2016
04.24

いやはや…

Category: R&R

 いやはや、タニス・リー。
 見事、撃退されちゃいました(笑)

タニス・リー
 上下で、何でこんなに表紙のテイスト違うんだよ…(笑)


 下巻の前半あたりから、自分がどこにいるかわかんなくなっちゃって…

 いや。ストーリーは、最後まで追えてたんですけどねー。
 でも、途中から、「何だかわかんないっ!」 ←岡本太郎か!(笑)
 そう。ちょうど『ニューロマンサー』を読んだ時みたいな感じ?(笑)

 ファンタジーというよりは、(なんとか)読んだじーって感じでした。
 って、この本を読んで感想がダジャレっていうのもスゴイですよね(爆)




    ていうか、そういえば、プリちゃん死んじゃったんですねー。


 
           なぁ~んか、ちょっとショック。
           ま、こういう時は、やっぱこの曲か…
      https://www.youtube.com/watch?v=oidpFKWfIiA
 
 
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2016
04.24

怪談16.4.24

Category: 怪談話-番外
 
 A藤さんの勤めていた会社は、不況の波でほどなく倒産してしまって。あのマンションに再び行くことはなかった。
 その後、A藤さんは転職。さらにその転職先での忙しさの中で、あのマンションでの不思議な出来事は、頭のどこかに埋没してしまった。

 そんなA藤さんが転職して、何年かたった頃。
 当時、A藤さんには、3年半付き合っていたB美さんという彼女がいた。
 なんとなく、お互い結婚ということを意識しだした、そんな時期だった。
 ある日、そのB美さんに「特に堅苦しく考えないでいいんだけど、1度ウチに来て両親と顔だけでもあわせてくれない」と言われたA藤さん。
 「じゃぁ今度の日曜日にでも」ということになった。


 それは、真夏の太陽がぎらぎら眩しいお昼前。
 A藤さん、彼女とは最寄り駅である下町の某駅で待ち合わせ。
 「堅苦しく考えないでいいから」と言われても、会う相手が相手だ。朝起きた時から気持ちがずっと高ぶっていた。
 いや。朝からというより、そもそもよく眠れなかったのだが…。
 そんなA藤さんの気持ちを知っているのかいないのか。
 現れた彼女は、Tシャツにジーンズといつもよりラフな服装。A藤さんの姿に気づくなり、大きく手を振って笑いながら駆け寄ってきた。

「そうか…。
 考えてみれば初めてなんだね。Aがウチに来るの…。
 なんか意外。」
「うん。そうなんだよなー。
 オレも、B美と今日の話してて、あれ?ウチ行ったことないんだって。
 なんかちょっと意外だった。」
「へへへーっ。スッゴイ豪邸よぉ~。驚かないでよ~。」
「豪邸!?豪邸って、え?マンションって言ってなかったっけ?」
「そうよ。でもね、来た友だち、みんな言う。
 豪邸ぇ~って。フフフ。」
 見れば、今日の彼女は足取りがやけに軽いような。
 そういえば、待ち合わせをしていて、その姿に気づいた時も「なんだか、今日はB美。いつもよりハツラツとしてるよなー」とA藤さんは感じていた。
 それは、やっぱり……
 そう。そういうことなのだろう。
 それに気がついたA藤さん。ズシリと実感したその重さに思わず背筋がシャンとしてしまった反面、彼女のはしゃいだ顔がやけに愛おしかった。

「あれよ。」
「え…。」
 B美さんが指さしたそれは、まだかろうじて名残のある下町の猥雑な風景の向こう。まるで、風景を突き破って生えてきたような、巨大なタワーマンション。
「……。」
「ね?結構、いい感じでしょ。」
 そう言って、感想を求めるようにA藤さんの顔を覗きこむ無邪気なその笑い。
「あっ?あ、ああ…。
 うん。いい感じ。ホント豪邸。
 そう、ゴージャスぅ~って感じ?」

 正面のエントランスを入って驚いたのは、その広いホールだった。
 そこは、まるでホテルのロビーのように広くて、床も壁もピカピカ。天井もやたらと高い。
 マンションと言っても、俺が前の会社で扱ってたのとは全然格が違うんだなー
 そんなことを思いながらもA藤さん、つい周りをキョロキョロ見てしまうのを抑えられない。
 しかし。
 あれ…。何だろう?この感覚…
 ふと覚えた妙な違和感に突き動かされるように振り返ったA藤さん。
 目に入ってきたのは、今通ってきたガラスの大きなドア。
 その向こうで溢れ返っている、強烈な夏の光。それだけ。
 なのに…
 あ、そっか。エアコン効きすぎなのかも…
 地下鉄の駅からずっと汗が流れ落ちるようだったのに、今は一気に汗が引いていた。
 顔を元に戻したA藤さん。その目に映ったのはホールの奥。コン、コン、コンと足音を響かせて、エレベーターの方に歩いていく彼女の後ろ姿。
 やけに大きく聞こえてくる足音が、ふっと振り返った。

「あれ?どうしたのよぉ。なに、そんなとこで突っ立ってるのよぉー。」
「あ…。あ、あぁ。」
「もぉ早くぅ!」
「あ、うん。」
 タン、タン、タン…
 足早に彼女の元に駆け寄っていくその足音がやけに耳についた。

「どぉしたのぉ?そんなにキョロキョロしてー。」
「あぁ、うん。ほら、俺。前の会社、マンション関係だったじゃん。
 だからさ。ハハハ。昔思い出しちゃって。
 つい、いろいろ見ちゃ――。」
 そんなA藤さんの笑いまじりの言葉を、B美さんのきょとんとした顔が遮った。
「えぇっ、マンションの会社!?
 そうだったの?それ、初めて聞いた。」
「えぇっ。B美、知らない!?うっそぉ。」
「うん。初めて聞いた、それ。
 今のとこ、転職だっていうのは聞いてたけど…。」

「……。」
「……。」
 こういう時に限って、エレベーターは来ない。
 もちろん、それはたまたまのことだったのだが。でも、よりによって彼女の両親と最初に会う前に、彼女が転職前のことを知らなかったというのは、お互い変な気まずさがあった。
 もっとも、彼女の両親の前でないだけ、まだましだったのだろうが。
 とはいえ、今までおしゃべりが止まらないくらいはしゃいでた彼女なのに。今は、ぽつーんと黙ったまま。
 それは、まるでこのマンションの静けさのように。
 そう。そうだ…
 ここに入った時感じたあれって…
 そうか。静かすぎるんだ…
 変な寒さを感じて。A藤さん、そっちを見れば、そこはさっきから全然の気配のしない静まり返ったエントランスホール。

「このマンションってさ…。」
「?」
 くるっとA藤さんの方を向いた彼女は、見たところ全然いつも通り。
 気のまわしすぎかとA藤さん、ちょっとほっとした。
「このマンションってさ、もしかして最近出来たばっかり?」
「ううん。建って5年かな。
 ウチ、ここに越してきた時新築だったから。」
「5年?ふぅーん、そうなんだ…。」
「え、なんで?」
 自分をとがめているような彼女のその目に、A藤さんは慌てて言った。
「あ、あぁ。うん。ほら、だって。
 日曜日だっていうのに、人がいる感じがないから…。」
「あぁ、なんだ。
 だって、今日のこの暑さでしょ。みんな部屋にいるんじゃない?
 じゃなきゃ出かけちゃったか…。
 ここ、出かける時は、みんな地下からクルマだから。」
「ふーん…。」
「あれ、何だろ?
 エレベーター、全然来ない…。」
 
 そんな彼女が、全然来ないエレベーターのボタンをカチャカチャと押していた時だった。
 キャっキャっ。キャっキャっ。
 わー!わー!わー!わー!
 キャハハハー!キャハハー!
 バタバタバタバタバタバタバタバタ……

 あの広いエントランスホールからいきなり聞こえてきた、子供たちがはしゃぎまわる声。
「!?」
 振り返った、エントランスホール全体に響き渡る、耳にさわるキンキン声。バタバタと走り回る足音。

「あれ?いるじゃん。人…。」
 子供たち、あの広いエントランスホールの向こう側で騒いでるのだろうとA藤さん。それとなく首を伸ばして見たのだが、でもそこからは見えなかった。
「え、なにぃ?どうしたの?」
 指がエレベーターのボタンからすーっと離れるように、A藤さんの方をゆっくり振り返った彼女。
 上向き加減にこっちを向いた、斜めからの彼女の顔。ふわりと笑っていたその目に、A藤さんも意識して笑みを浮かべながら言った。
「今時、子供が多いんだね。このマンション。」
「子供?子供って!?」
「うん。子供だからしょうがないんだろうけど、でもちょっとうるさいよね、あれ。
 あの子たちって、いつもこんななの?」
「え?え?え?なに?子供がどうしたの?」
 急に困惑した表情になってA藤さんを見ている彼女。
 それに、わずかに遅れて開いたエレベーターのドア。
「あ、やっときた。もぉっ。何だったんだろ?いつもはすぐ来るのにー。」
 
 エレベーターの中も、やたらとピカピカ。
 正面の金属のプレートには、なんともいえない表情のA藤さんの姿が金色に映っている。
 それを見たらA藤さん。何だか自分でよくわからない溜息が洩れてしまった。
「なぁによぉもぉー。
 そんな緊張しないで。気楽に!気楽に!
 ただ顔だけ会わせておいてくれればいいんだから…。」
「うん。大丈夫、大丈夫。」
 自分では気づいてないが、やっぱり緊張してるのだろうと苦笑い。
 A藤さんは、エレベーターの、体がすぅーっと上がっていくあの感覚に包まれた。


 彼女のお父さんも、お母さんも朗らかないい人だった。
 A藤さんも交えて、楽しい昼食。
 弟がいるということだが…
 まぁ最初から会わなくてもいいのだろう。
 そう。部屋からの眺めは、確かに素晴らしくて…
「今頃の季節は、夜になるとあちらこちらの花火が見えるんですよ。
 今度は、ゆっくり夕食でも食べに来てくださいね。」
「そうそう。ウチはさぁ、俺以外誰も酒飲まなくてさ。
 今度、ゆっくり付き合ってよ。」


 帰りのエレベーターの中。
「よかったぁー。
 お父さんもお母さんも、Aのこと気にいったみたい。」
 エレベーターのドアが閉まるなり、いきなりA藤さんに抱き付いてきた彼女。
 ちょっとびっくりして仰け反った時にチラリと見えた、幸せいっぱいのその笑顔。
「あっ、あぁ。うん、よかったよ。今日、会って。
 お父さんもお母さんもよさそうな人だし…。」
「えぇっ!?もぉっ、なぁにぃー。
 あぁっ!A、気疲れしちゃったんでしょ?フフフ。」
「うん。あぁそうなのかもな…。」
 はしゃいでいた彼女は黙った代わりに、A藤さんに体をあずけるように。A藤さんはA藤さんで、そんな彼女をぎゅっと。
 沈黙のまま降下していくエレベーター……


 エレベーターを1歩出るなり聞こえてきた、あの声。
 キャっキャっ。キャっキャっ。
 わー!わー!わー!わー!
 キャハハハー!キャハハー!
 バタバタバタバタバタバタバタバタ……

「あれ。まだ騒いでる…。なぁいつもこうなの?」
「えっ?なに?なにが、いつもこうなの?」
 それは、まるで夢から覚めたみたいな彼女の顔。
「うん。ほら、子供。この子供の声…。すごいよね。」
「子供…?あぁ、そういえばさっきも言ってたよね。
 でも、子供って?なんのこと?」
「えぇっ!?」
 思わず彼女の顔を見返してしまったA藤さん。
 でも、すぐにエントランスホールの方に目をやって。
「何って…、ほら。ホールではしゃぎまわってる…。」
「ホール!?ホールって?」
「だから…。そこのエントランスホール」
「エントランスホール?子供?…!?」
 怪訝そうにん眉をしかめた彼女の顔は、A藤さんとエントランスホールを何度も行ったり来たり。
 しかし、困ったような表情をかすかに残しつつも、ニコッと。その鮮やかな微笑みに、ハッとしてしまうA藤さん。
「ウフっ。どうしたのぉ?そーんなに疲れたのぉ?
 もぉーっ!フフフ。
 わかった。今日は、これでサヨナラしよ。
 ホントは、買い物付き合ってもらいたかったんだけどね。
 でもA、かなりお疲れみたいだし…、ね?」
「おい。何言ってんだよ。別に疲れてないって。
 暑いけど、どっか行こうぜー。」
「ううん。実はさ、なんだかんだ言って、
 わたしも結構疲れちゃったのよ。ふぅぅー…。」
「なんだよ。大丈夫か?」
「うん。お部屋で少し昼寝でもしよっかな…。」
「うん。じゃぁゆっくり――。」
「でもさ、大変よね。これから…。
 がんばろうね、2人で。」
「おぅ。」

 A藤さんと彼女が話している間にも、子供たちの騒々しい歓声は続いていた。
 エントランスホールのほぼ真ん中。2人は、何となく体を寄せ合って、さっとキスをして。
 そして、くるりと。また、エレベーターの方に戻っていく彼女と、夏の日差しが眩しい出口の方に歩いて行くA藤さん。
 その耳に聞こえてきた、いつの間にかエントランスホールにある中2階のような場所からの子供たちの声。
 あれ?いったい、いつの間にあっちに…
 そんなことを頭の隅で考えながら。でも、もぉそれはどうでも…と、特に歩みを止めることもなく。A藤さんは、一人あのガラスのドアを出た。
 その途端カーっときた、夏の午後の太陽の陽射し。
 さらにはアスファルトの反射熱と、目が回るような暑さ。
 でも、あのホールが涼しすぎたせいか、その容赦ない暑さに不思議とホッとするものがあった。
 そのくせ、駅までの道すがらコンビ二に駆け込んで。冷たい飲み物を買って、一気に飲み干したA藤さん。
 人心地を取り戻したその後は、また汗をかきかき駅へと。

 駅のホームで、なんとなくケータイを開けば。
 見ればメールが一通。もちろん彼女から。
 それに、そそくさと返信したA藤さん。
 電車はまだ来ない。
 彼女は、もう昼寝しちゃったのか。
 特にメールもなくて……



 その後。A藤さん、その彼女とは別れてしまった。
 せっかく、彼女の両親との顔合わせも無事すんで。彼女の両親もA藤さんのこと気にいってくれたみたいだったのに。
 でも、肝心の2人の気持ちが変にスレ違うようになって…
 どこかでボタンを掛け違えたかのように、どんどん、どんどん離れていく2人の気持ち。
 いや。別にケンカをしたわけではない。
 でも、会うこともなく、1週間、2週間…
 そして、それは電話、さらにメールも。
 気づけば、心にその存在はなくなっていて…
 結局、別れの言葉もないまま自然消滅。


 その冬のこと。
 休日に、何となく出かけた都心のショッピングモール。そこでA藤さんが出会ったのは、あのマンションの管理人さんだった。
 会った瞬間、お互いが驚いた顔したので、お互いに気づいた。
 もっとも、特に何があったというわけではなかった。
 「お久しぶりです。お元気ですか?」と、二言三言話したくらい。

 それは、家に帰ったA藤さんが、一人テレビを見ていた時だった。
 その胸に、何の脈絡もなく去来した、あのマンションの非常階段での不思議な出来事。

 あぁ、そうか…
 あの時のアレって、あのエントランスホールの子供の声と…
 それは、あの非常階段を降りて歩きながら、管理人さんが言ってたこと。
「なぜだかね、アレ、このマンションの住人には聞こえないらしいんですよ。
 どうもね、住民以外の…、私とか郵便配達や配送の方、あと工事や清掃の方みたいな
 外部の人間にしか聞こえないみたいなんですよ…。」

 外部の人間って…
 そうか…
 俺は、あのタワーマンションのアレからしてみれば、外部の人間だったって、
 そういうことなのか…
 でも、どうなんだろう?
 もし、俺があの時、彼女との結婚をちゃんと決めてたとしたら…
 もしかしたら、俺はあの子供たちの声を聞くことはなかったんだろうか…
 それとも、決めてようと決めてなかろうと、あの声はやっぱり聞こえたんだろうか…

 実は、A藤さん。それまではアレ…、あの子供たちの声に、それほど負のイメージは抱いてなかった。
 というより、あの時管理人さんと話していたように、うらやましさみたいなものすら感じていたくらい。
 でも、今となってみると、それは冷たく乾いた腐臭を感じると言ったらいいのか。
 もしくは、テーブルの上に並べられた食事の皿の中に、古ぼけた動物の剥製が置いてあるのを見つけてしまったようなと言ったらいいのか。
 なぜか今は、そんな変な厭さがあった。

 ただ、A藤さん。別れた彼女とのこととなると……
 今思うと、俺はあの瞬間、別れるって、なぜか知ってたような気がするんだよな…
 でも…
 でも、それは、たぶんそれでよかったんじゃないのかな。
 うん。それも、なぜかはわからないんだけど…



                         ―― 『歓声が聞こえる』〈了〉


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2016
04.23

やっぱりさ、ガンバロウよ!

Category: guchitter

 TV見てたら、「ガンバロウって言っちゃいけない」なんて言ってる人がいましたけど、それ、ホントぉ?(笑)

 がんばらないで、どうやって元の生活取り戻せるって言うのぉ?

 “がんばれと言ってはいけない。心の負担になるかもしれないから”っていうのは、思うに、あくまで「平時の心理学」なんじゃないのぉ?
 非常時には、「非常時の心理学」があるんじゃないかなぁー。
 ていうか、「がんばれて言ってはいけない」その科学的根拠を示せ! ←大槻教授か(笑)

 だってさ、目の前に溺れてる人がいたとして。
 それでも、“その人の負担になるかもしれないから、ガンバレとは言っちゃいけない”とでも言うの?
 溺れてるんだから、頑張んないと沈んじゃうと思うけどな(笑)

 そもそもさ。
 今の日本の繁栄は、戦後、みんなががんばったからこそなされたんじゃなかったの?

 流行りっぽい、耳触りのいいことばっか言ってたってしょうがないと思うんですよね。だって、こんな未曽有の事態なんだもん。
 とにかく、頑張って、頑張って。
 で、心が折れた時は、少し休んで。
 で、また頑張れば、それで全然OKなんじゃない?

 ていうか、そう!
 城山三郎がうまいこと言ってましたよね。
 「少しだけ無理して生きる」って。
 それならいいのかな?


 そういえば、避難されている方たちが今悩まされていることの一つに「地震酔い」があると思いますけど。
 地震酔いは、5年前の震災の後、関東に住んでる私も散々悩まされたからわかりますけど、あれは「え!また地震?」ってすごいストレスなんですよね。

 でも、地震酔いって。
 あれ、動いてる時は全くないんですよね。
 歩いてたり、メシ作ってたり。あと、仕事とか、何か集中してれば、まず感じないもんです。
 つまり、“がんばること”こそが「地震酔いの特効薬」だと、私は思うけどな!(笑)

 だから、あえて書きます。
 ガンバレ!熊本、大分‼




               って、何で徳光さん!?(笑)


 5年前の震災の後。
 ま、私が住んでいるのは、ま、関東地方なんで。一応は日常の生活をおくれていました。
 でも、震災の後はやたら余震が多かったんで、ホント不安でしたね。
 さらに、上にも書きましたけど、「地震酔い」にも悩まされました。

 「地震酔い」って。
 経験したことない人からしたら笑い話になっちゃいそうですけど、心臓がドキドキ動くのですら、「え!地震?」とかなっちゃうんですよね。

 ま、一番いいのは上でも書いたように、何かしたり、誰かと話でもしてれば地震酔いはないし。また、気が紛れるので不安も収まるんですけど。
 ただ、困るのは真夜中なんですよね。
 夜中ってこともあって、特に何かしようって気にならないし。また、誰かに電話するわけにもいかない。

 そんな中、個人的に意外なくらい効果があったのが、ウルトラマン物のDVDを見ることでした(笑)

 いや。大人になって見ると、どれ見ても陳腐ですよ(笑)
 でも、あれ見てると、みょぉ~に心が落ち着くのと。
 あと、「単純バカぁ~」って言われちゃうかもしれませんけど、不思議と勇気(みたいなもの)が湧いてくるの、あれがよかった(爆)

 今は避難所で…、というか、その避難所の外にいるしかないという方も多いとかで、なに悠長なこと言ってんだ!って怒られちゃうかもしれませんけどね。

 でも。今避難されてる方はもちろん大変なんですけど、避難するほど被害がなかった地域の方。あと、それほど大きな揺れはなかった周囲のエリアに住んでる方だっているわけじゃないですか。
 こういう大きな災害の時って、そんな風にエリアごとにいろんな視点や不安があるんだと思うんです。

 って、何だかすんごい竜頭蛇尾ですけど、ま、そんな話(笑)



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2016
04.17

怪談16.4.17

Category: 怪談話-番外

 何だか物件怪談が続いちゃったんで、ついでってことで。
 で、その物件怪談っていうと、個別の部屋のと共用スペースのお話に分かれるわけですが。その内、共用スペースのお話というと、よく聞くのはやっぱりエレベーターですかねー。

 ただ、私、エレベーター嫌いなんで(笑)
 いや、怖いんじゃないんですよ。嫌いなんです。
 狭いし、面倒くさいし(時々みょーにクサイし…)。
 だから階段を使うことが多いんですね(“かいだん”、好きなんですwww)。
 まぁこの話はマンションじゃなく、会社が入ってるビルの話なんですけど。その日…、っていうかその夜は、仕事が片付かなくって。
 結局お泊りしたと(泣)

 で、早朝。確か6時前くらいだったかな?朝飯を買いに行こうと、非常階段を降りてたんです。
 ほら、徹夜明けの朝特有のあの感じですよ。
 どよーんと疲れているのに、そのくせ体は妙に軽い。
 そんな感じで、非常階段をサンダル履きでペッタンペッタンと。
 ちなみにこの非常階段は、手すりも含めコンクリ製のガッチリしたやつです。

 2階から1階に降りて行く途中にある踊り場。
 ソレに気がついたのは、たぶんその踊り場を曲がった時だと思います。
 見下ろした階段…、そう踊り場から3段くらい降りた辺りに、人影が2つ。
 どちらも階段に座って…
 人なんかいるはずのないそんな場所。しかも、そんな時間。
 驚いて、もぉ声も出やしません。

 一方。それは、その2つの人影の方も同じだったんでしょう。
 というのもその2つの人影…、というかお二人さんはキスの真っ最中だったんです。
 しかし、見た感じ、それは2人とも制服着た女子高生。
 いや。だから、女子高生と男子高校生じゃないですって。
 2人とも女子高生(笑)
 スカート履いてたもん

 いやもぉ。階段の上の私も、階段の下の2人も、顔見合わせたまま完全に固まっちゃって。
 とはいえ、実際それはたぶん1秒もなかったんでしょう。
 私が動くより一瞬早く、その2人が「うっ」というくぐもった声を発したかと思ったら。
 手に手を取り合って、バタバタバターって。
 階段を駆け下りて、どっか行っちゃったと。

 いやもぉ。
 何やってるわけぇっ!こっちは一晩中仕事してたっていうのに!
 って感じでしたねー(笑)
 とはいうものの。あの一瞬の無言劇っていうのは、変な怖さがありました。


 て、まぁ、それはまぁ余談として。
 本題は、かつてマンション関係の会社に勤めていたA藤さんという方のお話です(笑)
 その時は、A藤さん。もうずいぶん前に販売した、あるマンションに用があって行ったとかで…

 用件は意外に早く片付いて。
 まだお昼前。
 すぐ会社に帰っても、いろいろ面倒くさいだけだし…とA藤さん。
 まぁ、ここも建ってからずいぶんになるし。
 ちょっといろいろ見て回っとこうかな?と。管理人さんにそう告げて、まずは屋上へ。

 屋上に出ると、そこにあったのは上空に広がる青々とした空。
 季節は春。心地よい風が吹いていて。
 A藤さん、「うわー!」って伸びをすれば、まばゆいばかりの太陽であとはもう何にも見えない。
 風にのって聞こえてくる、子供たちが遊ぶ声。
 空ではヒバリが、ピチャパチャピチャパチャ、せわしいおしゃべり。
 そんな、あまりに気持ちよすぎる、よく晴れた春のお昼前。
「あーあ。会社、帰りたくねぇなぁー。」
 A藤さんは、思わずそんなひとり言。

 そんなA藤さんは、屋上にある給水タンクのかげにペタンと座って。
 煙草に火をつけて、ふぅぅぅ~っと煙を吐き出せば。
 なんだか高校の時みたいだなーってA藤さん、思い出し笑い。

 そんな時。風向きが変わったのか何なのか。
 急に子供たちのはしゃぐ声が大きくなった。
 キャっキャっ。キャっキャっ。
 わー!わー!わー!わー!
 キャハハハー!キャハハー!

 あれ?もしかして、非常階段で遊んでる…
 首を伸ばして、様子を窺うA藤さん。
 ここのマンションの非常階段は、外付けの金属製のヤツ。
 もちろん、普通に非常階段として使う分には危険なんて全くない。
 でも、一たび事故が…、ましてや子供の事故となると、たちまち危険な非常階段を放置していた、とんでもない企業にされちゃって。たちまち非難轟々。さらには、損害賠償…。
 実は、つい最近も別の支社でそんなことがあったばかりだった。

 こりゃ大変だとA藤さん、非常階段へと足を急がす。
 さらに、こういう時は一応管理人さんにもいてもらった方がいいだろうとケータイで電話。

 非常階段の降り口までくると、下から聞こえてくるその子供たちのキンキン声はかなり騒々しかった。
 これって、他の住人から苦情出てないんだろうか?
 待っているのに、なかなか来ない管理人さん。
 あの人、齢のせいか緊張感ないからなーとA藤さん、もぉ気が気じゃない。
 しょうがない1人で行くかと、A藤さんは非常階段を降りだした。

 コンコン、コンコン階段を降りだすと、いよいよ大きくなった子供たちの声。
 どうやら子供達はすぐ下の踊り場にいる様子。
 上から覗き込むようにして見ると、白やグレーの色の服がせわしく動き回っているのが見える。
 ったくもう…
 舌打ちしながら階段を降りて行くA藤さん。
 ところが…

「あれ!?いない…。」
 そこで騒いでいると思っていた踊り場にたどり着いたのに、子供の姿なんて影も形もない。
 それどころか、今の今まであんなにうるさかった子供たちの声すら聞こえない。
「えぇっ!?」
 はるか上から聞こえてくるヒバリの声。遠くを走っている電車の音。
 それは、まったく春のうららかなお昼前の風景。
 中空といってもいいその非常階段の踊り場で、茫然とそれらを眺めているA藤さん。

「家の中に入っちゃたのか?」
 しかし、通路をずーっと見回しても、どれもピッチリ閉まっていて物音ひとつない。
 振り返ったA藤さん。その目は、非常階段の下を。そして上を。
 子供の声なんて、やっぱりない。
 でも、つい今の今まで確かに聴こえていた。
 だって、つい今…
 A藤さんの脳裏に浮かんだのは、階段を降りながら下を覗きこんだ時に見えた、子供たちの服の色が動いている様。
 そう。確かにいた。だって、見たもん…
 ということは、家の中に入ってしまったということなのだろう。
 しかし…
 
 何か気配を感じられるかと、A藤さんは耳を澄まして通路をゆっくり、ゆっくり。
 しかし、そこには動くものの一切ない、平日の昼間のマンションの通路が伸びているばかり。
 A藤さん、気がつけばエレベーターの前。
 見ると、エレベーターは最上階。
 そうか。管理人さん、今上にいるのか…
 連絡をとろうと、A藤さんがポケットのケータイをつかんだ時だった。
 また、子供たちの歓声が…

 えっ、何だそれ?
 慌てて非常階段の方に駆け戻るA藤さん。
 はやる気持ちで通路から非常階段を見れば、子供たちの歓声が聞こえてくるのはやはり下。
 それも、どうもそんなに下でもない感じ。
 しかし、手すりから身を乗り出して見ても姿は見えない。
 なのに声は前にもまして騒々しい。
「…?」
 そんなA藤さんが首をかしげながら、
「キミたちー、ここは危ないから他で遊びなねー。」
 そう言った途端、子供たちの声がピタっと止んだ。

 しかし、それも束の間。すぐに前にも増して「わー!キャハハー!」と大きな歓声が上がったかと思ったら。
 注意したA藤さんから逃げるつもりなのだろう。
 カンカンカンカンカンカンカン…
 一斉に階段を駆け下りる足音が聞こえてきた。
 その騒々しさ、また音の数からいってかなりの人数のはず。
 あれだけの人数の子供が階段をいっせいに降りていったら、それこそ事故が起きかねない。
 慌てたA藤さんが、非常階段を駆け下りようとした時だった。
「A藤さぁーん。そこで待っててくださーい。
 いますぐ行きますからー。」
 上から降ってきた管理人さんの声は意外に近かった。
 しかし、その口調は、こんな状況だというのにやけにのんびりで。
 気が気じゃないA藤さんは手すりから身を乗り出し、上に向かって叫んだ。
「子供たち、遊んでて危ないから先、降りますよ!」
 そう言ってる間にも、下からの子供たちの歓声は止むことがない。
 さらには、「A藤さぁーん」と、管理人さんの口調をマネする声までする始末。
 何なんだ、ここのガキどもは!
 それは、そんなA藤さんが舌打ちするように階段を降りかけた時だった。
「A藤さんっ!いいからっ!そこで待っててください。
 絶対動かないで!すぐ行きますから!」
 上から降りてきた管理人さんの声。しかし、それはあの好々爺っぽい管理人さんとも思えない激しい口調で。驚いたA藤さんは、思わず足が止ってしまった。

 コン、コン、コン…
 落ちついた歩調で階段を降りてくる音とともに、見えてきた管理人さんの姿。
 見れば、管理人さんはホッとした顔で微笑んでいた。
「あぁーA藤さん。いてよかった。大丈夫ですか?」
「いや。だからそうじゃなくって、子供たち!
 こんな所で遊びまわってて、何かあったらどうするんです?
 さ、下に行きますよ!」
 そう言って階段を降りかけたA藤さん。しかし。その肩を管理人さんがガツっとつかんだ。
 驚いたA藤さん。振り返りながら「何をするんですか!」とその手を振りほどこうとしたのだが。でも、見かけによらず強い管理人さんの力。
「A藤さん。だから、落ち着いて。」
「そんなこと言っ──」
「落ち着きなさいって言ってるんです!」
 その一喝に、一瞬息も止まってしまったA藤さん。口をぱくぱく、管理人さんの顔を見つめるばかり。

「大丈夫です。アレは、何でもありません。
 それより、自分のことを心配してください。」
「わ、私?」
「いやね。前にもあったんですよ。
 会社の方が、アレを注意しようと追いかけていて、足を踏み外して怪我したこと…。
 まぁ怪我といっても、足を軽く捻挫しただけだったんですけどね。」
「ちょっと…。それってどういうことです?
 もしかして、あの子たちに突き落とされ──。」
「ハッハッハ。いや、違いますよ。
 その方が慌てていただけですよ。アレは、そんなことしませんって…。」
 微かに笑っている管理人さんの言葉に、A藤さんはやっと気がついた。
「え、アレ?
 アレって…。えっ!?どういうことです?」

 やっと落ち着きが戻ったA藤さん。管理人さんの顔を見つめなおして、でも、すぐそのことに気がついて、慌てて階段の下に目を向けた。
 ……。
 子供たちの歓声は、もうどこにもなかった。
 つい今まで、あんなにうるさかったのに…
 聞こえてくるのは…
 何気に見上げた空で、ピチャパチャ、ピチャパチャかしましいヒバリの声。
 それだけ…

「うーん、何なんでしょうねぇ…。
 そんなこと、私にもわかりませんよ。
 アレはね。私がここで働きだした時にはもぉありましたよ。
 最初は、私もわからなくて。何だろうと、階段を登ったり降りたりしたもんですけどね。
 でもね。結局、今でもわからないんですよ…。」
 そう言った管理人さん、ふいに相好をくずして。
「降りましょうか。ゆっくりと…、ね?
 お茶でも淹れますよ。
 会社に戻るのは落ち着いてから…、で、いいでしょう?」

 そうして、管理人さんと階段を降りていったA藤さん。
 それは、2人が階段を下まで降りて。管理人室に向かって歩き出した時だった。
 キャっキャっ。キャっキャっ。
 わー!わー!わー!わー!
 キャハハハー!キャハハー!
 さらに、階段を駆け回るカンカンカンカンカンカン……

 いつの間にか、上から聴こえてくる子供たちの歓声
 立ち止まって。上を見上げて、それをじっと聞いているA藤さん。
 すぐ横で管理人さん言った。
「なぜだかね、アレ、このマンションの住人には聞こえないらしいんですよ。」
「えぇっ?」
「あれだけ騒々しいわけでしょ?
 苦情が出てもおかしくないのに、そんなの全然ないし。
 それとなく聞いてみても誰も何のこと?って感じで…。
 どうもね、住民以外の…、私とか郵便配達や配送の方、あと工事や清掃の方みたいな
 外部の人間にしか聞こえないみたいなんですよ…。」
「え、じゃぁ近所の人は?」
「あっ、そうか!
 あぁー、それは考えたことなかった…。
 そうですよねー。
 あれだけうるさかったら、近所から苦情がきてもおかしくないですよね。
 うーん…。
 てことは、近所の人も聞こえないってことなんだろうか?
 不思議だなぁ…。」
「いや…。管理人さんに不思議だなーって言われても…。」
「うん。ねぇ…」
 見れば、管理人さんはまるで肩でもすくめるように笑っていた。
 でも、A藤さんも思わず苦笑い。
 まぁ特に問題がないならいいのか…

「でも…。」
「はい?」
「何だか楽しそうで、ちょっとうらやましい気もしません?」
 それは、ハッハハっと笑っている管理人さん。
 そう言われたA藤さんは、なぜだかため息を一つ吐いて。
「あぁ…ふふっ。」
 そこで、やっぱりなぜだか笑ってしまったA藤さん。
「うん。そう言われてみれば、確かに無邪気で…。
 うん。そう。なぁーんかうらやましい……。」

 キャッキャッ。キャッキャッ。
 わー!わー!わー!わー!
 キャハハハー!キャハハー!
 カンカンカンカンカンカン……
 それは、まるで空から降ってくるような楽し気な声

 春によくある、ぼーっと晴れた空の下。
 ヒバリがピチャパチャさえずっている、そんな日の出来事だった。



                        ―― 『空から降ってくる』〈了〉


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2016
04.17

怪談(?)16.4.17

Category: 怪談話-番外


 最近、“カワイソーな犬”ネタがミョーに多いこのブログですが、てことで、今回も、ま、そんなお話(笑)

 実家の前はそこそこ広い通りだったんですけど、その通りをずっと行ったある家で犬を飼っていたんです。
 柴犬か何かの雑種だったんでしょう。全体は明るい茶色で、お腹側が白っぽい毛。
 ホント、どこにでもいるって感じの犬で。変な話、その“どこにでもいる感じ”っていうのが、逆にその犬の特徴になっているくらい。

 その犬が、飼い主に散歩で連れて歩いているのを見ると、「おっ!あの犬か。いつも可愛いなぁー。」とよく見ていたものでした。
 面白いのは、犬のことはハッキリ覚えていて、ひと目みれば「あの犬だ」とわかるのに、飼い主となると全然(笑)
 何度も見ていたはずなのに、どんな人だったか全く記憶にありません。

 だから、その犬が飼われている家がそこにあるって知ったのは偶然でした。
 たまたま歩いていて、ある家の庭にその犬がいるのを見て「あ、この家の犬だったんだ」って知ったわけです。
 実は、それって私の両親や友人たちもそうだったみたいで。
 後に、その犬が話題になった時。誰もが「あの犬って、あの通りに面した家で飼ってた犬だよね」と知っていました。

 というのも、やっぱり誰が見ても可愛い犬だったんでしょう。
 散歩の時なんか、元気にせかせか歩いて。
 何かに興味を持っちゃ、道のあっちに行ってクンクン。そうかと思うとこっちクンクン。
 何がそんなに興味を引きつけるのか、盛んにしっぽを振って鼻先を近づけて、もぉ夢中。
 とっくに先を歩いている飼い主が、「行くぞ」とリードをひっぱると。
 犬は、ピョンピョン跳ねるように、たちまち飼い主を追い越してまた興味の対象を見つけ出す。
 まるで、その様子は、学校帰りに道草を食っている小学低学年の子供みたいにキラキラしてました(笑)


 ただ、それがいつ頃のことだったかとか、あまりよくは憶えてはいないんです。
 ただ、その犬のことで、中学時代からの親友と話した記憶があって。
 その場面を思い出すと、たぶん社会人になってそんな年月が経ってない頃なんだと思います。

 ある日の夕方…、いや。夕方だっていうのは確かなんですけど、季節となると、やっぱりハッキリしないんですよね。
 春先だったような気もするし、夏か秋だったような気もする。
 ただ、真冬のような寒い季節のことではなかったような気がします。
 まぁそんな、ある夕方、その犬が一匹で歩いているのを見かけたんです。
 飼い主はいなかったし、リードもなかった。
 でも、見かけた瞬間、すぐに「あの犬だ」とわかりました。
 飼い主がいないのをいいことに、口笛吹いてその犬(「彼」)を呼んでやったんです。
 といっても、オスかメスかも知らないんですけどね(笑)

 その「彼」。
 そういえば、何だか久しぶりに見たような気がするんですけど、相変らず可愛いくて。
 ただ、その時は飼い主がいないせいなのか、イメージの中の「彼」ほど元気がないような?
 そう。どっちかというとトボトボ歩いているって感じだったんです。

 私の口笛は、聞こえなかったのか?
 なんの反応もなく、自らが飼われている家の方に歩いて行く「彼」の後姿。
 それは、やけにしょぼくれちゃってて。
「何だよ?おい、どうしたんだよ?」
 「彼」、それには、ちょっとだけ反応して。私の方をチラッとだけ振り返ってみせたんですが、すぐまたトボトボ歩いてっちゃったんです。
 私は、「彼」のその後姿に首を傾げつつ。でも、10歩も歩かないうちにそんなこと忘れていたように思います。


 「彼」のウワサを聞いたのは、それからどれくらい経ってからだったのか?
 1、2週間後くらい後だったのか?それとも1ヶ月くらい経ってからだったのか?はたまた、「彼」を見かけてすぐのことだったのか?
 その辺全然定かじゃないんですけど、それは両親と夕食を食べていた時のことだったので、たぶん休日だったのでしょう。
 夕食だと呼ばれて、食卓に着くと父と母が話をしていたんです。

「それがね、見ていてホントに可哀相でさー。
 隣の奥さんも言ってたんだけど、ほら、隣のAクンって小学生じゃない。
 Aクンが言うには、B小学校の門の前でも、待ってるのを見かけたっていうのよ。
 何でもあの家の子、2人ともB小学校に通ってたんだって。
 だから、捜しに行ってるんじゃないかって。
 なぁーんだろねぇー。いじらしいっていうか…。」
「しかし、あんなにいい犬置いてくなんて。まったく許せんなぁー。」
 2人とも夢中で話していて。父なんかは明らかに怒ってました。

「何?どうしたの?」と聞くと。
「ほら、よく家の前を茶色の犬連れて歩いてる人いたでしょ。
 柴犬かなんかみたいな…。」
「あぁ、あの前の通りをいったとこの家で飼ってる犬だろ?
 明るい茶色でお腹の方が白っぽい…。
 あれ、いつだったか見たな。一匹だけで歩いてて…。」
「あの家ね、実は引っ越しちゃったのよ。あの犬、置き去りにして。」
「うそっ。ひっでぇーなぁー。」
「でね。今度あの家に引っ越してきた人が、
 あの犬が庭にいるんで、追い払ったらしいんだけど。
 でも、すぐまた庭に入ってきちゃうんだって。」
「えー、なら飼っちゃえばいいじゃん。あんな可愛いんだもん。」
 私は、「彼」のことを思い浮かべながらそう言いました。

「それがね。その引っ越してきた家の奥さんっていうのが、犬嫌いなんだって。
 だから、引っ越してきてその犬が庭にいるのを見た時は大変だったらしいのよ。
 何度も追い出して、庭には入って来なくなったらしいんだけど、
 今度は家の前にずっといるんだって。」

 あの時見た「彼」が、あんなにしょぼくれちゃっていたのはそういうわけだったのかと、やっと合点がいった私。
 思わず、あの家の前でしょぼんと佇んでいる「彼」の姿が脳裏に浮かんで、何とも言い難い思いにとらわれしまいました。

「でも、あの犬。あれだけ可愛いんだから、どっかのウチですぐ飼うんじゃないのー。
 子供なんか見たら、飼いたい、飼いたいって言うだろうに…。」
「うん。Cさんちの旦那さんが犬好きじゃない。
 で、1度家まで連れてきたんだって。
 でも、その夜のうちに逃げ出しちゃって。またあの家の前にちょこんっているんだって…。
 近所の人達も可哀相だって、こっそりエサとかあげてたらしいんだけどね。
 でも全然見向きもしないんだって。
 呼ぶと、プイって駆けてどこかにいなくなっちゃうらしいのよ。」
「で、B小学校の門の前にいるんだ。」
「学校が終わるくらいの時間になると、門の前にちょこんと座ってるらしいのよ。
 自分を飼っていた家の子供が、あそこに通ってたこと、知ってるんだろうねぇー。」

 いや、実はその後も「彼」のことを何度か見かけたような記憶があるんです。
 でも、それがいつのことだったかとなると憶えていない。
 また、突き詰めて言うならば、その見た記憶が本当にその家族との話題の後だったのかも定かではない気がします。
 ま、可愛いだなんだかんだいっても、所詮それは犬のことにすぎなかったのでしょう。
 そして、それは私以外の町内の人々にとっても同じだったんだと思います。


 ある夜、私は中学校からの親友Dと久しぶりに会っていました。
 実は、このDというのは町一番の事情通で。
 というのも、Dの家は飲食店を経営していて。店に来るお客さんや出前に行った先々から、町の様々な情報が自然と集まってたんです。
 さらには、Dの母親は市の病院で看護師さん、伯父さんは市会議員。その他にも親戚に警官がいたりとか。
 そんな感じでしたから、町の冠婚葬祭的な話から、誰がどこの大学に合格したとか、はたまた昔の同級生がヤバイことやって捕まったとか、何でも知ってたんです。
 その中に、あの「彼」の情報もあったと…

 Dによれば、あの家に引っ越してきた家は、追っ払っても追っ払っても庭に入ってくる「彼」にほとほと手を焼いてしまったとかで。
 保健所に連絡して、「彼」はすぐに連れていかれたらしく、おそらく今は処分されてるんじゃないかと。

「えぇー。だって何回か見たぞ、あの犬。」
「よく似た犬…、なのか…。
 でも、そんなわけないよなー。
 今時、犬が町をうろついてられるわけないもんなー。」
「じゃぁオマエ、オレが見たあの犬は何なんだよ?」
「だからさ。あの犬って、スゴク可愛かっただろ?
 だからさ、印象が強くってさ。
 みんな、記憶がゴッチャゴチャになってるんじゃないのか?
 オレは勘違いだと思うぜ。
 ま、1週間かそこら?その保健所に連れてかれるまでの間、
 見かけたことで記憶がゴッチャになって。
 みんな、つい昨日見たって思い込んでるって…。」
「うん。まぁ…、そうかぁ…。」
 確かにDの言う通りです。
 「彼」を見た、その記憶があるのは間違いない。でも、それがいつのことかとなると曖昧なのですから。
 それは、「ま、そういうことか…」納得しかけた時でした。
 Dが妙に苦しそうな声を出すもんだから、驚いて見ると。
 自分の頭の中覗きこんでるような目ん玉したDがこう言ったんです。
「ただな…。ただ…
 いや、オレ自身。つい最近もあの犬を見たような気がして
 しょうがねぇーんだよなぁ…。」


                             ―― 『あの犬』〈了〉


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2016
04.17

「AI小説」といっても、ラブストーリーじゃないのね(笑)


 先週、土曜だったか、日曜だったか。
 って、そういう時はネットで調べてみればいいわけで、なんだ、そうか。あれは、土曜日の『週間ニュース深読み』って番組だったんだなー。
 調べりゃ何でもわかっちゃうネットっていいのか?わるいのか?わかっちゃうだけに面倒くさいだよなー(爆)
 *週間ニュース深読み
 http://www6.nhk.or.jp/fukayomi/goiken/commentlist.html?i=34535
 上記は、視聴者の感想のページです


 いやね。
 もちろん私の興味は、TVの番組表の説明にあったAIが書いた小説云々でした(笑)
 だって、そりゃやっぱり「どんなもんだいにぃ、AI小説って?」っていうのはあるじゃないですか。

 *ニュースイッチ(日刊工業新聞)
 http://newswitch.jp/p/4060
 記事の終わりに、そのAI小説4作品のリンクがあります


 で、その、実際にAIが書いた(or人がAIを使って書いた)というその小説ですけど。
 まぁ、これだけじゃぁ何ともですねー。
 少なくとも、AIが人間に抵抗(反乱)するみたいなお話を読まされても、それこそ「こんなの、星新一のショートショートになかったっけ?」ですもんね。
 ていうか、ぶっちゃけ言っちゃうと、ありがちなネット小説みたい?って(笑)

 そもそもAIって、人類を支配したいものなの? ていうか、支配してAIに何のメリットがあるんだろう?
 いや。実は、もうすでにAIの欲望がそう書かせたとか!? きゃぁ~、AIコワ~い(笑)
 コワいっていえば、AIにも霊とか祟りってあるんだろうか!?

 ま、あくまで研究のとっかかりですからね。
 もぉちょっと頑張ってもらって、長編大河小説みたいのを書いた上でないと、AIの小説云々っていうことにはならないような気がするかなー。

 そう。そう考えると、100%自由にフィクションよりも、ノンフィクションとか歴史小説みたいにお話の大枠が決められている方がAIには向いてたりしないのかな?

 とはいえ、読む方からすれば、それが面白きゃいいわけで。
 AIが書く(でも書くというのか?)小説、とっても楽しみです(笑)


 ただ、そもそも。
 AIが書く小説って、社会においてどういう位置づけなんでしょうね。
 だって、現在において小説っていうのは、ほぼ「商品」なわけで。

 それは、作家、出版社、印刷や製本、あと材料費や流通コスト、販売コスト(ま、今は電子化のコストとかもあるのかな?)が本という「商品」になって、価値が生まれて。
 その価値に、人がお金を払って成立しているわけですよね。

 そう考えると、AIが本を書く(つくる)ようになったら、たぶん今まで通りの作家→出版社→印刷製本→流通販売という形にはならないような気がしますよね。
 読者…、というよりは「ユーザー」がAIに本を読みたいというと。
 AIが、ユーザーの気分に合わせて、オーダーメイド的にお話をつくって(ダウンロード)してくれるみたいになるんじゃないのかなーって。

 ま、AIがそこまで世に浸透した社会での人の仕事とお金の状況は、ま、ここでは横に起きますけど、つまり、今でいうプロバイダーみたいな会社と契約すると、その中にそんなAIによる小説サービスも入っていて。
 ユーザーは、月々いくらのプロバイダー料金で、AIによる小説も楽しめるみたいな風になってるんじゃないですかねー。

 というか。
 「本」って書きましたけど、たぶんそうなったらそれは文字がズラズラ書いてある本ではないような気がしますよね。
 おそらく、映像も音も、いや、それこそ五感全てに訴えてくる、限りなくロールプレイングゲームに近くなっていくんじゃないですかねー。

 ただ。思うに現在、ゲームはネットで他のユーザーとコミュニケートするタイプが主流になっているわけですから。
 いや。ゲームのことは全然知らないんで。たぶん、そうなんだろうと(笑)
 そう考えると、将来またユーザーが個々に楽しむそれに戻るとも考えにくいから、それも違うのかなぁ…。


 ま、その辺はそれ以上考えても、よくわからないので(笑)
 そっちはともかくとして、AIによる小説なり何なりのコンテンツサービスがあるとすれば。それは、そのストーリーの中に、ユーザーの状況に合わせて広告が自動的に織り込まれるようになっていくんじゃないでしょうか。

 お金儲けや料金の徴収って意味で、それが一番都合いい気がするし。
 また、それは現在のプロバイダー等ネット企業のビジネスモデルってヤツを踏襲してますよね(笑)

 話は変わるようでですけど、現在において、そういう広告連動型の小説や漫画がないのは、なんか不思議です。
 ま、唯一の例外は、玩具メーカーのつくるヒーロー物コンテンツ等子供向けコンテンツですかねー。

 ま、現在は投稿動画みたいな、“2、3分のコンテンツ”が主流になってますからね。
 もしかしたら、今時、広告連動の小説や漫画、さらにはドラマのコンテンツなんて流行らないのかもしれません。
 そういえば、10年くらい前かな?
 知り合いの広告代理店の方が、そんな広告連動の連続ネットドラマを大手プロバイダーと協力して始めたと言ってましたけど。でも、今そんなの全然聞きませんしね。
 ま、つまり現在は、それこそ安近短コンテンツじゃないとニーズがないのかもしれません。


 と、まぁAIによる小説をネタに、あーでもないこーでもないとくだらないこと考えてみたわけですが。
 ただ、思うに。
 小説等コンテンツって、この今でさえ有り余っているわけですよ。
 それを考えると、小説を書くAIよりは、小説等人間が書いたもの読んでコメントをくれるAIの方が、全然ニーズがあるんじゃねーのー、とか思っちゃうんだけどな(爆)







 結局、人間って、誰しもが“考えること”がイヤで苦痛なわけじゃないですか。
 そう考えるなら、人類にとって、AIは間違いなくウェルカムなんでしょうね。

 ただ、AI云々は別として、例えば日々の天気予報みたって、こんなに当たらないわけで。
 AIをポジティブなモノにみるにしても、ネガティブなモノにみるにしても、今はソレをあまりに万能な存在として見すぎてるんじゃないですかねー。
 だって、AIだって、所詮は(不完全な)人間が作ったもんだもん(笑)
 あ、でも、将来的には、AIがAIを作るっていう事態もあるのか!?

 ただ、人間がAIに支配されている世界(社会)って、それは人の幸せとそんなに合わないものものなのかなぁ…。
 それって、なんかありきたりなディストピア・ロマンチズムなんじゃないかって(笑)
 仮にAIが人間を支配するようになったとしても、そこはAI。中世のヨーロッパの性悪領主や拝金企業経営者じゃないわけで。
 AIは、人間が支配されているって感じないように、巧く“支配してくれる”んじゃないですかね。
 ある番組で女性アナウンサーがスマホとガラケー二台持ちで月2万円払ってるとか言ってましたけど、
 それを苦笑いしながらも普通のこととして言ってる今の方が、よっぽどディストピアなんじゃな~い?(笑)

 …って、それも結局ありがちなSF小説みたいだったり。
 ま、人間の発想なんて、その程度(爆)




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2016
04.17

地震活動終息祈願

Category: guchitter



   一刻も早く、地震活動が終息しますように!





                    すみません。それしか言葉がありません。





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2016
04.10

怪談16.4.10

Category: 怪談話-番外

「あれ?また引っ越しちゃったんだ…。」
 それは、思わず声の出てしまう冷えきった風の吹きすさぶ中。仕事帰りでBさんが、自分の住むマンションの前を歩いていた時だった。
 明かりの点いている部屋、点いていない部屋、それぞれある中で、ひとつだけ違和感のある部屋。
 そこは、Bさんの住む部屋の斜め下、606号室。

 まるで、何にも視点の合ってない、どろーんとした目のような…
 その色合い、質感は、どよーんと見える反面、妙に冴え冴えとしているようにも感じられる。
 もっとも、季節柄、からっ風が吹いて。空気が澄みきってるから、夜の色がクッキリ濃いせいもあるんだろう。

 それにしても、いつの間に引っ越したんだろう?
 確か、このあいだの日曜日。布団を干してる時、下の方から女性が子供を叱る声が聞こえたけどなー
 真下は、確か老夫婦だけだっら、あれって、たぶん606の人の声だと思うんだけど…
 あ?違うか!?このあいだじゃないか。先々週の日曜だっけか?
 いずれにしても。今、部屋が空っぽになってるって気づいたってことは、今日の昼間リフォーム工事したってこと?
 あれぇ?でも、昨日ってどうだったっけ…

 そんなことをつらつら考えつつBさん。自分の家のポストを開けていて、ふと目がいったのは…。
 それは、名札のなくなった606号室のポスト。
「……。」
 そういえば、606号室って誰って人だったっけ?
 ていうか、そもそもどんな人が住んでたんだろ?
 Bさん、最近挨拶したこのマンションの住人の顔を思い浮かべてみるものの、それらしい顔は思いあたらない。
 子供を叱る女性の声が聞こえたんだから、少なくともお母さんと子供は住んでいたんだろうなぁ…
 またそんなことを思いながら、エレベーターに乗っているBさん。
 ふとみれば、階数表示の「6階」がちょうど光ったところ。
 網目の入ったエレベーターの窓に、つい引き寄せられるBさんの目。
「……。」
 それは、下から上に、すぅーっと通り過ぎていく6階の光景。

 エレベーターのドアが開いた途端、ぱーっと聴こえてきた外界の音。
「ふぅー。」
 大きく息を吐いたBさん。何なんだろう?ずっと息を止めていた。
 コツコツコツ…
 そこは、外気の感じられる通路。
 ドア、またドア。さらにドア…
 聴こえてくる街の音。一切音の無いドア。
 そんなBさんも、やっと自分の家のドアの前。
 チャイムを押せば、カギが開く音がして。
 ほんわり暖かい明かりをバックに、奥さんが「おかえりー。寒かったでしょ」と笑っていた。


「下…。下の隣りの部屋、606。引っ越したんだなぁ…。」
「そうみたいね。でも、いつ引っ越したんだろ?
 全然気がつかなかった。」
「何だ、オマエもかよ。」
「だって、わたしだってパートあるもん。
 今朝出る時、工事の人が来てたのは気づいてたんだけど、
 でも、まさか606だとは思わなかった。
 だって。リフォーム工事の音がしてたのって、そんな前じゃないよね?」
「そう。そうなんだよ…。」

 そう言いながらBさん。その頭の中では、つい今しがた帰ってきた時に、一つだけぼわーんと暗かった606号室を見て。「また引っ越しちゃったんだ…」とつぶやいたのを思い出していた。
 そう。確か、前も帰って来た時に、606号室が暗いのを見て、「あれっ?引っ越しちゃったんだ…」と思ったんだった…
 あれって…
 えーと、たしか去年じゃなかったっけ…
 それも、寒くなってからだったと思うけど…
 てことは、仮に11月としても4ヵ月…
 えぇっ!
 ていうか、その4ヶ月の間に引っ越してきて。で、また出てっちゃったってことかよ!?

 思うことは、奥さんも同じだったのだろう。
「ねぇ。考えてみればさ。606号室って。
 何だか、やけに引越し多くなーい?
 ウチがここ来て、今度の3月でまる4年だけど…。
 その間さ、いったい何回引っ越しあった?」
「そうだよなぁー。
 ほら、ここって。賃貸でいくらぐらいかよく知らないけどさ。
 でも、そんな安いってわけもないだろう。
 だから、そうそう収入のない人が入るとも思えないよなぁ…。
 うん?逆か…。
 引っ越してきたはいいけど、家賃が払えなくなって出てっちゃったってことか?」
「まっさかぁー。
 だって、家賃がそれなりってことは、敷金礼金だってそれなりに取られるってことよぉ。
 それに、そんな3ヶ月とか4カ月で、急に家賃が払えなくなっちゃうものぉ?」
「だって…。なくはないだろ?こんなご時勢なんだし…。」
「ウチが引っ越してきて、ずっと?どのウチも?
 そぉんなこと、あるぅ?」
「あ、じゃなきゃ。家の建て直しの間だけ借りる人専用になってるとか…。」
 しかし、急に顔を曇らせた奥さん。Bさんに顔を近づけ声をひそませた。
「うん…。でも…。」
「何?その、うん。でもって…。」
「うん。だから、そういう人って感じでもないっていうか…。」
「え、何?オマエ、606の人、知ってたの?」
「知ってるったって、何回か挨拶した程度よ。
 ほら、暮れに会合あったじゃない。
 あの時、来てたのよ。606号室の人も。夫婦で…。」
「へー。どんな人?」
「うん…。だからさ。
 そんな家を建て替えるとか、そんな感じじゃないと思うのよ。
 こう言っちゃなんだけど、ウチより苦しいっていうか…。」
「何だよそれ。
 それじゃ、まるでウチが苦しいみたいじゃないか…。」

 って、Bさんと奥さん。その後は、ちょっと仲良く言い合いみたいなことしたらしいのだが、それはともかく。
 Bさんが、斜め下の606号室の出入りが激しいことをハッキリ意識するようになったのは、それがきっかけだった。


 そしてそれは、そんなことがあってから1月経ったか経たないかのこと。
 その日は、せっかくの土曜日だというのに、前の晩から雪が降り続いていた。

 朝起きて、カーテンを開けると。
 辺り一面、白か黒。さらに重苦しいグレーの空だけ。
 ぼぅっと、そんな光景を見ていたBさん。でも、やがてその寒さに気がついて。
「ふぅぅっ。あー寒っ。しっかしずいぶん積もったなぁ…。」
「ほら、明日あたり。また出口のとこ凍りついちゃって、ツルツル滑って大変よぉ。」
「あそこなぁ…。」
 そんなことを言いながらBさんと奥さん、のろのろと朝の支度。
 その日は、Bさんは休みだったが、奥さんはパートだった。
 朝食をとってすぐ、奥さんはやたら厚着して出て行った。
 一方Bさんは、一人淹れたコーヒーを飲みながら、ぼんやりTVを見ていた。

 そんな時だった。
 ピンポーン
 うん?誰だろ。よっこらせと…。
 だらだらと立ち上がってBさん、玄関でサンダルを履きながら。
「どちらさんですかぁ?」とアクビまじりの声。
 しかし、外から聞こえてきたのは、
「すみません。警察の者なんですけど。
 ちょっとお伺いしたいことがありまして…。」
 いや、Bさん。別に悪いことなんてこれっぽっちもしているわけじゃないのに、眠気なんかたちまち醒めて。ちょっと緊張気味にドアを開けた。

 そこに立っていたのは、まさにお巡りさんだった。
 間近で見ると、やたらがっちりした体格で。思わず圧倒された。
「すみません。お休みのところ…。」
「何かあったんです?」
「ええ。下の部屋の住人の方が、お金が無くなったって…。
 で、すみません。昨日の夜から今朝までで。
 何か物音とか、変わったこととか気づきませんでしたかねー。」
「え、下?下ってウチの下の家ってこと?」
「あ、いや。1階の方なんですよ。
 お住まいになってる方、お婆ちゃんなんですけど、
 朝起きたら、こたつの上に置いといたお金がなくなってたって…。」
「1階?1階ねぇ、うーん…。」
 昨日の夜からの記憶を巡らそうと、頭の中を覗いているBさんの目。
 さまようその目が、ふっとお巡りさんの顔にいった時だった。
 Bさん、思わずドキっと。
 というのも、そのお巡りさんのその目が、Bさんの一挙一動も逃さぬとでもいうように、じっと観察しているのに気づいたから。

 ちょっとたじろいでしまったものの。でも、Bさん。そうかー。警察官っていうのは、やっぱりそういうものなんだなぁ…とあらためて思いながら言った。
「昨日の夜ねー。昨日の夜っていったら、
 帰ってきた時には、雪が積もりだしてたくらいしかー。
 うん。そのくらいしか…。」
「失礼ですけど、何時くらいに帰ってこられました?」
 そう言った、一瞬グイとこっちに寄ってきたような目。
 Bさんは、うわっ、やっぱりそんなこと聞くんだーと苦笑い。
「昨日でしょう?確か11時過ぎたくらいじゃなかったかなぁ…。」
「なるほど。あと、申し訳ないんですけど、他にご家族の方とかは…。」
「ああ。ウチは家内と私の二人ですけど、今パートに行っちゃってるんですよ。
 夕方になんないと帰ってこないですよ。」
「なるほど。
 そう、奥様は昨日もパートに行かれたんでしょうか?」
「いっやー、そうだと思いますけどねー。
 パート行って。普段だったら、夕方の6時くらいには家に帰ってたと思いますけどねー。」
 そこまで聞くと、お巡りさんは急に頭をさげて。
「どうもありがとうございました。
 お休みのところ失礼しました。」
 一方、Bさんは、なぜか思わずほっとひと息。
 でも、何でオレがほっとしなきゃならないんだよと、思わず苦笑い。
「でも、こたつの上のお金がなくなってたって、
 そのお婆さん、昨日の夜は家にいなかったんですか?」
「いやぁ。昨夜は、そのこたつに入ったまま寝ちゃったってことなんですけどねぇ。」
「えぇっ!? じゃぁ何、泥棒は夜に部屋に忍び込んで。
 こたつで寝ているお婆さんを横目に、
 そのこたつの上にあったお金を盗ってったってこと?」
「いや。そもそも鍵をかけてなかったって言うんですよ。」
「かけてない?玄関のドアの鍵を!?」
「ま、その辺は、結構年配のお婆さんなんで…。
 ま、とにかく失礼しました。お休みのところ。」
 そう言って敬礼したお巡りさん。
 それを見たBさんは、何だかその敬礼が合図だったみたいに「ご苦労様です」と言って。
 そして、そのままドアを閉めた。


 部屋に戻ったBさん。
 玄関のドアを開けてお巡りさんと話していたせいか、体がすっかり冷えていた。
 見れば、TVが点けっ放し。
 意味もなくそれを消したBさん。何気にテーブルの上のコーヒーを一口飲んで、それが冷たいことに気づいた。
 ふぅー。
 溜め息吐いて、またコーヒーを淹れるのにキッチンに。
 お湯を沸かしながらBさんは、お巡りさんとの会話を思い出していた。
 泥棒ねぇ…
 いやぁー、でもあるもんなんだなぁ…
 ウチも気をつけないと…


 コーヒーを淹れた後。気がつけばBさん、また居眠り。
 目が覚めたのは、外から人の話すざわざわした音が聞こえたからだった。
 時計を見れば、もぉお昼過ぎ。
 何だろ?
 さっきの泥棒のこともあるからなと、Bさん。起き上がると、足を忍ばせ玄関に。
 伝わってきたのは、外の通路で何人かが話すガヤガヤした音。
 それは、ちょっと物々しい気配。
 え、何だ?何があったんだ!?
 息を殺してそーっと覗き窓を見れば。
 丁度そのタイミグで通りかかったそれは、「え、またお巡りさん!?」
 と、思う間もなく、またお巡りさんが。そして、その後にもう1人。
 あれ?今の、たぶん管理人さんだよな…

 そう。ドアの向こうから聞こえてきた声は、やっぱり管理人の声。
 さっきの1階の泥棒の件かと、ドアを開けたBさん。
 その途端。通路にいたその3人がギョッとしたように一斉にこっちを見たもんだから、Bさんも驚いてしまった。
「また、朝の泥棒の件ですか?」
 そう言って見れば、2人のお巡りさんのうち1人は見覚えのある顔。
 向こうもAさんの顔を見て、さっと頭を下げた。
「あぁ。さっきはどうも失礼しました。
 あれは泥棒じゃなかったんですよ。何でも、息子さんが夜に来て持っていったとかで。」
「は、はぁ…。はぁ?息子さんが?…!?
 あれっ?えー、でも、じゃぁ何で…。」
 そう言ってBさんが手の平を上に向けて、その目の前の3人を指し示せば。今度は管理人さんが、ちょっと慌てたようにお巡りさんの方をチラリと見て言った。
「ほら、今日って。雪、降ってるでしょう?
 606号室のQさんが、起きてベランダを見たら、そこに足跡があったって…。」
「606号室?606号室って…。
 えぇっ?1月前くらい前に引っ越したんじゃ…。あっ!」
 Bさん、そう言ってるそばから、最近あのぼわーんとした暗い窓を見ていないことに気がついた。
「606号室。Qさんって方が引っ越されてきたんですよ。
 つい、1週間前に。」
「え、1週間前?」

 いや。別に部屋が空いているなら、誰がいつ引っ越してきてもおかしくはないのだが。
 それにしても…とBさん。
 引っ越してきたのに、1週間も知らなかったって…
 そんなBさんを見ていた管理人さん。
 いや、管理人さんだって思うところは同じなのだろう。
 Bさんの方に顔を近づけてきて、ちょっとだけ小さい声。
「まぁねぇ。挨拶くらいすればって思うんですけどねぇ…。
 でも、最近は。引っ越してきても、引っ越しちゃう時も何も言わないから…。」
 気持ち、眉間にシワをよせてそう言っている管理人さん。
 そんな管理人さんの顔を見ながら。Bさん、頭の中では夜帰ってくる時に見るマンションの光景を思い出していた。
 そうか…
 やっぱり明かりが点いているのが普通だから…
 たぶん、明かりが灯ってると、逆に見過ごしちゃうんだろうなぁ…

 なんて考えていて、Bさん、ふとそのことに気がついた。
「えっ!?じゃぁ足跡って…。
 それは…、えっ何?
 じゃぁ例の1階の件のお婆さんの息子さんが、お金を持ってった後。
 606号室のベランダまで登っちゃったって、そういうこと!?」
 何だそれ?どういうことだ?とBさん、まったく状況がつかめない。

 すると、ちょっと苦笑いでもするように、さっきのお巡りさんがまた口を開いた。
「いえいえ。だから、その1階の件はもう全然関係ないんですよ。
 全然別件なんです。
 別件で、今度はその606号室のベランダに足跡があったと通報があったんです。
 ほら、今日は雪が積もってるじゃないですか。
 で、朝…。といっても、つい先ほどのことらしいんですけどね。
 起きて見たら、ベランダに足跡があったそうなんです。」
「足跡って…。もちろんその家の人のじゃないんですよね。」
「もちろん。起きて、窓を開けて初めて気づいたそうです。」
「でも、雪は昨夜には積もりだしてましたよね。
 夜にベランダに出たってことは…。」
「それもないんだそうです。
 というより、その足跡、一つだけなんです。」
「一つだけ?」
「ベランダの手すりに近いとこに、一つあるだけなんです。
 しかも、ベランダっていったら、普通サンダルじゃないですか。
 でも、足跡は靴のものなんです。
 たぶん、ゴム底の運動靴か何かだと思うんですけどね。」
「……。」
「あ、で。さっきもお聞きしたんですけど、特に気がついたこととか…。
 そう。それこそ、ベランダに足跡…、まぁないですよね。」
 そう言ったお巡りさんの顔は苦笑い。
「いや。特に気づいてないんだから、ないと思いますけどねー。」
「そうですよねー。ハハハ…。」

 もちろんBさん、その後ベランダを見てみた。
 しかし、そこには朝のふんわりした雪はなく。その重みで、固くなった雪があるだけだった。
 あとで管理人さんに聞いたところでは。
 結局、あのお巡りさんたちと一緒に屋上にも行ったらしい。
 でもそこは、降り積もった真っ白な雪が一面にあるばかりだったと。



 それからひと月かそこらだったと思うと、Bさん。
 それは、また帰り道。
 ふと見上げた自分の住むマンションの中に1つだけあった、違和感のある部屋。
 そこは、自分の部屋の斜め下、606号室。
 その、ぼわぁーんと口を開けた洞穴みたいな虚ろさ…
 夜の暗さがそのまんま映った、ガラーンとした窓の色…

 そう。そこは、その後も、いつのまにか引っ越してきて。
 気づけば、また真っ暗になっていることの繰り返し。
 そのたんび、思い出すのはあの雪の日のこと。
 606号室のベランダにあった、一つだけの足跡っていったい何だったのだろう?
 そんなことを思いながら、Bさんは、虚ろに暗いその窓を見上げてしまうのだと。



                     ―― 怪談16.4.10『虚ろ色の窓』〈了〉


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2016
04.09

怪談(?) 16.4.9

Category: 怪談話-番外

 それは、ある梅雨の日の朝。
 会社に着いたら、向こうから来たのはAさん。
 私が「おはようございます」と言うより早く、Aさんが話しかけてきたんです。
「今朝、歩いていたらさ。目が合っちゃたんだよね。
 ヤバイな、ヤバイなって思っていたら…。
 やっぱりついてきちゃったみたいでさー。
 さっき、そこの通路ですれ違っちゃって。
 あっちゃーって…。」 

 いや、私。Aさんが何のことを言っているか、さっぱりわからなかったです。
 だって、朝一番、いきなりこの言葉ですよ。
「ついてきたって、子犬?子猫?
 って、そんなわけないか。会社にいたっていうんだもんな…。」
 と、私、もぉ完全???状態だったわけですが、他の人に聞いたらひとこと。
「Aさんって。霊が視えるらしいよ…。」
「はぁ!?え、なに?じゃぁ会社ですれ違ったって、霊ぇ!?」
 いやもぉ。
 あの時は、思わず「朝会社で真っ先に言うことか!」って言いたかったです(笑)

 ちなみにですが、その何日か後。
 たまたま私、仕事が忙しくて。
 一人で夜中まで仕事していたわけなんです。

 まーね。仕事しているうちはいいわけです。
 そっちに夢中になっているので、そんなこと忘れていますから。
 問題は、仕事が片付いた後でした。
 終電なんかとっくに終わった真夜中、当然家なんか帰れません。
 しょうがないから会社に泊まったわけですが、パーテーションの向こうがもぉ気になって気になって。

 いやもぉ。
 ウトウトっとしたその瞬間。パーテーションの向こうからこちらを覗き込んでいる顔のイメージが、まざまざと浮かんでくるんです(笑)
 その度ハッと目を覚ましちゃ、恐る恐る首を伸ばしてパーテーションの向こうを覗いてみたり。
 って、そんなことばかりやってた日にゃ、眠れるわけありません。
 おかげで、次の日は1日ぽぉーっとするばかり。仕事も何もあったもんじゃありませんでした。

 まったく…。
 霊能力だの霊感だのというのは、ホンっト人騒がせなもんです(爆)


 それはさておき。
 知っている会社に、Bさんという人がいました。
 ある年の4月。そのBさんがいる会社に、Cクンという新入社員が入ってきたんです。
 ちなみに私、2人とも一緒に仕事をしたことがあってよく知っていました。

 ま、その2人。どちらも真面目なタイプだったのですが。
 ただ、Bさんが仕事に対しては真面目だけど、プライベートではけっこう羽目を外すタイプだったんですが。
 一方のCクンは、とにかく全てにおいて真面目という、ちょー堅物タイプだったんです。
 さらに、本人の言うところによれば、まぁつまり霊感があったと(笑)
 なんでも、日頃からよく「霊」を視るとかで、“ちょっと変わった人”みたいなイメージをもたれていたように思います。

 で、それは、そんなBさんとCクンが、初めて一緒に仕事をした時のことだったそうです。
 たまたまその書類作業がやたら多い仕事だったとかで、とうとうある夜2人は会社に泊まりこむはめに。
 その時は、大きな机を使った方が効率的ということで。会議室の大きな机で、2人向かい合わせで作業をしていたんだそうです。

 終電も終わって、しばらくした真夜中。
 フロアにはBさんとCクン以外、誰もいません。
 都心とはいえ繁華街ではないですから、通りを走るクルマの音もまばら。
 そんな静まり返った会議室。
 音といえば、机いっぱいにひろげられた書類をめくる音だけ。
 Bさん、時々Cさんに指示を出す自分の声がやけに大きく感じられたといいます。
 そんな時間を過ごす中。Bさんは、向かいに座るCクンに呼びかけられたんだそうです。

「Bさん。Bさん…。」
「ああー、ゴメン。疲れたろ?少し休むか。」
 Bさん自身、もぉいい加減疲れがピークにきてたとかで。
 Cクンに話しかけられたのを幸い、休憩するかなって思ったんだそうです。
 もっとも、たまたまキリの悪いタイミングだったとかで。目は書類を見たままでした。

「Bさん。Bさん。」
 またCクンの声が聞こえます。
「ちょ、ちょっと待ってくれよ。これすぐ終わるからさ。
 そしたらコンビ二行って、なんか買ってこようぜ。おごるからよ。」
 やはり書類を見ながらそう言ったBさん。
「あ、すみません今忙しかったんですね。」
 Cクンはそう言って、黙ってしまったそうです。

 何分かして、やっとその作業が片付いたBさん。顔をあげ、Cクンとを見て言います。
「わりィーわりィー。
 コンビ二にでも買い出し行って、少し休もうぜー。」
「いえ、Bさん。
 実は私、Bさんにちょっと聞きたいことがあったんです。」
 Bさん。そのCクンの言葉と様子を、ちょっと怪訝に思ったらしいんですが。
 ただ、考えてみればCクンは新入社員。ここは先輩としてひとつ…と、煙草に火をつけて。
 身振りでCクンを促したといいます。

 すると、Cクン。ふいに向かいの机から乗り出すように言ったんだそうです。
「Bさん。Bさんは、今までに神を見たことがありますか?」
「…!?」
 思わず絶句しちゃったBさん。
「……。」
 一方、じっと自分を見つめるCクンの真剣な目。
 その沈黙の時間がどのくらいだったかよくわからないと、Bさんは言います。
 でも…
「いや。すぐそんな風に答えたんだと思いますよ。
 ほら、徹夜で仕事してる時って。疲れで逆にテンション上がりまくっちゃって、
 頭の回転が異様によくなってること、あるじゃないですか。」
 そう言って、Bさんは続きを話してくれました。

 言葉を発した時とまったく同じ、身を乗り出した姿勢のままのCクンの目。
 そんなCクンに、Bさんはこう言ったそうです。
「見たことあるっているより、現に、この机の上にもたくさん居るだろ?
 紙(かみ)はさ…。
 さぁさぁ仕事!仕事!
 紙さまの野郎、こんなにタップリ居やがるぜ…。」
「……。」

 Bさんによれば、その瞬間Cクンの唖然としたような、それでいてどこか冷たい視線を、痛いくらいにビンビン感じたといいます。
 でも、今そんな話に関わったら、この仕事は絶対終わらないって。Cクンのその視線、完全に無視することにしたんだそうです。
 結局。
 その時は、2人とも朝になって他の社員がくるまで、まったく休憩なしで作業するはめになったんだとか。

 Cクンは、その後ワケあって退職しちゃったわけですが。
 でも、Cクンの思い出話がでる度、Bさんは必ずこの話をして。
 さらに、最後にこう付け加えるんです。

「Cが、あの時、ああいう風に言ったってことはですよ。
 Cは…、たぶんCは、神を見たことがあるってことなんだって思うんですよ。
 なんと言うか…。
 あの時のCの言い方って、何かそれをうかがわせるニュアンスがあったんですよ。
 今思えば、ちゃんと聞いておけばよかったのかなぁーって…。」



             ―― 怪談(?) 16.4.10 『“かみ”をめぐる対話』〈了〉


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2016
04.09

八角風味のカレーって、うーん…!?


 なんだろ?
 この4月の番組改編で、見たいと思うようなTV番組、やけに少なくなっちゃったんですけどー。
 とはいえ、ウチのハードディスクレコーダー、常にパンパン状態なんで。
 ま、その方がいいのか!なんて(笑)

 どーせ、録画して見るから、CMはいちいち消しちゃうわけで。
 TV局としても、そういう人には別に見て欲しいとは思わないでしょーしねぇー。
                        ↑ 
                  いちいちイヤなこと言うヤツ(爆)


 ま、そんなTVですが、今週見たTV番組で意外に面白かったのが、
月曜やってた「未来世紀ジパング:追跡取材中国バブル崩壊の真相(テレビ東京)」。
 
 *テレビ東京:未来世紀ジパング
 http://www.tv-tokyo.co.jp/zipangu/backnumber/20160404/


 ってね。
 もちろん、タイトルの“中国バブル崩壊の真相”に魅かれて(期待してwww)見たわけですがー(笑)

 いや、残念ながらそっちの方はもぉ全然。
 TVにありがちな、“とりあえず煽っとけば、バカがつられて見るだろう”みたいな。
 いまさら、中国の際限のない不動産投資結果廃墟となった「鬼城」の話されてもなーって感じで。
 思わず、「あー、録画しなきゃよかった…」だったんですけど(笑)

 
 ところが、意外や意外。小ネタ的に面白かったのが、
今中国の家庭では、日本のバーモントカレー(ハウスの)が受け入れられてるって話。

 番組では、上海のある家庭(たぶん上海の中流くらい?)で調理から食べてるとこを放送してたんですけどね。
 でも、バーモントカレーといっても、食べてたのは、いわゆる日本で食べられてるような「カレーライス」じゃなかったと。

 確か、その家庭では、エビカレーと野菜カレー、さらにチキンカレーも作ってたんだったかな?
 日本人だと、「え、(ご飯にかける)カレーをそんなに何種類も?」って思うかもしれませんが、そうではなく「(ご飯にかける)カレーライス」じゃなくて、「カレーとご飯」なんですね。

 つまり、わかりやすく言うなら、「カレールゥ」を使った“炒め料理”を3品作って。
 それらを大皿によそって、テーブルに置いて。家族めいめいそれらをご飯にのせて食べる(汁物ではないので)みたいな感じ。
 ほら。中国の映画によく出てくる、まさに家庭での食事のあのシーン
 よって、カレーといっても、鍋ではなく、フライパンを使って作ると(中華鍋ではなかった)。
 日本でも、「炒カレー(チャーカレー)」ってありますよね

 そう、だから、カレールゥって。
 たぶん、中国人からすれば、豆板醤とか甜麺醤と同じ、調味料の「醤」みたいな認識なんでしょうね。

 とはいえ、ハウス食品としては、日本風の「カレーライス」としての食べ方を普及させようとしているらしいんです。
 ま、それはそれで成功もしてるらしいんですけどー。
 でも、中国人がたってた、その調味料の「醤」として使う方が、メニューとしてはむしろ広がりがある(使う頻度が多くなる)ように思うんだけどなぁ…(笑)


 あと、もう一つ面白かったのが。
 その中国人の家庭では、「これ(バーモントカレー)は甘いからおいしい。前は、カレーって辛いから好きじゃなかった」と言ってたこと。
 ま、確かに「バーモントカレー」は甘めの味ですけど。
 でも、それだけではなく、中国で売られている「バーモントカレー」には、なんと中国人向けに八角を入れてるんだとか!?

 日本人からすると、「えぇぇーっ!カレーに八角ぅぅぅ!?合うかぁ?」なぁーんて思っちゃうわけですけど(笑)
 でもまぁ日本人だって、カレーに味噌やら醤油やら入れちゃう人もいるわけで、ま、それはそれで全然OKなんでしょう。
 というか。日本の「カレー」それ自体が、(日本人の)好みの自由の産物ですよね(笑)

 ただ、ふと思ったのは。
 上海の人だから、甘いのがいいっていうのもあるんじゃないのかなーって。
 だって、ほら、上海料理って全般に甘めじゃないですか。
 ピリ辛の味付けが多い四川とか東北地方でも、はたして「甘いからおいしい」なのかなぁ…。
 とはいえ、まぁハウスもそれなりに現地で市場調査やってるわけで、根拠があるんでしょうけどねー。

 でも、知り合いの中国人(東北地方の遼寧省出身)は、日本の甘い麻婆豆腐に、憎悪といっていいくらいの感情を抱いてましたよ(爆)


 その他、番組では、中国で日本のことを紹介する日本人の山下さんという人が紹介されて。
 なんでも、その人、ネット動画で日本のことを面白おかしく紹介することで、中国の若者には大変な人気らしいんです。

 ただ、私としては、ちょっと「…???」と。
 というのも、知り合いの中国人って。その人が日本にいたのはもぉ10年くらい前なんですけど、でもその人って、私も驚くくらい日本のいろんなこと知ってたんですよねー。
 まぁつまり。
 想像するに、中国の人たちって。今は(前もそうでしたけど、今は前以上に)中国政府によって相当目隠し状態にされてるってことなんじゃないですかねー。
 あー怖っ!あー嫌だ!


 で、まぁ肝心の「バブル崩壊」の方はどうかというと。
 解説の後藤康浩氏によれば、
「バブル崩壊を懸念した中国政府は、より大きなバブルを膨らませることにしたようだ」と(?)

 って、わかったようなわからないような、理にかなってるようなかなってないような話なんですけどー(笑)
 でも、ゲストの中国人、周来友氏に言わせれば、
「(中国人は投資熱に)まだ懲りてない。次の投資先があればまた注ぎ込む。それが中国人」と(爆)

 いや、それくらい楽観さとバイタリティーさがあれば、中国、もぉちょっとは元気で“いやがり”そうですね(笑)
 ていうか、その辺は日本人も少しは見習った方がいいのかもなぁ…!?




 そういえば、解説者のその後藤康浩氏。
 月曜のその回だか、それとも去年の秋にやった中国バブルの回だったかで、「はじけないバブルはない!」って、やたら強調してたんですけど。
 でもね。私は言いたいです。
 オマエ、それ、何で80年代の終わりに言わなかったんだー!って(爆)
 ていうより、日経は、ぶっちゃけバブルを煽ってましたよね~

 ま、バブルは、“なぜか誰も言わない”からこそ、バブルなんだ!ってこと?(笑)



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2016
04.02

怪談16.4.2

Category: 怪談話-番外

 ある夜のこと。
 …って、まぁ怪談っていうのは、たいがい「ある夜」ですよね。
 朝日まぶしい爽やかな朝のこと…なんて話は滅多にありません。
 よって、このお話も同じで、つまり、ある夜のこと。
 そこは、Aさんの家の寝室。
 うん!?
 ふと目を覚ましたAさん。
 それは、ぐっすり眠っていた状態から、徐々に徐々に目が覚めていったというのではなく。いきなりハッキリ目が覚めた。

 Aさんは、東京からさほど遠くない某県の県庁所在地で生まれ。
 ずっとそこで育って、大学の時だけは東京に住んでいたが、現在は生まれ育ったその街で奥さんと二人暮らし。
 何年か前にマンションを買った。
 まぁ景気の加減なのだろう。そのマンション、その1、2年は住民の出入りが結構あったらしい。
 巨大ってほどではないけど、そこそこ大きめのマンション。
 住民同士の交流はあまりないこともあって、詳しくはわからないのだが、Aさん、真下の部屋の住人が半年前くらいに入れ替わったのは薄々気がついていた。

 目を覚ましたAさんは仰向けのまま、無意識に目をキョロキョロ。
 見えたのは、ぼんやりと暗く滲んだ寝室の光景。
 いや。別に、何かの気配を感じたとかそういうことではない。もちろん、金縛りとかでもない。
 ただ、いきなり、それもやけにカッキリ目が覚めてしまったので、なんだろうと暗いその部屋の中を見回していた。

「ねぇ…。」
 暗がりの中、ぽつーんと。それは、隣りで寝ている奥さんの声。
「っ――。」
 あぶない、あぶない。つい返事をするところだった。
 明日は、朝イチから大事な会議があるんだから…
 一瞬そんなことが頭を巡ったAさん。とりあえず眠っているふりをしとこうと、急いで目を瞑った。

「ねぇ。」
 またもや、聴こえてきた奥さんの声。
 前の「ねぇ」はどこかまだ半分眠っているような口調だったが、今度のは完全に目が覚めている感じ。
 しかし、返事をしないと決めたAさんは、やっぱり寝ているふり。
 というのも、何だか面倒で。つまり、いきなり目が覚めたとはいえ、どこかまだ完全には目覚めてなかったのだろう。

 それは、1回目の「ねぇ」と2回目のそれの間隔が過ぎてしばらく経った頃。
 奥さんはもぉ寝たのだろうとホッとしたAさん。再び目を開けかけた、まさにそのタイミングだった。
「なによ。やっぱり起きてるんじゃない。」
「うわっ!」
 それは、普段より妙に低い声と、目の前10センチのところにあった奥さんの顔。
 驚いたなんてもんじゃないAさんは、思わず悲鳴。
「なによ。なに驚いてるのよ。失礼ねー」
「だ、だって、オマエ、いきなり…。」
 そう言って見た奥さんの顔は、今は20センチくらいに離れていたものの、それでも近すぎる。
 なら、いっそとAさん。右手を下から奥さんの顔の後ろに回すと、あとは力を込めて引き寄せた。
 その途端、微かに聴こえた「きゃ」っという声。どしっと、Aさんの全身に伝わってきたその重み。

「ちょ、ちょっとな~にぃ?もぉいきなりー。ふふふ。」
 その声は途端にくぐもって。そして、直接体に伝わってくる。
「なに言ってんだって。いきなりはそっちだろ。ふふっ。」
「いきなりじゃないじゃない。ねぇって言ったじゃない。」
「だから寝てたんだもん。そんなの知らないって。」
「ふふふ。なに言ってんのよ。
 最初にねぇって言った時、体がピクっと動いたの見えたんだから。」
「……。」
「ていうか、ずっと目ぇ覚めてたじゃない。
 だって、わたし、だからあなたに声かけたんだもん。」
「だ、だからー。明日は、朝イチで会議――。」
「かいぎぃ?ふーん。会議、多いのねー。ふふふ。」

 その瞬間。上にのっかっている奥さんの体の、その柔らかさを感じ取ってしまったAさん。
 後ろにまわしていた右手をぐっと強く、何もしていなかった左手は……
「ふふふ。もぉやめてよー。」
「そんなこと言ったって、オマエが――。」
「しぃっ!ちょっとやめて!」
 ぱっと離れた奥さんの顔。
「な、何だよー。今さらぁ~。」
「違うのよ。ちょっと黙って!ほら、聴こえない?あれ…。」
 そう言った奥さんは上半身を起こして、何やら辺りを窺う風。
 暗がりに滲んだその顔とその体。それを抱き寄せたいAさんは、腕に力を入れる。
「何だよ、いいよ、そんなことどうだって。
 ていうか、オマエもぉ――。」
「ちょ、ちょっと。だから、やめてって。
 あれ、あれよ。あれ、何の音?ほら…。」
「えぇっ?音ぉ!?音って…。」
「ほら…。聞こえない?」
「……。
 あ…。えぇっ!?何だ?何の音だ、あれ…。」
「ね…。」

 それは、おそらく下の部屋……、なんだろう。
 ドッタン、バッタン。ドッタン、バッタン。
 何か重いものが部屋のあちこちにぶつかっているような音が、ずっと続いている。
 と思ったら、今度はバタバタ部屋の中を走りまわっているような音。
 それは、どう考えたって大掃除をしているって感じの音ではなく…
 というか、今は真夜中。

「ここ、1、2週間くらいかなぁ…。
 うん。もちろん毎日ってわけじゃないんだけど。
 時々夜中にこうなのよねぇ…。」
 と、暗がりの中で奥さんが首をかしげている間にもその音は続いていた。
「いったい何やってる音なんだ?夫婦ゲンカか?
 いっやぁー、違うよなぁ…。」
「ケンカならいいんだけど…。
 ほら、ドスメティック・バイオレンスとかだったら?
 ちょっとヤバイんじゃない。だって、この音よぉ。」
「あぁDVってヤツかぁ…。
 てことは、おい。児童虐待って可能性だって…。
 おい!下って子供いるのか?」
「いやー、知らなーい。どうだろう…。」

 それは、Aさん夫妻がそんなことを言っていた最中。
 ふいに聞こえてきたそれって、たぶん……
 悲鳴?
 もちろん、下の部屋(たぶん)から聞こえてくるのだから、くぐもっていて確かではない。
 でも、高く聴こえたその感じからすると女性か、子供か…。
 Aさんも奥さんも、とにかくそれを聞いた瞬間、「うっ」と。そのただならぬ気配に、思わず息が止まってしまった。
 ただ、音もそれっきり。ピタリと止まってしまった。

「音…、しなくなったな。」
「うん。いつもそう。急に止まる…。」
「そりゃ、止ればそれは全部急だろー。
 だって、こっちは下の状況はわからないんだもん。」
「だから、そういうこと言ってんじゃないでしょ!
 まったくもう…。」
 見れば奥さん、そう言いながらガサゴソガサゴソ、何やら起きだす風。
「バカっ。オマエ、まさか下に行くつもりかよ。」
 慌てふためいて言ったAさんを、ジロっと睨みつけた奥さん。
 暗がりの中、その目の白い部分が妙に怖い。
「そんなわけないでしょ!おトイレよ。お・ト・イ・レっ!
 ったく、アナタって、もぉっ!」

 プンプン怒ってトイレに行ってしまった奥さん。
 一人部屋に残されたAさんは部屋でぼーっと。今の音を何だろうとつらつら思っていた。
 やがて、ドスンと重く。それは、この寝室のドアの閉まる音。
 隣りを見れば、ゴソゴソ。奥さんが布団に潜り込んでいる。
 パチン。
 暗くなった寝室。奥さんの寝ている辺りから聞こえてくるゴソゴソという音。
 そのゴソゴソがおさまってからすぐ…

「なぁ…。」
 暗い部屋にぽつり。でも、今度はAさんの声。
「なによ…。」
 ほんのわずか間があって、奥さんの声。
 それは、布団にもぐっているのか、それとも向こうを向いているのか、くぐもった声。
「なぁ、ほら、下って。
 もしかしてさ。ほら、SMが趣味とか…。」
 結局。その夜は、下の部屋の物音も、奥さんの返事も一切なかった。


 階下からのその音、その後も時々あったとかで。
 それは、やっぱり夫婦ゲンカって感じじゃぁなく…、でも大掃除にしては真夜中すぎる。
 Aさんと奥さん、うるさいのもうるさいんだけど、DVだの児童虐待だったらと思うと気が気じゃない。
 そのたんび、「とりあえず管理人さんに相談してみようか」なんて言ったりしていたのだが。
 でも、そういう時に限って2人とも仕事が忙しくなったり、またはしばらく音がしなくなったり。
 そのくせ、忘れた頃になって、またガタン、バタバタバタ…っと始まる。

 そんな音がしたり、しなかったりで何ヶ月か過ぎた、夏の初め。
 梅雨が開けてちょっと経った、一番暑い頃。
 夜になってもやっぱり暑くて……

 実は、Aさんの奥さんというのは、エアコンが苦手なタイプ。
 でも、そこはうまくしたものでAさんの部屋は7階。
 しかも街外れだったから付近は高い建物がほとんどないので、暑い夜は寝室の窓を開けっぱなし。
 マンションの前は田んぼで、さらに向こうには川だから、風向き次第では結構涼しい風が入ってくる。
 カエルの大合唱が騒々しいのが、難点といえば難点だった。

 でも、その夜は真夜中になっても、蒸っし蒸し。
 それでも、奥さんが仕事から帰ってきた頃は、そこそこいい風が入ってきてたというのだが。
 でも、今部屋に入ってくるのはカエルの大合唱だけ。
 ゲコゲコゲコゲコゲコ…。ゲロゲロゲロゲロゲロ…。
 Aさんの「なぁちょっとでいいからさ、エアコン…」って言葉は、奥さん「ダメ!」って言葉で、言いかけたそばから却下。
 Aさんは暑いし蒸すわで、もう息も絶え絶え。
「もーダメ。オレ、向こうの部屋で涼んでくる…。」
 それは、眠れないボーっとした頭で、Aさんが立ち上がろうとした時だった。

 ズゥゥーン!
「うおっ!」
「きゃっ!」
「じ、地震っ?」
 突き上げてくるようなその音。
 でも、揺れは感じない。
 ……!?
 それは、例えて言うなら、下の部屋で天井に何か重量のあるものをちょっと投げつけているみたいな。
 でも。天井に重いモノを投げつけているって、いったい……

「い、いつものあれなのか?」
「でも、なんかいつもより──。きゃーっ、また!」
 ズゥゥーン!ズゥゥーン!ズゥゥーン!
 鉄筋コンクリートだけあって、それはぶつかっている部分が直接音をたてているって感じではなくて。床全体からというか、壁を伝ってくるというか。
 ズゥゥーン!ズゥゥーン!
 音は、なおも続いていた。

「ちょ、ちょっと何なの?これ…。」
「いったい何やってんだ?下のバカヤツらっ!」
 夫婦ゲンカだか、SMだかしらないが、いくらなんだってこの時間にこの音は度を越しすぎている。
 しかし。それは、また急に止ったかと思うと。
 そして、今夜も聴こえてきた、くぐもった悲鳴のような音。
 でも、その夜はそれで終わりじゃなかった。
 バタン、バタンと戸を勢いよく開けるような音が続いたかと思うと。
 その音にやや遅れて、バタバタバタバタ…と部屋を走り抜けていくような音が──。
 カラカラカラ…。ガタン!ガタン!
「え…。」
 そう。それは、おそらくベランダに面したサッシを勢いよく開けた音。
 間違いない。その音は、Aさんと奥さんのいる部屋の真下からだった。
 
 外からの光に、半分だけ青く照らされている奥さんの顔。
 その表情は、Aさんの方を不安そうにじっと…。
 ゲコゲコゲコゲコゲコ…。ゲロゲロゲロゲロゲロ…。
 下の部屋の音がなくなった今は、もうカエルの鳴き声しか聞こえてこない。
「しぃー。」
 指で奥さんに合図をおくったAさん。
 そっと立ち上がると、抜き足差し足でベランダのサッシの方に。
 音のしないようにそろそろと網戸を開けて、ベランダに出た。
 いや。ベランダの上から覗き込むのは、さすがに気が引けた。
 それでもAさん、下には気づかれないように、ベランダから下の様子を窺う。
 つい今しがた暑くて堪らなかったことなんて、もう完全に忘れていた。

 ゲコゲコゲコゲコゲコ…。ゲロゲロゲロゲロゲロ…。
 カエルの大合唱に混じって、下のベランダから聞こえてきた微かな2つの音。
 いや。声というべきか…
 はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……
 すすっ…。すすっ…。すすっ………
 
「…!?」
 それは、荒く吐いている呼吸の音と、すすり泣きに聴こえた。
 たぶん、荒い呼吸の音は男で、すすり泣きは女…
 下の部屋の夫婦(?)が、今オレの真下にいるってことか?
 首を傾げているAさん。何気に走らしたその目が、こっちに来ようとしている奥さんの姿に気づいた。
 慌てたAさんは、奥さんに向かって「こっち来るな」と手を振ったり、下を指さしたり。
 すぐに、それを察したのだろう。大きくうなずいた奥さん。でも、やっぱり不安そうにAさんをじっと見ている。

 ゲコゲコゲコゲコゲコ…。ゲロゲロゲロゲロゲロ…。
 カエルの大合唱は続いていた。
 それに混じって聞こえてくる荒い呼吸音とすすり泣きも、なおも続いていた。
 もっとも、それからはそれだけだった。
 「何だかわかんないけど、もぉいいか…」とAさん。
 そしてそれは、そんなAさんが首を捻りつつ、部屋に戻ろうとした時だった。
「もぉ嫌っ、こんなの…。」
 …っ!?
 部屋に入りかけようとして、ピタリと動けなくなってしまったAさんの足。
 聴こえてきたその女性の擦れ声は、すすり泣きの主のように思えた。

 Aさん、その後もしばらくそのまま耳を澄ませていた。
 実はその後、男の低い声も聴こえたような気もしたのだが…。
 ただ、それは怒っているのではなく。どこか宥めている口調に感じられた。


 その夜の出来事…。
 もちろん、管理人さんなりを通じて文句を言ってもよかったのだろう。
 でも、Aさんも奥さんも、そんな気にならなかったのだと言う。
 というのも、一つは、なぜだかあまり大ごとにしない方がいいような気がしたこと。
 それともう一つ、その階下の部屋からの音はその夜が最後で、以来一切聞こえることはなかったから。
 ほどなくして、マンションの入口の所にあるポストから、下の部屋の名前が消えていて……


 そして、それは真夜中。
 やっぱり、ふっとAさんが目覚めてしまった時だった。
 仰向けのまま、Aさんは目をキョロキョロ。
 見えたのは、やっぱりぼんやりと暗く滲んだ寝室の光景。
 ゲコゲコゲコゲコゲコ…。ゲロゲロゲロゲロゲロ…。
 外から聞こえてくる、いつものカエルの大合唱。
 でも、いつの間にか、そこには秋の虫の声も混じるようになっていた。
 そんな中、Aさんはこの暗がりの中で、やっぱり目を覚ましている奥さんの気配を感じとっていた。

 その時、ふっと…
 いや。なぜだかわからない。
 何の脈絡もなく。いつだったか帰ってきた時に見た、名前が消えていた下の部屋のポストが脳裏に浮かんだ。
 その途端、ぱぁーっと。
 頭の中で一連のことがぐるぐる巡って、巡って…。
 それが頭から消えた時。Aさん、気がついたら隣りに寝ている奥さんにつぶやいていた。
「なぁ…。」
「……。」
 返事はなかった。
 でも、Aさん、奥さんは間違いなく起きていて、それを聞いているとわかっていた。
「なぁ。下の部屋のアレって…。
 もしかしたら、幽霊とかそういうことだったのかな…。」
「うん…。
 なんだろ?今、わたしもそんなこと思ってた…。」

 ところで、その下の部屋、今では別の家族が住んでいて。
 時々、子供の笑い声が聞こえてくるらしい。
 Aさんと奥さん。そのたんび、顔を見合わせてしまうらしい。



                            ――『睦言』〈了〉


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   ちょっと剣呑で、ゴメン(^^;)




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2016
04.02

エイプリルフール?


 昨日、履いてたパンツ、古くてヨレヨレになってたの気がつかなっくって。
 いやもぉ、昨日は一日、落ち着かねーったらありゃしなかったぜ(笑)
                   パンツって、消費期限?賞味期限?


 エイプリルフールというよりは、これぞまさしく「四月馬鹿」!
 いよぉ~ ♪ポン!



 

 ブログの効用の一つに、“内に秘めたるおバカの発散”っていうの、絶対あるよね(笑)



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