2016
01.30

今週のトピック


 今週のトピックは、やっぱりアフリカに行ったことかなー。

アハガル山地



 …って、もちろん夢ね(爆)

 でも、結構リアルに旅行している夢で。
 あの風景は、たぶんアルジェリアのアハガル山地辺りだと思うんだけど、いやもぉトレッキングを堪能しちゃいました(?)
 夢とはいえアルジェリアを旅行したなんて、何かと物騒なこのご時世にかなり貴重な経験(?)だったりして(笑)

 物騒といえば、トレッキングしてたら現地の人に遠せんぼのイジワルされちゃったりして(あれは、もしかして過激派の人?www)。
 でも、なぜか「シェブ・ハレドに会ったことあるよ」と言ったら(夢の中ではなぜか会ったことになってた)、たちまちニコニコ笑顔になって通してくれたり。

 その後は、なぜかデートの余録までついてたりして、いっやー充実した夢だった―!(爆) 
                               ↑
                           これぞ、リア充ならぬ夢充





             あぁー、続き見てぇ!(笑)


スポンサーサイト
Comment:6  Trackback:0
2016
01.30

ま、いわゆる、“雨の土曜日”ってヤツ


 ♪あぁ~め~が降~ります あぁ~めが降る~

  買~い物行きたし カぁ~サはなし~~~

            …って、まさか傘くらいあるんだけどねー。
            でも、メンドクサイなーって。
            それだけ(笑)




          カラスは、カーカー飛んでんだけどねー


Comment:2  Trackback:0
2016
01.17

雪、ヤダなぁ…。ていうか、雪ってさ…


 関東地方、なんでも今日の夜から明日朝にかけて雪の予報、それも積もる可能性アリなんだとか…

 ただ、今の時点ではTVの天気予報見ても、ネットの天気予報見ても、今一つハッキリしませんよね。
 ネットの予報は、いくつか見ると全部違うし。
 TVの予報も、地図にプロットされた予報、3時間毎、コンピューターによる雨雲予想、さらにそれを元に予想したブロック毎の天気、全て微妙に違う。

 ま、つまりいつもの“雪になるかならないかは、その時になってみないというのが本音”ってヤツなんでしょう。
 午前中はそんなに寒くなかったら「これで雪降るかなー」と思ったけど、午後になってから冷えてきた気がする。
 ただ、雪が降る前の、あの“底冷えがする感じっ”ってほどでもないような?

 
 とはいえ、頼むから雪はカンベンして欲しいよなぁ…。
 それはホント、みんな言ってますね。

 だって、雪って。
 とにっかく何もかも、いろんなことがめんどくさいんですよね。
 だからイヤ!(笑)

 ただ、雪って。
 思い返せば、雪が降るのを待ち焦がれたり、もしくは雪が降るのを情緒深く眺めていた…、なぁ~んてなこともありましたよね。

 つまり、雪って。
 人がソレを嫌がるのは、大人になっちまったから(齢をとったとも言うwww)ということなのかもしれませんね(笑)





  …って、とにかく雪は嫌っ!絶対降るな!雪禁止っ!(爆) 



Comment:2  Trackback:0
2016
01.11

怪談話:16.1.11

Category: 怪談話-番外

 本って、実は意外と人にあげちゃうことが多い方だったりします。
 だって、同じ本をもう一度読むことって、最近はほとんどないですからねー(笑)

 ただまぁそれは、本をあげた方も同じみたいで。
 逆に、貰うっていうのもよくあるわけです。
 本をもらうのは、ま、自分がすすんで手を出さないタイプの本や作家を知るいい機会――結構掘り出し物があったりする――なんでありがたいんですけどねー。
 ただ、困っちゃうのは。そう、貰った本が好きじゃない作家の時ですよね(笑)

 この間も、やっぱりそんなことがあって。
 いや、その作家って。あらすじを読むと、すんご~く面白そうなんですよ。
 もちろん、読みだしても面白い。
 でもね、その“面白さ”に応えてくれる結末がないというか、もっとひどいと“結末そのものがない”というか(笑)

 今までに何度もそんな経験をしたんで、正直「うわぁ~コイツかぁ…」って思っちゃったの、つい顔に出ちゃったんでしょうね。
 本をくれたAさん、私の顔を見てニヤって笑って、「うん。結末ないか、話がどっかいっちゃうか、そんな話ばっか」って(爆)
 その本は短編集なんです

 思わず笑っちゃって、「この人の本って、みんなそうですよねー」って言ったら。
 すると、Aさん、「でも、好きでしょ?こういうシチュエーション」って本をひっくり返して裏のあらすじを指さすんです。
 見 ら、なんと“夜行列車に乗って怪談を披露しあう話”って、「なんじゃそりゃ。あまりに楽しそすぎじゃん!」なんて、思わずパブロフの犬状態になっちゃいました(笑)

 Aさんは「その話、内容はつまんないよ」って笑ってたんですけどね。
 でも、“夜行列車で怪談を語り合う”って、何とも魅惑的で。思わず「それ、一度やってみたいなー」って言ったんです。
 そしたらAさん、こう言うんです。
「うん。俺も、夜行列車で怪談っていうのを見て、思わず買っちゃったんだけどさ。
 というのは、昔一度やったことがあってさ……」と。


 いや。さすがに怪談を話すために夜行列車に乗ったということではなかったそうです。
 Aさんが乗ったのは、中央本線の今はなき夜行列車。
 中央本線ということは、そう。つまり山に行くのが本来の目的だったんだそうです。
 大学3年の3月のことで、山岳部の友だち4人と行ったんだそうです。

 中央本線の夜行列車といえば、濃いグリーンにオレンジのラインの「急行アルプス」と、スティールブルーにベージュのラインの鈍行列車がありましたが、その時Aさんが乗ったのはスティールブルーの方。
 つまり、新宿発23時55分の、いわゆる「2355」ってヤツです。
 ということは、目的地は北アルプスではなく、南アルプスか八ヶ岳ってことになるわけですが、案の定八ヶ岳だったとかで。

 中央線の夜行列車は私もさんざん乗りましたけど、ほとんど寝られないというのがパターンでした。
 それは、その時のAさんたちも同じだったみたいで。
 いや、混み混みだった車内が八王子で一気に降りてから、ちょっとウトウトしたらしいんです。でも何を思ったか、塩山を過ぎた辺りで目が覚めちゃったんだとか。
 そんなわけでAさん、窓の向こうに見えてきた甲府盆地の灯りをぼーっと見ていたら。
 Aさんの向かいの席で寝ていたBクンが、いかにも寝起きって感じの口調で話しかけてきたんだそうです。
 その話というのが、なんと怪談だったと(笑)

 その時っていうのは、車内はもうガラガラだったとかで。
 「2355」は最終電車でもあったので、八王子や高尾で降りる通勤客が多かったんです
 そのボックス席にはAさんとBクンがいて、残りのCクンとDクンは隣りのボックス席で寝ていたんだそうです。
 ただ、Bクンの怪談が終わって、Aクンがお返しの怪談を始めた頃には隣りのボックス席で寝ていたCクン、Dクンも次々と起き出しちゃって。
 石和辺りに着く頃には、CクンとDクンもAクンたちのボックス席に来て一緒に怪談をしていたらしいです。

 しかしまぁ山ヤ(山が好きな人)っていうのは、基本的に全員怪談好きではあるんですけど、山に行く夜行列車で怪談って…
 さすがに、ちょっと呆れます(笑)

 ところで、Aさんたちが座っていたボックス席は車両のほぼ真ん中、窓側進行方向正面がAさんで、その向かいにはBクン。
 通路側には、進行方向正面(Aさんの隣り)がCクン、Dクンはその向かいという風に座っていたらしいんですが、それだとちょっと位置関係がわかりにくいのですよね。
 よって、このお話では以後、Aさんの正面に座っていたBクンを向井クン。
 隣りに座っていたCクンを横田クン、斜め向かい(はす向かい)に座っていたDクンを蓮沼クンとしたいと思います。

 そのAさんたち。甲府に着いたのは知っていたけど出発したのは気がつかなかったと言いますから、相当夢中になって怪談をしていたのでしょう。
 ふと窓の外を見た時は、つい今見ていた甲府の街の灯りはどこにもなく。真っ暗な中に、灯りがぽつんぽつんと見えるという程度。
 顔を窓に近づけると、雪が白く斜めに飛んでいるのが見えたそうです。

 電車が甲府駅を発車したことも気がつかなったくらい怪談に熱中していたというAさんでしたが、その時は視界の端に入ってきた何かに、ふと窓の方を見たんだそうです。
 その時、窓の外には駅の光景が流れていたということなのですが…、というか。むしろその時の状況というのは、窓に駅の光景が流れていることでそっちを見たというよりは、その駅の風景の中に何か違和感があるものが紛れていたような気がして、そっちに目がいったんだと思うと言います。


「え?」
 それを確認しようと、流れていった外の光景を追うように振り返ったAさん。
 もちろん、それは無意識な動きだった。
 というのも、今…、たった今、視界の端に人の姿、それも若い感じの、コートを着た女性の姿を見たような気がしたからだった。
 もちろん、そこは駅だから人がいて当然なのだが、でも時間が時間だった。
 3月の信州(と甲州の境)といえば、まだまだ真冬。そんな真冬の信州の朝の3時の真っ暗な中。しかも雪が風で舞っている中、駅に若い女性が一人で立っているというのは、東京育ちのAさんにとっては異質に感じる光景だったのだ。
 そんな窓の外を振り返ったAさんだったが、振り返った時は遅く。窓の端に、駅のホームの端が一瞬見えただけだった。

「何だ、A。どうしたんだよ?」
「え?」
 その声にAさんが顔を車内に戻すと、それはちょうどその時トイレから戻ってきた蓮沼クン。
 そう言った蓮沼クンは、なぜか立ったまま。ゴトっ、ゴトっと静かに響いてくる音に微かに体を揺らしている。
 でも、すぐにAさんの斜め向かいに座って、またAさんを見た。
 そんな蓮沼クンに声をかけたのは、微妙にせっぱつまった口調の横田クン。
「ト、トイレ、あっちか?」
「あ、あぁ。うん。ドアの向こう…、うん。」
 すぐに立ちあがって、通路をトイレに向かっていく横田クンの後姿。
 何気にそれを見送っていたAさんだったが、すぐに目を蓮沼クンに戻した。
「うん。今、駅…。駅に若い女が立ってたのが見えてさ…。」
 ずっと怪訝な表情でAさんを見ていた蓮沼クン、それを聞いた途端、素っ頓狂な声で笑いだした。
「何だよ、また女かよ。A、オマエって、ホント好きだよな。」
「え?あ、違う。違うって。そういうことじゃないって。
 だって、こんな時間だぜ。
 こんな真夜中に、女が一人で駅に立ってるって、ちょっと変だろー。
 しかも、こんな雪まで降ってるっていうのに…。」
 と言って見た窓の外は、車内とは対照的な真冬の夜の闇。
「こんな時間も何も、ここら辺りだって人が住んでるんだぜ。
 用があれば電車乗るだろ。」
「ううん。まぁそうなんだけどな…。」
「A、オマエはさ。女の姿が視界に入ると、途端に体がピピっと反応するようになってんだよ。」
「ぶっ。ハハハ。うん。それは、オレも思ってた。」
 それは、Aさんの正面に座っていた向井クン。蓮沼クンの言ったことによっぽど合点がいったのだろう。吹き出すように、笑っていた。
 
 Aさんたちが乗る新宿23:55発のその列車。それは、確かに登山目的の乗客が多いのだが、でも蓮沼クンの言うように地元の人も少なからず乗っていた。
 ただ、それらの人は登山目的の客ほど長くは乗らない。
 それは、甲府だったり韮崎だったり。その他の駅からポツリポツリと乗ってきては、大きな企業のある上諏訪や下諏訪、さらにその先の駅で降りて行くお客だった。
 だから、さっきの駅に若い女性がいても全然不思議ではない。でも、Aさんは、妙に強い違和感から離れられなかった。

 そう…、そうだよ。
 何、立ってるんだよ?何で、この電車に乗らないんだよ?
 だってこの電車逃したら、次っていったい……

 新宿発23:55のその列車は中央線の最終列車だった。
 最終といっても今は午前3時だから、ここではむしろ始発と言った方がいいのかもしれないが、それにしたって次の電車はどんなに早くたって6時前後だろう。
 えぇぇっ。それじゃぁあの女の人って。
 この寒さの中、それまで駅で待ってるというのか…
 ふと見た窓の外。
 そこは、飛ぶ雪の粒が心なし多くなって、地面もうっすら白くなってきていた。


 ゴトっ、ゴトっ、ゴトっ…。
 再び始まった怪談。そして、絶えず聞こえてくる電車が走る音。
 Aさんは、蓮沼クンが話すそれを聞くともなく聞いていた。
 カチャっと。
 その微かな音に目をやれば、それは横田クンがドアを開けたところ。
 その姿は、こっちに来るにしたがって、蓮沼クンの頭越しに移動していく。
 そんな通路を戻ってくる横田クンの姿と…、
「…!?」
 それは、横田クンの姿と、そのすぐ後ろをこっちに歩いて来る一人の乗客。
 Aさんは、それをよく見ようと、無意識に上半身を伸びあがらせた瞬間だった。
 横田クンからスッと離れたその客は、黒っぽいコートを着た女性になって――、ストンと。
 それこそ、まるでそこに穴でもあったかのように、蓮沼クンとシートの向こうに見えなくなってしまった女性の姿。
「え…。」
 体がその女性の姿を追おうと反応したのだろう。
 Aさんの足が、すっと立ち上がりかけた――。
「何だよ、蓮沼ぁっ。オマエ、トイレ、ドアの向こうって、違うだろうが!
 隣の車両の向こう側じゃねーかよ!」
 トイレから戻ってきた横田クン。Aさんの視界を遮るように立ったまま、蓮沼クンに大声で文句を言っている。
「バカ、横田。オマエ、そんな大声だして。他のお客さんいるのにヤバイだろ!」
 トイレの場所についてウソを教えた蓮沼クンとしては、横田クンが帰ってきたら文句を言うのはわかっていたからニヤニヤしていた。
 しかし、横田クンのその大声にはさすがにマズイと思ったのだろう。宥めるようにそう言うと。
「大丈夫だよ。いくら何だって、そのくらいわかってるって。
 客はいない。今、この車両も向こうの車両もオレたちだけだ。安心しろ。
 って、コノヤロ!そういうことじゃないんだよ!」
「ハハハ。まぁいいじゃねーか。
 オレも歩いたんだから。ハハハ…。」
「おい。なぁ横田。客いないって、いる――。」
「え、何だよA。後にしろ、後に…。
 とにかくよ、この蓮沼のヤロ、全くふざけやがってよー。」
 そんな一人で怒っている横田クンに、向井クンが思いだすように言った。
「ていうかさ、横田ぁ。
 オマエ、前…、あれ?そう、先月の合宿の時じゃなかったけ?
 あん時もオマエ、同じことで蓮沼にひっかけられなかったっけ?」
「ハハっ。そう!そうだ。」
 また、素っ頓狂な声をあげて笑いだした蓮沼クン。
「あぁっ思いだした。そう、あん時も…。
 オマエ、蓮沼、このヤロ―。」
「ハハハ。オ、オマエ…。あー、可笑しい。ハハハ…。
 何でオマエ、そんな同じことにひっかるんだよー。単純だなぁー。」

 そんなはしゃいでいる3人を向こうに、Aさんは横田クンの後ろを歩いていた女性の客のことを考えていた。
 横田がトイレから戻ってくる時、確かに後ろに女性の客がいた。
 その客が、この車両の向こうの席に座るところも見た。
 でも、今、横田は向こうもこの車両にも客はいないって――。
 えぇっ!?
 思わず立ち上がってしまったAさん。
 その目は、座席を一つ一つ、手前からずーっとドアまで……

「うわっ。な、なんだよ、A。いきなり立ち上がって…。」
「あぁー、びっくりした。」
「もぉA…。」
 おもむろに立ち上がったAさんに、驚く他の3人。
 向井クン、蓮沼クンと顔を順番に見まわすAさんの目。しかし、横田クンの顔に目を止めると。
「今トイレから帰ってきた時、オマエの後ろに客、いたよな?」
「は?」
「客…。黒いコートを着た女、の客。
 ほら。オマエのすぐ後ろ…、歩いてたろ?な?」
「…!?」
「……。」
「な、なんだよA。オマエ、結局また女の話かよ。」
 蓮沼クンが、呆れた口調でそう言うと。向井クンと横田クンは、二人で目配せするようにして笑い出した。
「まったく、もぉー。」
「いつも同じことで引っかる横田にも困ったもんだけど、
 いつも女のことばっか考えてるAにも困ったもんだ。」
「うるせっ、この向井っ。」
「横田の単純バカに、Aの女バカ…。
 あぁ~あ。ホント困ったもんだ。アハハハ…。」
「だから、横田。オマエ、ホントに気がつかなったのか?」
「なぁA…。
 オマエが大好きな…、ハハハ、女の客なんていないって。
 オレ、隣りの車両からずっと歩いてきたけど――、
 蓮沼!そう。オマエだよオマエ。オマエのせいだよコノヤロ。
 でもな、オレたち以外客なんていなかったぜ。」
「……。」
 
 そんなはずはなかった。
 堪らなくなったAさん。気がつけば、飛び出すように立ち上がっ鷹と思うと、憑かれたように通路を進みだした。
 ボックス席を一つ一つ、左右順々に。その上の網棚も余さず。
 そして、いよいよ横田クンがトイレから戻ってきた時、後ろを歩いてきた女性が座った辺り。
 でも、そこは左右前後どこを見ても、誰も座ってない向かい合わせのシートが電車に揺られているばかり。
 ゴトっ、ゴトっ…
 伝わてくる音。窓にぼんやりと映るそれを見つめる自分の姿。
 その向こうの、暗い真冬の夜。
 えぇぇ…
 急くようにAさん。さらに向こうのボックス席を見ようと、また進む。
 でも、車両はすぐに終わり。そこにあるドアをカチャリと開ければ途端に大きくなった電車の音。そして、途端にひんやりした空気に包まれる。
 ゴトンっ、ゴトンっ…
 カチャ、カチャ、カチャン…
 Aさんは、連結部を渡って次の車両へ。でも、その車両の一番向こう、さらにその先のデッキまで行っても、それは横田クン言った通り。
 トイレの中まで見たけど、誰もいない。
 暖房が効ききすぎなのになぜか不思議と寒々しい、誰も乗っていない車内がガラーンと。
 ゴトっ、ゴトっ、ゴトっ…。
 足元から伝わってくるその音が、車内の静けさを倍加させていた。


「ナンパ成功したかー。」
 半ば茫然と戻ってきたAさん。そんなAさんの顔に横田クンが声をかける。
 席に座れば、3人ともニヤニヤ顔。
「なんだよ…。」
「別にぃ~。」
「で?その女、いたのか。」
 Aさんは、首を振るしかない。
「だから言ったろ。お客なんていないって。」
「だからよ、A…。」
 蓮沼クンは、やっぱりニヤニヤ顔。
「なぁー、A。
 オレたちはよ。何の因果か、今から山に行くんだよ、山。
 だからよ、女は下界に戻ってくるまであきらめろ。な?ブッ、ハハハ…。」
「だな。ハハハ…。」
「ハハハ…。」
 そんなAさんが窓を見れば、雪はさらに強く。
 顔を近づければ、思わず首をすくめてしまいそうな冷たさが。
 さらに、その向こうに真っ暗な中、一面雪に覆われているのが見えた。


 怪談は相変わらず続いていた。
 ゴトっ、ゴトっ、ゴトっと、電車の音も相変わらず。
 その静かさが、Aさんたち以外誰もその車両に乗っていないことを実感させる。
 しかし、その電車の音がふいにゴトン、ゴトンと。徐々にゆっくりとした響きに変わっていく。
 見れば、真っ暗な車窓もゆっくり流れている。
「あ、そろそろQ駅くらいか?」
「はぁー。Q駅かぁー。」
「長いんだよなぁー。この1時間が…。」
 Q駅は、その「2355」が1時間近く停車する駅だった。
 降りる茅野に早く着いたところで、山に向かうバスはないから駅にいるしかない。だから、別に電車が1時間停まったところで関係ないのだが…。
 とはいえ、電車というのは、動いてないと変に落ち着かないもの。

「でさ。友だちの親父さん、その女をどこまで乗せたらいいのかと、
 後ろの女に声をかけたらしいんだ。」
 Q駅に着いて、すっかり停まってしまった車両の中。
 その頃にはAさんも、さっきの幻の女の乗客から立ち直って怪談に加わっていた。
 次に話すのはAさんだったこともあって。Aさんはどんな話をしようかと、窓の外を見るでもなく見ないでもなく話を聞いていた。
「でも、返事がない。
 え?っとミラーを見てもその女の姿がないから、慌ててクルマを停めたそうなんだ。」
 それは、そんな横田クンの話が終わろうとしている時だった。
 それは、窓から車内に移しかけたAさんの目に、いきなり入ってきた女の姿。
 え…

 そこは、Aさんが座る所から一つ前斜めのボックス席の端。
 こちらに背を向けた肩までの髪の毛。
 濃いグレーに、肩から腕の上、背中の方にかけてぐるりと模様が編み込まれたセーター。
 さらに、そのセーターを形作っている、丸く、どこかふっくらとした腕とわずかに見えている背中。女性特有の、その体の質感。
 顔は…
 Aさんは、その女性の横顔を斜め後ろから見ていたのだが、髪の毛で顔は見えない。
 髪の端に、頬から顎にかけての白いラインが見えているだけ。
 そして…
 あ…。
 それは、膝の上。そこで折りたたむように抱えている、黒のウールのコート。
 Aさん、その黒いコートには見覚えがあった。
 さっき、横田がトイレから戻ってきた時…
 通路を歩いて来る横田のすぐ後ろを歩いていた、あの女の姿。
 オレがその姿を追おうとした途端、椅子に座って見えなくなっちゃって…
 確か、あの女も黒っぽい色のコートを着ていた。
 でも…。
 あの後、オレはこの車両から隣の車両、トイレまで全部見たっていうのに、あんな女、どこにもいなかった。
 もちろん、この車両はオレたちが騒いでいるからと、車両を移った可能性はある。
 あるけど…、でも、だとしたらなぜ?
 だって、隣りの車両だってガラガラだった。
 あっ。隣りの車両の向こう側にはトイレがあるから、そこに行くオレたちを避けようと…。
 いや、でも…
 だったらなぜ今、そこ、オレたちのすぐ近くに座ってるんだ?
 というか、そう!一体いつそこに座っ――。

「オイ、A!オイったら。」
「わっ!」
 いきなり左膝を叩かれた触感。そのことに驚いて、飛び上がってしまったAさん。
 見れば、それは横田クンの顔。
「なに驚いてんだよ。だから、オマエの番だよ。」
「え…。」
「だから怪談!」
「おい、A。オマエ、また女のことで頭がイッパイか…。」
 そんな向井クンは、ほとほと呆れ顔。
「おんな…、そう。あ…」
 女という声が聞こえるかと慌てて声をひそめたAさん。
「な、何だよA。結局、また女のことなのかよ。」
 相変わらず大声の横田クン。Aさんはもう気が気じゃない。
 だって、その女はすぐそこに座って…
 矢も楯もたまらず、シーと人差し指を口の前に立てたAさん。内緒話でもするような仕草でみんなを自分の方に誘う。
 さらに、一つ前斜めのボックス席に座る女の後姿を、しきりと指をさした。
 なのに…
 横田クンも向井クンも、その顔はきょとーんとするばかり。
 いや。Aさんの指さす方を見たのは見た。
 でも、その目は窓の向こうをさまようだけ。

「え…、何?」
 それは、Aさんの顔のすぐ前でポカーンとした2人の顔。
 なおも仕草でその女性の存在を示そうとしていたAさんだったが、その内やっと気がついた。
 も、もしかして、オレにしか見えてないって、えっ、そういうことなのか…
 そんな…。
 だって、こんなにハッキリ…
 そう思って見たその女性は、やっぱりそこに座っている。
 それも、最初見た姿勢のまま。身じろぎひとつしないで…

 驚きはあったが、不思議と怖いとかそういう感情はなかった。
 恐らくは、「どういうこと?」という当惑があっただけなのだろう。
 とりあえず、オマエの番だと怪談をせかす横田クンと向井クンには「パ、パス。一回パスだ」を言ったAさん。
 話し出した向井クンの怪談を聞くふりをしながら、なおもその女性をチラッチラッと見ていた。

 そんな状態が、どのくらい続いたのだろう。
「オイ、蓮沼!オイ!」
「わっ!」
 それは、向井クンを驚いた顔で見ている蓮沼クン。
「おい、何だよ、蓮沼まで…。
 だから、オマエの番だよ。」
「え…。」
 蓮沼クンの、魂が抜けちゃったみたいなその表情。
「だから、怪談!」
「何だよー。蓮沼も、女のことで頭がイッパイか?
 まったくAといい、蓮沼といい…。」
「お、おんな…。うぐっ!」
 そう言った蓮沼クンのカッと見開いた目。
 その焦点の合ってない黒目を見た瞬間、Aさんはハッとした。
 え?もしかして蓮沼は見えている…、そういうことなのか?
 一方、向井クンと横田クンは相変わらず。大きな声で蓮沼クンをからかっては、ゲラゲラ笑っているばかり。
 Aさんと蓮沼クンの目が合ったのは、そんな時だった。
 Aさんの目に気がついて、一瞬ハッとしたような表情を浮かべた蓮沼クン。
 顔をわずかに右後ろに向かせ、さらに戻したその視線が、Aさんの目にグイッと。
 そして、ゆっくりうなずいた蓮沼クン。
 いる…、いるよな?
 う、うん。い、いる…
 見開いたままの蓮沼クンの目に、やっぱり目で肯き返したAさん。
 だったのだが…

 ガタン。
「っ!」
 その振動にドキリと。思わず窓を振り返っていたAさんの目。
 その目に映ったのは、ゆっくり、ゆっくりと動き出した窓の外の光景。
 何の前触れもなく、その電車は動き出した。
「やっと出発か…。」
 ほっとしたような横田クンの声がポツリ。
「ふぅー。Q駅を発車したってことは、あと1時間くらいで着くな…。
 あ、オレ、ちょっとトイレ行ってくら。」
 そう言って立ちあがって、Aさんの前を通り過ぎる向井クンの体。
 そしてそれは、向井クンの後姿が一つ前斜めのボックス席を通り過ぎた時だった。
「えぇっ…。」


 その声は、Aさん自身思いもよらない大声だったとかで、自分で自分の声にドキっとしたと言います。
 その後すぐAさんは立ち上がって。その女性が座っていた一つ前斜めのボックス席、その横その前、さらにその先と覗きこんだらしいです。
 でも、あの女性の姿はどこにもなかったとかで……

 思わず見た窓の外を振り返った時は、Q駅は遥か後ろにその駅の灯りが一瞬見えただけ。
 それは、最初に女性の姿を見た、あの駅を振り返った時とまるっきり同じだったといいます。



 ―― 『夜行列車にて』〈了〉 


注!無断転載禁止
  断りなく転載されるのは非常に不愉快です。やめてください
  ブログの記事は全て「著作物」であり、著作権法の対象です。
         ↑
    ちょっと剣呑で、ゴメン(^^;)


 中央本線の夜行列車は山に行くのによく利用しましたけど、一方、信越線の夜行列車はスキーに行くのによく乗りました。
 当時は、長野駅の駅前に夜中もやってる食堂みたいな店があって。
 長野駅を降りたら、何よりまずその店に直行したものです。

 その店ではよくカレーを食べたのですが、一度カレーが売切れちゃったことがあって。
 店の人が「ライスに麻婆豆腐をかけたらどう?」って言うんで、「じゃぁそれで」と頼んだら、なんと麻婆豆腐も最後だったらしくって。
 鍋に残っていたのを全部ご飯にかけっちゃったもんだから、いやもぉすんごい山盛り(笑)

 ま、結局無理やり全部食べちゃったんですけどね。
 でも、その日一日なんとも腹イッパイで。
 滑っていて転んだ時なんか、麻婆豆腐が口から出てきちゃいそうで、いやもぉ麻婆豆腐はしばらく見たくなくなりました(笑)

 でも、今となっちゃぁ、その店はおろか、夜行列車もなくなっちゃって。
 なんとも寂しいことだなぁ…なんて、そんな怪談の怪の字もない思い出話でしたとさ。
 ちゃん、ちゃん(笑)


Comment:2  Trackback:0
2016
01.11

“ささやかな”ミラクル!(笑) ~リレー小説が終わって

 うん。まさに、ミラクル!でした。
 ただし、“ささやかな”(笑)

 もちろん、それはいい意味でです。
 ていうか、ささやかの、その“ささやかさ感”っていうのが大事っていうか、また、“今日的な良さ”なんだろうなーって(笑)

 とかなんとか言って、終わってみると、そんな冷静チックな感想になっちゃうわけですが、でも、その瞬間はもぉ“エキサイティング”のひと言でした(笑)

 前の方が書かれたストーリーの中の一文からピピピっ!とストーリーが浮かんだこともエキサイティングなら、ラストのパートでお話がちゃんと(なんとなく?www)収束したこともエキサイティングでした。

 そう考えると、ミラクル!&エキサイティング!だったなーって、なんだか思わず長嶋茂雄になっちゃったみたいな、そんな感じ?(笑)
 とはいえ、ま、長嶋茂雄がいたからこそ、今日の日本の繁栄があるわけで…(爆)

 いつか。でも、“次”はイヤだけどwww、こんな風に「ラブストーリー」をやってみたいなー。
 ただし、普通に“男と女”のヤツね(爆)



 ただ、その反面残念だったこともあって。
 というか、それを書きたくて、感想に託けて書いてるんですけどね(笑)

 というわけで、残念だったこと、それは私が書いたパートの最後なんです。
 実は、あの最後。つまり「倉木だ」以降のシーンには、もう一つのバージョンがあったんです。

 それは、鎌之介が現代に出現した理由が倉木の口から明かされるというストーリー。
 つまり、鎌之介をタイムトラベルさせたのは公安の倉木だった。
 それは、現代のエコテロリスト集団が、過去に遡って信玄公の暗殺を企てているのを察知したから。
 でも、なぜエコテロリスト集団が武田信玄の暗殺を謀るのか。
 それは、リニア中央新幹線の南アルプスのトンネル工事。
 南アルプスのトンネル工事による自然破壊を阻止すべく、エコテロリスト集団は、甲斐の守護神たる信玄公を暗殺し、怨霊とすることで現代の日本に大災害を引き起こすという、ま、何だかとっても“トンデモな”計画をたてたのだ(笑)。
 倉木らは、信玄公暗殺を阻止するため。かの時代で働いて人として選んだのが、その鎌之介だった。
 しかし、何かの手違いが起こって、鎌之介はたまたま例の洋館に現れてしまった。
 …という設定だったと(爆)


 とはいえ。
 コレ、書いても、以降の人はすんごく困りますよね(笑)
 そもそも、書く人は残り2人しかいないというのに。
 とはいえ、その時はそれもあったんですど、それよりも、まーもぉいい加減話長くなってたんで。
 これ以上長くするのもなーって、やめちゃったんです。

 じゃぁ、傍かみると、そもそも「倉木だ」もやめちゃえばいいじゃん!って思うんでしょうけどねー。
 まー、それはとってもわかるんですけどねー。
 でも、実は「倉木だ」のくだりって。それこそ、リレー小説が始まる前、つまり大晦日くらいにはそれは絶対やろうって誓ってたんですね(笑)
 だって、あの「倉木だ」っていう、傍若無人な意味不明さったらないじゃないですか。
 そこがすっごく面白くて好きだったんです。
 「倉木だ」の後の鎌之介のセリフは、何度書いてもピンとこなくて。何だかんだで10回くらいは書き直しましたね(爆)


 ま、あのリレー小説って。
 最初は私、あくまで“楽しむ”が主で、“刺激をもらう”が従。
 “面白いお話を完成させる”にいたっては、まぁ結果としてそうなったらでいいんじゃない?ってスタンスだったんで(爆)
 そんな意味でも、「倉木だ」という唐突な意味不明さは絶対やろうって決めてたわけです(笑)

 という、オチャラケて楽しもうっていう気持ちが変わったのは、たぶん私のパート(第2章)が書き終わった時?
 いや。たぶん、ブログにアップしたくらいでしょうね。

 「あ、なるほど。こういうことか!」って。
 今回の言い出しっぺである青井さんが始まる前に書いてた、「ちゃんとしたお話にしあげるつもりだ」と「個人プレーによるチームワーク」っていうのがスッゴク実感しちゃったんです。
 そういう意味でも、今回。青井さんは、ラストをちゃんと収束させた(?)のも含めて、いやちょっと(かなり?www)見直した…、かも?なんて(爆)


 …って、一体何について書いてたんだか、自分でもわからなくなってきちゃいましたけど、そう!つまり、私のパートである第2章のラストの話ね(笑)

 結局、あの形にしたのは(もう一つのバージョンにしなかったのは)長くなっちゃったからなんですけど、でも、ああいう形で“登場人物のセリフとして「謎」を言わせる”手法はあまりに芸がなかったかなーと。
 というか、中身のない謎を次の人に丸投げしちゃうのは、次を書くポール・ブリッツさんに失礼だったなーって、大いに反省したわけなんです。

 つまり、そう考えると。
 ま、どーせ長くなったんだし、この際長くなったついでに「もう一つのバージョン」使っちゃった方がよかったんじゃないかって、今更ながらすんごい後悔してるんです。
 え?そっちの方がよっぽど失礼?えぇー、そうかー?(爆)


 ま、そんな楽しい繰り言はさておき。
 今回リレー小説に参加して、あらためて思ったのは“オレって、現代日本人が共有しているはずの「物語」が欠落してるんだなー”ってこと。
 それを実感したのは、第1章の中に出てきた「世界線」という言葉が、ラストのパートでも出てきた時でした。

 実は、最初に第1章で「世界線」って言葉を見た時って、(恥ずかしながら)私はそれって“誤字”だと思ったんです。
 だって、「世界線」という言葉は知らなかったし、何より「世界」って言葉でもあの文章は意味伝わりますもんね。

 でも、それがラストのパートでも出てきて。
 さすがに、もしかしてこういう言葉があるのかと調べてみたら、「なるほど、そういうことなんだー」と大いに納得(勉強)しちゃったと(笑)
 ま、つまりそういうことなんですが、実は青井さんの言う「個人プレーによるチームワーク」っていうのをビビッときたのはその時だったんです。

 つまり、「あ、オレって、今回のメンバーの中で唯一違う“世界線”の人だったんだなー」って(爆)
 さらに、そう気がついたら、「そうか!オレは、違う世界線の人として、異音やノイズを出して、順当なストーリーの前に横棒ぶっ込むことがチームプレーだったんだ。つまり、あれで全然OKだったんだ!」って(アッハッハ!)。


 てことで。
 ま、反省してるような、でも反省したないような。ていうか、反省するつもりがいつの間にか自己肯定しちゃってたわけですが、とはいえ、ま、そんな「チームプレイ」は大原則としつつ、今度は「まっとうなチームプレイ」もしたいな!なぁ~んて(笑)
 ていうか、今度は、もっとデッカイ大風呂敷広げたいなー!

 いや。ホント楽しかったです。ありがとうございました。
 まさに、ミラクル&エキサイティング…、ていうかお年玉だった……

 …のかな?(爆)




 学べよ、書けよ。♪書かにゃ、日本の話(小説)になぁ~らぬ、ってことだな(笑)



Comment:4  Trackback:0
2016
01.11

いろんなブログ協賛「リレー小説」:第3章~エピローグ+〆の一句


 いろんなブログ協賛の「リレー小説」の後半です。
 第3章は、「クリスタルの断章」のポール・ブリッツさんが書いています。

  *ポール・ブリッツさんのブログ:http://crfragment.blog81.fc2.com/

  
 第3章

 明滅を続けていた電灯は完全に消え、トイレは真っ暗闇になってしまった。
 男は頭を抱えた。
 くそ。桐花も桐花で、閉じ込めるなんて、なにを考えているんだ。こう真っ暗だと……。
 男はポケットから百円ライターを取り出した。火をつける。
 『あなたは』
 か細い灯りに、文字のようなものが浮かび上がった。男はまじまじと見た。確かに、『あなたは』と読める。
 その正体が、単に壁に書かれた、いわゆる「便所の落書き」であることに気づき、男は笑い出した。細い線で小さく書かれていたから、さっきの電灯では気がつかなかったのだ。

 男は壁に顔を近づけた。
 『あなたは猫です』
 どうも消えかかって読みにくい。
 『あなたはシュレーディンガーの猫です。猫であり同時に箱の中からの観察者でもあります』
 男は眉をひそめた。悪戯としては妙に細かすぎる。
 『この箱の外ではなにかが行われようとしています。箱の中のあなたには、外の状態は波動関数の複雑な重なりと認識できるでしょう』

 なにがいいたいのだか。
 シュレーディンガーの猫の思考実験は知っている。
 五十パーセントの確率で死ぬことになっている箱の中の猫。外からは、「五十パーセントが死んでおり、五十パーセントが生きている」重なりの状態としてしか表現できない、というのがこの思考実験のキモだ。
 猫は生きているか死んでいるかのどちらかであり、「五十パーセントだけ生きていて五十パーセントは死んでいる」幽霊みたいな猫など存在してたまるか、と大論争になった。

 『その結果はあな……託さ……した。シュレーディンガー……相互補完的に解釈……』
 字が読みにくい。ライターの明かりも妙に揺らめいている。トイレットペーパーを燃やせば明るくなるだろうが、消せなかったら火事になるし。外にあれだけ障害物があれば、火に巻かれたら生きて脱出はできないし。

 『箱の外の状態も……の中の量子の状態に左右されるのではあるまいか、問題はどちらが先に観測し解釈……あなた……観測者……』
 ライターの火が消えそうだ。だが、男は魅入られたように文字を読んでいた。
 『神のサイコロはあなたによって振られ……殺し合いの結末……ランダムに崩壊する放射性物質の代わりに……わざと読みにくくした……読むこと自体が……ランダム性……』
 ほんとうに読みにくい。

 『忘れないで……あなた……の……であり……を……だから……2050年の……怪談……』
 薄れ、消えかけた文字。なんとか判読しようとしたとき、ライターの炎が消えた。
 再びの闇に、男はしばらく凍りついたように動かなかったが、ふいに叫んだ。
「桐花!」
 狭いトイレの個室で、男はドアを破ろうと、体当たりを繰り返し始めた。


                 =続く=



 第3章を受けて、ラスト。エピローグは、再び「ハト倶楽部」の青井るいさんです。
 さらに、〆として「もろもろ」のくわがたおさんが一句詠んでくれました。

  *青井るいさんのブログ:http://syousetutokeisyou.blog.fc2.com/
  *くわがたおさんのブログ:http://zurukochan.blog129.fc2.com/


 第4章(プロローグ+〆の一句)

 闇の中、男はもがき続けた。
 今もなお彼は何者かに取り憑かれていた。
 今でも頭の中で別の声が響いていた。
 『儂は、儂は』と、うるさく脳に響く。
 感情が昂ぶると男は我を失った。だから、彼は何度も神社にお祓いをしてもらいに行った。だから、彼は水で清める術を知った。そうすると頭の中のあいつはしばらく消えた。
 男は頭を抱え、もう一度水に顔をつけて冷静になった。

 冷静になればなるほど男の顔は青ざめる。
 男の脳裏には無随意にこの館に来てからのことを思い出していた。
「そんな……バカな……」
 便器の中の水が濁っている理由。
 トイレの外が何者かによって閉ざされた理由。
 あるいはおぼろげな記憶の中、登場した倉木という男がもうこの世界線には存在しないこと。
 『倉木壮太』
 それが男の真名──だ。
 別の世界線で由利鎌之介に何度も真実を聞こうとしていたのは、自分だということに気がついた。
 そして……男が桐花を化け物だと言った理由──。
 すべて男の頭で繋がった。

 しかしそれは単なる思考実験と状況証拠でしかない。だから男は確証を得る必要があった。
 その為にはまずトイレから出なければならない。
 いくら押しても開かなかった密室を脱するべく、彼はトイレの壁をよじ登り、小便器連なるフロアへと躍り出る。
 そして彼は知る。
 洗面所には青く血濡れた種子島があったことを。

 そして男が来ていた上着やシャツ──それから熊の着ぐるみ──が真っ青に染まっていたことを。
「俺が……桐花を……」
 『そうじゃ』と頭の中で声が響く。
 『戦の前も後も礼祭は行われるのじゃ。神楽には良質の木材が必要じゃからな。神に奉納するには神聖な桐が丁度良い。今宵は最高のご馳走がやってきたのう』

 桐花が……?ただ名前に桐が入っているだけで?
 男は許しを請うべく腹の底から絶叫を吐き出した。
 複雑に入り混じった感情をさらけ出し空っぽになった男はフラフラと歩き始めた。
 ネオン管の風前の灯火が男を見上げさせた。目が白く灼ける中、彼は洗面台の姿見に浮かぶ真っ赤な口紅の文字を見つけた。筆跡は〝便所の落書き主〟と一致していた。
 『2050年の因果は終わりにしましょう。そしてさようなら』

 忘れていた男の感情が息を吹き返した。自身の感情が蘇ると男は記憶をも取り戻した。
 男はトイレから駆け出した。
 桐花、桐花、と男は叫び続けた。
 自らの呼吸に喉と胸が焼けそうになる。窓を叩く雨の音は躍動する心音に打ち消され合っていた。
 あの落書き主を彼は知っていた。
 以前彼に近づいてきた桐花とよく似た女。青い蝶のような女──。男に水の清めを教えてくれた神主だった。
 それから男は桐花と出会った。

 彼は知っていた。
 神主も桐花も〝この世界の人間〟ではないことを。そして彼女たちが何故男に近づいてきたのかも。
 ──男は憑依体質で過去の──あるいは平行世界の武神や英雄たちをその身に宿してしまってきた。
 だから男が2050年まで生きつづければ、彼は世界最強の男となってしまい、世界を滅ぼしかけた。
 だから戦士たちは男を滅しに来ていた──。

 それを教えてくれたのは神主だ。男が彼女の本当の姿を見てしまったことで彼女は元の世界に帰れなくなった。そして偶然にも居合わせたこの館で〝神主〟は男の手によって殺された。
 男はそれを許さなかったが、男の中の武神が彼をそうさせた。男が死ねば彼の中にいる数々の亡霊たちは離散する。彼らにとって男が死ぬのは都合が悪かった。
 神主だけではない。この館には何人もの桐花──がいる。
 それはたった一人の桐花からなる並行世界の数だけ存在する桐花──だった。
 すべての桐花は男を殺して2050年以降の未来を望んだ。
 だが、一番新しい桐花だけは違った。
 むろんその桐花は当初の予定では男をここに連れてきて殺そうとしたのだろう。

 館は爆音に嘶きグラグラと揺れた。
 それでも男は桐花の名前を叫び続けた。
 平行世界?
「知るかボケ!!」
 憑依体質?
「ようは俺が自制すればいいんだろ!!」
 男が最初に襲われ少女を殺した場所になんとかたどり着いた。
 そこには死体と桐花がいた。
 桐花はその死体を見つめて驚いた顔をしていた。そして彼女は背中に翅をまとっていた。
 それは怪しくしかし美しかった。
 ハッとした桐花は、「来ないで!!」と叫ぶ。
 その声に反応して男の中に存在する無限の妖気がざわめき立った。

「黙れよ!!化け物ども!!」
 男は自分に言ったつもりだった。
 しかし桐花は困惑した面持ちで目に涙を浮かばせたと思えばきっと口を真一文字に結んだ。そして身にまとった翅をメタモル フォーゼ(変態)させ、鋭利な刀身を作り込んだ。
 青い線形はまっすぐ男の体に伸びた。
 男には勝算があった。

 要はすべての桐花の真の姿を目撃して戦士としての意味を意義を理由を奪わせればいい。それで武神たちを抑えればよかったのだが、男一人の意識が雑多の妖気を抑え込めるわけがなかった。
 (これでいい)
 男は桐花が放った翅の刃をその身に受け入れた。

  一寸のインターバル。
  男の立っていた石が崩れた。男は血を振りまきながら自由落下する。
  暗転──。


「ごめんね……ゴメンなさい──」
 目が開くと、桐花の泣きじゃくる愛くるしい姿があった。
 男は刺された痕を触診してみた。少し身がえぐれていたが、血管や臓器を傷つけるほどではなかった。落ちたショックで骨がいくつか折れていたが命に別条はなかった。
 その様子を見た桐花は目を丸くする。男は彼女の青い髪を撫でながら、「もう大丈夫だから」と微笑み告げた。
 すると桐花は自制を失った幼子のように大声をあげて男にしがみついた。
 散々泣き散らしてから彼女は、
「ゴメンなさい……嘘をつくつもりもなかった。言えなくって」
 もう桐花の身から生えた翅は消えていた。
「さっきの言葉は嘘だ。これが君を救う唯一の方法だったんだ」
 え、と桐花は小さく聞いた。
「つまりシュレティンガーの猫は観測することが結果を導くんだ」
 桐花の疑問符を浮かべた表情がまた可愛らしいと男は思う。

「まだ結果は決まっていない。この世界線での2050年以降も。
 俺は自分の中から化け物を追い出すために死ぬことが必要だった。
 主体的に俺は君に刺されたあの一瞬、意識は死んだ」
 でも、と桐花。
「そして俺が桐花を目撃することにより、君は力を失った。
 だから俺は完全には死んでなかった。量子状態を騙したのさ」
「まさか……そんなことって……」
「ああ。でも俺の中の化け物たちは騙された。
 観測してしまったのさ。死を、ね」
 まだまだ男はこの武勇伝と自らの明晰さを説明して鼻を高くしたいところだったが、そんな余裕は館に残されていないらしかった。
「ひとまず車に帰ろう」
「うん……」
 男は桐花の手をとって立ち上がる。
「あいててててて」
 足や腰の骨が軋み男は情けない声をあげた。
「もぉ〜。カッコよかったのは一瞬だけなんだから」
 男は少しふてくされた。
「おんぶ……」
 期待はしていなかったが、「しゃーなしだよ」と言って桐花は男を背に乗せた。
「ガソリンスタンドまで長いぞ。歩けるか?」
「大丈夫。だってす……き……から」
「何?」
「なんでもない!!バカっ!」
 そうして彼らは館を後にした。
 退館する際、男も桐花も鍵が開いていたことを不思議がっていたが、崩落で鍵が歪んだのだろうと思っておくことにした。

 でも、と何か言おうとした桐花。しかし彼女の言葉は続かない。
 男は館を振り返る。
 彼らが出て行くのを最後まで見届けようとしていたのか、彼らが館から離れるとそれは崩れ去った。
 あそこにはまだ別の桐花が残っていたんだろうか……。
 そんな疑問を口にしかけたが飲み込んだ。
 無数の桐花がいたとしても俺は今ここにいる彼女を愛でればいい。それが彼女たちへの手向けなんだ、と彼は言い聞かせた。
「なあ、桐花。おっぱい揉んでいい?」
「脈絡の論理崩壊!?」
 と口では否定していた桐花だったが、真っ白い肌は赤く染まっていた。彼女はほんのわずかに首を縦に振った。

 夜はまだ明けない。
 そして2050年もまだずっと先の話。
「とんだクリスマスデートだったな」
 男は散々な一日を思い出し笑う。すると桐花もまたつられて笑った。
「あ……見て、空」
 男が空を見上げる。大雨だった空からは白が舞い降りていた。
「雪積もれあなたの青を見てみたい」


                 =完=
              (めでたし、めでたし)


注!無断転載禁止
  断りなく転載されるのは非常に不愉快です。やめてください
  ブログの記事は全て「著作物」であり、著作権法の対象です。
        ↑
   ちょっと剣呑で、ゴメン(^^;)


Comment:0  Trackback:0
2016
01.04

いろんなブログ協賛「リレー小説」:プロローグ~第2章まで

 いろんなブログ協賛の「リレー小説」です。
 まず、プロローグは、「ハト倶楽部」の青井るいさんが書いています。

  *青井さんのブログ:http://syousetutokeisyou.blog.fc2.com/


 プロローグ


 今でも恐怖に震えが止まらない。 
 化け物……。
 男の頭の中でそんな言葉が反駁した。
 それに女の子の……死た……。
 考えたくもなかった。
 あれは……なんだったんだ?
 男はそう思った。

 男は洋館のトイレで頭を抱えていた。
 まるで自分の体じゃないみたいに神経が硬直し震えている。
 それは本能的な恐怖でいくら男が理性から自制しようとも止まらない。
 体が死に対して怯えているのだ。
「と、とにかく……神主さんに言われた通り、水に潜らないと」
 男は先月お参りに行って神主に言われたことを思い出した。
 それになんの意味があるのか男にはわからない。しかし水には清めの作用があるし、神にもっとも近しい神主が言うのだから間違いはないだろう。

 水面は茶色く濁っていた。幸い排泄物の臭いはしなかった。おそらく錆びた水道管の鉄が流れ出たものだろう。
 男はごくりと生唾を飲み込んだ。
 男は便器に顔を突っ込んだ。
 水は冷たい。
 目を開けるのは躊躇われた。
 トイレの水面は微生物──、細菌だらけのように思えたからだ。
 しかし他に水の出る場所はなかった。
 水道が止まっていたのだ。この館全体、水道が止められている。
 しばらく水の中で溜飲を吐き出した。ボコボコと音を立てて気泡が弾けていく。
 不思議と便器に溜まっていた水は暖かかった。
 男は空気を吐き出す中、これまでを振り返る。

 恋人とドライブして夜景を見に来た。しかしあいにく天気が急に悪くなって道なりを進んでいたはずなのに国道から逸れてしまっていた。仕方なく天気が回復するまで時間を潰そうとしていたのだが、バッテリーが上がってしまい、暖房が切れた。
 真冬の山に入るのは今更馬鹿げたことだと考え改めたが、こうして雨宿りする場所を見つけることができたのは不幸中の幸だったろう。
 それに暖炉は使えた。だから寒さは最低しのげたのだ。

 これからどうするか。
 男はトイレの水から顔を出していくらか冷静さを取り戻していた。
 落ち着いたら急に尿を催し、男はズボンのジッパを下ろした。
 濃い尿と一緒に不安や恐怖も流れ出てしまうような気がした。
 男は溜まっていた尿を全部出すと満足した。
 とうか
「おーい、桐花ぁ。ちゃんとそこにいるかぁ?」
 声はなかった。桐花も同じように用を足しているはずだった。トイレは個室ではなく大きい方の個室が三つほどあった。広い屋敷だったので公衆トイレほどの広さは別に不思議ではないと勝手に想像した。
 桐花は一番奥のトイレに入っているはずだ。一緒に入ろうといったのだが、彼女は頑なに拒否した。
 いつもそうだ。ホテルに行っても桐花は一緒にトイレに入ることを拒む。
 恥ずかしいからだと最初は思っていた。一緒に風呂だって入ったことはない。だが付き合ううちに桐花は軽い潔癖というか、プライベートに男が踏み入れることを拒んだ。

 付き合って一年だというのにまだ彼女の家にも行ったことはない。彼女が普段何をしているのか、どんな人生を歩んできたのか、過去に付き合っていたことなどはもちろん、桐花の一切のプライベートを男は知らなかった。
 泊まりに来たことは何度かあった。体の触れ合いも経験済みだ。
 しかし桐花は最中に服を脱ごうとは絶対にしなかった。
 不思議な人だとは思っていた。
 今日だって男が必死にプランした夜景コースを桐花の意見で山から見ようということになった。
 考えても仕方ない、と男はもう一度声をかける。
「おーい。大丈夫か?」
 だが返事はなかった。静かすぎた。隣から桐花の気配がしなかった。
 男は不安になって扉を開けようとするのだが、何かに支えてしまったように扉は薄く開くだけで片手を出すだけで精一杯だった。
「桐花……?」
 急に男は不安になった。叱責を覚悟で男は壁をよじ登ってみると桐花がいるはずの個室には誰もいなかった。
 それに男が入っていた個室の壁と扉の間にモップが何本も挟み込まれていて、まるで男を部屋に閉じ込めてしまっているかのようだった。
 桐花……。
 男は呟いた。
 それと同時、トイレの電灯が怪しく明滅したのであった。


                   =続く=



 プロローグを受けて、第1章は、「待てば海路の日和あり」の椿さんが書いています。
  *椿さんのブログ:http://morningglory698.blog.fc2.com/

 第1章

 ゴメンね。
 トイレをそっと離れながら、桐花は思った。
 彼の入っている個室のドアはモップで塞いだ。これでしばらくは、時間が稼げるはずだ。
 一緒にトイレに入ろう、などと言い出すからどうしようかと思ったが。
 彼はとても怯えていたから、ひとりであそこを出ようなんて思わないはず。
 石造りの洋館の廊下は暗く、凍えるように冷たい。窓ガラスには大粒の雨が当たっては流れ落ちていく。
 雪になった方が暖かだったかもしれないな、と思いながら桐花は真っ黒なガラスを見た。ぼんやりと自分の顔がそこに映りこんでいる。
 黒髪、黒目、平均的な日本人に見える顔立ち。
 可愛いコートに白いセーター、赤いミニスカート。膝下までの編み上げブーツ。デートだから気合を入れたけれど、それも『現代日本』のドレスコードを逸脱するものではない。

 クリスマスデートを楽しみたかったのだけれど。
 一所懸命プランを練ってくれた彼の努力を、無駄にしたくはなかったのだけれど。
 だって仕方がないではないか。
 今日というこの日に、『気配』を見付けてしまったのだから。

 ガラスの中の自分の顔を見つめ、桐花は、「戻れ」と一言呟いて。自身にかけた戒めを解いた。

 薄紫の光が廊下を包み、再び収束する。
 桐花はもう一度、ガラスに映る自分の姿を眺めた。
 足下まで覆う青い長い髪。透けるような白い肌。髪と同じ色の虹彩は、普通の人間と形が違う。どこかこの世ならぬ雰囲気を纏った美貌。
 体格すらも変わっている。二十歳前後の女性の姿から、十四、五歳の少女の姿に。
 身を包む薄紫の衣は、ぼんやりと輝き流水のように揺れ動いて見える。
 その間からは、少女らしいやわらかみを帯びた細い手足や、丸みを帯びた胸の谷間、臍のくぼみが露わになっている。

 苦笑い。桐花は『この』世界線の人間ではない。
 先程彼と一緒にいる時に遭遇した、あの怪物。あふれ出したあの怪物たちを処分するために、平行世界から派遣されてやって来た。彼女は戦士の一人なのだ。
 この世界で恋に落ちてしまったのは不覚だが。彼の存在は桐花にとって、とても大切。だからこそ、彼に危害が及ばぬうちに。彼の世界を守るために。アレを、始末する。
 
 この世界で彼女が『能力』を行使する条件は二つ。
 力を纏った状態のこの姿を、知的生命体に見られてはならない。見られれば彼女は力を纏えなくなり、戦う手段を失う。
 裸体を見られてもいけない。全裸を見られれば、擬態にどうしても不自然な点が出てしまう。不審に思われてしまえば、この青い髪や形の違う虹彩にも気付かれてしまい、活動に制限を受けることになるだろう。
 それは……まずい。使命を全うするためだけではなく、彼の傍に少しでも長くいたいから。

 だから桐花は急ぐ。
 あの死体。彼には言わなかったけれど、あれは彼女と同じ『戦士』の死体だ。
 先程は彼が一緒だったから、ゆっくり調べられなかったが、あの怪物にやられたのだろうか。戦士が怪物に敗れるなど、普通なら有り得ないことだが……不測の事態が起きたのか。怪物が何か特殊な能力を獲得しているのか。それとも、他の原因があるのか……?

 とにかく、まずはアレを調べに行かなくてはならないだろう。
 薄紫の衣を変形させ、翼のようにうち振り。彼女は暗い廊下を死体のあった場所に向かって急いだ。

 ゴメンね、ちょっとだけ待っていて。
 すぐに全てを終わらせて。あなたを迎えに戻るから。


                   =続く=



 第1章を受けて、第2章は、私こと、百物語ガールが書きました。
 え、誰です?途端にイヤそうな顔した人は?(爆)
 
 第2章

 今になっても震えが止まらなかった。 
「この化け物っ!」
 男の頭の中で、そんな声が反駁した。
 考えたくもなかった。
 あやつ…
 あやつは一体、一体何物なのじゃ……

 その化け物…、いや、化け物ではない。その者の名は、由利鎌之介。
 そう。かの真田十勇士の一人…、ではなくて。
 後世に真田十勇士の一人として知られる由利鎌之介から2代前。つまりその男は、そちらの由利鎌之介からみて祖父にあたる鎌之介だった。
 由利家の当主は、代々鎌之介を名乗る決まりだったのだ。

 鎌之介はその屋敷の厠――なのだろう、恐らく。この微かに残る匂いを考えれば――で頭を抱えていた。
 鎌之介の体は、自分の体じゃないみたいに硬直し震えていた。
 それは本能的な恐怖だった。鎌之助がいくら自制しようとも止まらなかった。
 死の恐怖ではなかった。
 もちろん、あの女を殺したことでもない。
 鎌之助は武士だ。人を殺めることはもとより、自分が死ぬことの覚悟も出来ていた。
 しかし…

 あれだけ近くから「種子島(火縄銃)」を撃った。
 しかも、胸のど真ん中に命中したというのに…
 それと、儂を見つめてきた、あの不気味な青い目……
 それを思い出した途端、体中に震えがきた。
 カタカタカタ…
 歯の根が合わない。
「と、とにかく…。
 諏訪のお社の禰宜大夫殿に言われた通り、水に潜るとしよう。」
 それは、鎌之介が先月諏訪大社にお参りに行って、禰宜大夫に言われたこと。
 それになんの意味があるのかはわからなかった。
 しかし、恐れ多くも諏訪大社上社の禰宜大夫が言うのだから間違いはないだろう。

 水面は茶色く濁っていた。
 鼻を近づけても小便の臭いはしなかったから、たんに水だとは思うのだが…。
 ただ、この厠(おそらく)といい、ここまで来た屋敷の中の光景といい。
 それらが鎌之介の普段見慣れた屋敷の光景とはあまりに違っているので、その心を乱していた。
 そう。鎌之介にとっては、トイレのドアすら、ノブを引っ張ったり、押してみたり。しばらくあーでもないこーでもないとしないと開けられなかったのだ。

 ごくり。
 生唾を飲み込んだあと、鎌之介はその水に一気に顔を突っ込んだ。
「…!?」
 水は冷たかった。
 それは、気がついたら立て続けに起きた不可解な出来事に頭がカッカとなっていた鎌之介の頭を冷静にさせた。
 そもそもは…、そう……

 儂は、不敵にも一騎で御館さまの陣に打ち入ってきた謙信めを追って…
 そうじゃ。あの霧に見え隠れする、謙信めの白馬を目印に…
 そうじゃそうじゃ。思い出してきたぞ。
 あれは、儂が謙信めとの間をさらに縮めた時じゃった。
 いきなり、頭の後ろに何かがガツンと…
 後ろからとは卑怯なと…、うむ。振り返った。
 確かに振り返った。そして、そやつの姿を見た…、のか…
 うーむ。見た憶えはあるのじゃが、その顔はとんと思い出せない…

 まぁそれはよい。
 問題はその後じゃ。
 気づいた時には、儂はこの奇妙な屋敷のだだっ広い部屋におった。
 薄暗くて端までは見えなんだが、畳の40や50はゆうに敷き詰められるくらいではなかったか…
 儂が立ち上がった時には、あやつはもうすでに儂の八間近くまで間合いを詰めておった。
 とっさに儂は、謙信めを撃とうと手にしていた「種子島」を発射した。
 そうじゃ。間違いなく発射したのじゃ。
 そして、間違いなくあやつ…、あの奇妙ななりをした女の胸を貫いた。
 なのに、あやつときたら…
 胸に「種子島」が当たったことなど、気がつかなかったかのように。あの不気味な青い目をさらに爛々と輝かして、儂との間合いをさらに詰めてきよった。
 しかも、変な色合いの着物を蜂か虻のようにはためかせ、まるで宙に浮いているかのように……

 慌てながらも、儂はとっさに得意の鎖鎌を――。
 あぁ…
 あの時の恐ろしさは忘れられぬ。
 儂の鎖鎌の分銅があやつの顔に当たった時のあの声。
 あの不気味な青く光る色。
 そう、そうじゃ。あの異様に長くて青いザンバラ髪も…
 あれは、とうてい人の世のものとは思われぬ……
 そうじゃ。恐らくあやつは、化生の物なのじゃろう。
 鎖鎌の分銅で砕けてしまったから、骸を見ても顔はよくわからなかったが、それでもどこか人とは違っておった。
 じゃのに。
 じゃのに、あやつときたら、この儂に向かって来る時こうほざきおった。
「この化け物っ!」

 そう、そうじゃ。思い出したぞ。
 あやつら…
 あの化生のような女を殺した後。何か食べる物がないかと、この奇妙な屋敷を探している時、不意に現れたあやつら。
 そう、あの男と女じゃ。
 今思えば、あやつらもこの儂の姿を見て「化け物」とか申しておった。

 待てよ…
 そうか。あやつら、もしかして儂の当世具足と変わり兜を見て…
 いや。儂の自慢の当世具足と変わり兜がいくら珍しい形とはいえ、今の世に具足と兜姿の儂を見て、武士とわからぬ者などいないはずじゃ。

 と言うより、あやつらの方がよっぽど珍妙ななりでないか…
 そうじゃ、そうじゃ。
 あの後に見た女なぞ、素っ頓狂な紅白の着物に棒っきれのような足をにょっきりはやしおって。しかも、雪が降ってるわけでもないのに雪靴みたいなものなど履いておった。
 そう。それから何じゃ。あの目の周りの狸のごとき化粧は?
 女子とは目元涼やかであることこそ、美人の証ではないのか?
 それと、あの男…
 よく憶えてないが、上は何やら三段腹みたいなものを着ておったくせに、足は股引だけじゃった。
 しかも、男じゃというのに、あの女より早くピーピー泣いて逃げよってからに…

 うーむ。許せん。
 あんな小倅小娘風情に、よりにもよって御館様以下武勇の誉れ高い武田家の中でも剛勇として知られるこの儂に!
 しかも、家中の女子の一番人気の儂に向かって「化け物」とは。
 えぇ~い。こうなったら二人ともとっ捕まえて、黒川金山に送り込んでくれるわ!


 茶色く濁った水面から顔を上げた時、もはや鎌之介には先ほどのような心の乱れはなかった。
 怒りが、そして当面の目的が、鎌之介に力を与えていた。
 そんな鎌之介だったが、この現代の洋館を探るのはとても難儀なことだった。
 ノブを回せばドアが開くのはトイレのドアでわかったのだが、それ以外にもバー式のノブ、さらにはクレッセント錠にも手こずらされた。
 さらに、所々に点いている電燈がクセモノだった。
 戦国時代の人間である鎌之介は夜目が利くのだが、なまじっか明るい電燈があるために目が眩んでしまうのだった。

 それは、そんな鎌之介が長い廊下を静々と歩いている時だった。
 いや。最初は静々と歩いていた。でも、そのうちこの洋館の毛足の長い絨毯で廊下では、特に意識して歩かなくとも足音のしないことに気がついた。
 この珍妙な屋敷は、一体どうなっておるのじゃ。
 これでは忍びの者が入ってきてもわからぬではないか。
 しかも、この壁にあるギヤマン。
 雨が入ってこないのはいいが、いったいこんな南蛮渡来のものをどうやって手に――。
「おーい。大丈夫か?」
 はっ。
 ふいに聞こえてきた声に、鎌之介の足がピタと止まった。
 この声は間違いない。あのピーピー悲鳴をあげておった小倅の声。
 さては、この向こうの部屋の中におるのか?
 と、耳を澄ます鎌之助。
 ガタン。ガチャガチャ…
 聴こえてきたその音は、あの奇妙な仕組みの戸をあけようとする音だろうか?
 鎌之助が、その音の場所を探ろうと、壁にそっと耳をつけると。
「桐花……。」
 それは、壁の向こうでくぐもってはいるものの、間違いなくあの小倅の声だった。
 小娘は?いるのか、小倅と一緒に?
 いや。小倅の呟きから察するに、一緒ではないということか?
 さて、どうしたものか…と、鎌之介がしばし思案していた時だった。
 パチっ、パチっ。
 いきなり聞こえた微かだが激しい音。同時に、天井にポツリポツリと灯っていた、ぼんやりとした灯りが明滅しだしたのだ。
 はっ!
 慌てて身構え、辺りを見回す鎌之介。
 しかし、壁の向こうから聞こえてくるあの小倅を別とすれば、辺りに人の気配はない。

 パチっパチっ。パチっ。ぶぅーん。
 鎌之助は、その音の元である天井の灯りを見上げた。
 それは、ロウソクの火に蛾が飛び込んできた時のように、パチパチと音をたててまたたいている。
 特に付近に何者かが潜んでいる気配は感じないのじゃが…
 パチっパチ。パチっパチ。ぶぅーん。
 その灯りが明滅する音以外、何も聴こえない廊下。
 鎌之助は、廊下のあっち側と向こう側、さらに背をつけた壁の向こうの小倅の気配にも神経をピンと張り巡らす。
 そんな状態がどれくらい続いたのか。
 それは、ふいに。
 ♪ジョワ~ンんんんんんん……
 な、何だ、この音は。
 弦をはじく音のようじゃが…
 ♪ジョワ~ンんんんんんん……
 それは、また。
 何じゃ?何なのじゃ?一体何が起こるのじゃ?
 鎌之介は、廊下の向こうとあっちを、やたらめったら見回す。
 それは、そんな鎌之助が心の平衡を戻そうと、得意の鎖鎌をいつでも使えるようにと構えた時だった。
 ♪ジョワ~ンんんんんんん……
 三度聴こえてきた、その弦のような音。
 そして。その音の向こうから、ゆっくり歩いてきた人の姿。
「な、何やつ?」
「倉木だ。」
「くら…、!?」 
「俺は本当の真実を知りたいだけだ。偽りの真実は見飽きた。
 教えてくれ。一年前、ここで原因不明の爆発事件があった時。
 妻は、なぜこの場所にいたんだ?」
「…!?」
「それと。
 ヌスラット・ファテ・アリ・ハーンとは何者なんだ?
 さっき見た、服を虫のようにはためかせて移動する少女と何か関係はあるのか?」


                   =続く=

 
 *以下、お話は、ポール・ブリッツ さんのブログ「クリスタルの断章」を経て、
  再び青井さんの「ハト倶楽部」。
  さらに、くわがたお さんのブログ「もろもろ」(〆の一句)に続く予定です。
  続きは、それらがアップされ次第このブログにも転載したいと思います。
  (リンク先は、転載と一緒に載せます)
  

注!無断転載禁止
  断りなく転載されるのは非常に不愉快です。やめてください
  ブログの記事は全て「著作物」であり、著作権法の対象です。
        ↑
    ちょっと剣呑で、ゴメン(^^;)




 注!以下は、この「リレー小説」を書いてる方だけがご覧ください

 小説の「補足」というのは野暮ですけど、一応(笑)
 第一章、椿さんの設定では、“桐花がこの世界で『能力』を使える条件として、力を纏った状態の姿を知的生命体に見られたらダメ”なっています。
 しかし、この第二章では「(既に死体となっていた)少女」は鎌之介に姿を見られています。
 さらに、倉木は「服を虫のようにはためかせて移動する少女」を見たとしています(ただし、倉木が見たのは桐花なのか、死体になっていた少女なのかは不明)。
 そうなると、桐花および少女は『能力』が使えなくなってしまいます。
 しかし、それについては、鎌之介はタイムスリップ(かどうかは不明)してきた者、つまり現世の存在ではないため、少女の『能力』が使えなくなることはなかった。
 また、倉木については、彼は一年前に妻を失ったショックで一時的に“知的”生命体とは言える状態ではなかった(笑)ということで、『能力』が使えなくなる状況をクリアという風に、一応してあります。
 ただ、椿さんの設定で、“戦士が怪物に敗れるなど、普通なら有り得ない”ともありますので、少女は知的生命体に見られたがゆえに殺されてしまったという設定(解釈)もあるように思います(実は、そこは悩みました)。
 ただ、その場合の知的生命体とは、鎌之介なのか?倉木なのか?
 そういう意味では、第2章では、それまで化け物(怪物)とされていた鎌之介は“化け物(怪物)ではなかった”としましたが、逆に“やっぱり化け物だった”という展開もあってもいいのかなーなんて思いました。

 ま、上記は、あくまで青井さんと椿さんが書いたお話の、私の解釈の(青井さんと椿さんへの)説明です。
 残りについてどう解釈し書くかは、100%あとを書く方の自由だと思いますし、何よりそうでなくては面白くありません。
 そんなわけで、自由に楽しくしっちゃかめっちゃかなお話にしてもらえることを楽しみにしております(笑)

 それと最後に。
 後を書かれる方、無茶苦茶な設定にしちゃって、ホンっトすみません(爆) 




Comment:13  Trackback:0
2016
01.03

あけましておめでとうございます


 新年早々、去年の話っていうのも何ですけど、大晦日の夜はベランダでぼーっと、除夜の鐘がゴ~ン、ゴ~ンとなってるのを聞いてました。

 そしたら、なんともいい月が出てまして。
 「あぁ月だなぁ…」なんて見てたら、なにやらその左脇にやたらあかるい星が。

月と木星

 
 「なんだろ?あの星。金星かな?」なんて思って調べてみたら、なんと木星だったと(!)
 「新年早々木星見ちゃったなんて (そん時はもう新年に変わってたのね)、今年はいいことイッパイあるかもなー」なんて、意味もなく喜んじゃってみたり(笑)

 だからって、それからずっとベランダで初日の出を待ってたわけじゃないんですけど、ま、初日の出も見ちゃいました。

2016年初日の出



 というわけなんですが、まー、なんでも今年の干支は“さる”なんだとかで。

 そのせいだか何だか、TVやその他諸々で「さる年でウッキキー」なんて発言が目立ちますけど、でも、それってビっミョーにダジャレになってないと思うんだけどなぁ…(爆)



 と、まぁそんなさる年ですけど、やっぱ“さる”といえばこの人!
 そう、“さる”といえば豊臣秀吉――

太閤殿下
              画像元:ウィキペディア

 …のはずなんですが、
最近のニッポン人って、豊臣秀吉こと、太閤殿下に冷たくない?
 なぁ~んて(笑)

 まーね。今のニッポンでは“容姿が全て良し”ですから(爆)
 見た目がよければ、“いいヒト”。悪けりゃ“悪いヒト”と自動的に決められちゃうわけで、つまりはまぁ猿そっくりの豊臣秀吉なんて、もぉクソミソの類なんでしょうーね(イヒヒ)

 
 でもね。
 豊臣秀吉って、昔はそんな嫌われてなかったじゃないですか。

 いや。昔たって、何も安土桃山時代じゃないですよ。
 昭和の高度成長期やその後の70年代不況の頃、あと、もしかしたら不況から立ち直ってきた80年代の中くらいまで。その頃は豊臣秀吉って、ニッポン人の“あこがれ”、“心のヒーロー”みたいなとこ、あったように思うんです。
 
 それが変わっちゃったのは、やっぱりバブルからその後くらいですかねぇ…。
 たぶん、ニッポン人が戦後直後のどん底から、やっとそれなりに豊かな暮らしをおくれるようになった頃。
 あの頃に、日本人の価値観はガラリと変わったんでしょうね。
 “醜いモノは、何であろうとそれは悪いモノだ”と。


 いや、確かに。
 豊臣秀吉がニッポン人のヒーローだった頃っていうのは、小説やドラマでは天下を獲ったくらいまでしか描いてないものが大半だったですよね。
 それに対して、最近は天下統一以降の愚かな部分もちゃんと描くようになったから、悪いイメージに変わっていったっていうのは大いにあるんでしょうけどねー。

 ただ、だからって、一介のたんなる男が、戦国の世を終わらせちゃったという「奇跡」を、その“醜さ”ゆえに帳消しにしちゃう風潮っていうのは何か変じゃありません?

 教科書のイメージだと、いかにも「織田がつき、羽柴がこねし天下餅。座して食らうは徳の川」って感じで天下統一がなされたようですけど、いやいや、全然そんなもんじゃないはずですよね。
 だって、“何を持って天下統一なのか?”って、当時は誰もわからないわけですもん。

 それは、たぶん最終的には、“みんなを妥協させられる力と、みんなが妥協して暮らせる仕組み”の構築ってことなんでしょうけどねー。
 でも、それがわかったところで、何をどうしたらソレが出来るのか?
 もぉ気が遠くなるというより、何だってまたソレをやろうと思ったのか?そのことすら不思議です。
 
 
 とかいって、豊臣秀吉って。
 実は、私もあまり好きじゃなかったりするんですけどね(爆)

 そう、つまり、あの“あまりに自分の欲望にガツガツしすぎ”なとこが、“醜くて嫌い”だったんです。
 ただ、齢とってみると、逆に“人間たるもの、欲望にはちゃんとガツガツしなきゃダメじゃん!”なんて変わってきたと(笑)
 まー、つまり、また価値観が変わったってことなんでしょうね。

 ただ、そういう風に興味を持ってみると。
 その欲望にガッツく先生たる豊臣秀吉って、好きじゃなかっただけに、「あれ?あまり知らないんだ…」ってちょっと愕然としちゃったり。

 ねぇ。
 豊臣秀吉ですよ!豊臣秀吉っ!
 明治維新の礎たる江戸時代の魁の時代を築いた豊臣秀吉のことを日本人がよくわからないなんて、ちょっとマズイだろーって(笑)

 そんなわけで。
 今年は、豊臣秀吉と、彼の欲望へのガッツき方に大いに学ぼう!
 な~んて。

 って、そんなん、どーでもいいことだった?(笑)



Comment:2  Trackback:0
back-to-top