2015
09.28

「深川百物語怪談会」に行ってきました


 実は、「百物語会」っていうのは初体験! ←いや、ホント


 というか、リアルに(顔を合わせての)怪談会は初めての参加で、あぁーこんな雰囲気なんだなぁーって。

 ちょっと雰囲気に呑まれちゃったとこがあったかも(笑)


 とか言っちゃうと、無茶苦茶おどろおどろぉぉぉ~な雰囲気なのかなぁ~って思っちゃう人もいるかもしれませんけど、全然そんなんじゃなくってね。

 なんつーか、こう、好きものたちが嬉々として怪談話語っているみたいな、ま、そんな感じ…、だったかな?(笑)

 参加者の中には有名な怪談師の方やプロの怪談作家いたんですけど、ホント、みんな楽しそうに語ってましたねー



 意外だったのは、リアルな百物語会って、怪談聞きながらみんな、こんなにもゲラゲラ笑ってるもんなんだーって(爆)

 それどころか、百物語会なのに2時過ぎたくらいから私、眠くてウトウトしちゃったりで。

 とはいえ私、学生の頃は授業中寝ながらノートとるのが得意技でして。

 昔取った杵柄なのか何なのか、居眠りはしてもお話はしっかり全部聞いてましたよー(笑)





 でね。

 その居眠りなんですけど、百物語会が終わって家に帰って。

 とりあえず洗濯して、その後寝ちゃったんですよ。

 もぉー、グッスリ(笑)


 でー、たぶんお昼前くらいだったと思うんですけど…

 近所の子供(男の子)が大音響で泣いている声で目が覚めたんです。

 ま、目が覚めたといっても半分だけ(笑)


 でね、その泣き声っていうのが、泣いてるっていうよりは、もう絶叫なんですよ。

 もぉ「うぇ~ん」とかそういうレベルじゃなく、「ぐぎゃー!」みたいなスんゴイでっかい声!


 近くにあるマンションなのかどうかわかんないんですけど、時々そんな風に子供がデッカイ声で泣いてる時があるんですけどー。

 でもね、その時の声はもっとスんゴイわけ。


 こっちは半分寝てるわけですけど、さすがに「これはさすがにちょっとマズイんじゃないの~?」なんて。

 起きて、一応警察にひとこと言っといた方がいいのかなぁ…なんて思うんですけど、なにせ体が全然動かない。

 いや、“体が動かない”なんて書くと。
 「え?え?え?それって、やっぱり金縛りってヤツぅぅ~♪」
 な~んて喜んじゃう怪談バカな方も多いんでしょうけどねー(笑)

 ていうかー。

 「そもそも、その泣き声ってホントに外から聞こえてくるの?
  実は、部屋の中で泣いてんじゃないのぉ~♪」
 なんて、もぉワクワクしちゃってるアホバカな怪談オタクもいるかもしれないですけどねー(爆)


 だから、
 その時は、天気よくて窓全開で寝てたのっ!

 つまりね。
 ご期待にそえなくて申し訳ないけど、体が動かないのは、たんに眠すぎただけだし。

 泣き声は、全開になってる窓の外から聞こえてきたのっ!(笑)



 でね。
 よくわかんないのは、それから。

 私は、相変わらず眠くて眠くて体が動かないまま(億劫で)、その泣き声を聞いてたんですけど、そのうち「あれ?何か言ってる!?」って。

 そう。その男の子、泣きながら何か言ってるんですよ。


 でも、何を言ってるのか、全然わからない。

 言葉だっていうのはわかるし、また外国語ではないというのもわかる。

 でも、何を言ってるかわからない。


 えぇー、何を言ってんだろ?って、半分眠ってる頭でしばらく聞いてたんです。

 だから私、寝ながらノートをとるの得意技だったんですって(笑)


 そしたら、「え、何?呪いの言葉!?」って(爆) ←出たー!怪談バカ


 いや。その「呪いの言葉」(と思ってしまったものが)、何て言っていたのかは(目が覚めた後では)わからないし。

 というか、そもそもその意味不明な言葉を何で「呪いの言葉」と思ってしまったのかもわからない……



 なぁ~んてこと書いちゃうと、
 「って、オマエが一番アホバカ怪談オタクじゃねーか!」
とかツッコまれちゃいそうですけどね(爆)

 いや。弁解するようですけど(笑)、私は怪談大好きですけど、でも今風な「禍々怪談」は大っキライって方でして。

 だから、その手の怪談によく出てくる「呪詛」とかいう言葉を見ただけで、“あぁ。染まっちゃった人のお話だな”って。
 聞くor読むのをやめちゃうくらいなんですよ。

 でも、その時はそういう風に聞いちゃったと(笑)

 ま、怪談なんてもんは、全て“本人の思い込み”で成り立ってるわけさ(爆)


 それは、半分寝ていたという半覚醒の状態だったからなのか、それとも百物語会で一晩怪談漬けになっていたせいなのか……




 かねがね思ってるんですけど、「怪談」の面白いところっていうのは、怪談にいっぱい接していると、怪異に対する意識が逆転しちゃう時があって。

 その瞬間が、みょぉぉぉ~にゾクっとくる。

 私としては、「その瞬間(の感覚)」がスんゴク面白いんですね。

 うん。ソコこそが、“怪談の醍醐味”と言っていいくらい(笑)


 ほら、世の中には、「怪談的な出来事」を信じない人、信じる人、信じすぎちゃっている人がいるわけですけどー、
 でも、信じない人でも、“100%信じてない”わけではないし。
 逆に、信じてる人でも、“100%信じている”わけではないと思うんです。

 だって、信じない人だって葬式から帰ってきたら塩かけるわけだし。
 信じてる人だって、風邪ひいたら医者に行くわけですもん。


 信じてようが信じてまいが現代社会を生きている以上、どっちに寄(酔)ってるかはともかく、現実と異界の「境界」に意識を置いて日常生活をおくってるはずですよね。

 でも、「怪談」…、それも怖がらそうと企んだ「スんゴイ怖い怪談」ではなく、文字通り“なんだか怪しい話だよなぁ…(笑)”的な「怪談」に一気にたくさん接っすると、どっかでストンと“気持ちが異界側に落ちちゃう”時っていうのがあるように思うんです。

 面白いのは、「スんゴイ怖い怪談」にいっぱい接っすると、逆に醒めちゃうんですよね(笑)



 ま、「怪談」だけにオチがなくて申し訳ないですけど(笑)

 「百物語会」というのは、“会”そのものを楽しんで、終わってからはそれぞれに“怪”を楽しめると、まぁなかなかコストパフォーマンスのいい娯楽だなぁ…なんて(笑)


 秋の夜長、皆さまもたまには「怪談会」や「百物語会」なんぞ楽しんでみるのもいいんじゃないでしょうか?








 参加した「深川百物語怪談会」。
 すごく楽しかったんですけど、唯一、結局自分が語れなかったというのは残念というか、後悔というか。

 いくらでも語る機会はあったのに、ネタだっていくらだってあったのに、というか、この百物語会のためにわざわざ新ネタ用意しておいたのに、なーんか語りそびれちゃった。

 ま、「深川百物語怪談会」人気があるらしくって。
 参加者は抽選で選ばれるんで、来年も参加させてもらえるかどうかわからないですけどねー。
 でも、もしまた参加させてもらえたら、今度こそはぜひ語ってみたいです(笑)




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2015
09.26

風呂閉じこもり事件



 一昨日くらいからだったかな?

 家にカネタタキが入ってきちゃって。

 部屋の隅のどこかで時々、思いだしたように鳴いてるんです。

 https://www.youtube.com/watch?v=O8JSO3DzPWI
 *カネタタキについての説明もあります



 最初はいつも寝てる部屋にいたんですけど、やっぱり湿ったとこが好きなのかな?

 昨日の夜中辺りに風呂の方に移動したようで。

 今も風呂で“チョ、チョ、チョ…”って(カワイく)鳴いてるんです。



 いや。うらぶれた感じが、いかにも秋って感じでいいんですけどねー。

 でも、風呂…、まぁいつもシャワーだけなんですけど、でもお湯を浴びせちゃったら死なせちゃいそうで、でもシャワーは浴びたいしでどうしたもんかと……

 というか、食い物もないわけで、このままだったらそのうち死んじゃうんでしょうけどねー。



 ま、鳴き声をきかせてくれるのは大歓迎なんで、ずっといてもいいんですけど…

 でも、なんとか死んじゃう前に逃げ出してくれないかなー(笑)









 ま、コオロギの類っていうのはゴキブリの親戚なわけですけどyoutubeを見たら「うわっ!カネタタキって、もろゴキブリの子供みたいな姿形なんだなー」って(笑)

 鳴き声を聞く前に姿を見かけてたら、速攻で殺虫剤を噴射しまくってたろーなーとか思っちゃいました(爆)



 雉は、鳴くから撃たれちゃうわけですけど、
 ゴキブリは、鳴かないから殺虫剤かけられちゃうんだなぁ……




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2015
09.21

17話目『スゥィーーーツな怪談話~Episode3‐9

Category: 怪談話

17話目『スゥィーーーツな怪談話~Episode3‐9』


 菜里さんが6時で上がりというその日。
 ずっとポツポツだった店は、4時半を回った頃にちょっとした混雑があっただけだった。
 今は奥のテーブルが3つ、一人で静かにコーヒーを飲んでいるお客がいるだけ。
 そんな店内では、ついさっきの混雑で事務所から出てきたママが、珍しく客席で休んでいた。
 そんなママの、ちょっとなんだか虚脱しちゃったような様子……

 そうだよなー。
 ここ最近、やっぱり忙しいよなぁ…。
 そんなことを思いながら菜里さんがガラス越しに外を見れば、向かいのビルの壁も、前の通りを行きかうクルマも夏の夕方の色に染まっている。
 いや。夏のそれよりは、赤みが増しているか…
 そう。ついこの間まではこの時間だったら、もっと黄色味がかった光景だった。

 ぼんやりそれを見ていた菜里さんの目が店内に戻る途中、時計に目が止まった。
 あぁーあ。お店がヒマだと時間が長い…
 ヒマだと動かないから、足が痛くなるんだよなー
 あ、そういえば絵里ちゃんたち、もう来たのかな?
 そっか。絵里ちゃんたち来るんだもん、いつもみたく大忙しでクッタクタでも困るか…
 そうだ。絵里ちゃんたち来るんだもん。いっちょサービスしてやるか!

 首を回して辺りを見回した菜里さん。
 いや、別にどっちでもよかった。でも、たまたま先に目に入ってきたのは、カウンターの向かいにあるある4卓のイスに座っていたママだった。
「あのー、ママ。すみません。」
 疲れて、ぼーっとしていたのか。なんだかきょとんとした表情で菜里さんを見つめ返した、ママのその表情。
「今日、お店のケーキって売ってもらうこと出来ます?」
 それは、何も言わずに座ったまま、体を伸び上がらせるようにして、ケーキのショーケースの中を見ているママの横顔。
「今日、ウチ、従姉妹が来てるんです。
 たまにはサービスしてやろうかと思って…。」
 ママが黙ったままだから、ついそんなことまで言ってしまう。
「うん。いいわよ。
 ただ、レアチーズは数ないみたいだから、それ以外でね。」
「はい。そう、2個ぐらいずつなら大丈夫ぅ…、ですよね?」
 菜里さんも、やっぱり体を伸びあがらせるようにしてショーケースの中を見ながらそう言った時だった。
 お客のほとんどいない店内で、やけにポーンと響いてきたそれ。
「わたし、今日さ。なんだか疲れちゃったのよ。
 菜里さんさ、それ、自分でケーキ出してやってくれない?
 いいよね?」
「は、はい…。」
 それは、ちょっと口ごもった返事の菜里さんと、いつも通りの表情硬めなママの笑い顔。

 後になって思えば。その時って、カウンターの中の和美さんは、いったいどんな顔をしていたのだろう?
 マスターは、どんな顔をしていたのだろう?
 マスターとママのことだから、二人でもう納得していたのか?
 ところが、肝心の菜里さんはといえば……
 例のずっと引っかかっていた些細なこと。そう。例のケーキはどうしてマスターかママが取るんだろう?ということはその時、頭に全くなかった。
 そこは菜里さんも女の子。ケーキを前にすれば、しかもショーケースの中から好きなケーキを選ぶとなれば、やっぱり心が躍ってくるということだろう。
 つまり、「レアチーズはダメだけど…、でもガトーショコラはOKなわけだし…」という、好きなモノを選べるワクワク感でいっぱい。
 そのケーキを従姉妹たちと一緒にワイワイおしゃべりしながら食べるウキウキ感もあった。
 さらに、そのケーキは自分が働いて得たお金で買ったんだって、みんなが思ってくれるちょっとした誇らしさみたいな気持ちもあったのかもしれない。

 ケーキのショーケースの場所は、ガラス扉越しに店内が見渡せるような位置にあった。
 つまり、ショーケースのすぐ向こうには2人席である1卓。
 その向こうには4人席である2卓と3卓。そして、今はたまたまママが座っている2人席の4卓と続いていた。
 ただ、その時。目の前のケーキと、ケーキを従姉妹たちと食べることで頭がいっぱいの菜里さんの目にそれは映っていなかった。

 うーん。まず、ガトーショコラが2つとー。
 あと…。
 うん。いいや。レアチーズ以外、全部2つずつで!
 買うケーキを決めた菜里さんは、ケーキ色いっぱいに染まった頭で、覗き込むような体勢でガラス扉を開ける。
 そして、まずは一番上のガトーショコラのトレンチを取ろうと――。
 うん!?
 あれ?1卓って、お客いたんだ…
「失礼しましたぁー。」
 疑問を持つより早く言葉が先に出てしまったのは、ここ何ヶ月間バイトしていたことの条件反射だったのだろう。
 とるもとりあえず、覗き込んでいたケーキのショーケースから顔を上げて1卓のお客さんに謝った菜里さん。
 あれ?でも、1卓って、いつお客来たんだっけ!?
 その何分の1秒。
 菜里さんは、自分の記憶の中にその1卓のお客の記憶が全くないことに気がついた。
「えぇっ。」
 菜里さんがショーケースの横から見れば、1卓のお客なんてもちろんいなかった。
「…!?」
 カップもグラスも、お冷のグラスすら置かれてない1卓のテーブル。
 あれ?今、確かに小っちゃな女の子が見えたんだけど…
 そんな菜里さんの目に飛び込んできたのは、4卓に座ってこっちを見ているママの顔。
 あ、なに。ママのこと見間違えたってこと…!?
 そのママは、あの笑顔で菜里さんを見ているだけ。
 でも、なんだかいつもよりふわーっとしているように感じられる、その笑い顔を見ていて気がついた。
 え?ママ、わたしを見てるんじゃない…
 なにを見て、笑ってるんだろう。
 あっ…。
 そういえば、ママがあんな風に笑ってるの、いつだったか見た…
 えぇー、いつ見たんだろ…
 菜里さんはそれを思い出そうと。でも、思い出しそうになった瞬間、それが前に奈津子さんが言っていたことにすり替わってしまう。
「そう…。ママはね、表情がちょっと硬すぎるのよね。
 だから、ちょっと愛想悪い感じするけど、
 でもね、ずっと話してると何気にスっゴイ面白いのよね。
 そう、茶目っ気があるっていうのかなぁ…。」
 ふーん。茶目っ気かぁ…
 確かに、マスターをあそこまで手なずけてるんだからなー
 フフっ。手なずけてる…、か。
 わたしもママを見て、少し勉強しよっかな…
 なんて、ちょっと愚にもつかないことを思った菜里さん。
 でも、すぐにケーキのことを思い出して。また、ショーケースの扉を開けて、ガトーショコラのトレンチを取ろうとしたその瞬間。
「っ!」
 菜里さんは体勢のまま、今度は完全に固まってしまった。

 それは、扉を開けたショーケースの中。
 一番上の棚に並んでいるガトーショコラの深いチョコレート色の向こう。
 菜里さんのの目にすーっと入ってきた、ショーケースのガラス越しの小っちゃな女の子。
 見間違いなんかじゃなかった。
 確かに今、菜里さんの目の前。ショーケースの向こう、1卓にそれは座っていた。
 楽しそうに笑っているその目は、いったいどこを見てるのか……
 その途端、サーっと。まるで心臓が真っ白い霜で覆われていくような、そんな感触。

 菜里さんの感覚が真逆に変わったのは、そのあまりにあどけなく、そしてあまりに無邪気な笑顔だったのか。
 それは、不安というものが存在するのを知らない子犬か何かが、夢中で遊びまわっているような、そんな目。
 フフ…。
 なに、この子。かわいい…
 その途端。菜里さんは、冷たい霜だと思っていたその真っ白いものが、目の前にあるケーキの表面にかかっている粉砂糖だったことに気がついた。



 後になって思えば…。
 目の前のありえない出来事の驚きに、ただただ呆気にとられちゃっていたということなのだろう。
 現に菜里さん、その後自分でケーキを箱に詰めたはずなのに、何も憶えていない。
 そんな菜里さんの記憶は、手にケーキの箱を持って和美さんと店を出たところから始まっている。

「織田クンさ…。」
「織田さん?え…!?」
 和美さんの声に、菜里さんはやっと我に返った。
 なんだか顔がぽーっと熱かった。
 そこは、秋の気配がまだない、9月の夕暮れ時。
 真後ろから差してくる西日は色こそ赤いものの、真夏のそれと同じだった。 
「今日は菜里さんが早く帰っちゃうもんだからさ。ふふっ。
 織田クンさ、物足りなさそうな顔してたよねぇぇー。」
「え…。」
 その、和美さんらしくない絡むような口調。慌てて見れば、そこにあったのはいつも通りの笑い顔。
 菜里さんは、その安心できる目に言った。
「もぉ和美さん。なに言ってんですかー。そんなわけないでしょ。
 ていうか織田さん、今日わたしが早く上がるって知ってますよ。
 だってわたし、昨日言いましたもん。」
「うっわ。仲いいんだ。なんか、ムカつく。」
「もっ、だから違いますって。
 昨日マスターに言った時、横に彼もいたんですって。」
「…っ。」
 いや、菜里さんとしては、その時織田さんのその名前を言うのが気恥ずかしくて、そう言っただけだった。
 でも、その「彼」という言葉をまさにその意味として聞いちゃった和美さんは思わず絶句。その大きな目をパチクリさせている。
 それを見て、菜里さんも自分の口から何気に出た言葉がもたらした誤解に気がついた。
「あぁー、もぉ。だから…。」
 堪らず頭の中で「わー!」って頭を抱える。
「ふーん、そう。
 つまり、菜里さんがそれを織田クンに言った時、
 横にマスターもいたって、そういうこと?」
「え…。」
 頭の中の大絶叫で、変に頭の回転が鈍くなっている菜里さんの頭は、和美さんの言っていることが一瞬で理解出来ない。
 織田さんが言った時に、えーと、マスターが横にいた…?
 うん!?
「うん、菜里さん。もぉいいっ。ハハハ…。」
「え…。」
 そんな風に大笑いをしている和美さんって、初めて見る…
 菜里さんは結局、またもや呆気にとられている。


「でもさ、よかったのよね。わかったから…。」
「え、よかった?
 よかったって、え、何?織田さんのこと?
 えっ?あ、わかったって?え…。」
 また目を白黒させている菜里さん。
「もー、なんなのよー。それぇー!」
 それには和美さんも、さすがにウンザリ顔。
「あれ?今って、何の話してたんでしたっけ?」
「うん、だからさ。初デートはどうだったのよ?」
「えぇっ、デートって。まだそんなとこまで…。
 あーっ、もぉっ!違うでしょ、和美さん、それ。
 というか、やめましょうよ、それー。
 今日の和美さん、ちょっと変ですよ。
 なんか、すっごく、らしくない。
 そう。奈津子さんみたい。ハハハ。」
「そりゃそうだよー。
 だって、いろいろ変わったんだもん。
 この夏って…。」
「変わった?変わったって…。」
 見れば、和美さんは、さっき──あのやめるって言ってた時──みたいな真顔をしていた。
「……。」
 あぁそう。
 そうなんだよなぁ…。
 こんな風に真顔になった時の和美さんは、びっくりするくらいきれいなんだよなぁ…
 和美さんって、なんでこんな表情が出来るんだろう
 齢、わたしと一つしか違わないはずなのに…

「ホント、この夏…。
 うん。夏になったくらいを境にさ。
 いろいろ変わったよね。あそこ…。
 そう言って振り返った和美さんの横顔。思わず菜里さんも、つられてそれを振り返ってしまう。
「え。それって、奈津子さんや、
 あと、宇田川クンや沢田クンがやめちゃったってことを言ってるんです?」
 それを言った菜里さんは、そのことに気がつく。
 あれ?わたしって、宇田川クンと沢田クンの名前出す時、いつの間に宇田川クンの名前が先に出るようになったんだろ…
 でも、そんなことを思ったのは、ほんの一瞬のこと。1秒の100分の1もないくらい。

「うん…。それもあるんだろうけどね。
 でも、そうじゃなくってね。
 奈津子や、あの二人がやめたから変わったような気がするんじゃなくって。
 変わったから、やめてったんじゃないのかなって。
 ……。
 なんか、そんな気がする。」
「え…。それって、どういう…。
 もぉー、和美さん。それじゃまさに奈津子さんですよ。ハハハ。」
 わかるようで、でも全然わからない。その和美さんの言っていることに、菜里さんは笑い出すしかない。
 でも、なぜか和美さんは全然笑ってくれない。
「うん…、人ってさ。そういう時?タイミング?
 違う…、役回り?
 うーん。ピッタリな言葉が思いつかないんだけど、
 でも、人にはそういうことってあるんだなーって。
 なんかさ。そのことは、すっごく思ったの。この夏…。」

 隣りを歩く、そんな和美さんの横顔。そして、横から見るその目。
 ずっと見ていても、こちらを向いてくれないその顔と目を見ていた菜里さんは、ハッと気づく。
 えっ。それって、わたし?わたしってことなの……
 その瞬間、和美さんの顔が菜里さんに戻ってきた。
 それは、まるでそのことを菜里さんが最後まで思ってしまうのを遮るかのように。
「あ、違うよ。そういう意味じゃないからね。
 ほら、さっき…。」
「さっき…。」
「ほら。わたし、言ったじゃない。
 バイト、なるべく早いうちにやめよっかなって思ってるって。
 そのこと、そのことよ。」
 その顔にやっと笑いが戻ってきた和美さん。
「あー、それ。和美さん、本気なん──。」
「うん。あのね。このまま続けてたらわたし、先に進めないんじゃないかって。
 このまま大人になったら…、ううん。4年になったらすごく困るんじゃないかって…。
 なんだか、そんな気がしてきちゃったの。」
「困る?先?え…。」
「菜里さんさ。菜里さんは、奈津子や、あと宇田川クンや沢田クンのこと…。
 もしかしたら勝手だって思ってるかもしれないけど──。」
「そんな!そんなこと。」
「うん…。もちろんさ、勝手と言っちゃうなら、まぁ勝手なんだろうけどね。
 でも、思うの。
 みんなさ、そのタイミングが来ただけなんじゃないかって。
 そのタイミングが、たまたまこの夏だったってことなんじゃないかって。
 だから、わた…。
 ううん。ま、それはいいよね?フフっ。」
 それは、やっといつもの笑顔に戻った和美さん。
 なのにその時、菜里さんはいつもに戻れない。
 例の心の引っ掛かりがとけたというのに、和美さんから新たな謎をもらったような、そんな気持ち。
 そう。それは菜里さんが持たなければならない、新たな心の引っ掛かりだった。

 いつの間にか立ち止まっていた菜里さん。先を歩く和美さんが、そんな菜里を振り返った。
 それは、真っ直ぐ差してくる西日に顔を真っ赤にさせて、ちょっと眩しそうに笑っていた。
「ううん。わかんない。わたしにも…。
 だからね、菜里さん。わたし、明日も昼間バイトなんだけどさ。
 マスターに言っとくね。
 昨日帰る時、菜里さんがコーヒー淹れる練習するって言ってましたよーって。」
「っ!」
「アハハハ…。」
 それは、なんだか高笑いみたいな笑い声。
「ちょ、ちょーっと、和美さん。なにを、いきなり――。
 それ、ホントやめてくださいね。お願いですから。」
 わたしはウェイトレスの方が楽しい――。」
 やっと我に返って慌てふためく菜里さん。その目に映る和美さんは、くるりと前を見てそれを遮った。
「ふふっ。じゃぁね。また!」




 その菜里さんは、その後もずっとそのバイトを続けたらしい。
 でも、ショーケース越しに見た女の子の記憶を思い返したことは一切なかったらしい。
 決してそのことを忘れていたわけではない。でも、その後それを意識したこともないように思うのだと。
 というか、それすら、今更思うことなんだと……

 そのことが、そんな程度にしか感じなかったのは、そのことがどんなことであったとしても、対比的に見てしまえば日常に埋没してしまう程度のことだったということなのだろう。
 つまり、菜里さんにとってそこでの経験というのは、「今更だけど、あんなことがあったんだなーって、ホント思う」って言えるくらい、大事なことだったからなのだろう。
 そう。それは、そこに集っていた面々との出逢い。
「あんな人たちが、あの時あの同じ場所にいたことなんて、ちょっと信じられない気がする」と菜里さん。

 そんな菜里さんは、いまだに和美さんが言ったこと…、さらにみんなが言っていたことを考えてしまうことがあるらしい。
 そのたんび、あの時みんなの思いに応えなかった自分に。さらに、期待に応えていない現在の自分に胸が痛むのだと…。




17話目終わり。フッ!
  17話目『スゥィーーーツな怪談話~Episode3
     :それは甘いはずのに、ガッツーンとほろ苦い』
〈了〉



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2015
09.07

17話目『スゥィーーーツな怪談話~Episode3‐8

Category: 怪談話

 17話目『スゥィーーーツな怪談話~Episode3‐8


 しかし、そんなことを言っていた宇田川クンが、2ヶ月もしないうちに店からいなくなってるなんて……

 宇田川クンがクルマの免許をとったその日。
 さっさく友だちとクルマで出かけて、その日はバイトに来なかったと思ったら。結局、それ以降ずっと…

 菜里さんは、あの夜、宇田川クンがフザケ半分に言っていたことを思い出してしまう。
「もぉいいでしょ。どうせ僕、元族なんだから。
 あれ。東野さんは、知らなかったでしたっけ?」
 そんな宇田川クンに、菜里さんは言った。
「だから、そんなこと自慢したってしょうがないじゃん。
 宇多川クンらしくもない…。ねぇ。」
 その後、何気に視線を向けた、織田さんの笑っていた顔。
 そして、照れて苦笑いをしていた宇田川クンの顔……

 一生懸命…、そして楽しくバイトしていた宇田川クンと、免許取ったことでタガがはずれて急にいなくなっちゃった宇田川クン。
 はたして、どっちがホントの宇田川クンだったのだろう。


 しかし、そんなことを思っている間もなかった。
 今度は奈津子さんが、
「サーフィン始めるならおまけするからさ。店、来てよね」と言って。
 サーフショップでバイトしたいからと、店から去っていった。
 和美さんは、もちろんまだいた。
 でも、夏を境に、菜里さんは夜にバイトに入ることが多くなったこともあって、和美さんと顔を合わせることは少なくなっていった。


 店は相変わらず繁盛していた。
 心なしか、前より忙しくなったような気もするくらい。
 でも、いろんなことが変わった。
 新しいバイトも入ってきたり、メニューが変わったり。
 菜里さんの呼び名も、いつの間にか東野さんから菜里さんに変わっていた。
 そんないろいろ変わったその店でも一番変わったのは、そう、それはカウンターの中……

「1、アイスカフェ。お願いしまーす。」
 菜里さんがオーダーを通した途端、カウンターの中を豆を挽きに走るその姿。
 やっとお客にコーヒーを出せるようになったばかりの、相変わらず緊張の抜けない顔。
 カウンターの中のそんな顔をを見ていると、菜里さんは自然と笑みがこぼれてしまう。
 だから、つい冷やかしたくなる。
「おぉぉー、バッチリ!」
「もっ、黙って。こっちは真剣なんだから。」

 沢田クン、宇田川クン、そして奈津子さんまでいなくなってしまったこの店だけど…。
 でも、そんな織田さんがいるこの店が、いつの間にか菜里さん自身が奈津子さんの立場になっていたバイトの時間を、前よりもずっと楽しいと感じていた。

 あの「些細な心の引っ掛かり」は、菜里さんの心に まだあった。
 でも、もうそれはその頃には「引っ掛かり」とすら言えないようなものになっていた。


 秋になったとはいえ、まだまだ暑いある朝。
 今日は午前中からバイトかぁーなんて菜里さん。
 学生のくせしていっちょ前に憂鬱になっていたら、玄関でお母さんに呼び止められた。
「ねぇ菜里。今日美紀ちゃんたち来るの、忘れてないわよね。」
「大丈夫、わかってるって。」
 美紀ちゃんというのは、お母さんの弟の娘で、今年高校生になったばかり。今日は、その美紀ちゃん一家が来ることになっていた。
「何時ごろ帰ってこれる?」
「大丈夫。美紀ちゃんたち来るから、
 今日は6時で上がらせてもらうことになってるから。」
 そう言った菜里さんの脳裏に一瞬浮かんだ、織田さんの顔。


 店に行ったら、すでに和美さんが来ていた。
 なんだか久しぶりに会ったような…
 でも、1週間前だって一緒にバイトしていた。
 なんでだろ?変な感じ…と菜里さんは首を傾げる。

 と、そんな和美さんと菜里さんという強力メンバーが揃った割には、お昼を過ぎてもお客はあまりこない。
 ポツリと来てポツリと帰って、またポツリと来る…、そんな時間が経つのがやたら遅く感じられる日。
 ママは事務所に引っ込んじゃって、マスターはあっちうろうろ、こっちうろうろ。
 絵の傾きを直したり、ドアから外を眺めちゃぁ、いつもの「人は通ってんじゃんかよぉ…」をブツクサ言っていたり。

 そんな店内で。
 菜里さんは、カウンターの中でコーヒーを淹れている和美さんの前にいた。
 和美さんがコーヒーを淹れているその様子を見ていて、ふと思う。
 なーんか、誰とも違うんだよなぁ…と菜里さん。
 ポットを回す速さやお湯が注がれていくその様子、コーヒーがカップに溜まっていくのも、和美さんだと、なぜか不思議なくらいゆったりしているように感じる。
 和美さんだけゆっくりとか、そんなはずないのに、だけどそんな風に感じられる。
 えー、なんだろ?不思議だなぁ…

「菜里さん。菜里さんってば!」
「えっ。あっ…。」
「大丈夫?置くよ。」
 菜里さんが持つトレンチの上のソーサーに、和美さんは淹れたコーヒーを置こうと…。
 カタン。
 小さく聞こえたカップを置くその音は、和美さんのその言葉と同時だった。
「味変わっちゃうから、早く。」

 菜里さんは、頭のどこかでそのふわりとした笑いを感じつつ、コーヒーを客席に運んで行く。
 そう。コーヒーっていうのは淹れた瞬間から味が変わっていく。
 それはびっくりするくらい、本当にあっという間。
 淹れたコーヒーの味が変わるなんて、そんなこと、ここでバイトする前は考えたこともなかったのに…。
 だけど、今はそれを当たり前のこととして知っている。
 なんだか不思議だよなぁ…


 カウンターに戻ると、和美さんは3つ並んだお湯のポットを入れ替えているところだった。
 火の加減を見ながら、和美さんが言う。
「菜里さんも、そろそろしないと…。」
「えぇ。マスターとママには言われてるんですけどね。でも…。」
 それは、コーヒーを淹れる練習。
 ただ、コーヒーを淹れるようになるってことは、カウンターの中に入るってこと。
 ウェイトレスの方が楽しそうだなって思っている菜里さんとしては気が進まないのと、あと…

「ほら…、織田さん。」
「織田クン?え…!?」
 きょとんと顔をあげた、その和美さんの顔。
 マスターのいる入り口の方にチラッと見た菜里さんの目は、すぐ和美さんの顔に戻ってヒソヒソ声。
「ほら、わたし、最近は夜入ることが多いじゃないですか。
 だから、織田さんがコーヒー淹れる練習させられてるの、ずっと見てたんですよ。
 あの時、横にいたマスターの鬼のような顔を思い出すと、なーんか、ちょっと…。」
「ふふ…。大丈夫だって。」
 そこまで言って、和美さんもマスターのいる入り口の方にチラッと目をやる。
 すぐに戻ってきたその目は、やっぱりヒソヒソと笑っていた。
「大丈夫。マスター、女の子には甘いから…。」
「ぷっ…。ハハハ…。」
「でしょ?ふふふ…。」


 そう言って笑っていた和美さんだったのだが。
 急に真顔になって、じっと菜里さんの目を見つめてきた。
「…!?」
「あのさ。なんだかんだで年内かな?とは思ってるんだけど…。
 でもね、なるべく早くやめようって思ってるの。わたし、ここ…。」
「えぇっ!ちょ、ちょっと和美さん、なに言って――。」
「ほら、奈津子見てたらさ。
 わたしも、今のうち、いろんなことやっとかなきゃダメなんじゃないかって…。」
 そんな、妙に伏し目がちに言っている和美さんに、思わず素っ頓狂な声をあげてしまう菜里さん。
「えっ、和美さんもコンテスト!?」
 口から出た瞬間、そんなわけないと気づいたが、でも、まさかそう言うわけにもいかない。
「あのね。そんなわけないでしょ!
 まったくぅー。」
「えー、でも和美さんもいいとこいくと思う──。」
「うるっさい、もぉ。ふふ…。
 うん。違うのよ。
 なんかさ。今のうちいろんなことやって、いろんな引き出し作っとかないと、
 社会人になってから困るんじゃないかって…、ね。」
「あぁそれ、奈津子さんもいつだったか言ってたなー。」
「えぇー、菜里さんにも言ったんだ。」
「はい…。
 でも、なんだか考えちゃいますよね…。」
「でしょぉ。
 奈津子はさ。そうやってさ。時々、人に強迫観念みたいなもん植え付けるのよ。
 何なんだろ?あれ…。」
 そう言って、ドアの向こうを見る和美さん。
 つられてそっちを見た菜里さんは、視界の端にあるその苦笑交じりのどこか遠い目に気づく。

「でも、引き出し…、かぁ…。
 引き出しって、わたしにはどういうことなのか。
 あと、それがないと困るってどういうことか、まだ、よくわかんないんですけどー。
 ただ、わかんないなりに焦るっていうか…。」
「え、なによ。
 菜里さんまで奈津子の口車にのせられちゃったら意味ないじゃん。」
「え…。」
 和美さんのその口調に、びっくりして顔をあげた菜里さん。
 そこにあった菜里さんを見るその目の奥には、何かキッとしたものがあった。




── 本日これまで!
             17話目『スゥィーーーツな怪談話~Episode3‐8』〈了〉
                         *「Episode3-9」に続きます



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    ちょっと剣呑で、ゴメン(^^;)



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