だぜ。わかった?」

 やっと1人
 あと4人か…
 とにかく。誰でもいいから5人に話しちゃえば安心できるんだから…
 そうだよ、あと誰か4人、あと誰か4人、あと誰か4人…
 えーっと、誰かいないか…
 ボクは教室の中を見回した。

「あっ、ねーねー、Fさん。あのさ…。」
 たまたま目についたのはFさんだった。
 これで2人目だと、ボクはもぉ必死だった。
 でも、Fさんは、ボクが話しかけた途端両手で耳をふさいで叫んだ。
「あぁー、Aクンまでー、もぉっ!
 その話聞いた、聞いた。もーっ!話さないでよーっ!」
 
 気がつけば、教室のあちこちで同じ光景が繰り広げられていた。
 Cクンの前で耳をふさいでいるのはGクン。
 Hさんの前で耳をふさいで、それでも足りないのかワーワー叫んで、話している言葉が聞こえないようにしているのはIさん。
 あっちでも、こっちでも…。
 そうしてる間にも、後ろから、
「ねーねー、Aクンさ。今朝どっかのクラスの女子がさ…。」
「ワーッ!ワーッ!もう聞いた。聞いた。
 ダメ。もぉ絶対聞かない!」


 結局、ボクが話せたのはEクンたった1人。
 今日は学校に来たのが遅かったから、もうみんな知っていたのだ。
 帰りに他のクラスの誰かに話せるさって思っていんだけど、それは甘かった。
 それは、話そうとすると耳をふさぐ、クラスでの光景の繰り返し。
 最後の頼みの綱だったのに…

 帰りの足取りは重かった。
 いつもなら近所のおばさんに「お帰り」って言われて挨拶を返すのが照れくさくてイヤで仕方ないのに、今日はそれを期待していた。
 でも、昨日から雨がずっと降り続いているこんな日に、歩いてる人なんていやしない。
 あの話を聞いたのは、確か8時半より前だった
 今は何時だろう?3時半くらい?
 だとすると…
 ボクは、指を折って残り時間を数える。
 あと17時間くらいか…

 家に帰ると、いつも通りに「お帰り」っていうお母さんの声がした。
 あと17時間で4人なんて話出来やしないのに。
 4人に話が出来なきゃ、それが残り3人だろうと2人だろうと、1人だって意味がないのに、ボクはお母さんにあの話をしないではいられなかった。
 
「ねぇねぇ、お母さん聞いて。今朝学校でね……。」
「……でね。
 この話を24時間以内に5人の人に話さないと、
 24時間後にカラスを食べてた子供に殺されちゃうんだって…。」
 ふぅ…
 あと3人だ
 あとは、そう。お父さんに話して…、でも残り2人か…
 あ、そうだ!
 お祖母ちゃんちに電話したらどうだろう…
 お母さんに話した後、ボクはそんなことを考えていた。

「なんなのぉー、A、その話ぃー。
 気持ち悪いのだけ、いっちょ前なクセして馬っ鹿馬鹿しい。
 たぶん、あんたがいつも見ているような変なテレビの影響ね。
 お父さんに言って、テレビ見る時間減らしてもらわないとダメね。
 あっ、そうそうA。今日の夕飯、あんたの好きなカレーよ。
 だから、おやつ食べるのほどほどにしなさいよ。わかった?
 もー!わかったらすぐ返事しなさいって、
 いつも言ってるでしょ。
 さて、夕飯の支度までひと仕事と…。」
 そう言って、また手仕事を始めたお母さん。
 そんなお母さんを見て、ボクは不思議でしょうがなかった。
 お母さんは、この話を聞いたのに怖くないんだろうか…

「ねぇお母さん。」
「えぇ?なによ。」
「お母さんは、今の話、怖くないの?」
「なによ?今の話って?」
「なんだよー。今話したじゃん。
 今朝学校で、女子がトイレでカラスを食べている子供を見たって話だよー。」
「あぁ、その気持ち悪い話。
 怖いも何も、そんなことあるわけないでしょ。
 本当に死んじゃうんなら、あんたの学校の生徒、ほとんど死んじゃうじゃない。
 そもそも、何でその男の子は殺しに来るのよ?
 5人話せた子と話せなかった子、面倒くさくて計算する気にもならないけど、
 その男の子は何人殺せばいいのよ?
 だいたい、幼稚園児っていったら、隣りのJちゃんよ。
 アンタ、Jちゃんのこと、いつもチビ!チビ!ってイジメてんじゃない。
 Jちゃんみたいな小さな子が、
 どうやったらアンタみたいに図体のデカイ子を殺せるのよ?
 それに、どうやったら5人に話したか話さないかってわかるのよ?
 あとは……、あぁもぉっ!
 そんな馬鹿馬鹿しいこといつまでも言ってんじゃないわよ。
 あんただって、もう小学2年生なんでしょ。
 いつまでも幼稚園じゃないんでしょ。
 そう。あと、さっさと宿題と予習復習やっちゃいなさいよ。
 ちゃんと勉強終わらせないなら、今日はテレビ見せないからね。
 わかった?」
「そんなこと言ったって、その子は幽霊かもしれないじゃないかー!」
「あのねー、幽霊は夜出るの。
 朝は寝床でグーグーグーって、あんたがいつも見てる鬼太郎の歌にもあるでしょ。
 まったくもぉー。
 お母さんだって忙しいんだから、いいかげんにしなさいよね。」
 いつもみたく、お母さんは忙しい、忙しいって言うクセしてホントによくしゃべるなんて考えられなかった。
 とにかくその時、ボクの頭にあったのは、あと3人に話さないとってことだけだった。


 そんなボクが、24時間以内に5人に話さないと死んじゃうって話を、世界で一番大事なお母さんとお父さんに話したってことの意味を理解したのは、眠れずに布団の中で悶々としていた時だった。
 もしこの話が本当で、お母さんとお父さんが死んじゃったらどうしよう…
 お母さんとお父さんが死んじゃったら、それはボクのせいだ
 ボクは、あの話を何でお母さんとお父さんにあの話を言っちゃたんだろう…
 たとえボクが生きていたとしても、お母さんやお父さんが死んじゃったら、なんの意味もないのに…
 なんで、話しちゃったんだろう…
 なんで…、なんで……
 あー神様。僕は死んでも、お母さんとお父さんは死なないようにしてください、お願いです

 その時ボクは、大事なお母さんとお父さんにあの話をしてしまったという後悔と、お母さんとお父さんが死んじゃったらという悲しさと恐ろしさで涙が止まらなかった。
 あー、なんで…、なんで…
 なんで…、なんで…
 なんで……


「Aっ!早く起きなさい。遅刻するわよ。」
 気がついた時は朝だった。
 涙で腫れぼったくなった目を洗って、お母さんが朝ごはん代わりにって握ってくれたおにぎりを食べて、ボクは集団登校の集合場所に向った。

 昨日の話なんて、誰一人話してなかった。
 いつも通り、TVのヒーロー物の番組の話、野球の話…
 女子の話している話はよくわからないけど、それはいつものこと。

 教室だっていつも通り。
 昨日のいつもと違う変な空気感なんて、どこにもなかった。
 気がつけば先生が来て1時間目が始まり、昨日ボクがあの話を聞いた時間から24時間はとうに過ぎていた。
 5人に話せなかったボクやその他の友だちも、あと5人に話せたBクンたちも、誰もがみんないつも通り授業を受けて、そして休み時間には目いっぱい遊んだ。
 誰かが殺されちゃうなんてことはなかったし、絶交もなかった。
 その日家に帰って、お母さんもお父さんもいつも通りだったのはいうまでもない。


 しっかしまぁ(笑)
 あの頃って、みんな、なんでこんなにバカだったですかね?(爆)
 ま、とはいえ。
 それは、大人になっても大して変わってなかったりするんですけどね。
 誰も彼も、みんな……



                 ―― 『24時間以内に5人に話さないと…』〈了〉


注!無断転載禁止
  断りなく転載されるのは非常に不愉快です。やめてください
  ブログの記事は全て「著作物」であり、著作権法の対象です
       ↑
    ちょっと剣呑で、ゴメン(^^;)


Comment:2  Trackback:0
back-to-top