2015
02.22

本日…




   本日、風邪っぴき冬眠中

   近寄るとうつるよ

   イヒイヒ、イヒイヒ






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2015
02.17

最初、「ふひゃふひゃ…」。でも、そのうち「へぇー」に変わった『復刻!未来からの挑戦』




 いやね。
 実は、全っ然期待してませんでしたー!(爆)



 だって、いつだったか再放送していた『なぞの転校生』。
 あれ、さすがにこの時代に見るのはキツかったんだも~ん!(笑)



 だって、ねぇ…。

 唖然としちゃったくらい、チープな映像もさりながら。

 冒頭の団地がミニチュアだったのには、いやもぉ思わず目が点!(笑)



 「少年ドラマシリーズ」という、文字通り“少年”が正しく少年している世界に、え?この世界だって充分パラレルワールドに思えるんだけどぉ~みたいなー(笑)

 
 “少年”って言葉は(“少女”とともに)、もはや日本じゃ死語の感がありますよね(笑)




 とはいえ。
 あの、『未来からの挑戦』ですよ!

 
 腐っても『未来からの挑戦』?(笑)

 間違っても、『ねらわれた学園』じゃないわけですよ(爆)



 これは、見るほかあるまい!って。

 いや。個人的には『明日への追跡』の方が絶対見たいんですけどね
 私、眉村卓より光瀬龍の方が好きだったんです(笑)





 ってまぁ見始まった『復刻!未来からの挑戦』だったわけですが…



 ふひゃふひゃ。
 やっぱ、チープねー

 ていうか、関クンの“少年”っぷりに、ちょっとクスっ…

 なんて(笑)

 ていうか、ていうか。テーマソング、くっせー!
 だから、『明日への追跡』の方がいいんだって ←しつこい(笑)
 *明日への追跡テーマ(カバー)
 https://www.youtube.com/watch?v=kCphV7AN63A



 そんな風に茶化して見ていたのに。

 ふと、見入っていた自分に気がついて、「え?」とか思っちゃったのは、例の「校内パトロール」のことを、主人公の関クンがお父さんと話している場面でした。

父:正しいことと正しくないことを、どういう基準で決めるか
  ってことだ。
  今パトロールがやってることは正しいことなのかもしれないけどね。
  生徒たちもそう思ってんだろ?
関:言っていることは、いちいちもっともなんだよ。
  でも、何て言うか…。やりすぎなんだよな。
父:そういうものだ。
  こういうことはひとりでにエスカレートする。
  そして、“正しい”という理由でいろんなことが行われる。
  そのたんびにみんな、
  まぁこの程度はしょうがないと一歩ずつ譲歩する。
関:みんな、しょうがないと我慢してるよ。
父:ところがだ。
  ある時、ハッと気がつくと、
  知らない間に身動きが出来なくなっている。
  パパなんかも経験がある。
  それが「ファッショ」というものだ。


  注:ファッショ …ファシズム
  


 そういえば、番組で紺野美沙子も似たようなことを言ってましたけど。

 西沢杏子をやってた人って、紺野美沙子だったんですね


 もちろん、当時だってドラマの描くメッセージは、もちろん伝わってはいたんです。

 でも、大人になって(ま、一応ね。子供に毛が生えた程度には…笑)。
 ドラマの中で関クンのお父さんが言っていたように、人の世がファシズムにするっと流れていってしまう実例を聞いたり、実際に見たりといいう経験があるだけに、それがよりリアルに感じられるんですよねー。



 それこそ、例のトマ・ピケティですよ。

 いや、本は読んでないですけどね

 つーか、あんな高い本買えるか!(ま、元々読む気ないからいいんだけどさwww)

 ただ、トマ・ピケティ氏の言ってることって、TV等で紹介している解説を聞く限り、ぶっちゃけ言っちゃえば「共産主義」であるように感じます。

 でも、共産主義が間違いだったっていうのは、80年代の終わりに、目で見てわかっちゃったわけじゃないですか。

 つまり、共産主義というのは、その構造的欠陥として、「富の平等」を管理する人or組織が腐敗してしまうことで富を独占。
 さらに、人々を「平等な社会を維持するため」という名目で、暴力を使って支配・管理してしまうわけですよね。
 その結果、世の中の進歩が止まり、人々の暮らしは貧乏のまま。ひとたび天災でも起ころうものなら地獄絵図と化すと。


 そのことは、80年代の終わりに次々と起きた共産主義国家の崩壊によって、世界の常識になったはずなのに。

 なぜか、この2010年代になって、再び真面目に議論されるようになっているわけです。

 さらに、それはいつの間にか一つの潮流を作っているわけで、まさにドラマの言う“人々が正しいと思うこと(正義)が、どんどんエスカレートしていって。気がつけば、(その正義によって)身動きできない世の中になっている”という状況そのまま……

 …になっていくのか?(笑)


 もっとも、そのトマ・ピケティ氏。

 TVのインタビューなんかだと、“議論してもらうための議論”みたいなこともちらっと言ってたりで。

 まー、確信犯的にやってるとこもあるんでしょうけどね。


 ただまぁ、あんな分厚い4千円だか5千円だかする本が売れてるっていうのは、まぁファッション的消費だったり、もしくは懐が寒い時代の“小金消費による満足感”っていう面が強かったりと。
 それらの側面が大いにあるにせよ、ちょっとキモチワルイよなーなんて(笑)

 今っていうのは、猫も杓子も(それこそ犯罪者だって)ネットで“正しいこと”言っちゃう時代なだけに、余計ウスキミワルイように感じますね。




 ま、そんなことはさておき、『未来からの挑戦』(笑)

 いや。そのつくりは、やっぱりチープっちゃぁチープですよ。

 所詮は、リアルタイムで見た世代の“思い入れ”という下駄をはかせた「名作」でしかないんだと思うんです。

 ただ、そうはいいつつ、この時代、この齢になって見ても。
 ところどころハッとさせられるのは、やっぱり、あの時代ならではの「マーケティング」していないドラマ作りってことにあるのかなーって。


 今のドラマって、確かに面白いんですけど。
 でも、時々ふっと感じるんですよね。
 これって、本当につくる側のつくりたいドラマなのかなぁ…。
 視聴者や世間の“ニーズ”に合わせているだけなんじゃないのかなーって。

 ハリウッド映画的と言えばわかりやすいのかな?

 ハリウッド映画といえば、例の某国指導者の暗殺映画。あれ、最近の興行成績はどうなってんのぉ~。
 ネタ的に“旬”じゃなくなったから、もぉどうでもよくなっちゃたのぉ~?(爆)



 って、あれ?
 俺って、そんなこと言えるほどドラマ見てたっけ?
 なんてね(笑)

 ま、ドラマとはいえども“商品”なわけで。
 顧客のニーズに沿った商品づくりをして、それで顧客が満足するのならそれで全然OKなんでしょうけどねー。

 ていうか、ドラマとか映画って。
 そういうもんだよなー、それで全然いいんだよなって思うことありますよね。




 ただ…、ね(笑)

 それが、いかにもルーチンワークっぽい時とか…。
 ニーズに沿って、とりあえずドラマのノウハウを押し込めちゃいましたみたいな、仕事慣れした人のやっつけ仕事だなぁーみたいなの、感じちゃうとなぁ…(笑)

 結構夢中になって見ていたくせに。
 終わった途端、「あぁつまんね…」って呟いちゃうこと、時々ありません?(爆)





 ってまぁ、そんなおバカな人の繰り言はともかく(笑)

 ドラマが放送されてから38年って年月が経って。
 『未来からの挑戦』というよりは、
 これじゃぁ何だか“過去から挑戦”されてるみたいじゃん! 

 って気持ちにさせられた、『復刻!未来からの挑戦』でしたとさ(笑)


 
 https://www.youtube.com/watch?v=EdhoX1Xu6ZI



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2015
02.15

67話目-15

Category: 怪談話

 ~ 呪い その2


 大庭さんの横顔を見たその瞬間、立ち止まっていた詠一クン。
 そんな詠一クンの顔の動きに合わせるように、一瞬遅れて立ち止まった大庭さん。
 どこかぼんやりしたその目と、そんな大庭さんの手にしたリードを元気いっぱいに引っ張っている犬の姿。

「え…。
 舟橋クン、宮間クン亡くなったの、知らなかったの?
 あ、そっか…。
 わたしは、ほらっ、宮間クンとは高校一緒だったから…。」
「うっそだろ?
 だって、オレ、5月くらいに会ったぜ。
 アイツ、O大だって言うからさ、O駅まで電車でずっと話してたんだよ。
 相変らずちょっと嫌味でさ…。あっ!」
 そこまで言って、あの時の宮間クンの変に真っ白い顔を思い出した詠一クン。
 そうか。やっぱりそういうことだったんだ……

「どうしたの?」
 見れば、大庭さんは怪訝そうに首を傾げて、でもちょっと笑って詠一クンを見ていた。
 その足元で大庭さんにじゃれついている犬は、ご主人様との散歩をジャマする詠一クンをチラチラ盗み見。
 そんな犬の目のはるか向こうを見ていた詠一クン。やっとそれに気がついて、大庭さんの方に歩き出した。

「うん。あの時…。
 5月に会った時…。
 アイツ、顔が変に真っ白でさ。
 あと、何だか痩せてたし。
 そう、声だって力がなかった…。
 あれって、やっぱりそういうことだったんだな…。」
 そう言った詠一クンに、大庭さんは静かにうなずいた。
「そうなんだ。5月に会ったんだ。舟橋クン…。
 5月っていったら、宮間クン、もう自分の病気のこと知ってたはずよね。
 あのさ…。」
 そこまで言って言葉を詰らせてしまった大庭さん。
 見れば、心なしかかすかに目が潤ませているような…。

「宮間クンってね、わたし、高3の時同じクラスだったの。
 あのさ。今更、死んだ人のこんなこと、言っちゃいけないのかもしれないけどね。
 でもね。宮間クンがO大の医学部を第一志望にしたの、
 私やクラスのみんな、ちょっと無謀だって噂してたのよ。
 わかるでしょ?
 舟橋クンだって、宮間クンのこと知ってるから…。」
「うん。…!?」
 何を言いたいんだろうって、詠一クンが大庭さんの顔をじっと見ると。
 その視線に応えるかのように、大庭さんはその目で真正面から詠一クンを見た。

「ううん。違う。そういうことじゃなくって…。
 これはね、嫌味でも自慢でもなくってね。
 宮間クンってさ、
 言ってみれば、とんでもないくらい勉強に勉強を重ねるって人じゃない?
 普通の人じゃ考えられないくらいさ…。
 でもね、わたしの高校の人達って、みんなそんなに勉強するわけじゃないのよ。
 みんな、それほどまでに勉強しなくても、
 ある程度までなら出来ちゃうっていうかさ…。」
「うん。それはわかる…。
 あぁ。でも、そんなもんなんだろうな。
 大庭さんとか、斉木とかは…。」
「うん…。
 今さ、舟橋クンが言ったじゃない?
 ホントその通りだったのよ。あの時も…。
 あの高3の時も、宮間クン、真っ白な顔してさ。
 体なんかもガリガリに痩せちゃって…。
 だから、そのくらい頑張ったってことなのよね。
 それでもね。それでも、宮間クンがO大受かったって聞いた時は、
 わたしもみんなもホント?って。
 うん、そう。一瞬信じられなかったくらい…。」
「アイツはホントのホントに努力家だったから…。」
「登校日の時に教室で見た、あの時の宮間クン…。
 あの時は宮間クン、クラスの誰よりも生き生きと笑ってたなー。
 でも、今思えば、あの時の無理が祟ったのかもしれないよね…。」
「うん。それでもって片道2時間強を毎日だろ?
 で、医学部。
 いっくら宮間だって、ガンバリすぎだよなぁ…。
 ほらっ、オレL大だからさ──。」
「えっ!?L大…。」
 一瞬、驚いて裏返っちゃったような声を出した大庭さんは、くるっと詠一クンの顔を見た。
 その、なんだか不思議そうな…、何かを思い出しているような…。
 そんな大庭さんの表情が、すぐそこにあった。

「あれ?オレ、そう言わなかったけ?
 うん。L大。
 だからさ、同じO市だからわかるんだけど、あれは遠い…。
 ホンっト、遠い…。
 何でなんだろ?実際より遠く感じるんだよね。
 オレなんかさ。試験受けに行っただけで、
 もしここ受かっても、通いは絶対無理だって確信したもん。」
「都心を越えて、さらに向こうっていうのもあるのかなぁ…。」
「あぁ、それはあるかもなぁ…。
 でね、あん時。5月に宮間と会った時。
 当たり前だけど、アイツとO駅まで一緒でさ。
 でね、駅で別れる時、アイツに、オレのアパートの電話番号渡したんだよ。
 遅くなった時は泊めてやるぜって。
 そしたらアイツ、スゲー変な顔してさー。
 しばらくその電話番号、じっと見つめちゃって。
 でさ、何言うかと思ったらさ、こうだぜ。
 オマエちゃんと学校行けよって。
 わかるよね?あの口調…。
 アイツの、あのいつもの口調なの。
 あん時は、アイツって、ホンっト変わんねーなーとか思っ──。
 あれっ!?」

 隣を歩いていたはずの大庭さんの気配が、ふっとかき消すように感じられなくなって。
 「え!?」って慌てて振り返った詠一クン。
 その目にまず映ったのは、リードに引っ張られて伸び上がるような姿勢の犬の姿。
 そして、そのリードをたどった先にあったのは、立ちつくしていた大庭さんの姿。
 その顔の大きく見開いた目。
 何か言おうと口を開いて、すぐ閉じて。さらにまた開いてを繰り返しているいるその表情は、愕然って言葉がピッタリ。
「どうしたの?」
「……そ、それ…、それって。
 それって、エーイチくんだったの?
 そうなんだ。エーイチくんだったんだ…。」
「えっ?何…。」
「エーイチくん。ね、今時間ある?」
「えぇっ!?時間?
 時間って、あぁ、うん。全然大丈夫――。」
「エーイチくんさ、今から宮間クンの家に行こぉ。
 お線香あげに…。」
「お線香あげ!?
 オレが?宮間のの家に?
 いやー…。宮間、嫌がるだろー。
 結局アイツ、オレのことよく思ってなかったみたいだしさ…。」
「違うんのよ。違うの…。」
「違うんだって。
 大庭さんは絶対わからないと思うけど、
 アイツはオレみたいなヤツのこと軽蔑してたんだって。」

 そこまで言った詠一クンの顔には、苦い笑いが浮かんでいた。
 それは、大庭さんに対する、ちょっと皮肉な気持ち。
「大庭さん、さっき言ってたじゃない?
 勉強頑張るわけでもないし、部活に励むわけでもない。
 あの頃のオレって…、そう、よくわかんなかったって…。」
 いや。大庭さんは、わからなかったではなく、「怖かった」って言ったのだ。でも、詠一クン。なぜか自分の口からその通りには言えなかった。

「宮間はさ、そんな努力なんて全くしないオレみたいなのを軽蔑してたんだって。
 あ、いや。もしかしたらさ、大庭さんだって、そう思ってたのかもしれないけど…。」
「う、ううん…。
 いや、だから…、違うのよ。
 宮間クンだって、そんなこと思ってないのよ。
 だって、わたし、聞いたんだもん。
 お通夜で宮間クンの家に行った時…。
 宮間クンのお母さんから聞いたのよ。」
「宮間のお母さん!?」
「ほら、亡くなったっていう連絡は、高校の同級生経由で来ていたからさ。
 その時中学も一緒だったのは、わたしだけだったの。
 だから宮間クンのお母さん、わたしに聞いてきたのよ。
 宮間クンが学校行く時、駅で中学校時代の友達に会って。
 その友だちが、
 帰りが遅くなって困ったらオレのアパートに来いって電話番号くれたんだって。
 宮間クンね、それがすごく嬉しかったらしくって、
 そのことをお母さんに話していたらしいのよ。
 それで宮間クンのお母さん、
 わたしに、それって誰のことかわかりませんか?って。
 せめてお礼を言いたいからって……。」

 ズキン!
 それは、心臓が頭の天辺まで飛び上がって。そのまま張り付いてしまったような、そんな感覚。
 そういえば、なんだかつい最近もそんな感覚を──。
 でもそんな思考は、溢れ出てくる感情に押しやられていた。
 喜んでたって…。
 なんだよ、それ…。
 なら、そう言えよ。
 そういう態度とればいいじゃんよ。
 電話番号書いた紙を、ふんふんうなずきながら見て、「オマエ、ちゃんと学校行けよ」じゃ、わかんねーじゃんよ。
 バカかよ。
 オマエ……


「ねぇ。宮間クンが亡くなった場所…。
 あ、違う。亡くなった場所じゃなくて、倒れた場所。
 救急車が駆けつけた場所…。
 エーイチくん。あなた、それってどこだと思う?
 O駅だって、O駅…。」
「……。」
 何も言葉が出てこない詠一クンに、大庭さんの声はさらに続いていた。
「確か、7月の24日…、だったかな?
 その、夜の11時くらいだって…。
 もう夏休みだっていうのに、
 毎日朝から研究室に行ってて、その帰りだったらしいわ。」
「うっ……。」
「ねぇエーイチくん。わたし思うんだけどさ。
 もしかしたらさ…。
 もしかしたら宮間クンって。
 その時、エーイチくんのアパートに、電話しようと思っていたのかもしれないよ…。」
「アイツがオレんちに電話……、あっ!
 ……えぇっ。
 ウっソだろっ…。」

 7月24日って……
 憶えている
 7月24日っていうのは、そう、みんなでO城に行った日
 夜、O城に行って…
 明け方近くにアパートに帰ってきて、そう、あれはシャワーを浴びた後だった
 暗い部屋の中で光っていた、あの留守電の赤いランプ
 再生しても、何も言わずすぐ切れちゃって…
 確か、そう…
 そういえば時刻は11時くらいだったような……
 それって……、えぇっ!
 そこまであの夜のことを思い出していた詠一クンは、やっとそのことに思いがいった。
 あっ、アレ…
 あのO城から帰ってき夜の明け方のアレ…
 アレって、つまり、そういうこと…
 え……


 ウトウトしていて、ふいに、まるでその場で跳ねるようにビクンと動いた体。
 口から洩れたうめき声。
 それと同時に耳に飛び込んできた、ビールの缶が地面に落ちる音。
 えっ!やばっ!
 オレは、半覚醒の意識の中で、地面に転がっているのであろうビールの缶を慌てて探していて…。
 なのにビールの缶は見つからない。
 缶からビールが流れ出す、じゅわじゅわっていう泡の音は、すぐ近くから聞こえてくるのに。

 オレは、ぼんやりとした意識の中。
 妙に定まらない視界で下を向いてビールの缶を探していて、ふと視線が止って──。
「…!?」
 いきなり視界の中に入ってきた、夜より黒かったアイツ。
 オレは、無意識にアイツに視線をそれに沿わしていた。
 そして見上げたその先……

 あの時、そこに立っていたのは、言いようのない怖さだった。
 口から洩れる言葉が言葉にならなくて。
 歯のなる音…。心臓の音…
 そして…

 その黒とも白ともつかぬ、人のような姿のアイツが、すー、すーっと1歩、2歩と近づいてきて…
 あれは、アイツがつぶやいていた声だったのか。
「ぼしょ、しょぼしょぼしょ…。
 ぼしょ、しょぼしょぼしょ…。」
 でも、アイツはオレに近づくにつれ、力尽きるかのように膝をついて、手をついて。
 それでも、アイツはオレの方にやってきた。
「ぼだ、しょにぼしょしょ…。
 ぼだ、しょにぼしょしょ…。」
「だ、しにたしょしょ…。だ、しにたしょしょ…。」

 オレのすぐ傍まで来たアイツは、オレの顔を見上げるようにじっと見つめてきた。
 あの瞬間感じた、ずっきーん!と、頭の中を貫くなにか…
 それは、思いだったり…
 哀しさだったり、悔しさだったり。
 無念さ、つらさ、そして哀願だったり、その他あらゆる思い。
 その途端、アイツのつぶやきは言葉に変わって…

 その思いの強さ…。
 あの時オレは、確かにそれを聞いていた。
 あんなアイツが、オレみたいなのにしかつぶやくしかなかった、その思いを……
「死にたくない…。死にたくないんだよ…。
 何でだよ?何でなんだよ?俺はこんなにも──。
 なぁ。何でなんだよ?俺はこんなにも──。」



「そう…。
 そうなんだ……
 死にたくないんだよって…。
 そんなことが…。」
 気がつけば、すぐそこにあった大庭さんの顔。
 それは、意外にも詠一クンの目よりずっと下にある。
 あれ?もっと背高いかと…
 その大庭さんの、しんみりとした口調。そして、憂いを帯びたその表情は…。
 それは、それでも詠一クンの目には鮮やかすぎちゃって。
 視線を外したその先にあった夏の終わりの太陽の色よりも、もしかしたら……

「宮間クン。きっと、もう生きることが出来ない自分が悔しくて悔しくて…。
 だけど、誰かに助けて欲しくって…。
 それがダメなら、せめて誰かにそのこと聞いて欲しくって…。
 それで、行ったのかな……、
 エーイチくんのとこに…。」
「うん…。
 でもさ。何で?何でオレなんかのところに?
 他に親しいヤツ、いっぱいいたろうにさ。
 それこそ大学にだってさ…。
 なのに、何でオレんとこなんだよ?
 オレのことなんて大嫌いで、軽蔑してたくせにさ…。」
 そう言って詠一クンが見た大庭さんの顔。
 そのタイミングは、やっぱり大庭さんも詠一クンの顔を見るところだった。
「うん…。
 確かにそうだよね。
 わたしも、何でそれがエーイチくんなんだろう?って思う。
 うん…。ワケわかんないよね。」
 そこで言葉を止めた大庭さんは、ふっと息を吐いた。
「…!?」
 その微妙な間に、なんだろ?って。
 その表情を窺う詠一クンに、大庭さんは、それをグイと見つめ返し、また口を開いた。
「でもね、エーイチくん。
 エーイチくんって、まだわかってないんだなーって。
 ていうか、何でわかんないだろう?って。」
「え、何でわからない?
 えー、だって…。」
 初めて女のコに、そんな真剣な顔で見つめられちゃった詠一クン。
 その目の中にあったものに、もう気が動転。どうしたらいいのか、全然わからなくなって、頭の中はもう真っ白。

「だってさ、5月に会った時。
 宮間クンは別れる時、エーイチくんに、オマエちゃんと学校行けよって言ったのよね。
 そうでしょう?」
「う、うん。」
「エーイチくんは、それを嫌味だと思ったのかもしれないけど…。
 ほら、宮間クンって。いつだってあの口調だから…。」
「そ、そう。そうだよ。」
「で、あれでしょ?
 あの、ホっント嫌んなるくらい、
 クソ真面目ぇーっていう、あの顔でしょ?」
 そこまで言って、やっとちょっとだけクスっと笑った大庭さん。
「そういえばさ、宮間クン…。
 お通夜の時、写真を見ていて思っちゃったんだけど、
 相変わらずあのメガネだったよね。
 中学の時にかけてた、メタルフレームの、シルバーの…。
 エーイチくんが会った時もそうだった?
 フフッ。」
「え?
 あ、うん。あれ?どうだったろう…。」
 その時、詠一クンの脳裏に一瞬浮かんだそれは、あの5月の朝の光景。
 後ろからポンっと肩を叩かれて。振り返ったそこにあった、ニカっと笑う宮間クンの顔……

「そう…。そうだった…。
 そうだよね。アイツ、相変わらずあのメガネかけてた…。
 中学の時と同じの…。」
「フフフ。そうなんだ。
 宮間クン、やっぱりあのメガネだったんだ。
 フフフ…。」
「ハハっ。やっぱ、アイツって、ちょっと変だよね。
 普通、みんな大学とか入ったらメガネ変えるじゃんね。
 もしくは、コンタクトにするとかさー。
 ハハハー。」
「そう。そうだよね。
 でもさ。なーんか、宮間クンらしい。
 アハハ…。」
 そんな大庭さんの笑い声に、何を思ったのだろう。
 今の今まで、大庭さんの持つリードをピンと引っ張っていた犬が、ひょいと振り返ると。たちまち、大庭さんの元に飛び込んできた。
「な、何?どーしたの、コタロー。」
 一瞬、驚いた大庭さんだったが、すぐにしゃがんで。両手で犬の顔から首を撫でまわしているその姿。
 その大庭さんの両手を忙しく口で追いかけまわしている犬。
 そんな大庭さんを…、というよりは、大庭さんと犬がじゃれあっている、その光景全体を眺めている詠一クン。
 ふいに心の底から、ワーッと湧き起ってきた何か。
 ドキン。
 その衝撃。
 それは、詠一クンが今まで生きてきて初めて味わった、リアルに生々しい恋の感情だった。




 ── 本日これまで!
           67話目-15〈了〉/ 67話目-16に続きます
____________________________メルマガ配信日:2010.9.30




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2015
02.11

67話目-14

Category: 怪談話


 ~ 呪い その1


 あの時、ふいに台所の明かりが消えたのは、なんのことはない。たんに電球が切れたからだった。
 ただ、それがどこかの雷落による過電圧によるものなのか、それともたまたま電球の寿命だったかのか、それはわからない。
 いや。その時はもちろん、俺たち3人とも驚いたなんてもんじゃなかった。

 その絶妙すぎるタイミングは、やっぱり例のO城のソレが関係していたのかも…!?
 なぁーんて。

 これは後々になってよく言ってたことなのだが。
 起こった出来事をそんな風に関連付けてしまうところが、つまり“関東屈指”と言われたO城のO城たる所以ってことなのではないだろうか。
 ま、今となっては、ホントいい思い出だ。

 あの夏。
 結局、俺のアパートには、それから1週間くらい遠山やら、杉多、三鷹、薫が、それこそ代わりばんこに泊まりに来ていた。
 俺は、遠山と杉多が泊まった最初の夜でずいぶん落ち着いたとはいえ。
 それでも薄気味悪いことには変わりなかったから、みんなが泊まりに来るのはありがたかった。
 ただ、みんなは日替わりだからともかく、俺は連日ほとんど徹夜状態で。最後の方はフラフラになっていた記憶がある。

 いや、その後は何もなかった。
 1週間が過ぎる頃には、俺は疲れて酔っ払って幻でも見たのかなぁ…なんて思うようになっていた。

 そういえば、遠山と杉多が最初に泊まったあの夜、最後の最後に、遠山が言っていた疑問。
 例のO城の帰りにあった事故の経緯については、運転していた薫自身もよく憶えていないということだった。

 杉多といい、薫といい…。
 うん、まぁそれには俺も含まれるのかもしれないが、何だか誰も肝心な場面のことの記憶が抜けてるわけで、やっぱりまぁそれも。
 もしかしたら、あのO城のO城たる所以ってことなのか。

 というか、そんな風に片付けてしまうのが、いろんな意味で一番いいんだろうなーって気がする。
 ま、それは俺が社会に出て色々経験したからこそ、そう思うのかもしれない。
 つまり、そういうのって、もしかしたら昔から面々と受け継がれてきた「人の世の仕組み」の一種なんじゃないのかなーって気もするのだ。

 もっとも。それは、人が便宜上作ったものなのか、それともそこに存在していたのを人が便宜的に利用しているのか、そこまではわからない。


 その夏休み。俺たちは、それからもしばらく家に帰らず、大学のあるO市でみんなでバカやっていた。
 それでも、お盆が近づく8月の1週目の終わり辺りから、1人欠け、2人欠けというように、みんな帰郷していった。

 俺が2時間強電車に乗って、都心の反対側にある実家に帰ったのも同じ頃だった。
 実家で過ごすのは、大学に入学する前は当り前のことだったのに。でも、4か月間離れてたら、なんだか他人の家で過ごしているようでひどく落ち着かなかった。
 昔の友人に会いに行ったりもしたのだが変に話が合わなくて、やっぱり落ち着かなかった。

 ただまぁそれは当たり前だったんだろう。
 なぜなら、俺はあの時二浪して、やっと大学1年生。
 ストレートで大学に入った友人たちからすれば、やっぱり色々な感覚のズレがあったんだと思う。
 中学ん時の友人なんかは、みんなとっくに就職してたから、まさに二浪でいまだにバカやってるオレとはズレがあったのだろう。


 そんな、俺の大学生初めての夏休み。
 特に世間が思うような…、というか、浪人してた頃に俺が思い描いていたような大学生らしい華やかな出来事は何もなかった。

 ただ…
 それは、その夏ももう終わろうとする頃。
 残り少なくなった夏休みを地元で過ごしていた、とある日の午後のことだった。



 実は、詠一クン。例のO城探検の時に遠山クンが「オマエだったらO城を守る方と攻める方、どっち選ぶ?」と言ってから始まった話がずっと気になっていた。
 それは、実家にいてすることがなかったというのもあったのかもしれない。
 歴史なんて興味なかった詠一クンなのに、ある日、居てもたって居られなくなって、ふらっと街の図書館に。

 しかし。O城となると、同じ関東とはいえ都心を挟んでまるっきり反対側にあるその街の図書館には本も資料もほとんどなくて。
 詠一クン、がっかりした思いで図書館の外に出れば、太陽の光は意外に強烈。
 とはいえ、もう晩夏ともいえる季節。
 太陽は、いつの間にか斜めから射すようになっていて、光自体もオレンジ味が強くなっていた。
 それは、そんな午後ももう遅い時間だった。


 今ではよそよそしい街っていう風になってしまった、自分が大学に入るまで過ごしていた街を歩いている詠一クン。
 ふと、前から歩いてくる柴犬のような犬を散歩させている、同じ歳くらいの綺麗な女の子に目がいった。
 ぼーっと。ムッチャクチャ綺麗なコだなぁ…なんて考えながら歩いていた詠一クンだったのだが。
 ふっとそのコの表情の変化に気がついた。
「っ!?」
 見れば、やっぱりその女の子も「!?」みたいな表情をしている。
 探るような目で詠一クンの顔を見つめていたと思ったら、その表情が急にちょっと固さの残った笑顔に変わった。
「エーイチ…。あ、いや、舟橋…、さん、よね?」

 舟橋さんよねって…。えっ?誰だろ。このコ?
 最初、エーイチなんてオレの昔っからの呼び名を言ったくらいだから、中学か小学校の時の同級生なんだろうけど…。
 えー。でも、こんな綺麗なコ──。
「あっ!大庭っ。
 じゃなかった、大庭さん…。だよね?」

 大庭さんは、詠一クンが中1の時同じクラスだった女の子だった。
 あの頃は、男子も女子もお互い呼び捨てで呼び合うのが普通だったから、今更“さん”を付けるのが、どうも気恥ずかしい。
 とはいえ、あの頃のように名前を呼び捨てで言えるわけもなく。
 なにより、こんなにも大人の雰囲気を漂わせちゃっている大庭さんは綺麗すぎちゃって。女の子に慣れてない詠一クンには、とてもじゃないけど呼び捨てには出来なかった。

 いや…。
 あの頃も…、中学で同じクラスだった頃もきれいだった…
 美人で、成績がよくて、部活──陸上部だったか?──を毎日頑張っていて。
 あと、学級委員長だったり、生徒会の役員やってたり。
 ハキハキ明るく元気で、先生から信頼されてて、クラスのみんなから好かれてて、あとはなんだ……
 そう。大庭さんは、あの頃の詠一クンとはまったく正反対の所にいた女の子。
 っていうか、今でも正反対なことには変わらないんだろうけど…。

「やっぱり舟橋さんなんだー。
 えー。でも、何だか雰囲気変わったよね。」
 そう言いながら親しげに詠一クンに近寄ってきた大庭さん。その笑顔に、つい今の固さはなくなっていた。
「そ、そう?そうかなぁ…。でも…。
 あ、うん。そう、だから…、うーん、なんだろ?」
 何を言っていいか全然わからなくて。思わず、言葉が言い澱んだ詠一クンに、大庭さんはちょっと首をかしげて、やっぱり笑っている。
「今何やってるのー。大学生?」
「あ、ああ。うん、大学生。
 でも、オレ、バカだから二浪しちまってさ。
 今年やっと1年なんだ。ハハハ…。
 大庭…、さんなんかからしたらさ、笑っちゃうよね。」
 そう言って、詠一クン。ふと、憶えた妙な既視感。
 うん?なんだこの感じ…
 こんな会話を、いつだったかしたことがあるような…

「ねぇ…。ねー、どうしたの?」
「えっ!?あっ、ああ…。
 えっ?何?」
「なぁによぉー。どうしたのー?フフ…。」
「あ、うん…。ちょっと今、一瞬他のこと考えてた…。」
「なんだー。
 だからね、わたしだって一浪したって言ったのよ。」
「えぇっ!大庭さんが?あんなに頭いいのに!?
 うっそー!」

「へぇー、国立かぁ。さっすがだなぁ…。」
 詠一クンは、大庭さんの犬の散歩に付き合うことに。どうせ家に帰ってもすることもないしって、大庭さんと自分に言い訳して。
「そんなことないと思うけど…。」
「あの頃は、大庭さんと…、えーと。
 あれ?名前忘れちまった。ほら、何ていったっけ?2学期に転校してきたヤツ…。」
「え…?あ、斉木クン?」
「そう。斉木、斉木。
 あの頃は、大庭さんと斉木とでクラスで1番争ってたよなー。」
「斉木クン、T大だもんねー。」
「へぇーT大かー。スゲぇなぁ…。
 ほら、オレ、二浪してさ。少しは受験勉強したからさ。
 だから今はそれがスゴイって、ちょっとだけ実感できる。」
「斉木クンは、すごいよねー。」
「でも、あれか。斉木だもんな。当然なのかなー。」
「うん。そうかもね。」
「でもさ、オレ…。
 大庭さんがオレのこと憶えてるなんて、思わなかった。
 だってさ…。」
 そう言いかけて、ふと言葉を止めた詠一クン。
 そこにいたのは、「え?」って。
 首を傾げ、不思議そうな目で詠一クンを見ていた大庭さん。

 あの頃って…。
 いや、あの頃に限らないんだろうけど…。
 斉木とか、この大庭さんみたいなクラスで成績のいいヤツらとか、運動部でレギュラーとかなって活躍してたヤツらって…
 あの時、どんな世界を見ていたんだろう。
 オレみたいな勉強もダメ。スポーツもダメみたいなのとは全然違う世界を見ていたんだろうな。
 そうだよ…
 あの頃、オレはこの大庭さんと話したこと…、ほとんどない…、あ、いや。あるのはあるんだろうけど……
 でも、何回もないんじゃないだろうか…
 詠一クン、親しげに話しかけてきた大庭さんに、すっかり忘れていたあの頃自分を思い出して、急に何を言えばいいのかわからなくなってしまった。

「だって…、何よぉー。」
 思わず見たそれは、詠一クンをしっかり見て、ケラケラ笑っている大庭さんの笑い顔。
 その鮮やか色彩感は、まるであの頃なんか存在しなくなってしまったような…。
「う、うん…。何でもない…。」
 そう言った詠一クンに、大庭さんはふっと笑顔を収めた。
 そして視線をリードの先を歩く犬に向けて、ポツリと言葉を吐いた。
「だってさ、舟橋クンって…。
 なんか怖かったんだもん。あの頃…。」
「えっ!?」
 今度は、詠一クンが思わず大庭さんの顔を見てしまう。
 怖い…
 って…。
 えっ?オレが……

「部活をするんでもない。かといって、ツッパリやってるわけでもない。
 もちろんガリ勉するんでもない…。
 いつも教室の端の方であの…、あれ?名前忘れちゃった。
 あの人たち…。舟橋クンとよく一緒にいた人たち…。
 ほら、誰って言ったっけ?」
「え?あっ、あぁ。うーんと。
 あれぇ?オレも名前が出てこないや。ははっ。」
 いや。本当に出てこなかった。
 アイツらって…。
 そう。中学卒業してから会ったことがなかった。

「ま、名前はいいよね。誰かはわかるでしょ?ふふっ。 
 とにかく、あの頃の舟橋クンって、いっつも教室の端っこでさ。
 あの人たちと特におしゃべりするでもなく、つまらなさそうにしててさ。
 たまに目が合うと、すんごく嫌そうに目を逸らして…。」
「えぇー。そぉーおぉー?」
 と言いながら詠一クン。実は、大庭さんが見ていたであろうあの頃の自分の姿をハッキリとイメージできた。
 というか…
 大庭さんから見ても、自分がつまらなそうに見えたということにちょっと驚いていた。
 確かにそうだった。
 中学生のあの頃、よく一緒にいたアイツら。
 アイツらと一緒にいて楽しいって思ったこと、もしかしたらオレは一度だってなかったかもしれない。
 でも、一人ではいられないから……

「なんか怖かったなー。
 何を考えてるのかなぁいつも…、って…。」
「えぇー、そんな何も考えて――。」
「何が好きで、どんなことを楽しいって思って毎日過ごしてるんだろう?って。
 それが全然わかんなかったのよねー。
 あっ!ほら、憶えてない?
 2学期にさ、学級委員長の宮間クンと教室で大ゲンカしたこと…。」
「宮間…?宮間って…。
 あっ!あぁ宮間……。」
 大庭さんの口から出た、宮間クンという名前。
 それは、まるで光がさーっと射し込んできたかのように。
 詠一クンの脳裏に蘇った、あの5月の朝の駅の光景……


 5月だっていうのに、太陽が夏みたいに照りつけていたホーム。
 ふいに後ろからポンと肩を叩かれて。
 後ろを振り返ったら、寝ぼけ眼に映ったニカっと笑った顔。
 まだ半分寝ているような頭では、すぐには名前が出てこなかった。
 と、ふいにパッとその顔と合った名前。
「……。
 えぇっ。あぁ宮間ぁ……。
 うわっ!え?宮間ぁぁっ!?
 えぇーっ!すっげー久しぶりじゃん!」
「うん。久しぶりだな。
 で、舟橋。オマエ、今なにやってんだ?」
 その直裁的な物言いと表情は、中一の頃と全然変わっていない。
 まさに宮間そのものだった……


 さっきから感じてた、この既視感って…
 そっか。そうだったんだ。
 5月に宮間と会ったあの時も、こんな会話をしてたっけ……

 そんなことを思いだしながら、大庭さんの話を聞いている詠一クン。
 その大庭さんはといえば。
 リードの先の犬にあっちに引っ張られたり、こっちに引っ張られたり。
 かと思うと、いきなり駆け出したりと大忙し。
 そうしている間にも、知らない家の庭に鼻面を突っ込みだした犬に、大慌てで呼び戻す。
 そんなこともあってか、大庭さんは、隣を歩く詠一クンの様子を気にすることなく話を続けていた。

「文化祭でさ。舟橋クンと…、えーと。
 ほら…。ふふっ。
 ホント、なんだろ?名前が全然出てこない。
 舟橋クンたちが文化祭の準備、全然手伝わない…
 ね?いつも通りよ。ふふっ。
 教室の端っこにべたーって座り込んじゃって。
 何をするでなくたむろしててさ…。」
「えぇー。そんなにいつもたむろしてたかなぁ…。」
「してたよー。いつも…。ふふっ。
 でさ、宮間クン。あの時は、学級委員長だったからさ。
 見かねたんじゃない?
 詠一クンたちのとこに行って、注意したのよ。
 例の、あのいつもの口調で…。」
 そこまで言って、横を歩く詠一クンの顔を見た大庭さんは可笑しそうにクスっと笑って。
 また目を前に戻して、さらに続ける。

「わたし、あの時はたまたま見てたのかなぁ…。
 それとも、宮間クンの様子に何か感じたのかなー。
 ずっと見てたのよ、あの時。
 宮間クンが何か言ったと思った途端、舟橋クン、飛び上がるように立ちあがってさ。
 宮間クンのこと、いきなりボカーンって…。」
「あぁー、あぁー、あん時かー。
 そんなこともあった――。」
「でさ。舟橋クンが宮間クンのこと、殴ったと思ったら――。」
「そーだよ、アイツさー。
 ぶん殴ったと思ったら、いきなり殴り返してきてさー。」
「もぉ、たちまち大ゲンカ…。ふふっ。」
「まぁ、そういうこともあったっけ…。」
「そう…。
 あの時なんか、もぉホンっトわけわかんなーいって感じだった…。」

 そう言った大庭さんは、詠一クンにきょろっしたと目を向けて。
 でも、それはまたすぐ前に戻って、今度は犬よりずっと先を見ているような、そんな目をしている。
 それをずっと見ている詠一クン。
 大庭さんは、そのことに気づいているのか、いないのか……


「でも…。そうなんだよねー。
 その宮間クンもさ、7月に死んじゃったんだよね…。
 なんだかなぁー。
 宮間クン、O大の医学部、あんなに頑張って入ったっていうのに…。」

 思わず見た、大庭さんの横顔。
 それは、夏の夕方の緑をバックに。前をじっと見つめている静かな目。
 その生命あふれる光景を、何百分の一秒くらい、ぼーっと見ていた詠一クン。
 でも、ガーンと押し寄せてきたそれを感じて、慌てて言った。
「えぇっ!
 今、何て言った?」




 ── 本日これまで!
           67話目-14〈了〉/ 67話目-15に続きます
____________________________メルマガ配信日:2010.9.30




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          ちょっと剣呑で、ゴメン(^^;)





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2015
02.10

なんとなく、2月9日(月)ネタ

Category: メモ・伝言



 ま、つまり…

 http://matome.naver.jp/odai/2141526134083309301
 *naverまとめ

 そういう、「幸運のタクシー」みたいなのがあるんだそうです(笑)



 いや、その「幸運のタクシー」って、私は土曜日の朝のニュースで紹介しているのを見て知ったんです。


 とはいえ。
 例によって。根性曲がりの、ヘソ曲がりの、ヒネクレもんなんでー。

 ご存知ですよね(爆)


 最初は、
「“こーうんのタクシー”って、
 どーせまた、タクシーにハート形の傷があるみたいな類だろ!
 オレなら、そんな“幸運のタクシー”より、耕運機のタクシーの方が乗ってみたいかなー」


 
 なんて(笑)

 ここは、『怪談Sweets ~人魂ア・ラ・モード』です(爆)



 ま、そんなアホバカなこと考えながら見てたんですけど、さすがにそこまでアホバカオメデタ系のネタじゃなかったみたいで(笑)

 いや、なんでも、そのタクシー。
 運転手の川口さんって方がお客に話しかけることで、逆にいろいろ話を聞いてくれたり。

 また、そのことで返してくれる言葉が、後々やけに心に響いてくるんだとか。

 

 いや、その川口さんって人はすごいなーって、そこは素直に思うんですよ。

 ヒネもんの私もさすがに…


 ただ、ほら…
 今って、そういうの、フィクションだとありがちじゃないですか。

 “幸運のカフェ”とか、“癒しのレストラン”とか、はたまた古本屋とか…
 


 てなわけで、まーそんな斜めから見てたわけですけど、ま、結局。
 そのニュースの中では、結局「幸運のタクシー」は探しても見つからず、チャンチャン。

 ヤーイ!ヤーイ!見つからねーでやんのー!
 もしかして、幸運のタクシーに嫌われてんじゃねーのー

 なんて(爆)

 ただ、その日のニュースのスタッフに以前乗ったことがある人がいたりで、ちょっとビックリも



 まー、そんなイジわる~い目で見ていたわけですが(笑)

 まったく…。土曜の朝だっていうのにねー



 ただ、ふと気がついて…

 「幸運のタクシー」って、つまり“タクシー”なわけじゃないですか。

 タクシーってことは、営業していればお客がいるわけですよ。

 つまり、そのニュースの人が「幸運のタクシーや~い!」と探しまわって、結局見つからなかった一方で、まさにその瞬間「幸運のタクシー」に乗っていたお客がいたってことですよね。

 それって、何だかスッゴク面白くって、楽しいなーって。

 いや。皮肉でも茶化してるんでもなくって(笑)

 普段、茶化しとか皮肉ばっかだから、こういう時はもぉ大変(爆)



 なんだろ?
 人の世の“妙”とでもいうのかなぁ…

 もちろん、“求めよ。さらば与えられん”とか…
 “恋に焦がれて鳴くセミよりも、鳴かぬホタルが身を焦がす”とかは絶対なんだろうけど、でも“その逆もまた然り”なんだなーって(笑)



 そういうのって、映像にしたらいい絵になりそうですよねー。

 それこそ、「幸せのカフェ」たの、「なんちゃらの本屋」なんてーのよりもさ(笑)

 あの手はさ。やっぱ、ピリッと皮肉っぽい隠し味や、グッときちゃうようなユーモアがないとね




 


   ま、コレだって、“ピリ”や“グッ”がイマイチ足んないんだけどさー(笑)






 まー、なんだろ?

 やっぱり、“犬も歩かなきゃ、棒に当たらない”ってことなのかなーって。

 それは、良きにつけ、悪しきにつけ…。

 ま、もちろん?
 その当たる“棒”も良きにつけ、悪しきにつけなんだろうけどさっ!(爆)



 ま、そんなことを、そんなニュースを見た週明けの月曜日に、しみじみ思いだしちゃったとさ。

 めでたし、めでたし。




 



    前に「“三大キング”って、キャロル・キングとあと2人誰?」って真面目に聞かれた時は絶句したなぁ…





 これ書いていてつくづく思ったのは…

 ブログって、ほんっとマスターベーションだよなーって(笑)

 うん。もちろんさ、“良きにつけ、悪しきにつけ”!

 って。
 ブログって、自分で書いて自分で照れてちゃう時ってあるよね?(爆)




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2015
02.08

最近野菜が高いと思ってたら……




 最近、野菜がとにっかく高いですよねー。

 いまだ強気に年末年始価格を続けてるみたいっていうかー。

 ま、白菜みたいに、まぁまぁみたいなのもあるのはあるんですけどねぇ…

 とはいえ、全般に高い!(泣)

 つーか、年明け以降種類がミョーに少ない気がするんだけど…


 まぁ寒いんで、発育が悪いっていうのもあるのかなー




      な~んて思ってたら……










      な~んて思ってたら?








IMG_2851.jpg

             びょょょ~ん!って。
             なんだよ。全然元気じゃん!(笑)







             あらまぁ、あっけらかーんと!



IMG_2855.jpg

        なんともまぁ大胆に…



IMG_2858.jpg

        もはや、盗撮……!?

       えー、誰ぇ~?はぁはぁ言ってんのー!





 つまり、野菜たちは、
 今まさに種まきの真っ最中だったってこと?(爆)
 








                夏が恋しいやね(笑)


 このニンジン。
 もちろん、ピッタリあの体位で“組み合わせて”保管してあります(笑)
 (いやもぉ、今にも声が聞こえちゃいそうなくらい…)



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2015
02.08

67話目-13

Category: 怪談話


 ~ 雷雨 その5


「それとよぉ、その後も変だったよなぁぁ~。
 石段の下でエイチぃが、もう帰ろうぜって言ったらよぉ、
 カオルぅが、石段の上まで行ってみようって言って。
 そんで、エイチぃがスギタぁに大丈夫そうか?って聞いたろ……。」


「なぁカオルよー、どうすんだ?まだ行くのか?」
 もうウンザリって顔で言った詠一クン。
「え?あ、あぁー。」と、薫クン。
「なぁ。もういいんじゃねーのー?
 何かオレ、今のでどっと疲れちまってさ…。
 どうだぁ?もう終わりにして、ファミレスでも行かねー。」
 見れば、遠山クンと三鷹クンもウンザリ顔でうなずいていた。
「あー、そうだなぁー…。
 あっ!でもさ。その階段登った所が城主たちが居住してた所らしいんだよ。
 せめて、そこまで行ってみねーか?
 あ、いや。みんながもういいって言うんなら、オレももういいんだけどな…。」
「うん…(はぁ…)。じゃぁ、そこまで行ってみるかぁ?
 あ、そうだ。杉多は?
 どうだぁ杉多。オマエ、大丈夫そうか?」
 そう言って振り返った詠一クンを待ち構えていたみたいに、ぶつかった杉多クンの目。
 その、様子を窺うような表情。
 でも、それが見えたのは一瞬。
 振り返った詠一クンがそれに気がついた、そのほんのわずかの間に杉多クンは目を反らしていた。
 うん?な、なんだ…!?
 その、強い違和感。
 しかし。
「ああ。うん。もう大丈夫だって…。
 さっきはホントごめん…。」
 それだけ言って、スタスタ歩きだした杉多クンの後姿。


「そうだよ…。そう。あん時の杉多もおかしかった…。」
「あの時の変な間ぁ?感じぃ?
 あれはオレにも伝わってきたしよぉ、ミタカぁも完全にわかってたよなぁ~。」
 遠山クンのその言葉に、何も言わずただうなずいた詠一クン。
 あの時覚えた違和感で何気なく走らせた視線は、まず遠山クンの目にぶつかり、次に三鷹クンの目にぶつかって。
 あの時、詠一クンたち三人は、同じように変にひっかかるものを感じていた。

 ……って。
 でも、それっていったいどういうことなんだ?
 その疑問は今、詠一クンと遠山クンの視線として杉多クンに向って行く。

 でも、当の杉多クンは首を傾げた姿勢のまま、テーブルの一点を見つめているだけ。
 あまりにずっと見つめたままなので、詠一クン、思わずその視線の先を見たのだが、もちろん何があるわけもなく。
 そして、また視線を杉多クンに戻して気がついた。
 それは、何かを言おうとしているかのように、ゆっくり開いては閉じ、開いては閉じを繰り返していた口元。
 しかし、いつまで経ってもそこから言葉は出てこない。
「なぁ杉多…。
 オマエ、いったいあん時、何を見てたんだ?
 その、つまり…、オ、オレにさ。
 何を……。」
 そう言って見つめた杉多クンは、やはりテーブルの一点を見つめたまま、かすかに口を開いたり閉じたりの繰り返し。
 その口元を、じっと見つめる詠一クンと遠山クンの目。

 しかし、杉多クンは同じ姿勢、同じ視線のまま。
 でも、ふいに。そのままの杉多クンが、よろよろとしゃべりだした。
「わからないんだ…。よくわからないんだ…。
 今、トーヤマの話を聞いてて、あの時のこと、ずっと思い出しているんだけど、
 何だかよくわからないんだよ…。」
「…?」
「エーイチのことが最初に変だって感じたのは、
 昨日も言ったように、カオルのアパートにエーイチが入ってきた時だよ。
 あの時は…、そう。エーイチが入ってきた時、
 エーイチと一緒に誰かが来たような気がしたんだ。
 エーイチと仲のいいヤツらって、トーヤマや三鷹、カオルは知ってたけど、
 それ以外って誰だろ?って思ったんだよな。
 だから、え?って。見直したんだけど、でもエーイチしかいなくてさ…。」
「なるほどだぜぇ~。
 おめぇがO城に行く前、クルマの中で、気配を感じるとか言ったわけ──。」
 と、そこまで言って、ふいに言葉を途切らせた遠山クン。
 急に驚いた声になって。
「えぇっ!おいよぉ~、スギタぁよぉ~。
 てことはよぉ。あん時もなのかよぉ~?
 あん時…。
 ほら、エイチぃが、カーステのボリューム下げようとしてよぉ。
 おめぇがビックリして急ハンドル切った時……。」
「あっ…」
 遠山クンの言葉に、詠一クンも思わず声をあげた。
「おめぇ、もしかしたら…
 もしかしたら、あん時もそれなんかよぉぉ~?」

「うぅーん……。どうだろ……。
 実はさ。オレ、ホントのこと言うとさ、
 昨日の夜のことって…、O城に行った時のことって、
 不思議なくらいよく憶えてないんだよな。
 何て言うのかな?ホント、途切れ途切れにしかさ…。
 記憶として確かに残ってるのはさ、ほら、帰り…。
 帰り、カオルの運転を横で見てる時からなんだよな…。」
「うーん…。
 まぁ、それはとりあえずおいとくかぁぁ~。」
「トーヤマ!オマエ、とりあえずおいとくって…。
 そこ、すごく重要だろ!」
「うっせぇぜぇ~、エイチぃ~。
 そんなこたぁわかってんだぜぇ~。
 でもよぉ、スギタぁが憶えてねぇって言うもん、どぉしようもねぇだろうがよぉぉ~。」
 それは確かに遠山クンの言う通りで、詠一クンも黙るしかない。


「で、それはそれとしてよぉ~。
 一番の問題はよぉ。
 あの橋のところで、おめぇが駆け出した時…。
 いや、まぁよぉもうハッキリ言っちまおうなぁ~。
 スギタぁ~。おめぇがよぉ、エイチぃのことを見て、何かに驚いて駆け出した時。
 おそらくよぉ、そういうことなんだろうぜぇ~。」
 そこまで言った遠山クンは、いったん言葉を止めて詠一クンを見た。
 いきなり向けられた遠山クンの目に、詠一クンは思わず唾を飲み込む。
 でも。詠一クンが、ゆっくり大きくうなずき返すと。
 その遠山クンの目は詠一クンから、杉多クンに。そして、再び口を開いた。

「そうだぜぇ~。あん時だぜぇスギタぁ~。
 おめぇがエイチぃのこと見てよぉ、驚いていきなり駆け出した、あん時…。
 いったいおめぇはよぉ、あん時何を見たんだぁ~?」
 そう言いながら杉多クンを見つめている遠山クン。
 さらに詠一クンの視線も加わって。
 二人の視線の強さを知ってか知らずか、杉多クンはまだテーブルの一点を見つめている。

「今も言ったようにさ、昨夜のO城のことってよくわかんないんだよ。
 ホント、よく憶えてなくってさ…。
 なんで憶えてないんだろって思うんだけど、でも不思議なくらい憶えてないんだ…。」
 杉多クンのその言葉に、大きく息を吐いた二人。
 しかし、杉多クンが続きを話し出したのは、二人の吐いた息が終わるより早かった。

「うーん…。わからないんだけど…。
 たぶんカオルのアパートで感じたように、
 あの時も、エーイチの傍に誰かいるような感じがあったんじゃないのかなぁ…。
 うっすらとそんな記憶があるような気がする…。」
「ち、ちょっと待てよ…。」
 その体の感じは、昨夜と全く同じ。
 心臓が、ドックドック、ドックドックと…。
 咽喉元までせり上がってきたような感覚を、その時詠一クンは味わっていた。
「なぁ杉多。オマエが言う、オレの傍に誰かいるような気がしたってさ。
 それは、明け方オレが見たあれってことなのか?
 つまり、オレが見た明け方のあれは、カオルのアパートに行った時から、
 ずっとオレの傍にいたってことなのか?」
 そう言った詠一クンは、思わず後ろを振り返らずにはいられない。
 恐る恐る、そぉーっと。
 そして、ゆっくりと首を後ろに回して、部屋の隅から隅。上から下へと、擬視した目をじーっと走らして──。
「っ!」
 見回した視界の端っこに、何か異なモノがあったような気がして。
 思わずビクッと、大慌てで視線を戻す。
 そして、それを捜すようにやはりじーっと視線を走らす……

 その視線の途中にあった時計の針は、4時をわずかにまわったところ。
 この季節のその時間なら、もう明るくなっていてもいいはずと、無意識に見た台所の曇りガラスの窓。
 降り続く雷雨のせいなのか。窓の外はまだ暗い。


 詠一クンは、視線をまた杉多クンに戻した。
 それがわかったのだろう。
 杉多クンも、ずっと見ていたテーブルのどこかから、詠一クンのことを見つめ返した。
 杉多クンは、わずかの間詠一クンの目をじっと見ていたのだが。
 やがて、ゆっくりと首を横に振って。小さくつぶやいた。
「そんなこと聞かれてもさ…。
 わかんねぇーよ。エーイチ…。
 ゴメンな…。」
 なんだか今にも泣き出してしまいそうな、杉多クンの目。
 それは、たぶん杉多クンの精一杯の誠実さ。

 それに気がついた詠一クンは。
 今の今まで心臓ドキドキで肩肘張っていたのが、ふっと…。
 なぜか、急に緩んでいるのに気がついた。
 そう。そうだよ…
 そんなこと、杉多にわかるわけないよな…
 同じ人間だもん。オレの友達だもん…
 そんなことわかるわけねーじゃん
 そんなことよりよ。わかんねーよ、エーイチ。ゴメンって、
 いいヤツじゃんか、スギタってさ……


「なんだよぉ、エイチぃ~。
 一人でふわふわと、変な笑いを浮かべてやがってよぉ~。
 おめぇキモチ悪いんだよぉぉ~。」
「え?あ、あぁ…。
 うん。なんでもない…。」
「ったく。薄気味悪ぃヤロ―だぜぇ~。
 もっとも、今にはじまったことじゃねぇけどよぉぉ~。」
「な、何だよ、それ――。」
「なぁ、スギタぁ~。それからエイチぃよぉ~。
 そもそもよぉ、その前っていうのはよぉ、いったいどうなんだぁ?」
「その前?」
「ほらよぉ、橋を渡る前。
 スギタぁがよぉ、橋の真ん中に誰かがいるって言ってたよなぁ~。
 それからよぉ、クルマを停めた所でも、城の方から見られてるとか言ってたよなぁ~。
 そういうのもよぉ、この一連のことに関係しているのかよぉぉ~。」

 確かに、遠山クンが言った通りだった。
 というか。それを言うなら、実は詠一クン自身ですら、クルマを出た時から、ずっと変な空気感を感じていた。
 何だか変にザラついたような空気感を…。
 それから、あの歩くにつれて涼しくなっていく感じ。
 アパートに帰ってきた時は汗だくだったことを考えても、あの涼しさはどう考えたって変だった。

 気がつけば、遠山クンも同じことを言っていた。
「クルマのドアを開けた瞬間のあの感じとかよぉ~。
 あと、昨日のあの暑い夜だっていうのによぉ、
 歩けば歩くほど涼しくなっていくのとかよぉ~。
 なぁ? いったい、ありゃぁ何だったんだぁ~。
 全部同じ根っこで、ああなってたわけなのかよぉぉ~。」
 とはいえ…。
 でもなんだか…。

「なぁ、トーヤマ。それからスギタもさ…。
 もういいじゃんか…。
 オレたちみたいなアホバカの大学生に、そんなことわかるわけねーじゃんか…。
 幽霊なんだか、O城の亡霊なんだか、たんなる幻なんだか知らねーけどさ。
 そんなことがあったってことでいいじゃんか。
 もうさ……。」
「ふんっ!まぁ~なぁぁ~。
 とりあえずはよぉ、夜明けの時間だしなぁぁ~。
 もっとも、なんだか今朝はよぉ、やけに暗いけどよぉ~。
 で、あれかぁ?エイチぃぃ~。
 なら、今夜はおめぇ一人でいいんかぁぁ~?」
 詠一クンを見た遠山クンの顔は、にやぁっと。
 それは、いつもの企むのが楽しくって仕方ないっていうあの笑い顔になっていた。
「ば、バカヤロー!それとこれは別だろ。
 さっきオマエも言ってたろ!
 こんな事がなくたって、どうせオレたち、誰かの家に集まってんだからって。
 だから、だから…。」
 そんな大慌ての詠一クンが可笑しかったのだろう。
 いつの間にか、杉多クンも笑っていた。


 雨音はまだ続いていた。
 いったん収まった雷鳴と稲光も、また息をふき返していた。
 ただ、窓の黒い色はどこか青味がかってきたような…。
「長い雷だなぁ…。」
「なぁエイチぃ~。それからスギタぁよぉぉ~。」
「うん?」
「オレよぉ~。今更、また、変なこと思い出しちまったんだけどよぉ~。
 なぁ。言っていいかよぉぉ~?」
「今更って…。え、何?また、O城ぉぉ?
 なぁー。もういいじゃん…。」
 詠一クンがそう言えば、横に座っている杉多クンもやっぱりうなずいていた。
「うん…。いやよぉ、それはそうなんだけどよぉ~。
 でもよぉ、思い出しちまったんだよぉぉ~。
 オレだけ思い出しちまって、オレだけ一人怖いってぇのもよぉ~、
 なんかムカつくじゃねぇかよぉぉ~。」
「わかった。わかった。
 まぁ今回オマエには借りが出来たからな。言ってみろよ。」
 で、遠山クン、何を言うのかと思えば…。

「なぁ…。あの事故ってよぉ、
 考えてみると変じゃねぇ~かぁ~?」
「ぷっ!」
 当山クンの言ったそれに、詠一クンも杉多クンも思わず噴出していた。
 いや、もちろん可笑しかったからではなくて、それは驚愕の意味で。
 何より、二人とも一瞬呼吸が止まっていた。
 そう。そうだった。
 今まで、どうしてそれを思い起こさなかったのだろう。

「えぇぇーーっ!」
「事故だぜぇ事故ぉ~。あのO城からの帰り道ぃ…。
 カオルぅが運転しててよぉ~。そうだぜぇ~。
 あん時っていうのはよぉ。
 素っ頓狂な悲鳴あげて逃げ出したエイチぃの話で夢中だったしぃ。
 その後は、スギタぁがクルマを心配して大騒ぎで、
 イマイチ状況が飲み込めてなかったんだけどよぉぉ~。」
「……。」
「おめぇらだって変だと思わねぇかよぉぉ~。
 あん時カオルぅは、緊張しまくりで20キロも出してねぇんだぜぇ~。
 それが、何でいきなり、あんなすげー勢いで道の外に突っ込むんだよぉぉ~。
 どう考えたって変じゃねぇかよぉぉ~。」
「……。」

 詠一クンの脳裏に浮かんだ、あの時の光景。
 そして、もうひとつ思い出したこと。
 それは、O城に行く前、杉多クンが言ってたこと。
 でも、詠一クンが言うより早く、遠山クンがそれを言っていた。

「なぁスギタぁ~。おめぇ言ってたよなぁ~。O城に行く前にぃ~。
 O城では、帰り道に何か起きることが多い…、とかなんとかよぉ~。」
「な、何だよ、オマエっ!
 O城は関係ないって言ったの、オマエじゃねーのかよ!」
 思わず怒鳴っちゃった詠一クン。
 でも、その目に映ったのは、首を傾げて肩をすくめ両手を広げている遠山クンの姿。
 いったい何を考えているんだか…。
 またしても、あの企むのが楽しくって仕方ないっていう、にやぁっとした笑みを浮かべている。
 そんな笑みを浮かべた遠山クンの顔を、ことさら照らすようにタイミングよく光る稲光。
 そんな稲光と、その雷鳴のほんのわずかの間……。
 それは、台所の方から聞こえた、ホントにかすかな音。
 ぴぃんっ!
「っ!」
 同時だった。
 詠一クンたち3人がそのかすかな、でも鋭い音に気がついて。「うっ!」と視線を線を走らせたのと。
 3人の視線の先の台所が、真っ暗──




 ── 本日これまで!
           67話目-13〈了〉/ 67話目-14に続きます
_____________________________メルマガ配信日:2010.9.29




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          ちょっと剣呑で、ゴメン(^^;)





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2015
02.01

1月が終わると…




 1年って。 


 1月が終わると、急に駆け足になるんだよなぁ……











       
         https://www.youtube.com/watch?v=UjsQCYmlSZU




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2015
02.01

67話目-12

Category: 怪談話

 ~雷雨 その4


「でなぁ。ホントそれって、ある、ほんの一瞬が境なんだよなぁぁ~。」
「な、なんだよ、いきなり…。
 あっ。それって、もしかして、さっきの小学校の時に心霊スポットに行った話の続き?
 え…!?」
「バカヤロ、エイチぃ~。
 話し終わったって、誰が言ったんだよぉぉ~。」
「いや…。言うも何も…。
 だって、オマエがコーヒー……。
 なぁー。」
 賛同を求めて、思わず見てしまった杉多クンは、なんだか「まぁまぁ」と詠一クンを宥めるようなそんな顔。

「まぁそんな風によぉ、ある瞬間を境にしてよぉ、
 それからも結構そんなモンをよぉ~、ごくたまぁに見ることがあったわけだぜぇぇ~。
 わかるかよぉ、なぁエイチぃぃ~。」
「知るか。」
「なんだよ、わかるのかよぉぉ~。
 ただなぁ、今思うとよぉ~、あの時のアレ…。
 あの小学4年の時に行った心霊スポットで、
 その霊感があるって言ってたヤツが指さして、オレが見ちまったアレなぁぁ…。
 そのアレってよぉ、ソイツの言うようによぉ、
 いわゆる霊ってモンだったのかぁって思うんだぁぁ~。」
「え?霊じゃないなら何なんだよ?
 ソレがそんな風に見えたんなら、ソレは霊だろ?
 だって、霊ってそういうもんだもん。」
 言い方も、考え方も相変わらずストレートな杉多クン。
「いやよぉスギタぁ~。オレだってよぉ、
 そういうモンだか現象だかがこの世に存在するってことはぁ信じてんだぜぇぇ~。
 ただなぁ~…。要はよぉ、ソイツ!
 その霊感があるっていうソイツなんだぁぁ~。
 ソイツとはよぉ、中学ん時も同じクラスになったりで、
 ずっと付き合いがあったんだけどなぁ~。
 ソイツはよぉ、とにかく何でも霊感がるとか言ってよぉ、
 自分を膨らませたがるヤツってわかっちまったんだぁ~。」
「っ…。」
「あっ、だからスギタぁよぉ、おめぇ気ぃ悪くすんなよぉ~。
 あくまでよぉ。オレの小4の時の友だちの話だからよぉぉ~。
 まぁそうは言っても気分悪ぃやなぁ~。
 まぁ勘弁してくれよなぁぁ~。
 おいっ。エイチぃ~っ!
 おめぇもスギタぁに謝れっつぅんだよぉぉ~!」
「は、はぁ~!?」
 詠一クン。そこに遠山クンがいる限り安寧な時間はない。


「でなぁ。今でもよく憶えてんだよなぁ~。
 部活が終わってよぉ、教室に帰ってきた時のことだったぜぇぇ~。
 秋の終わりで、もうすっかり暗くなっててよぉ。
 そんな教室の教卓の脇で丸ぁるくなってよぉ。
 クラスの何人かが、何か面白そうな話をしてたんだぁ~。
 オレはよぉ、何だか面白そうだし、そっちの方に近づいてったんだなぁぁ~。
 そしたらよぉ、その時その輪の中で話していたのは、
 例の霊感があるっていたソイツでなぁ。
 オレは何話してんだぁって思いながら近づいていった時、
 それを聞いちまったんだなぁぁ~。
 ソイツがよぉ、あの小4のあの心霊スポット探検の話をしてるのをよぉ。
 あん時、ソイツがいるって指さしていたモンが、
 いつのまにか恐ろしい姿になっていてよぉ~。
 ソイツが念をこめると、それが消えていったって話をよぉぉ~……。」
 そこで話を止めた遠山クン。
 おもむろに煙草をくわえると、火を点け…。
 ほわーっと煙を吐く。

「その瞬間だったぜぇ~。
 その瞬間、あーコイツってこういうヤツ…。
 そんな風に、何でもフいて自分を膨らませるヤツなんだなぁって。
 オレはやっと気がついたんだなぁ~。
 いやよぉ、それは前々からなんとなくわかってはいたんだぁ~。
 でも、それはあくまでその場その場のことでよぉ。
 ソイツのことを言い表す言葉として、
 オレの中でハッキリ認識されてなかったんだろうなぁ~。
 でもよぉ、その時はよぉ、ソイツっていうのはそんなヤツなんだって。
 オレの頭の中で、完全に変わっちまったんだなぁぁ~。」
「あぁ…。そういうのって、確かにあるかもなぁ…。」
「だろぉ?エイチぃ~。
 でな、その途端だったぜぇ。
 その途端によぉ、その小4の夏休みに見た、
 オレたちをじっと見ていたソレの記憶がなぁ~。
 急にたんなる木の影に変わっちまったんだなぁぁ~…。」
 その指に挟んだ煙草の先。
 白く長く伸びた灰を灰皿にトントンと。
 遠山クンは、残った煙草を大きく吸って、また煙とともに話しだす。


「いや、わかんねーぜぇ~。
 あくまでオレの頭の中でのことだからなぁぁ~。
 ソレは、たんなる木の影なのかもしれねぇし、
 アイツの言うように幽霊なのかもしれねぇ。
 だってよ、そんなこと、今さら確かめようがねーわけじゃ~ん。
 そうだろ?エイチぃぃ~。」
 そう言った遠山クンは、急に詠一クンを真正面にギロリ。
「ただよぉエイチぃ。おめぇ、よく聞けよぉ~。
 心霊スポットみたいなああいう場所ではよぉ、
 そういうモンが見えちまうってことは、誰でもあるもんなんだぜぇぇ~。
 いやよぉ、ソレがいるとかいねぇとか、あるとかねぇとか。
 そういうことはよぉ、全然別の問題なんだなぁぁ~。
 そぉなんだよぉ。見えちまうことがあるんだって…。
 そしてなぁ、そんなモンを見ちまったヤツはよぉ、
 その後もなんかの機会によぉ、またふっと見ちまうもんなんだよぉ~。
 あの時のオレがそうだったようになぁぁ~。
 ……………。
 あれぇ~!?
 雨ぇ、降ってきやがったのかぁぁ~。」
 突然きょとーんって顔になった遠山クン。まるで、我に返ったばかりのように、辺りをキョロキョロ見回している。
「えぇっ?何言ってんだよー。
 結構前から降ってたぜー。
 なぁエーイチ。」
「うん。さっき、ちょこっと雷鳴も聞こえたし、
 雨の音も、さっきより強くなってるから、もしかしたら来るのかもしれないな。」
 無意識に窓を振り返った詠一クン。その視線の途中にあった時計の針は、3時をまわったあたり。



 それから間もなく。
 ゴロロロロロロロロぉーーーーーーーー……
 遠くの空の端を這い転がるような雷鳴が鳴っていたかとおもったら。
 パツン、パツン、パツン。パツパツパツン、パツン。
 大きな雨粒の落ちてくる音が聞こえて――。
 と、思ったそのすぐ後。
 ザァァァァァァァァーーーーーーーー……
 それはまるで、この世界でその部屋だけが豪雨に包まれてしまったような。

「えぇ~。何だぁこれぇ…。」
「いっや、すっげぇ雨…。」
「っ――。」
 杉多クンが口を開きかけたのと、窓の向こうが真っ青に光ったのは同時だった。
 ピシャガラゴロガラゴローっ!
「うっぷ!」
 しばらく言葉が出てこない3人。
 ゴロロロロぉーーーー……。いまだ尾をひいている雷鳴。
「ぷっはぁー!
 何だよ。いきなりかよ…。」
「いや、今オレあせってぇー…。」
「いやぁ~よぉ~。
 まぁ確かに今のはビックリしたんだけどよぉぉ~。
 でも、夜中の雷っていうのはよぉ、
 逆に気持ちを落ち着かせてくれるっていうかよぉぉ~。」
 そう言った遠山クンだったが、すぐに二人の責めるような視線に気がついたのだろう。
「なぁ~んだよぉぉ~。
 おぉ、そうだともよぉ~。
 もちろん、今のはビックリだったぜぇぇ~。」

 そんな遠山クンを笑って見ていた詠一クンだったが。
「あっ!」
「どうしたぁ?」
「うん。台所の窓閉めてくらぁ。」
 詠一クンが台所の窓を閉めて戻ってくると、部屋の中に蒸しっとした感じが甦っていた。


 時刻は3時半をまわったところ。
 3人ともいい加減疲れてきたのか、ずーっと会話が途切れたま。
 それぞれぼーっとしていた。
 ギターの練習でもしているのか、しきりと指をリズミカルっぽく動かしている杉多クン。
 やたら煙草をふかしながら、音だけ消してしまったTVの画面をぼーっと見ている遠山クン。
 詠一クンはといえば、特に見るともなく上…、しいていえば蛍光灯のカサの模様を見てぼーっと。
 そのくせ、心のどこかでは時間が気になっていた。
 そう。だって、昨夜のあの出来事があったのは、たぶん大体今ぐらいのことだったから……


「なぁ~、おい…。」
「…!?」
 遠山クンの声に、詠一クンも杉多クンもビクッとして。我に返ったようにそっちを見た。
 外は相変らずの酷い雷雨。
 全然収まる様子がない。

「なぁよぉ~。実はよぉ、オレ。
 昨日のことでよぉ、いまだに不思議なことがあってよぉ~。」
 と、そこできた、いきなりの大きな雷鳴と稲光。
 3人それぞれビックリしちゃったりで、どうも話が流れにくい。

「昨日のO城のことなんだけどよぉ~。
 エイチぃぃがよぉ~、素っ頓狂な声だして駆け出すその前ぇ…。」
「オレ、そんな素っ頓狂な声だったかぁ?
 うん。まぁいいんだけどな。
 正直、何が何だかわかんなくなってきちまったし…。」
「あぁー。ありゃぁエイチぃの生涯の汚点だなぁ~。
 まぁそれはそれでいいんだろうけどなぁぁ~。」
「バカヤロ。よくねぇよ。」
「よぉエイチぃ~。おめぇうっせーぜぇ~。
 人の話を大人しく聞けっつぅんだよぉぉ~。
 とにかくよぉ、その前だぜぇ。
 なぁおめぇらよぉ、わかるかよぉ~。その前!
 スギタぁがあの門を見てワケのわかんねぇ事ぉ、言いだす前!」
「いや、だからさトーヤマ。あれはオレの幻──。」
「あぁーっ!ホントうっせぇーぜぇっ、おめぇら!
 話がすすまねぇじゃねぇかよぉ~。黙って話聞けっつぅんだよぉ~。
 そう。そうだぜぇ、おめぇだぜぇ~。
 スギタぁ、おめぇだぜぇ~。」
 いったい何か考えているのか。煙草をくわえた遠山クンの顔が、杉多クンにどんどん寄っていく。

「なぁスギタぁよぉ~。
 おめぇ、あん時って何か変だったよなぁ~。
 あの石段のとこや、橋のとこで…。
 なぁ?あれってよぉ、結局何だったんだぁ?」
「石段のとこ…?橋のとこ…?
 え?何だったんだって…!?」
 杉多クンは、ただただキョトンとした顔をしているばかり。
 遠山クンは、そんな杉多クンの顔をのぞき込むようにしばらく見ていたのだが…。
 ふいにポカーンとした顔になって。
「なんだ…。
 おめぇ、ホントに記憶ねぇみたいだなぁぁ~。」
 すると、今度はくるりと詠一クンに向き直った遠山クンの顔。
「なぁエイチぃ~。おめぇは憶えてるだろぉ~。
 あの石段の下だよ。スギタぁが話す言葉の妙な間とかぁ~、
 橋のところでのスギタぁのおめぇを見る目とかよぉ~。
 なぁ、どうだぁ?変だったろぉ~がよぉぉ~。」
「えぇ。妙な間ぁ…?オレを見る目ぇ……
 あっ!」


 そう。最初は橋を渡り始めてすぐだった。
 遠山クンが、「O城を攻める側と守る側どっちを選ぶ?」と言って、詠一クン、薫クン、三鷹クンが盛り上がっていた時。
 一人話しに加わってなかった杉多クンにみんなが順々に話しかけ、最後に詠一クンが話しかけたその瞬間。
 いきなり逃げるように、橋を向こうのほうに駆けていった杉多クン。
 そのいきなりことに驚いた詠一クンたち4人が、杉多クンを追うように駆け出して、やっと立ち止まった橋を渡った石段の下。
 そう。あの時……

「はぁーはぁー…。
 おい、杉多ぁー、どうしたんだよー。
 はぁーはぁー…。
 な、何があったんだって…。
 もー勘弁しろよー。
 はぁーはぁー…。」
 詠一クンが荒い息でそう言っても、杉多クンも同じように「はぁー、はぁー、はぁー…」言ってるばかり。
「おい、よぉ~。ヤベぇーのかよぉ~、スギタぁ~。
 おめぇ、そのくらい言えよぉぉ~。」
 声が完全裏返っちゃった遠山クンは、目ん玉真ん丸。
 しかし杉多クン、そんな切羽詰った遠山クンの言葉にも荒い息を返すだけ。

 そんな詠一クンたち4人が、目ん玉ひん剥いたような顔で見つめる中。
 やっと呼吸が整ってきた杉多クンの目がいきなり下から来て、詠一クンの目とバッチリ合った。
 詠一クンが「え?」ってビックリしたその時には、杉多クンはきょとーんとした顔に。
「な、何だよ、杉多。いったい…。」
「い、いや…。ゴメン…。何でもない…。
 急に怖くなっちゃって……。」


「そう…。そうだよ。あん時……。」
 詠一クンは、昨夜のあの場面を思い出しながら、杉多クンの顔を覗き込むようにして言った。
「なぁ杉多…。
 あん時は、急に怖くなったってことで、なんとなく納得しちまったんだけどよ。
 でも、今になって考えてみればよ。
 O城に行く前にオマエが言ってた、オレに何だか変な感じがあったっていうあれと、
 あん時オマエがいきなり駆け出したのって…。
 つまり、そういうことだったのか?
 それって、関係あるってことなのか?」
 半ば愕然としながら聞いた詠一クン。
「ん……。」
 しかし、杉多クンはうなずくとも、思い出してるともとれるような、そんな短く声を発したっきり。
 首をやや傾げて、目の前のテーブルの何かを見つめているばかりだった。




 ── 本日これまで!
           67話目-12〈了〉/ 67話目-13に続きます
___________________________メルマガ配信日:2010.9.25




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