2015
08.31

17話目『スゥィーーーツな怪談話~Episode3‐7

Category: 怪談話

 17話目『スゥィーーーツな怪談話~Episode3‐7


「ねー、宇田川クン。」
「えー、何です?」
 そんな宇田川クンの顔は洗い物の方を向いたまま。菜里さんの方を全く見ようともしない。
 まぁこの洗い物の量で、それどこじゃないっていうのもあるんだろうけど…。
 でも、わたしが奈津子さんだったら、宇田川クンは今いったいどんな態度とるんだろ?と、菜里さん。
 それは、ちょっとシャクにさわるような、でも、クスリともしちゃうような。

「前から思ってたんだけどさ。
 マスターとママって、ケーキだけはなんで自分たちで取りに行くんだろ?
 だって、大変じゃない?毎回毎回、いちいちカウンターの中から出てくの。
 外にいるわたしなんかが取った方が絶対いいよね?」
「そう!それはオレもずっと不思議に思ってたんですよねー。」
「えっ!」
「えっ?」
 いきなり割り込んできたその声に慌てて──思い思いの声をあげて──そっちを見た菜里さんと宇田川クンの目。
 つい今、外で作業していたと思ったのに、いつの間に中に入ってきていたのだろう。それは、カウンターのすぐ前で菜里さんをじっと見つめる、織田さんの驚いた顔。
 菜里さんはポカーンと。その時それを、どのくらい見つめていたのか…

「な、なんですかぁー。二人してぇ、もぉー。
 なーんか、やけに仲良くないですかぁ?織田さんと東野さん。
 もぉやだなぁ…。ハハハ…。」
「え?あ、あぁ…。
 だ、だから、ちょ、ちょっと宇田川クン…。」
「あ…。あぁ…。宇田川クン、ちょっと…。」
 二人全く同時の慌てた声。しかも言ってることまでほとんど同じで、宇田川クンはもう大笑い。
「ハハハ。な、なんだかなぁー、もぉー。ハハハ…。
 あのね。今日、カウンターの中でね。マスターとママ、ずっと言ってたんですよ。
 織田さんと東野さん、今日が初めてだっていうのに、
 やけに息ピッタリだよねーって。フフフ…。」
「もぉ何なのよぉー、それぇー。」
「いや、ホントです、ホント。
 ずーっと言ってたんですよ、マスターとママ。
 こうなったら店、あの二人に継いでもらおっかなんて。」
「もぉっ!だからっ!」

 その、何をどう言えばいいのかわからなくなっちゃった菜里さんの声と顔には、宇田川クンもさすがに大笑いを収めざるをえなくなったのだろう。
 でも、笑いがおさまった宇田川クンは、やけに覚めた目になっていて。
 そして、言った。
「そういえば沢田のヤツ、ここやめたって知ってました?」
「え、沢田クンやめちゃった!?うそ…。」
「うん。わたしは昼間、奈津子さんからチラッと聞いた…。」
 菜里さんは織田さんの表情をちらりとのぞき見して、また言った。
「でも、何がどうなってるの?
 来年受験っていうのは聞いてたけどさ。
 でも、なんだかいきなり…、だよね。」
 菜里さんの言葉を聞いていた宇田川クン。ふと、体を伸び上がらせるようにして奥の事務所のドアの方を見れば。
 織田さんが、何気に店内を見回るように歩きだして、奥のドアまで行って戻ってくる。
「大丈夫。マスター出てくる気配ないですよ。」
 そんなひそめた声の織田さんと宇田川クンの目と目で何か語り合っている様子に。
 えっ何よ。よっぽどこの二人のほうが息ピッタリじゃない…
 なんて、菜里さん呆れつつ、でもちょっとうらやましいような、なんだか複雑な感じ。

「沢田はね、マスターに睨まれちゃったみたいなんですよ。
 アイツが言うには、盗み食いバレんじゃないかって…。」
「ぬ、盗み食いぃぃーっ!?」
「も、だから東野さんっ。声、大きいって。」
「あ…。」
 そんな菜里さんに、やっぱり声をひそめたままに織田さんが説明をしてくれた。
「宇田川クンと沢田クンね。
 実は、後片付けしながら、時々冷蔵庫の中の物、食べてんですよー。」
「なによ、それー。」
「でしょぉ?
 仕事はさ、それこそオレなんかよりしっかりやるんだから、
 そういう、まるで高校生みたいなことやることないって言ったんですけどねぇ…。」
「いいじゃないですかー!
 オレは、織田さんや東野さんみたく大学生じゃないし、
 進学もする気ないんだしー。」
「え、それってさ。
 つまり、食べたくて食べてるんじゃなくて、ありがちなスリルを味わいたい的な…、
 そういうこと?」
「ねぇ…。」
 見れば、しょうがないよなーって苦笑いしてる織田さんの顔。
「それってさ、高校生っていうより中学生じゃないのよー。」
「もぉいいでしょ。どうせ僕、元族なんだから。
 あれ。東野さんは、知らなかったでしたっけ?」
「ハハハ…。だから、そんなこと自慢したってしょうがないじゃん。
 宇田川クンらしくもない…。
 ねぇ。」
 笑いながら視線を向ければ、やっぱり織田さんも大笑いでうなずいている。
 結局、宇田川クンも照れながら苦笑い。
 そんな照れ笑いの顔の中、一瞬だけギロっと菜里さんの目の奥に無遠慮な視線を向けてきた宇田川クン。
 でも、それは菜里さんがハッとする間もないほどに一瞬だった。

「沢田は、それがマスターたちにバレたみたいだって
 言ってたんですけど、僕はそうじゃないと思うんだよなー。」
「え、何なの?」
「あのー、うん…。よくはわかんないですけど…、
 でも、もしかしたら、二人…。」
 口を濁した宇田川クンは、まず織田さん、そして菜里さんと順に視線を向けてから──それは一瞬すーっとくる感覚──あとを続けた。
「つまり…、ね。
 二人がいるから、沢田はいらなくなっちゃったんですよ…、
 マスターは…。
 たぶん…。」
「……。」
「……。」

 宇田川クンのその言葉をじっと考えている菜里さん。
 うん。わかっていた。
 たぶん、そういうことなんじゃないかって、奈津子さんからそれを聞いた瞬間に。
 見れば、ふいにミルの掃除を始めた宇田川クンの背中。
 だから、その背中に菜里さんは言った。
「いくらなんだって、そんなことあるわけ――。」
「あぁ、うん…。それはあるのかも…。」
「え…。」
 それは、今の宇田川クンの背中みたいな顔をした織田さん。
「オレ、仕事覚えるの遅かったんですよ。
 だから、オレを見るマスターの視線とか言い方方とか、
 かなりキツかったことが一時期あって…。」
「……。」
「でも、沢田クンとか宇田川クンって、仕事テキパキやるじゃないですか。
 だからマスター、あの頃は二人への態度とオレの態度、全然違うんですよね。」
「え、マスターって、確かにちょっと意地悪いとこあるけど…。
 でも、そこまでするかなぁ…。」
「するんですって…。
 それは、菜里さんにはわかんないですよ。
 だって、女だし…。きれいだし…。」
 最後の方は口ごもるような声でそう言っている宇田川クンは、相変わらずミルの掃除中。
 菜里さんは何か言おうとして。でも、そこに何の言葉もないことに気がついた。

「あれは先々週だったか…。」
「え…。」
 見れば、何かを思い出している織田さんの上を向いた目がそこに。
「あぁうん、違う。もっと前だ。
 あの日は、宇田川クンが休みで、
 バイトはオレと沢田クンだけっていう珍しいパターンで…。
 うん、そう。確かに、あの時だ。
 あの時、今までのオレに対するマスターの態度とか物言いと、
 沢田クンに対するそれがまるっきり逆になってることに気がついて、えっ!って。
 ちょっとビックリしたっていうのはあった…。」
「です…、よね。
 うん。オレも、それは何となく感じてました。
 マスターの織田さんと沢田に対する態度って、
 いつ頃からだったかわからないけど、でも確かにいつの頃からか、
 まるっきり逆になっちゃいましたよね…。」
 ミルの掃除が終わったからなのか?菜里さんと織田さんの方に戻ってきた宇田川クンの顔。
 それは菜里さんをじっと見て、そして言った。
「でもね。
 僕は、それはそれでしょうがないんだろうな…って思うんですよ。
 だって、この店はあの二人の店なんだもん。」
「で、でもさ――。」
「これは、東野さんとか、あと他の女の人のバイトの人たちがどう思うかは、
 僕はよくわかんないんですよ。
 でもね。もしかしたら、織田さんは同じなんじゃないかなーって思うんですけど、
 僕にしたって、あと沢田にしたって、
 何だかんだ言っても、マスターのこと好きなんですよ…。
 うん。もちろんママも好きだし…、ていうか、ここが好きなんですよ。
 だから、それで……
 うん。だから…、ね。そういうことですよ。」
「いや…、うん。それは、わたしだって……
 うーん……。」

 マスターが好き。ママが好き。ていうか、ここが好き……
 うん。わたしだって、好きだよ、ここ…。
 だからずっとバイトしてるんだし…
 でも、だからって、マスターのことが好きとか、ママのことが好きって、そんな風に言えちゃうって……
 えぇっ。よくわからない。
 ふっと自分を見ている目を感じた菜里さん。
 反射的にそれを見れば、ぶつかったのは織田さんのの目。
 え…

「だから…。」
 それに何かを感じる間もなく、宇田川クンの口を開いた。
「だから…。
 ほら、僕にしたって、織田さんや東野さんにしたって。
 この店でバイトするのは、どんなに長くたって学生の間の何年かのことでしょ。
 そう。織田さんも東野さんも、絶対今はそう思ってるでしょ?
 なら…、いや、だからそれでいい──。
 あ、でも…。」
 と、いきなり言葉をぷっつり止めてしまった宇田川クン。
 その表情に、「あ、ヤバイ。話に夢中になってて、もしかしてマスターが事務所から出てきたのかな?」って奥のドアを見ても、特にそんな気配はない。
 怪訝に思いながら視線を元に戻せば、宇田川クンの顔はまた向こうを。
 見れば、小刻みに揺れている肩。
 え、泣いてるの…
 と、思った時だった。
 急にガバーっとこっちを見た宇田川クンの顔は、もうくっちゃくちゃ。
「ハハハー!」
 なんだ、笑ってたのか。
 えっ。でも、なんで…?
「でも、そうか。そうでしたよね。
 ここは、織田さんと東野さんが二人で継ぐことになったんだったっけ。
 ハハハ。それ、忘れてた。
 すみません。ハハハ…。」
「宇田川クンっ!」

 結局。なぜだか、またケーキのことを忘れている菜里さん……




── 本日これまで!
           17話目 『スゥィーーーツな怪談話~Episode3‐7』〈了〉
                        *「Episode3-8」に続きます



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2015
08.29

しっかしまぁ、ホントに8月かい?

Category: guchitter


 お盆の後くらいは、北側から吹いて来る涼しい風に喜んでたんですけどねー。

 こうぐずついた天気続きで涼しいと、何だかあのひと頃の“うんざりしちゃった暑さ”が恋しくなっちゃうような(笑)

 ていうか、8月に布団かけて寝てるって、記憶ないんだけど…!?



 こう毎日涼しいと心配なのが、そう、農作物の作況ですよね。

 実際、関東甲信から東北地方の日照時間は、平年比50%~それ以下の所が多いんだか。

 *tenki.jp
 http://www.tenki.jp/forecaster/diary/deskpart/2015/08/28/30791.html
 http://www.tenki.jp/forecaster/diary/deskpart/2015/08/27/30731.html


 ていうか、そもそも野菜って、今年はずっとやったら高いんですよね。

 思えば、米の値段が安くなった、去年の12月上旬くらいからずっと高いような気がするんで、Jなんとかが米が安いのを野菜を高くすることで帳尻合わせてるんじゃないかなんて、ついミョーな勘繰りしたくなっちゃいますよね(笑)

 ただまぁピーマンやキュウリのように例年よりやけに高い野菜もあれば、ナスやトマトのように「いつもより安いかな?」なんて野菜もあるので、ま、さすがにそんなことはないと(一応)信じますけどねー。





 まぁそんなわけで。
 ついでなんで、今年の夏、初めて食べた野菜をメモがてらブログネタにしちゃおうかと……


 ハグラウリ

ハグラウリ

 ハグラの“ハグラ”は、なんと“歯グラ”なんだとかで、つまり「歯がグラグラしてるお年寄りでも食べられるウリ」という意味だそーです。

 思わず、「ほんまかいなー」って言いたくなっちゃうというか、「モー少し真面目に名前つけろよ」って言いたくなっちゃうというか(笑)


 でもまぁ野菜の名前なんて、本来そんなもんなのかな?

 やったらおっしゃっれーなネーミングがついた、やったら馬鹿高い野菜なんてブログネタにしかならないだろーから(爆)。
 たぶん1回買って、それで終わりになっちゃうんじゃないかな?(笑)


 で、このハグラウリ。
 私は初めて知ったんですけど、でも千葉県では昔からずっとある、いわゆる地野菜なんだとか。

 食べていて思いだしたのは、千葉県(成田)には「鉄砲漬」という漬物があるんですけど、もしかして、それに使う瓜…、なのかな?




 華厳の滝

華厳の滝


 インゲンの仲間なんだそうです。

 その長さが面白いんだけど、でも長いままじゃ食えないしなぁ…

 ただ、細いんで。
 すぐ火が通るとこはメリット!




 バナナピーマン

 *写真撮る前に食っちゃったんで、写真はなしです(笑)


 ピーマン好きからすると、ちょっとクセがなさすぎかなぁ…
 表面の皮、固いし…

 バナナとついていても、甘いわけではないようです(笑)
 苦くはない




 それと、変わった野菜じゃないんですけど、今年は何気に作った「麻婆キュウリ」が個人的なヒットでした(笑)

 通称「マーQ」になったんですけど、それだと“野菜”というよりは“野球”のイメージになっちゃうのが玉にキズです

 キュウリは火、ほとんど通さなくてOKなんで(というか火を通し過ぎたらマズイ)。
 ひき肉に火が通ったらもぉ出来たようなもので、あの暑い時期、ホント重宝したメニューでしたねー。


 キュウリの濃いグリーンと薄いグリーンに、麻婆の赤い色がまとわりつくのがなんともいい感じで。
 思わず写真とか撮っちゃいました(爆) ←おぉっ!ブログみたいだー!?

まーQ

 ただ、前にも書いたように、今年はキュウリが妙に高いんで、週イチくらいのペースでしか作れなかったのが残念です。

 ま、週イチくらいの方が飽きがこなくていいのかもね?(笑)








 ていうか、ここ2、3日、やったら肉が食いたいんですけど、なんなんだろう?(爆)



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2015
08.29

イヤミス三昧してたら、性格までイヤぁ~になっちゃって…

Category: R&R



 最近、「イヤミス」な気分なもんで(笑)、ついつい「イヤミス」3連発で読んじゃいました。

 てことで、イヤミスだけに読んでいる人がイヤぁ~な気分になるような感想を!(爆)




 で、まぁ「イヤミス」と言えば、この人。

 たぶん「イヤミス」という言葉が生まれるキッカケとなる本を書いた湊かなえです。


 いや。例の『告白』はずいぶん前、それこそ出たばっかに読んだんです。

 感想は、うーん……(笑)

 いや。よく書いたなーとは思ったんですけどね。


 ただ、あの『告白』を読んだ頃って私、怪談に夢中だった頃で(爆)

 お話の作り方(ストーリーの発展のさせ方)が、いちいち“実話”と説明が付く「実話怪談」ってジャンルと同じだなーって気がしちゃって。

 読んでいて、思わずしらーっとしちゃったんです(笑)


 そんなわけで、それ以来湊かなえは縁がない作家だったんですけど、でも今回読んだ 『贖罪』は、まぁ悪くないなぁーなんて(笑) ←手放しでホメたくないないタイプ(笑)

 ていうか、「一人が起こした“しょうもないこと”がきっかけで、“しょうもないこと”が転がるように“しょうがなく”起こってしまうお話」って意味では横溝正史に似てるよなぁ…なんて。

 とか書いたら、怒っちゃう人、結構いるんだろうなー(爆)

 って、どっちのファンが怒るんだろ?(笑)


 ま、私は横溝正史、大好きなんで。

 この『贖罪』を読む前に、“湊かなえが横溝正史に似てる”なんて書いてる人いたら、思わず、祟りじゃぁ~(古っ)なんて言ってたかもしれませんけど(言わないか?)

 でも、よくよく考えてみれば。
 その時代の「イヤ」な要素をぶち込んでお話を書いたって意味では、横溝正史って、まさに「(あの時代の)イヤミス」作家なんですよね。


 ただ、ま、私は、まぁ基本的に「長ぁぁぁ~いお話」が好きなんで。

 湊かなえは、お話をもうちょっと長く(膨らまして)書いてほしいなーって思いますね。

 『贖罪』なんか、よく出来てるだけに、もう1段2段話を膨らまして欲しかったなぁ…。
 というか、出来ればこのストーリーと対になるようなお話があった方が好みかなぁ…。

 でもまぁそうなっちゃったら、もろ横溝正史になっちゃうか(笑)

 ま、そこがあっさり目にしてるからこそ、今ウケてるのか(爆)




 てことで、「イヤミス」2冊目は、桐野夏生の『リアルワールド』

 いや、コレ。
 実際のところはよくわからないですけど(女子高生の知り合いいなんでwww)、でも、たぶんホントに“リアルワールド”なんだろうなー。

 そうそう。女子高生って言えば、Eテレの『むちむち』。
 あれ、面白かったですね。
 ネット見ると批判が多いですけど。でも、見ていて最後は彼女らのこと、“あぁ成長したじゃん”って思えるとこがよかったように思いました。
 ま、その“成長したじゃん”を、“(大人の意図通りに)成長させられた”と感じちゃう人だと批判になっちゃうんでしょうけどねー(笑)
 それはわからなくはないけど、ただまぁ人間なんてそれでいいんじゃない?
 ていうか、そう生きてくしかないんじゃない?って思うかな(笑)


 で、その『リアルワールド』がホントに“リアル”なのかって話ですけど、でもあの登場人物の4人+1人って、あぁたぶん普通にいるんだろうなーって気ぃ、しますよね。

 ていうか、出てくると言葉とか、既視感すら感じちゃいました(笑)


 印象に残ったのは、ある登場人物の「夏になると女は(足の毛を)剃らないで脱色するの。あなたたち(男)がしこしこ勉強してオ○ニーしている間に、女はもっと賢いことしてるの」という言葉。

 思わず、女性にとって化粧ってある意味オ○ニーなのかもなーなんて(笑)

 いや。全然ネガティブな意味で言ってるんじゃなくってね。
 そこは、なんかちょっと目を見開かされたかなー(笑)

 ただ、どう目を見開かされたのかはよくわからない


 とはいえ、ね。
 ま、この『リアルワールド』って、いろいろ取材した上で書いてるんでしょうけど、あくまで桐野夏生という“大人”が書いたお話ですからね。

 出てくる高校生たちがどこまでリアルなのかはわかりませんけど、でもふと思ったのは、ここに出てくる高校生って、妙に回答…、というか正答を求めすぎてない?って。

 人の世に“正答(正しい答え)”なんて、あるわけないし。
 あったとしても、そんなもの、いつまでも正しいわけじゃないし。
 そもそも、答えを求めるなんて閑人の戯言でしかないですよね。

 いや、たぶん…(笑)


 現在の日本が舞台である『贖罪』と『リアルワールド』を読んで思ったのは、登場人物(というか日本人?)って、現在の日本の“日常というもの”に、もぉ飽き飽きなんだろうなぁ…って。

 みんな、こんなに飽き飽きしてるのに、なんで「徴兵制」を導入しないんだろうって(爆)


 な~んてこと言うと、また怒られそうですけどねー(笑)

 でもね。
 今の日本人が抱える閉塞感っていうのは、“10代後半~20代前半が人生の至上の時”という価値観(の幻)こそが原因なんじゃないのかなぁ…。

 だってさ。そもそも「徴兵制」ってたって、“日本は憲法で戦争を放棄”してるんですもん。徴兵されたって、戦争をすることは絶対ないわけでしょ。

 そんなこと言うと、また“世代間格差”だとかって話ってなるんだろうけど、でも「徴兵制度」って(国毎違うんだろうけど)若い頃1回だけじゃないみたいですよ。
 40代くらいとか、中年の頃にもう一度あるようですよ。

 個人的な感覚としては、若いころにしても、中年の頃にしても。その頃に“学校生活や会社(仕事)という日常を離れて”、“いろんな価値観を持った人と非日常を送ってみる”っていうのはすごくいいことだと思うんだけどなー。

 若い世代も、そのくらいの先輩が(一時的にでも)いなくなるのは嬉しいんじゃな~い?(爆)




 なぁ~んて、イヤミスからすっかり脱線しちゃいましたけど(笑)

 ま、脱線することにこそブログの意義がある!なんて開き直ってみたり?

 てことで、イヤミス三冊目は、『暴行』(ライアン・ディヴィッドヤーン著)

 実はこの本。出た時にたまたま本屋で手に取って、面白そうだなーと思いつつ結局そのままになっちゃって忘れてたんです。

 でも、今回たまたまイヤミスな気分になった時、あぁアレ!アレを読んでみたい!って思った本だったんです。

 とはいえ、題名すら憶えてなくって。
 表紙の記憶はあった。

 いやもぉ探すのに苦労しましたよ(笑)
 出版社のサイトって、もう少し探しやすくならないもんだろうか?

 アメリカで「傍観者効果」という言葉を生むきっかけになったある事件が元になっているらしいんですけど、ま、簡単に言っちゃうなら犯罪が起きているのを複数の人が目撃しながら、誰もが他の誰かが通報するだろうと結局誰も通報しなかったため被害者は亡くなってしまったその顛末のお話です。

 *傍観者効果(wikipedia)
 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%82%8D%E8%A6%B3%E8%80%85%E5%8A%B9%E6%9E%9C

 というか、“顛末”というよりは、「それ」の傍にいたために関わらずにはいられなかった(関わらなかった=傍観した)人たちをドラマとしてエピソード化したと言った方がいいのかな?

 実際、お話ではその“傍観者”となって「傍観者効果」という言葉を生む事件そのものと、傍観してしまったその人のその時の状況(ドラマ)は対等なエピソードとして描かれていいるし。
 つまり、お話中では「事件」そのものもエピソードの一つにすぎない(?)


 個人的には、たまたまその時その場(殺人事件が起きたアパート)でスワップしていた夫婦がその後、微妙な言葉の言い間違いから信頼に致命的な溝をつくってしまうエピソードが印象的でしたね。

 確かに人間誰しも、自分がそんな状況(修羅場)に追い込まれたら、他人の修羅場(殺人事件)なんて知ったことじゃないとなってしまうのはあると思うんです。

 もちろんそれは、その“知ったことじゃない”が瞬間的な感情だったり、自分がその時直面した修羅場にもよるんでしょうけどねー。

 ただ、誰しも自分と自分の大事な人たちの人間関係(自分の幸せ)を守ることが一番大事(最優先)という思いは、単純には責められないですよね。

 それを躊躇なく責められる人って、たぶん第三者の無責任な感情を当事者に押し付けることで自分が正しいと確認して悦に入ってる人なんじゃないかなぁ…。


 結局、お話では事件に巻き込まれた女性は死んでしまうのですが、でもその事件の無残さほど後味は悪くなくて。

 いやもぉ事件そのものを含めてやりきれないエピソードばかりなんですけど、読んだ後はどこか妙にほっとするようなテクスチャーがあるのがよかったです。

 そう言う意味じゃ読み終わった後。
 イヤミスというよりは、村上春樹の『アフターダーク』のテクスチャーに近いかなーって思ったんですけど、どうなんでしょう(笑)

 そもそも、この『暴行』という小説はイヤミスではないんでしょうけどね



 てことで、以下はやや不謹慎かもしれませんけど、あえて。

 アマゾンはじめミステリ小説のレビューや感想で、お話の流れの中の「偶然」を批判する人って多いじゃないですか。

 “そんな偶然あるかなぁ…”みたいに。

 いや。私もそうなんですけど、確かに「小説」、特に「ミステリ小説」を読んでる時って、登場人物(特に犯人)の行動に“しかるべき合理的な理由”を求めるものですよね。

 でも、実際の「事件」っていうのは、ほとんどが犯罪者の偶然に被害者の偶然が重なったところに、さらにタイミングという偶然がぶつかったことで起こっているんだと思うんです。

 「事件」は犯人の単純な動機から生まれたものであるため、本来ならそこには「謎」なんて存在しないはずなのに。
 でも、そこにいくつもの「偶然」が重なって起きたがゆえに、第三者が俯瞰するといろんな「謎」が発生する…。

 実際の「事件」ってそんなもんなんだなぁ…と、つくづく思ってしまったのが例の高槻の事件でした。

 今んとこニュースを見る限り、犯人は計画(欲求)半分行きあたりばったり半分で事件を起こしたようですけど、でもあの二人が犠牲になったのはおそらく「偶然」なんですよね。

 そんな「偶然」って、実は私たちの街に普通にゴロゴロ転がってるもんなんだってこと、絶対忘れちゃいけないんでしょうねー。










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2015
08.24

17話目『スゥィーーーツな怪談話~Episode3‐6

Category: 怪談話

 17話目『スゥィーーーツな怪談話~Episode3‐6


 そんな夏の始まりのその日。
 3時ちょっと前くらいから始まったお客の波が、やっと落ち着いてきたのは夕方5時を回った頃だった。
 例の団体のお客がどっと帰ったら、その後にやってきたお客もなんだかつられるように帰ってしまった店の中。
 お客はといえば、パラパラ奥のテーブルにいるくらい。
 マスターとママも、この調子だと今夜は忙しくなりそうだから今のうち夕食を食べちゃおうと事務所に引っ込んでしまった。
 外はまだまだギラギラと暑いようだったが、エアコンの効いた店内は先ほどの大忙しの心地よい疲れもあって妙に気怠い感じがあった。

「ねぇ菜里さんさー。洗ったやつ、
 拭いて棚にしまってくれるとうれしいんだけどなー。」
「あ、はい。」
 そう言ってカウンターの中に入った菜里さんだったが、その洗い終わったカップや皿、グラスの量にびっくり。
 しかも、今も奈津子さんが洗い物をしている洗い場にも、その前のカウンターにも、カップやグラスはまだ山のようにある。
 とはいえ、後ろの棚が空になっているくらいなのだから、当り前なんだろう。
「忙しくて夢中だったからよくわかんなかったですけど、
 今って、すごく混んでたんですね。」
「ホントよねー。
 わたしたちは、マスターとママが作って出したもの、
 運んでるだけだから楽なもんだけど…。
 でも、ホント。あの2人には感心するよね。
 だって、この洗い物の分だけコーヒー淹れて。
 さらに、サンドウィッチなんかの食事メニューも作ったってことだもんね。」
「あ、そっか…。」
 そう奈津子さんに言われて、その量を実感出来た菜里さん。
 つまり、カップとグラスの分だけコーヒーを淹れて出して、パン皿の分だけパンメニューを作って出して、その他にもスパゲティとかケーキとか。
 いや。洗って出した分もあるから、もっと…。
 しかも、それはこの2時間くらいの間のこと。

「てことは…。
 つまり、これだけの量を奈津子さんとわたしで運んで、
 またカウンターまで下げてきたってことですよね。
 うーん。なんか、それもちょっとびっくり…。」
 何気に口から出た菜里さんのその言葉に、「あ、そっか…。」と、ポカーンと奈津子さん。
 しばし自分が洗ったばかりの大量のカップやグラス、皿を呆気にとられたように見ていて、ぽつーんとつぶやいた。
「痩せるはずだよねー。」
「はい!?」
「だって、わたしたち。
 このカップやグラスの数だけ、カウンターと客席を往復してるってことだよ。」
「あ…。」
「ううん。違う。
 お冷持ってくのと、オーダー取るのもあるから、この洗い物の数かける3往復だ…。」
「えぇっ。それって、なんかちょっと信じられない…。」
「だよねぇー。」
「……。」
 見れば、あの黒目をきょろっとさせる、あの奈津子さんならではの笑い顔。それは、同性の菜里さんから見ても、思わず見とれてしまう煌めきのようなものがあった。
 しかし、菜里さん。
 そんなタイミングで、なぜ例のケーキのことを奈津子さんに聞いたのか……

「あのー、奈津子さん?
 わたし、前から思ってたんですけど、マスターとママって、
 なんでケーキを、わたし達バイトに取らせないんでしょうね?
 さっきなんかもそうでしたけど、ママ、ショーケースからケーキ取ろうとしていて、
 お客さんとぶつかりそうになってたでしょう?
 ケーキは (カウンターの)外にいるわたし達が出した方が、
 絶対いいって思うんですけどねー。」
「え…。」
 きょろっと動く黒目が、電源を切ってしまったみたいに。いきなりストンと止まってしまった、その表情。
 でも、すぐにその目を1、2度パチクリさせたと思ったら。奈津子さんは、照れ隠しでもするかのように言葉を急がせた。
「そうっ、そう!それ、わたしもそれは思ってたのよー。
 そうよねー、ママ。さっきだってお客とぶつかりかけてたし…。
 ふーん、そうかー。菜里さんもやっぱり思ってたんだー。」
「え…。」
 奈津子さんの口から出てきたそれに、今度は菜里さんの方が電源を切られてしまったような。
 あれ?なんでこんな展開になっちゃってるんだろ?
 和美さんに聞いた時と全然違う…
 そう。和美さんに聞いた時は、確か奈津子さんは気にしてないって…
 あ、ううん。違う。ケロッとしてるって言ってたと──。
「ねー、菜里さん。そんなことよりさ。
 今日、夜、織田クンいるよ!」
「えっ、織田クン!?織田クンって…。」
「あ、なんだ。忘れちゃった?
 ほら、前に言ったじゃん。わたしと同級生の…。」
「あぁーあぁー、その人。
 奈津子さんのこと忘れちゃったっていう、例の…。」
「そう、その織田クン。フフっ。」
 頭の中でいろんなことを考えていた菜里さん。奈津子さんのその笑顔を見ていたら、日焼けした奈津子さんってグラビア度増したよなーなんて。
 そんなことを頭に浮かべていて、ふと気がついた。

「あれ?でも、今日って夜は沢田クンと宇田川クンじゃ…。」
「あぁうん。沢田クンは、ここ辞めたって聞いたよ。
 だって、ほら。彼って、来年受験じゃない。」
「えぇーっ。先週そんなこと何も言ってなかったけど…。」
「うん。そうなんだ…。
 でも、そうらしいよ。」
「進学するっていうのは聞いてたけど…。
 でも、なんでいきなり?まだ7月だっていうのに…。」
 先週のことを思い出してみても、そんな気配も何もなかったよなーなんて菜里さんが思っていたら。
「あぁっ!もしかしてー!」
 急に、わざとらしい素っ頓狂な声をあげた奈津子さん。
 見れば、それは片目だけ瞑ってみせている、何だかとっても嬉しそうな顔。
「え、何です?」
「そうよねー。沢田クンって、ちょっとカッコイイもんね、ふふっ…。」
「え…。あ…。」
 菜里さんが言葉を一瞬詰まらせてしまったのは、ある程度図星だったから。とはいえ…。

「えぇもぉー奈津子さん、なに言って…。
 沢田クンって…、あっ宇田川クンもそうなんですけど。
 あの2人って、わたしがここでバイト始めた時からずっと一緒だったから…。」
「ふーん、そうなんだー。
 でもさー。織田クンもいいと思うよ。ヘヘっ…。」
「……。」
 菜里さんがまた言葉を詰まらせてしまったのは、奈津子さんの言っていることがわからなかったから。
 でも、すぐに。
「ちょ、ちょっと奈津子さん。
 なに言ってるんですかぁ。もぉー。
 そんなにいいんなら奈津子さんが──。」
「うーん。わたしもね、
 昔はちょっといいかなーって思ってたことも、なくはなかったんだけどね。
 でもさ、今ってさ…。
 ほら、だってわたし、なんてったってグランプリじゃない?」
「……。」
 いや。菜里さんが、またまた言葉を詰まらせてしまったのは…。
 そう。思わずアングリ開いちゃった口がふさがらなかったから。
 でも…。
「でしょ?グランプリ…、ぶぶっ。ゲラゲラゲラ…。」
「ゲラゲラゲラ。もぉーっ!
 なに言ってんだかー。ゲラゲラゲラ…。」
 そんな菜里さんと奈津子さんの笑いが収まった頃、例の大量の洗い物も元通り棚に納まっていた。



「しっかしあの人、よく動くよねー。」
 それは、奈津子さんが上がってから2時間も経った頃。
 店は、本日2度目の混雑のピークの真っ只中。
 なんだけど…
 奈津子さんが言うところの「織田クン」が、あまりにも動き回るんで、菜里さんは混雑の割にはすることがない…、みたいなそんな状況。
 そんなわけで菜里さん。今度お客入ってきたら、わたしが絶対先に動いてやるんだから!とばかりお冷の前で陣取っているというわけ。
 ところが、カウンターのお冷のポットとグラスが置いてある場所というのは洗い場の前。
 つまり、そこで洗い物をしている宇田川クンに、つい言葉をかけてしまうと。

「織田さんは、ホントよく動くようになりましたねー。
 最初の頃は全然だったんですけどねー。」
「えっ、そうなの?うっそぉ。」
 それを聞いて宇田川クンは、洗い物をしながらコーヒーを淹れているマスターをさっと窺ったかと思うと。ふいに顔を菜里さんの方に近づけて、今度はヒソヒソ声。
「一時期は、マスター、結構イラついちゃって。
 織田さん、どうもマスターに睨まれちゃったみたいだよなー。
 長くないかもなーなんて、沢田と話してたくらいったんですけどねー。」
「そう!その沢田クンはどうしちゃった──。
 いらっしゃいませー!」
 菜里さん、お冷の前に陣取っていただけあって。さすがに今度は織田さんよりも先にお冷を運ぶことができた。


 ウェイトレスっていうのは、個々のテーブル、個々のお客というよりは、場面場面で店全体を記憶しているようなところがある。
 どこの卓はこんな人がお客でオーダーは何で、まだ運んでない。
 どこの卓はこんな人で注文を全部運んだみたいに、その時その時の店内の状況が常に頭の中にあって、ある程度の広さなら一人でも全然対応出来る…、というか一人の方が店内の状況を把握しているだけにやりやすい部分があった。
 もっとも和美さんや奈津子さんのように、その人がどんな風に動くかわかっている人なら、その人が動いた部分は全て任してしまえるから問題ないのだ。
 でも、この織田さんみたいな人は、店の状況をどこまでカバーできるのか、そしてどんな風に動くかわからないからやりづらいなーと菜里さんは思っていた。
 いや。それは織田さんから見た菜里さんも同じなのだろう。
 だからこそ、まるでわたしの機先を制しているみたいに…、それこそとりあえず、今の忙しい時だけは全部自分でやっちゃうくらいのつもりで動いているんだろうなーと菜里さん。

 そんなお客がひっきりなしにやってくる、忙しい夜だった。
 ところが、閉店30分前のオーダーストップの時間を境にお客が次々に帰りだした。
 一方、ドアには閉店の札を下げてるので、客はもう入ってこない。
 もうバイトだけでも大丈夫だろうとママは上がり、マスターも事務所に引っ込んでしまった、そんな店内。
 宇田川クンは、一人カウンターの中でバシャバシャ洗い物。
 菜里さんと織田さんは、トレンチにカップや皿、グラス等の下げ物を山のようにのせて、カウンターと客席の間を行ったり来たり。

「宇田川クン、手伝おっか?」
 それは、客席は下げ物はほぼ片付いて、あとは織田さんだけでも大丈夫だろってタイミング。
「あれ?でも東野さんって、そろそろ上がりの時間なんじゃ…。」
「うん。あと20分くらい…。」
 菜里さんのバイト時間は閉店時間まで。宇田川クンと織田さん閉店後の後片付けまでだった。
「うん。じゃぁ洗ったヤツ、拭いて後ろの棚に戻してもらえます?」
「OKぇ~。」

 カウンターに入って、宇田川クンが洗い終わったカップやグラス、皿を次々に拭いては棚に戻している菜里さん。
 残っているお客は2組だけ。
 そんな店内は、妙にガラーンとした感があって、なぜかいつもより薄暗い気がした。
 看板と外の灯りを消して暗くなった店先。
 そこでは、織田さん何か作業している姿がガラス越しに見える。
 あと10分くらいか…
 忙しい時はあっという間に時間が過ぎていくのに、こういう時の時間遅々として進まない。

「ねぇ宇田川クン。お店の中、なんか暗くない?」
「え…。あ、外の灯り消しちゃったからでしょ。」
「それはそうなんだけどさ。
 でも、なんかそれだけじゃないような…。」
「あぁわかった。
 ケーキのショーケースの明かりも落としちゃったからでしょ。」
「えっ。ショーケース…。」
 それは、店の出入り口のすぐ手前。
 明りが落ちて、妙にまわりに溶け込んじゃっているそれをしばしじっと見ている菜里さん。
 そう、ケーキのショーケース…
 そう、そうよ。
 わたし、なんで宇田川クンには聞こうとしなかったんだろう……


 それは、菜里さんが折にふれ心に引っ掛かっていたこと。
 和美さんに言った時は、苦手とか、奈津子さんは全然ケロっとしてるとか、全然脈絡のないことを言っていた、あのこと。
 そのケロッとしているという奈津子さんにやっと聞いた時は、ものの見事にさらっとかわされてしまった。
 そのことについて、和美さんや奈津子さんが「何か」──でも「何か」ってなに?──を知っているのなら。
 その二人以上にカウンターの中にいることが多い宇田川クンなら、絶体何か知っているはずだった。




── 本日これまで!
            17話目『スゥィーーーツな怪談話~Episode3‐6』〈了〉
                        *「Episode3-7」に続きます



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2015
08.17

17話目『スゥィーーーツな怪談話~Episode3‐5

Category: 怪談話
 17話目『スゥィーーーツな怪談話~Episode3‐5


 その謎。
 いや、何度も言うように、それは菜里さんっては謎というよりは時々気になるって程度のことだった。
 ゆえに、菜里さんがそれを奈津子さんに聞くのは、まだまだ先のことになる。

 というのも、そもそも菜里さんと奈津子さんが一緒にバイトに入る日は少ないというのもあったし。
 また、一緒の日でも、忙しかったらそんなこと聞いてるヒマがないというのもあった。
 だからって菜里さん、そのことが聞けなくて悶々としていたなんてことは全然なかった。
 まぁつまり、菜里さんにとっての「それ」は、その程度の些細なことだったのだ。
 ただ、結局「それ」を聞くこととなったのは、やっぱり些細ではあるものの、バイトをしていて「それ」は絶えず菜里さんの心に引っかっていたってことなのだろう。

 そう。それは、ケーキのオーダーが入るたび……


「1(ワン)、コロンビア。1、アイスカフェ…。
 1、ガトーショコラ。1、レアチーズ。お願いしまーす。」
 その日も、菜里さんが最後のメニューを言い終わった途端、カウンターの中で手分けして動き出したマスターとママ。
 いつものことだが、特にどっちが何をやると決まっているわけではない。
 今はマスターがコーヒーを淹れて、ママがケーキを出すように動いているけど、それが逆のこともある。
 また、サンドウィッチ等がオーダーに入ると、ママが豆を挽いている間、マスターはパンを切って。
 挽いた豆をママから受け取ったマスターはコーヒーを淹れ始め、ママはマスターが切っておいたパンでサンドウィッチを作り出すみたいな、そんな分担作業をしていたり。
 それは、ホント流れるような動き。しかも、2人とも言葉を交わすことなくそれをこなしている。
 言葉を交わすなんて、それこそ挽いたコーヒーの銘柄を言う時くらい。
 それでも、このオーダーのコロンビアとアイス用みたいな、ひと目でそれが何だかわかるコーヒーの場合はそれないことが普通だ。

 そんな中、オーダーを伝票に書きんでいる菜里さんの右手。
 一方、その左手は、そのオーダーに必要なコーヒーのソーサーやスプーン、ケーキのフォーク等をトレンチの上に並べていく。
 そんな菜里さんの視界の端。
 いつものようにケーキのショーケースの所に行くママの姿が見える。
 パタパタとサンダルの音をたてながら…

 いつものことながら、菜里さんはその光景を見るたび思ってしまう。
 背の小っちゃなママが、ショーケースの一番上にあるガトーショコラがのったトレンチを取り出す様子は、ホントあぶなっかしい。
 今回のオーダーは、ガトーショコラと3段目のレアチーズケーキだからまだしも。これが、一段目と2段目──今日はオレンジのムースケーキ──だったりすると、ママもさすがに危険って思うのだろう。
 一段目のガトーショコラのトレンチをを出すと、いったんカウンターに置いて。そして、あらためて2段目のケーキのトレンチを取っていた。

 というか、どんな取り方をしても危険なのだ。それは、ケーキのショーケースのある場所にあった。
 その後ろ何歩か下がったところは、お店の出入り口だし。
 ケーキのトレンチを持って行くカウンターは、お店の真ん中を通る通路の向こう側。
 そこは、帰るお客さんが連れの人と話をしたり、特に前も見ないで歩く場所。
 また菜里さんたちバイトも、忙しい時なんかはものすごい勢いで歩き回っている。
 そのことを、マスターもママも気づいてないわけがない。
 どんな忙しくたって、2人とも何も言うことなく動けるくらいお店のことがわかっているのだから。
 なのに、なぜ――。

「菜里さん…。菜里さんってば!」
「えっ!あっ…。」
 ちょっとばかしイラついているマスターのその声。
 菜里さん、慌てて顔を前に向ければ。
 それは、一瞬ギロリときて、でもすぐ視線を反らしたマスターの目。
 それと、トレンチの上に置かれたコーヒーのはいったマグカップ──茶色味が明るいそれはまさにコロンビアとかそっち系くらいには菜里さんもわかるようになっていた──と、グラスに入った黒褐色のアイスコーヒー。
 菜里さんとしては、ホットとアイスコーヒー、ケーキ2つくらいなら、余裕でいっぺんに持っていけるのだが。
 だがまぁとりあえずはマスターの機嫌を立てておくか…と、それをお客のもとに持っていくことに。
 そんな菜里さんの目は帰り道、どうしたってショーケースにケーキののったトレンチを戻しているママの姿にぶつかる。
 その、小っちゃなママが、ガトーショコラをショーケースの一番上に戻す、なんとも危なっかしいその様子……
 なんで…
 なんで、マスターとママは、ケーキだけは絶対自分たちで取ろうとするのだろう?
 カウンターの外にいるわたしたちが取った方が絶対いいのに……

 そんな菜里さんの脳裏に、ふっと浮かぶのは。
 バイトを始めた初日に仕事の手順を教わっていた時のママの言葉と顔。
 そう。それは、「ケーキのショーケースは絶対さわらないでね」って、
 わざわざ「絶対」なんて強調して言ったママの強張った顔。
 いや、そのすぐ後に、ちょっと片目つぶって恥ずかしそうな感じで笑ってたんだけど。でも、それだってどこか不自然で、ちょっと奇異な感じがあった。

「うん…。なんでなんだろ…。」
 思わずつぶやいた菜里さん。
 そんな自分のその声にハッとして、何気に視線を走らせれば、それはやっぱりケーキのショーケースのところ。
 それは、ケーキのショーケースの中を覗き込むようにしながら、何か話しているマスターとママの姿。
「……。」
 そう。奈津子さんだ。
 奈津子さんに聞いてみなきゃ…



 とはいえ。
 奈津子さんというのは、毎度のことながら、まさに奈津子さんなわけで…
「うわっ!ど、どうしたんですか?いきなり真っ黒…。」
「へっへっへー。サーフィン始めちゃったぁー。」

 それは、水曜日。
 いつも通り3時前にお店に入った菜里さん。
 その日はバイトでないはずの奈津子さんがいたことに「あれ?」って思うよりも、何よりその顔が日焼けで真っ黒になっていることに驚いた。
「え?もしかしてお仕事…、とか…。」
「し、しごとぉ!?はい?」
「例の…。ほら、あれ…、グランプリ…。」
 そう言った途端、奈津子さんはガッカリしたようなしかめっ面。
「もー…。」
「あ、すみません。言っちゃダメなん──。」
「あれはさ、あれで終わりなの。ああいう世界、わたしは興味ないし…。」
「えー、なんかもったいない…。」
「そうかなぁー。
 あんなことに時間とられてる方が、よっぽどもったいないと思うけどなぁ…。
 せーっかく学生なんだもん。」
「え、学生?勉強…、てことです?」
「ううん。遊び…、だけどさ…。
 でも、今のうちいろんなことやって、いろんなこと知っとかないと、
 働くようになってから困ると思──。」
 例によって、きょろっとした黒目が笑いかけた奈津子さんの顔。
 それが、ぱっと真面目な顔に変わるその様子に、奈津子さん、はっと振り返れば。
「いらっしゃいませー。」
 頭の後から響いてきた奈津子さんの元気な声。
「わ、団体さん…。」
「菜里さん、もっ!早く着替えてきて!」

 その水曜日。
 やたら暑い日だったせいかもあるのか、もうお客がひっきりなし。
 喫茶店とかカフェっというと、なぜかカウンターの中のマスターはゆったりハンドミルで豆を挽いて、ネルドリップかなんかで優雅にコーヒーを淹れている…なんてイメージがあるものだが。
 でも、あれはあくまで小説やドラマの中のお話。
 喫茶店やカフェというのは客単価が低いから、カウンターの中も外もスタッフが火事場並みに走り回っているなんてくらいじゃないと経営は成り立たないのだ。
 というか、マスターが優雅にコーヒーを淹れられるくらいしかお客がいない喫茶店のコーヒーなんて、豆が古くて飲めたもんじゃない。




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2015
08.13

夏は終わり? それとも、もしや第二章とか?(笑)



 昨日の昼間、TBSでやってた『ひるおび』の天気解説。あれ、スんゴく面白かったです。

 あの番組に出てくる気象予報士の森さん。
 あの人は気象についていろいろ詳しく解説してくれるんで、天気オタクな私としては大ファンなんですけど、昨日のはまた一段と面白かった(笑)

 『ひるおび』って、解説が天気関連に限らず詳しいんで。時々録画しておいて見るんです。
 ツッコミ役の司会とボケ役(?)の森さんという番組上の設定が、また面白いんですよねー(笑)
 漫才コンビの中では「大槻教授&韮澤さん」と並んで双璧です(爆)
 というか、N○Kなんて金取ってるんだから、せめてあのくらい詳しく解説して欲しいですね。



 いや。何が面白かったって。

 この夏、これからの気象予想ですよ!

 つまり、(関東地方だと)週間天気予報は雨や曇りが多くて、もぉ夏も終わりなのかなぁ…って思ってしまうわけですが…

 ただ、ヨーロッパで予想した1週間後の天気図。
 それによると、日本の南海上に台風とおぼしき真ん丸低気圧が2つあるんですよ。


 それを見ていて、ふっと思ったんです。

 あれ?この形って。
 長引きそうと予想されてた今年の梅雨(前線)が台風で吹っ飛んじゃった時と同じじゃない?って(笑)



 いや。番組で森さんがそう言ったわけではないですよ。
 そう言ったわけではないんですけど、でも確か…、今年って梅雨前線が台風で吹っ飛んだ後、いきなり猛暑になっちゃって。

 梅雨が明ける週の初めは肌寒くて、長袖を着たなんて日もあったというのに!

 その後、一気に真夏(猛夏?)になっちゃって。
 結局東京では猛暑日連続9日になっちゃった、あのパターンに似てるよなぁ…なんて(笑)



 てことは…

 えっ!つまり、猛暑の夏、第二章の始まり? 

 なぁ~んちゃって(爆)


 まぁ~ね。
 これで、また猛暑がぶり返しちゃおうもんなら、「暑い、暑い。はぁ…」なんて、ため息ついちゃうわけですけどね(笑)

 とはいえ、夏が終わっちゃうっていうのは、やっぱり寂しいわけで、ちょっとでも長く夏でいて欲しいよなぁ…なんて(爆)


 てことで、

 ファイト!夏! 
 ファイト!人間ども! 

 って?(笑)







  https://www.youtube.com/watch?v=CBIRj3JW3h0
      イアン・デューリーはやっぱりコレだろーっ!


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2015
08.10

せっかくの夏なんだもん。ちょっとはゾワ~っとくる番組見たいよなぁ~




 ま、夏ってことで。

 先々週から先週あたり、各テレビ局でオバケ特番いろいろやってましたけど、出てくるオバケの顔がみんな同じっていうのは何なんだろうなぁ……

 オバケの世も人の世と同じで、流行りのお化粧とかあるのかなぁ…

 顔色は暗めにどす黒く。血まみれは最近流行らないのでほどほどに…とかね(笑)



 怖い話といえば、昔(ってほど昔じゃないけどwww)「超-1」っていうのがありましたけど。

 アレがなくなっても、T書房からは相変わらず怪談本が出ているのは、怪談作家ももぉ飽和状態ってことなんだろうなぁ…(笑)


 「超-1」は、ま、ハッキリ言って怪談としては馬鹿ツマンナイんですけど。

 でも“ここに投稿されているのはあくまで「実話」怪談”っていう前提で、投稿者と読者が自分たちの好きなテイストの「創作」怪談を楽しんでいるっていう、あの独特のスタンス――というか空気感?――は傍目に皮肉な面白さがありましたね(笑)

 一方で、あくまで“実話の”怪談として楽しんでいる投稿者・読者もいて。
 その二つが同居している様っていうのが、すっごく興味深かったです。

 もっとも、話自体は作り話バレバレっていうのが多かったんですけどねー(爆)



 で、バレバレといえば、かつて夏になると必ずやっていた某テレビ局のオバケの番組。

 学生の頃、近所にあの番組のディレクターだかなんだかやってる人がいて。
 町内の飲食店でバイトやってる友人が出前に行って、「今日のヤツ怖かったですねー」とかリップサービスしたら。

 「あぁ、アレ?アレさ、全部ウソなんだよ」
 とか言われちゃって。

 友人は、ガーンっとショック受けたもんだから、大急ぎで私に知らせに来て。

 それを聞いた私もガーンと、二人してショックだったなんてことがありましたっけ(笑)


 また、それとは別の番組ですけど、「公園にある塚の祟りで変死者自殺者が異様に多い呪われた団地」な~んて放送された団地が、私が子供の頃住んでいた団地だったり(爆)

 いや、実はその「塚」。
 子供の頃はほぼ毎日登って遊んでいた場所だったんですけど、番組で流された塚の映像を見たら、やけにおどろおどろしく映ってって。

 さっすがテレビだなーなんて、変なところに感心しちゃっいました(笑)

 そういえば、その番組。
 その塚に生えている木々の合間から、その頃の友だちだったKクンがかつて住んでいた家が見えたりで。

 あの時は怖いというより、やたら懐かしかったなぁ…。


 しかしまぁそう考えると…。

 あくまで「実話」っていう前提で、送り手と受け手が「作り話」楽しむっていう意味では、テレビのオバケ番組も超-1(実話怪談)って全く同じですよね(笑)

 つまり、“ベタな話”ほどウケると(爆)


 そう言う意味じゃぁ、怪談とか怖い話(テレビ番組)って、結局は「与太話」にすぎないんでしょうね。

 ただまぁベタベタな怪談話がストーリーの骨格になっている『鉄道員』(浅田次郎)が人々の感動を誘うように。

 ソレが、“ベタ”であるからこそ、また“与太話”であるからこそ、人はそれを面白いと思うのかもしれないなぁ~なんて思ったりもします(笑)










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2015
08.10

17話目『スゥィーーーツな怪談話~Episode3‐4』

Category: 怪談話

 17話目『スゥィーーーツな怪談話~Episode3‐4』 


 その日は、ドドーっとお客が来たかと思ったら、その後ずっとヒマっていう、時々あるパターンの日だった。
 やっと来たお客も一人で来て、しかも注文はコーヒー1杯だけ。
 ついさっきの嵐のような大忙しがなにより楽しい、菜里さんと奈津子さんとしてはちょっとばかり物足りない。
 とはいえ。マスターとママはヒマだとバイトにまかせて奥の事務所に引っ込んじゃうから、それはそれで楽しいというのもあった。

「お客さん、全然来なくなっちゃいましたねぇ…。」
 お冷の継ぎ足しは、ついさっきやったし。
 雑誌棚の整理もやっちゃたし、そう。今日は久しぶりに窓拭きなんていうのまでやっちゃたなーなんて思いながら菜里さん。
 一方奈津子さんは、洗い物を片付けて、コーヒー豆を補充して。
 さらには、営業中にはまずやらない冷蔵庫の中の掃除まで片づけて、それでもカウンターの中で手持ち無沙汰。
 コチコチコチと、カウンターの上にある時計が時を刻む音。
 かすかに鳴っているBGM。
 ふいに、席を立ったお客さん。
 帰るのかなと見ていたら、トイレの方に歩いて行く。
「はぁー。」
 カウンターの外で、思わず軽くため息を吐いた菜里さん。
 見れば、カウンターの中の奈津子さんもやっぱりため息ついて、そして笑った。
「でもさ、わたし…。
 今までいろんなこと言われたけど、唐突にあんなこと言われたのは初めて。
 もぉ可笑しくってさー。フフフ…。」
「あぁ、そうでしょうねー。
 やっぱり、グランプリとかなっちゃうと、
 いろんな人から、いろんなこと言われるんでしょうねぇ…。」
 その言葉に、奈津子さんの顔がピクっと動いた。
「あ…。
 それ、もしかして和美?
 もぉ。黙ってて言っ──。」
「あ、違います、違います。和美さんじゃないですって。
 沢田クン…。
 ほら、夜入ってる沢田クンと宇田川クンが話してるの聞いちゃったんです。」
 言い訳するように、菜里さんがあの夜のことを話すと。
「あぁあの2人かぁ。もぉー。
 あのくらいの男の子ってさ、何でそういうのだけ目ざといんだろうねー。」
 そんな奈津子さんの、まったくしょうがないよねーってしかめた顔に、思わず苦笑してしまった菜里さん。
 うん。ホント…
 まったくもってしょうがない…

 とはいえ。
 一緒にバイトしている時の、2人の息の合った仲のよい様子が頭に浮かんできたら。
 菜里さんの苦笑は、むしろクスっという笑いに変わった。
「でもー、あの2人が憧れちゃうのも無理ないって思いますよー。
「そぉーんなことないってー、あんなことー。
 つまんない……」
 そう言ってプイと横を向いてしまった奈津子さん。
 その醒めきった口調に、菜里さんが慌てていると。
 その顔を見ていたのだろう。奈津子さんは首をすくめるようにしながら、目玉をくりくりさせてまた笑った。
 でも、すぐに。いかにもわざとって感じを匂わせた、オーバーに憤慨した口調で言った。

「だってさ、織田クンっているじゃない?
 夜、バイトに入ってる…。」
「え、織田クン?」
「あれ、知らない?」
 奈津子さんは、一瞬怪訝な顔。
 と、思ったら、いきなり後ろに伸び上って。壁に貼ってある、バイトのシフトが書き込んであるカレンダーを見ながら。
「あ、そうか。菜里さんって、
 ちょうど織田クンと交互に入るようになってるんだ。」
 そう言って菜里さんに戻した顔。
 それは、やっぱりわざとらしく怒った風。
「うん。いるのよ、織田クンって…。
 そう、そういえば織田クンバイト始めたのって、菜里さんと同じくらいからよね。」
「へー、そうなんですかー。」
「織田クンって、わたしと同じ学年でさ…。」
「えっ。じゃぁ和美さんとも同じ…。」
「うん。和美は中学から一緒なんだけど、
 織田クンの方はわたし、小学校の時から知ってるのよ。」
「へぇー。なんだか同窓会みたいですね。」
 その楽しさを想像した菜里さんは、思わずニコリ。
「うん。だから、ここで和美と会った時も驚いたんだけどさ。
 織田クンと会った時はもっと驚いた…。」
 その奈津子さんのも、やっぱりニッコリ。

「えー、でも、その織田さんていう人も驚いたでしょうね。
 小学校の時の同級生がこんな美人になっててー。
 あ、奈津子さんだったら小学校の時から美人か…。」
「もぉっ。何言ってんだか…。」
 そう言って、奈津子さんはやっぱり笑っていたのだが、急にまたあの怒ったような口調になった。
「うん。だからね、違うのよ。彼…、織田クン。
 わたしのこと、全然憶えてなかったの。
 なんかさ、ちょっとシャクというか、ショックだったなー。」
「えぇっ。それは奈津子さんあんまり美人なもんだから、
 わからなかっただけなんじゃないですかー。フフフ。」
「違う、違う。全然そうじゃないのよ。
 織田クンがここ入ってきて、マスターに紹介された時。
 織田クン、わたしの顔見ても全然憶えてない風だったからさ。
 だからね、菜里さんが今言ったみたく、わからないだけなのかなって思ったの。」
「え、そうじゃなかったんですか?」
「うん…。
 織田クンとはよく会うんだけど、でも彼は夜だけだから。
 わたしとは入れ替わりで、話す機会とかってほとんどないのね。
 だから、昼間ママにそれとなく言ってみたの。
 織田クンって、実は小学中学ってずっと同じで。
 同じクラスになったことはないけど、隣りのクラスには何度もなってるんですよーって。
 ママのことだからさ。織田クンにそれ、絶対言うと思ってさ。」
 そう言って笑った奈津子さんの顔は、鼻の上にシワを寄せて、なんだか流行っぽい表情。
 その笑顔って、やっぱり奈津子さんは意識してるのかなぁと、菜里さん、一瞬頭をかすめたんだけど、でもそんなことよりも。
 それって、菜里さん抱いている、なんか気難しいんだよなーっていうママのイメージには当てはまってこない。

「えー。ママ…、ですか?
 ママって、そういうこと言ったりするタイプなんです?」
「あ…。菜里さん、まだママのことわかってない…。」
 と奈津子さん、今度はちょっと自慢顔。
 でも、すぐに黒目を上にして何か考えている風。
「そう…。ママは、表情がちょっと硬すぎるのよね。
 だから、ちょっと愛想悪い感じするけど、
 でもね、ずっと話してると何気にスっゴイ面白いのよね。
 そう、茶目っ気があるっていうのかなぁ…。
 よく面白いこと言ってるんだけど、実は結構意地ワルいマスターと、ホンっト対照的!」
「うん。マスターはわかります、すっごく!
 ホンっト、意地ワルいですよねー。」
 その途端。2人は顔を見合わせクスクスと、声を殺した大爆笑。

 そんな笑いも収まって。
「でも、ママってそうなんだぁ…。
 それはわからなかったなぁ…。」
「うん、まぁね。
 でさ、1週間くらい後にね、ママに聞いてみたの。
 織田クン、なんか言ってました?って。」
「えー、で、どうだったんです?フフっ。」
「もぉガーンよ。
 全然憶えてないって言ってたって…。」
 奈津子さんは、真面目にショック顔。
「えー、でも同じクラスになったことはないわけだし…。」
「でもさ、わたしはよく憶えてるのよ。スッゴク、よく。
 なのに、向こうは全然って…。」
「でも、今は違うでしょー。こんなにキレイ──。」
「今は今、昔は昔。それはまた別よ。
 だってさ、全然よ。
 全然ってさ。なーんか、ちょっとムカつくじゃない?」
 なんて。ちょっと変なくらい本気でムカついている奈津子さんの顔を見ていて菜里さん、ふと…。
「あっ!奈津子さん、もしかして、初恋の人だったとか?」
「えっ――。」
 その一瞬のキョトンとした顔。
 でも、すぐに。
「ぶぶっ。フフフ…。もぉー、菜里さんってホント変よね。
 だってわたし、この街に引っ越してきたの、小4の時よぉー。
 それから初恋って…。
 いくらなんだって遅すぎでしょ。もぉっ!
 フフフ…。あっ!」
「どうしたんです?」
 その奈津子さんの「あ!」に、思わず「え、お客来た?」とドアの方を振り返った菜里さん。
 しかし、ドアは相変わらず閉まったまま。

「初恋かぁ…。
 うん。そういう意味じゃぁさ。
 もしかしたらー、菜里さんと合う…、とか?」
 それは、なんとも表現しがたい鮮やかさ。でも。
「え、わたし…!?わたしが何なんです?」
「うん。織田クン…。
 織田クンもちょっと変なとこあるからさ。
 そういう意味じゃぁ菜里さんと合うんじゃない?って思って…。」
 今度は、逆に呆気にとられてしまった菜里さん。
 言葉がつまって何も言えないでいる菜里さんとは対照的に、奈津子さんはといえば、またもや黒目をキョロっとさせたあの笑い顔。
「もぉっ。何なんです、それー。」
「え…。あ、うん。でもさ、絶対いい感じだと思うけどなぁ…。
 フフフ…。」
「もぉー。フフフ…。」


 と、そんな奈津子さんとのウキウキするやりとりを、例によって家で風呂に浸かりながら思い出していた菜里さん。
 つまり。まぁそれが、文字通り奈津子さんの「初恋」だったかどうかはともかくとして。
 でも、なんとなく気になる存在だったという意味では、見事図星だったんだろうなぁーって思ったら。
 なんだか、あのやたら素敵な奈津子さんから一本取ったような…。
 そんなちょっと「してやったり!」みたいな嬉しさを感じていた菜里さんだったんだけれど……
 いや、だからっ!
 だから、今はそういう話じゃないじゃないじゃん。
 そう。そうなのだ。
 要は、ケーキに注文が入るたんび思う、違和感のことなのだ。
 考えてみれば、和美さんにそのことを聞いた時もそうだった。
 急にワケのわからない話の流れになったと思ったら、まるでそこに謎みたいなものがあるような。
 謎って、テレビのサスペンスドラマじゃないんだから、あの店にそんな謎なんてあるわけないんだろうけど…
 でも、なーんか秘密の匂いがあるっていうか…

 和美さんによれば、奈津子さんはそのことを知っているらしい。
 でも、奈津子さんにはよっぽど注意して聞かないと、今日の初恋の話みたくはぐらかされて終わってしまいそうだった。
 そう…、奈津子さんってあの人、頭もいいよねぇ…。
 そう、そういえば。
 あんなにキレイで。頭もよくて、性格だってスゴイいい、そんな奈津子さんのこと忘れちゃうなんて、織田さんってどんな人なんだろ?
 あ、そうか。今度沢田クンか宇田川クンに聞いてみよう。
 あの二人なら、夜一緒にバイトやってて知ってるわけだもんね。

 …って、違うって、もぉ…。
 奈津子さんだよ、奈津子さん。
 でも、いったい何をどう聞けばいいんだろ…!?
 あ、ていうか…
 そもそも、このワケわかんない状況っていうのは、わたしが和美さんに「ケーキはカウンターの外にいるわたし(達)がとった方がいいんじゃない?」って言ったことから始まったわけだもんね。
 てことは、同じように聞けば、奈津子さんも和美さんに聞いた時と同じ反応をするはずじゃない。
 うん。和美さんの時と同じようにはぐらかされて終わりかもしれないけど、でも、だとしたらそこには何か謎――。
 いや、だから謎って何よ?
 もぉイヤだなぁ…。
 何で謎になっちゃうんだろう!?


 人は、誰しも日々の暮らしの中で、その日々の暮らしから生まれてくるいろんな疑問にぶつかるわけだが。
 いったんそんな疑問にいったんぶつかってしまうと、人はそれを知りたくて堪らなくなるのはまぁ人情なのだろう。
 とはいえ、「好奇心は猫を殺す」なんていう言葉もあるように。
 その疑問を知ろうとする行為っていうのは、その人を楽しいワクワクすることに連れて行ってくれたりする反面、その人をやっかい事に巻き込んだりもするわけで……




── 本日これまで!
         17話目『スゥィーーーツな怪談話~Episode3‐4』〈了〉
                       *「Episode3-5」に続きます



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2015
08.09

思わず笑っちゃった、「千葉時代」




 知ってる人は知ってると思いますけど、なんでも「千葉時代(チバシアン)」というのが出来る…、というか、出来ちまう可能性があるんだとか(爆)

 TBSのニュースサイト
 http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye2555366.html


 いや、ね。
 地形オタクとしては、スっゴクうれしいし誇らしいんですけど……

 でも、千葉県民としては、なんだろ?
 なんともビミョーな気分で、「ははは」なんて笑っちゃいますね(笑)

 まーね。
 これで「東京時代」なんて出来ちまった日にゃぁ、それこそダサダサって感じになっちゃうでしょうし(爆)

 よって、
 千葉時代!?
 はぁ?
 うん。まぁ…、いいんじゃない?

 ま、そんな感じですかね(笑)


 でも、というその感想の感覚がわかるのは、たぶん千葉県民だけなんだろうなぁ…
 それも、千葉県生まれ千葉県育ちという生粋の千葉県民(爆)

 というのも、それこそが“千葉県民気質”なんですね(笑)

 いや。決して“郷土愛がないってことではない”んです。

 ただ、「郷土愛」って。
 たぶん、他の地域の人だと「郷土愛がないってことはない」どころか、郷土愛って絶対あるもんじゃないですか。

 それに対して、千葉県民(それも生粋の千葉県民)の郷土愛って、「郷土愛なんてもん、ないこともないかなぁ…」みたいな感覚のような気がするんですよね。

 つまり、なんかこう、どこか一歩引いてるみたいな、そんな感じ(笑)


 いや、千葉県民って、埼玉と比べられると俄然郷土意識むき出しになっていろいろ言って見せたりもするんですけどね(爆)

 もっとも、最近は埼玉県の方がはるかに発展しちゃってるんで。
 向こうからはもぉ相手してもらえなくなってるみたいですけどね(爆)

 でも、これは間違いなく言えると思うんですけど。
 というか、千葉県民なら誰もが「そうそう!」ってうなずくと思うんですけど、千葉県民って“「郷土」を愛する”って感覚はかなり希薄だと思います。

 それは、たぶん「日本全国郷土愛の深さグランプリ」とか開催したら、間違いなく千葉県が最下位になるだろうなってくらい(爆)



 これは前にも書いたことなんですけど、千葉県の子供がよく言う冗談に「千葉県には歴史上の偉人がいない。いいとこ、伊能忠敬。次は長嶋茂雄くらい」っていうのがありまして。

 長嶋茂雄の代わりにハマコーというバージョンもあり


 この冗談の肝っていうのは、わかるのかなぁ…。

 つまり、「歴史上の偉人」といったら、織田信長とか豊臣秀吉、徳川家康といった、いわゆる三英傑とか。

 あとは、西郷隆盛とか大久保利通といった明治の元勲。

 それ以外だと、清少納言とか松尾芭蕉とか野口英世とか、はたまた山中伸弥博士みたいな科学者・文化人が「歴史上の偉人」だと思うんです。

 それに比べて、ま、確かに伊能忠敬は「偉人」ではあるんですけど、上記の方々と比べちゃうと、やっぱりちょっと地味ぃ~な感じが否めませんよね(笑)

 そんなちょっと地味ぃ~な伊能忠敬に続く「偉人」が長嶋茂雄って(ましてやハマコーって)、「どんだけ偉人がいないんだ?千葉県!?」ってとこが、ま、面白いわけですね(笑)


 いや。実はね、日蓮上人とかも千葉県(安房)生まれだったりするんですよ。

 でも、日蓮上人が千葉県生まれと知ってる千葉県民ってどれだけいるんだろう?って(笑)


 で、まぁこれはあくまで私個人の憶測なんですけど…

 日蓮上人が千葉県(安房)の生まれって知らない千葉県民が多いのは、日蓮上人って、一般的千葉県民の性格からはあまりにかけ離れたイメージがあるからじゃないのかなぁーって(笑)

 日蓮上人って、ほら、「立正安国論」とか、他宗派を批判したり。
 はたまた鎌倉幕府にたてついて、危うく首をはねられそうになったりと、おおよそ平均的千葉県民のイメージじゃないんですよ(笑)

 「ケンミンショー」見ててもそうじゃないですか?
 千葉県出身のタレントって、他の県のタレントと比べるとイマイチ地味ぃ~っていうか、(あの番組では)存在感が薄いっていうか(爆)

 そのきわめつけが、野田前首相ですよ(笑)

 なんだろ?
 日本国の首相だというのに、ミョーに笑っちゃうみたいな(爆)

 とか書いちゃうと、もしかしたら怒られちゃうのかもしれませんけど、でも、野田さん自身もそんなキャラで通しているようなとこ、ありましたよね?

 そういうとこみても、野田さんって「いっやー千葉県民だなぁ…」って、ホンっトつくづく思っちゃいますね(笑)



 と、まぁ話は「千葉時代」に戻るわけですが…

 絶対決まって欲しいよなーっ!
 
 なんてさ(爆)






 




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2015
08.07

暑い、暑い、暑い……



 うーむ。

 暑いぃぃ……




 そんなこと言われなくてもわかってらい!
 って言う人もいるかもしれませんけど、まぁまぁ(笑)

 やっぱ人間、暑い時は素直に「暑いぃーっ!」って言った方が、精神衛生的にも(たぶん)いいですって。

 時々、「暑いねー」って言うと、「そりゃ夏だから」とか。
 もしくは、「そりゃまぁ寒くはないわな」なぁ~んてのたまうヤツがいますけど。

 そんなヤツは犬にでも食われちまえ!なんですって(爆)

 もしくは火焙りにでもしてやって、それでも「そりゃ夏だから」なんてのたまうようなら、「オマエは快川和尚か!」ってツッコんでやりましょう。 

 って、なんだかほとんど意味不明ですけど(笑)、それはまぁつまり、暑いからっ!



 そうそう、そういえば中学生の時。

 トイレ(というか中学校だったら便所と言った方がピッタリか?)に行ったら、上級生2人が並んでつれションしていて。

 片っ方の上級生が、「今日って暑いよな」ってもう一方に同意を求めたわけですよ。
 オシッコしながら。

 すると、同意を求められた方はなんともクールに「そりゃまぁ寒くはないよ」と(笑)
 やっぱりオシッコしながら。

 そう返された方は何を思ったのか。
 なおも「今日って暑いよな」と同意を求める。

 しかし、また同意を求められた方は「そりゃまぁ寒くはないよ」とクールな顔で返す。

 で、また一方が「今日って暑いよな」と言うと、もう一方は「そりゃまぁ寒くはないよ」と。

 その二人の間合いがミョーに可笑しくって。
 後でオシッコを待ってる私と友人は声に出さずにクスクス笑いながらそれを見ていたわけですけど、その上級生たち、ま、お互いさすがにムカついてきたんでしょうね。

 先に同意を求めた方が「だから、今日って暑いよなって言ってんだろ!」って怒鳴ると。

 もう一方も「だから、そりゃまぁ暑くはないよって言ってんだろ!」っと怒鳴り返して、結局ケンカがおっぱじまっちゃったんですけど、ありゃもぉほとんどアホバカの世界ですね(笑)



 ま、なんだ。人間、挨拶には素直に返した方がいいってことなんだろうなぁ…(爆)


 なぁ~んて、ホントしょーもない話ですけど、でもね、それだって同じなわけです。

 「しょーもねー話」って思っても、そこは気持ちよく「拍手ボタン」を押して、他のブログで口直しをするか(笑)

 じゃなければ、ここは一つ運命とあきらめて、ちょっとの間お脳のレベルをこのブログと同じに引き下げて。
 子供の頃したつれションのことなど思いだして、なんぞコメントでもしてみるっていうのが、円滑な人間関係を築くポイントってもんなんじゃないかなぁーなんて(爆)





    それにしてもまぁあっついです(笑)




       夏の夜は、やっぱりロックンロールに限るなぁ…



 暑い日が続きますが、なんでもこの暑さは来週の頭くらいまでで。
 以降、北にある前線と寒気が降りてきて、秋の気配(というかムシムシジメジメに逆戻り?)が感じられるという予報もあるんだとか。

 涼しくはなってほしいよなーとは思うものの。
 雨降りはイヤなんで、それなら暑いままでいいかなーとも思うんですけど、それにしても暑いよなぁ…と思っちゃうのは、やっぱそういう齢なのかなぁ…(笑)

 そういえば、夜になると、いつの間にやらどこからともなくコオロギの声が聞こえてきたり。
 https://www.youtube.com/watch?v=qK5uXEnB50E

 もちろん、夜の蝉の声は相変わらず健在なんですけど(泣)、何だかんだ言っても秋は意外とすぐそこまで来てるのかな?なんて。

 しかしまぁ秋になったら秋になったで、今年は台風の当たり年って話もあるわけで……




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2015
08.03

17話目『スゥィーーーツな怪談話~Episode3‐3』

Category: 怪談話

 17話目『スゥィーーーツな怪談話~Episode3‐3』 


 その中村奈津子さん…。
 いや、菜里さん。その中村さんって、実は少々苦手だったらしい。

 ううん。性格とかそういうんじゃなくって。
 性格なら、それこそ和美さんとは中学校の時からの友達っていうだけあって、全然問題なかった。
 ただ、和美さんがおっとり落ち着いているタイプなのに対して、中村さんというのは活発で、ちょっと男っぽいタイプだった。
 とはいえ、菜里さん自身は、もともとあまり好き嫌いしないタイプだし。
 おまけに、おっとりと活発の中間くらいって感じだから、そういう意味でも問題なかった。

 なのに、中村さんを前にすると、物怖じしちゃうっていうか、どーも苦手だなぁーって思ってしまうのは…
 やっぱり、それは中村さんが女の菜里さんから見ても、びっくりしてしまうような美人だからなのだろう。
 それこそ菜里さん、そのバイトを始めた時に紹介された時、「っ!」と呆気にとられてしまったくらい。
 後で聞いたところでは、何かのミスコンテストでグランプリだか、準グランプリだったとか。

 それを聞いたのは、菜里さんがその店のバイトで一日だけ入っている夜のことだったのだが…。
 もしかしたら、菜里さんが中村さんを苦手に感じてしまう――もしかしたら苦手というよりは拒否感?もしくはライバル意識と言った方が適当なのだろう――のは、それを聞いたシチュエーシュンが悪かったのかもしれない。

 それは、菜里さんが唯一バイトに夜入る水曜日。
 水曜の夜のバイトは、菜里さん以外に宇田川クンと沢田クンという2人の男子高校生が一緒だった。
 その夕方。菜里さんがバイトに行くと、宇田川クンがいつになくニカニカ嬉しそうな顔をしている。
 「なんかいいことあったのー?」って聞いても、宇田川クンはニカニカしているばかり。
 いや、菜里さん。だからってそれが気になってしょうがないってわけではなかった。
 言ってみれば、それは挨拶みたいなもの――今日もよろしくね――だった。
 でも…

 そこに、ちょっと遅れて店に来たバイトの沢田クン。
 その沢田クンを見るなり、宇田川クンの顔がもうこれ以上ないってくらいニッコニコ顔になったのだ。
「なんだよ、その笑い。」
「ヘッヘッヘー。」
「なんだよ、キモチわるいなー。」
 そんな顔をしかめている沢田クンを、ニヤニヤ顔で招きよせた宇田川クン。
 何やら、こしょこしょ耳打ちしていたと思ったら。
「うっそ!電車乗り遅れなけりゃ見れたのに…。
 くっそー。」
 いきなり悔しがりだした沢田クン。
 その2人のいかにも男子高校生っていう楽しそうな様子に、さすがに好奇心を抑えきれなくなった菜里さん。
 堪らなくなって「え、なに?どうしたのよ。何があったのよ」って聞いたら、息せき切ったみたいに沢田クンが振り返った。
「東野さん。昼間、奈津子さんが入ってたってホントですか?」
「え、なつこさん?
 なつこさんって…、あぁ。中村さんのこと?
 うん。入ってたよ。」
 そう。誰かの代理だったのか、その日は夕方まで臨時で中村さんが入っていた。

「え、てことは…。
 奈津子さんって、これから水曜は毎週入るってことなのかなぁ?」
 見れば、それを言っている沢田クンも宇田川クンも、その目の真剣さはもう今まで見たことないくらい。
 自分の顔をそんな風に見つめる2人の男子高校生のその真顔に、菜里さんがなんとなくイラッときてしまったのは…
 やっぱり一つ下の高3とはいえ、密かに「ちょっとカッコイイよね」なんて思っていた沢田クンが、その奈津子さんにデレデレだっていうのがわかったからなのだろう。
 だから。
「知っらなーい。マスターかママに聞けばぁ。」
 そう言うなり、プイっとお客さんのお冷の継ぎ足しに行っちゃった菜里さん。
 しかし、その男子高校生2人ときたら。
 菜里さんがイラっとお冷の継ぎ足しに行っちゃったというのに、そんなこと全く感知しないみたいで。
 菜里さんがお冷の継ぎ足しから戻ってきても、ニカニカ顔で奈津子さんのウワサ話。
 それとなく聞いていたら、なんとかっていうミスコンテストでグランプリだか、準グランプリだかに選ばれたとか。
 さらには、そのミスコンテストの時の奈津子さんの写真が載っている雑誌がどうとかこうとか…。

 もう菜里さん。それには、ちょっとブチ切れてしまった。
 グランプリとか準グランプリって、何なのよ!
 そんなスゴイ人がこの街に住んでいて、しかも、わたしと同じバイトしてるって。
 そんなことってあるものなの、もぉっ!
 そんなこと言ったって、そんなスゴイ人とかスゴイコトって、世の中意外と身近にあったりするものなのだ。


 とはいえ。だからって菜里さん、それ以来奈津子さんにライバル意識剥き出しになったとか、口をきかなくなったとかということではなかった。
 奈津子の誠実に仕事をしている様子とか、普通で飾らない性格とか。
 それは、この町で子供の頃から今まで、菜里さんと同じようなことをし、同じようなことを考えて成長してきたんだろうなと感じさせるものがあったからだったのだろう。
 ただ、そう思う反面、「グランプリだか、準グランプリだかっていうのもわかるなぁ…」としみじみ思うことがあるのも事実だった。
 それは、その醸しだす雰囲気なのか。
 菜里さんの言葉をそのまま言うなら、「奈津子さんを見ていると、女のわたしでもパァって明るい気持ちになってきちゃうのよ…」と、まさにそういうことだったのだろう。
 そんな菜里さんは、いつの間にか苗字ではなく「奈津子さん」と呼ぶようになっていた。

 そういえば。菜里さんは、奈津子さんに一度変なことを聞いちゃったことがあった。
 それは、一気にきたお客の波を片付けて。菜里さんはその心地よい疲れに、フーっと大きくひと息吐きながらトレンチを棚に戻した時だった。
 ふと視線を上げたそこ。カウンターの中で洗ったばかりのグラスを拭いていた奈津子さん目が合った。
 そのキョロっと笑った黒目が「今のは忙しかったねー。でも楽しかったよね」語ってるようで。
 奈津子さんは、今自分と100%同じ気持ちでいるんだと感じた瞬間だった。
「奈津子さんって…」
「…?」
「なんでそんなキレイなんですかー」

 菜里さんのその言葉には、さすがの奈津子さんも絶句だったみたいで。
 いや。言った当の本人も、それが思いもかけずスルっと口から出た後に自分が今何を言ったか気がついて、思わず絶句だった。
 とはいえ、それを言われた奈津子さん。
 ほんの一瞬その両目の上辺りに、泣いてるような、困ってるようなそんなシワがよったと思ったら。
 その後は「ブブッ」って噴出して、後はカウンターの中で大爆笑。
 もっとも。大笑いすぎて、お客の手前さすがにマズイと思ったのだろう。
 ストーンと。
 まるで、カウンターの向こうで、穴にでも落ちたようにしゃがみこんでしまった。
 そんな、カウンターの向こうからずっと聞こえてくる「くっくっくっ…」という、奈津子さんの押し殺した笑い声。
 「えぇー。それを言っちゃったわたしはどうすればいいのよ?」という思いに駆られた菜里さんが、カウンターの中をのぞけば。
 そこにあったのは、カウンターの床で息も絶え絶えに笑っている奈津子さんの姿。
 もっとも、床は水浸しだったから。笑い転げないよう、右手を冷蔵庫にかけて、なんとか体を支えている。
 その小刻みに弾んでいる背中は、今までずっと思ってたよりも、なんだかずっと華奢。
 菜里さんは、それに気づいて心のどこかでハッとしつつ、でも今はそれよりも。
「だ、大丈夫です?奈津子さん。」
 そんな菜里さんの言葉に半分だけ振り返った奈津子さんの顔。
 それは、髪を振り乱して、真っ赤な顔に赤い目。
 額には、汗でぐっしょり濡れた髪が束になって張り付いて、もうホラーさながら。

「ダ、ダメ…。
 あー、苦しい…。ヒヒヒハハハ…。
 ちょっとやめて。お願いだから話しかけないで。
 ヒヒ、ヒヒ…。
 ほら、また可笑しくなってきちゃったじゃない。
 ぶっ!ハハハハハ…。」
「もぉホント、ごめんなさい…。」
「だ、だから菜里さ…。ハハハ…。
 話しかけない…、ヒヒヒハハハ…。
 く、苦し、ハハハハハ…。」

 結局、奈津子さんは、それから5分以上。お客が入ってくるまでその調子だった。




── 本日これまで!
         17話目『スゥィーーーツな怪談話~Episode3‐3』〈了〉
                     *「Episode3-4」に続きます



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2015
08.02

楽しく蚊を殺せ!(笑)




 いやもぉ、ここ何日かは暑すぎて、蚊すら出てこない有様ですけど。

 でも、ちょっと涼しくなったりとか、もしくは朝方なんかには出てくるんですよね、蚊。


 そんな蚊を、芸人さんがゲラゲラ笑いながら殺しまくってるTVが昨日やってたんで(笑)、忘れないようにメモがてら…


 一つは、蚊の捕まえ方。

 蚊は、なんでもとまってる時、後ろ足を上げて空気の揺れを察知するんだとか。

 その空気の揺れを防ぐには、なんとコップがいいんだそうで。

 それも、透明なコップの方が捕まえたことが見えるのと、蚊からも見えにくいのでBESTなんだとか。


 ちなみに蚊はとまってる時、視界は前方にあるとかで。
 よって、コップも後ろから近寄らせていくと捕まえやすいらしい。



 で、2つ目は、蚊をおびき寄せる方法。

 これは、思わず笑っちゃったというか、ウゲーっとなっちゃったんですけど、なんと、蚊って。

 何日もはいた、くっさ~い靴下が大好きなんだとか(笑)

 ま、蚊といっても、血を吸うメスの蚊だけらしいんですけど、くっさ~い靴下(TVなんで匂いはわからないが)によってたかって身悶えしている映像には、なんだか笑っちゃいました。


 で、次はオスの蚊。

 メスの蚊はくっさ~い靴下でおびき寄せられちゃうわけですけど、オスの蚊は“♪ラ”の音に集まるんだとか。

 なんでも、メスの羽音が♪ラの音階だとかで、まーなんというか。
 メスは“食い物の匂い”、オスは“メスの気配”と、人も蚊も結局同じなんだなーなんて(爆)


 そこはホント勉強になったかな!(笑)






           Why Won't You Give Me Your blood?(笑)



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2015
08.01

暑いんだからさ、白っぽい服を着ようよ!




 いやはや。
 あっつい!あっつい!

 はぁ…(笑)


 いやもぉ今日の暑さは、異常…。

 頭がパッパラパーになっちゃいそうです(笑)




 そんな食欲の夏に服の話題というのも何ですが(笑)、なんでも夏の日中。
 白い服と黒い服では、その表面温度は約7℃も違うんだとか(!)


 ただ、ま、それは、先週の土曜日7/25。都心午後2時、気温32.2℃の時に計測したデータで、平均ではないらしいんですけどね。

 それによると、まず日陰での比較では、白いTシャツは29.3℃。
 黒いTシャツは30.3℃と、日陰では白と黒で1℃の差があったと。

 しかし、日なたに出て5分後。
 同じように測ると、白いTシャツが30.4℃に対して、黒いTシャツでは37.2℃と、約7℃の差があったと。

 *7/26(日)NHK朝7時のニュースから


 まー、確かに。
 黒い方が熱くなるっていうのはわかってましたけど、でも7℃ですよ、7℃!

 クールビズの象徴のように言われている、ノーネクタイは締めたのと締めないのとでは確か2~3度違うって聞きましたけど、7℃っていったらその倍以上ですよねー。

 思わず、
 黒っぽい服って、もしかしてヒートアイランドの原因の一翼を担ってたりしない?
 なんて(笑)


 ただ、ほら、真冬に、電車に乗っている時。
 表面がツルツルの革ジャンを着た人が乗ってきて側に来たら、途端に冷気が伝わってきてビックリなんて経験ありません?

 そんな風に。
 とにかく人がわんさか集まってる都会では、夏に黒い服を着た人が集まることで周囲に熱が籠るなんてこと、あるかもよぉぉぉ~(笑)



 
 とか何とか意味不明なこと言いたくなっちゃくらい、とにかく暑いっ! 











 夏の暑い服といえば、なんといってもスーツですけど、ま、色はともかく(いや。色もそうなんですけどね)。

 ここ10年以上流行りのあの体にピチっとしたスーツって、見ていてミョーっに暑苦しいって思うの、私だけなのかなぁ…?(笑)

 ま、だからってかつてのようなダブルのスーツは別の意味で暑苦しくてイヤですけど、でもそろそろ流行が変わってもいいんじゃないのかなぁ~


 そうそう!
 ついでだから書いちゃうけど、短パンの流行って、いい加減短くなんないもの?

 あの裾が膝の下にあるのって、すごくジャマなんだよなー。

 アパレル業界にお勤めの方、これを見ていたらぜひご一考を!(笑)





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