2013
11.30

♪スイスイス~ダラダッタ スラスラスイスイスイぃ~なーんて思ってたら… え!?



 なにやら、11月の中旬くらいから、
 ♪スイスイス~ダラダッタ スラスラスイスイスイぃ~
って巷を騒がせているモノといえば、例のアイソン彗星ですよね(笑)


 いや、うん。
 別に、♪スイスイス~ダラダッタ スラスラスイスイスイぃ~って、巷を騒がせてるってこともないんですけどね。
 でもまぁ、彗星だけに、♪スラスラスイスイスイぃ~って吹っ飛んで歩いてるのかなーって(?)


 ってまぁ結局。アイソン彗星をブログネタにしちゃうと「あ、コイツ、巷の流行におべっか使ってるんだなー」って思われちゃうのも、どうにもこうにもシャクなんで(←なぜかシャクなんですwww)
 ♪スイスイス~ダラダッタスラスラスイスイスイぃ~のアイソン彗星って、適当に枕詞付けてるだけなんですけどね(笑)


 とか、何とか言って、アイソン彗星。
 なんでも、太陽の熱で溶けちゃったとかってウワサで!?


 なんだよー!それー!
 って(笑)
 今年はホワイトクリスマスならぬ、コメットクリスマスやー!(←なぜか関西弁www)って、大っぴらに期待してたのにー!


 ていうか。
 せっかく、アイソン彗星をブログネタに下書きしたのに消えるなよなーって(爆)

 てことで。
 下書きしたの、もったいないんで。
 かまうことないからブログ記事にしちめーって(笑)
 アイソン彗星の冥福を祈って…
 じゃなかった、消滅はウソでまた現れることを祈って!!



 実は、彗星とか、流星群とか、日食とか。
 はたまた、月とか星とか、青空とか雲とか夕焼けとか、あーいう上を見上げれば見えるモノって、基本的に大好きなんで。
 まー、「観測する」っていうほどのことではないんですけど、他の人の話を聞くかぎり、どうも私は他の人より空(上)を見てること(時間)が多いみたいです(笑)


 とか何とか言ってるくせして、彗星ってヤツは、実はヘール・ボップ彗星を一度見たっきりだったりして。

 その、ヘール・ボップ彗星。
 見た時っていうのは、結構感動しましたねー。
 だって、まさに「彗星ぇーっ!」って、姿形なんですもん!!(爆)
 ヘール・ボップ彗星

 ただ…
 その、まさに「彗星ぇーっ!」って言いたくなるような、彗星のイメージ通りのヘール・ボップ彗星だったわけですけど、実は違和感みたいなものも感じていました。

 いや。それは、あからさまに違和感っていうんではなくって。
 むしろ、意識の外で感じている「なーんか釈然としねーなー」みたいな、そんなモヤモヤしたものだったように思います。


 実は、そのアイソン彗星をブログネタにしたっていうのは、今回その時のモヤモヤが完全に払拭されたからなんです。

 そう、それは先週の日曜の朝のニュースの「アイソン彗星特集」を見ていた時。
 番組の中で、太陽と地球の位置関係の中、アイソン彗星が11月から12月にかけてどう移動していくかを説明していて。
 実は私、その太陽をまわるようにアイソン彗星が移動していく模型を見ていた時も、なーんかモヤモヤがありました。

 というのは、アイソン彗星の「尾っぽ」の向きです。
 その模型のアイソン彗星の「尾っぽ」は、太陽に向かっていく時も去っていく時も同じ方向(太陽系の外)に向いていたからです。
 だから、「なんだよー、NHK。尾っぽの向きくらい、来る時と去る時で変えろよ。どっちの軌跡が来る時で、どっちが去る時の軌跡かわかんねーじゃねーか」な~んて思いながら見てたんです。

 いや、もしかしたら。上記のことを読んだ途端、私がこのブログ記事で何が書きたいか察して、「バ~カ」ってニヤニヤしてる人(彗星オタク?)も多いんじゃないでしょうか(爆)


 そうです。それは、私がそんなNHKにイチャモンたれてる時でした。
 ちょうど、解説者が彗星の「尾っぽ(のように見える物)」についての説明をし始めたんです。

「彗星は、太陽に近づくと、
 太陽の熱と光で、彗星から発生するちりやガス等が反射して、
 尾を引いたような姿になるわけです」


 「はいぃぃーっ!?」
 いやもぉ。
 たぶん、その時の私の顔ときたら、それこそ前々々回(前々々々回くらいか?)のハレー彗星が来る時に流れた、“ハレー彗星が地球の横を通り過ぎる時に、その尾っぽで一瞬地球の空気がなくなるっていう話(デマ)”を聞いた人と同じだったと思います(笑)


「えぇーっ!
 彗星の尾っぽって、実は尾っぽじゃなかったのー!?」


 そう。彗星には付き物のあの「尾っぽ」。
 あれは、尾っぽでも何でもなかったんですね。
 言ってみれば、今頃の季節の朝にカーテンを開けた時。そこから差し込む日の光の中に埃が舞っているのが見えるのと同じようなもんだったと。

 ガーン… 


 であれば、番組で説明に使っていた模型のアイソン彗星のいわゆる「尾っぽ」の向きが、太陽に向かうときと去っていく時の向きが同じ(太陽とは逆の向き)なのもうなずけます(ていうか、当たり前ですよねwww)。


 それは、その瞬間でした。
 あのヘール・ボップ彗星を見た時に感じた違和感(というか、モヤモヤ)のワケもわかったんです。

 つまり、あの時双眼鏡の中にあったヘール・ボップ彗星の姿っていうのは、リアルで見ていたにもかかわらず、完全に静止してたんです。
 完全に静止ですから、写真を見ているのと同じわけです。

 ま、デッカイ宇宙のことですから移動しているのが確認できないまでも。でも、引いている「尾っぽ」は動くなり、キラキラ光るなり、なんかしら躍動しているように見えるんじゃないのかなーって。
 たぶん、彗星っていうのはそういう風に見えるんだって思ってたんでしょうね。

 だから私は、写真と同じく全く動きのない「まさに彗星(の写真)」そのままの形で空に浮かんでいることに違和感(モヤモヤ)を感じたってことなんでしょう。



 しっかしまぁ。
 人間ウン十年やってきて、小学生の頃は彗星の本を読んだりもして、さらには実際に彗星も見たっていうのに、彗星の「尾っぽ」が実は尾っぽでもなんでもなかったってことをやっと理解したって……

 なんかこう、ちょっとため息も出ちゃうっていうか…


 ていうか。
 彗星の「尾っぽ」が尾っぽじゃなく、しかも太陽(恒星)に近づいた時だけ見えるものだとしたら…

 じゃぁ、宇宙戦艦ヤマトに出てきた「彗星帝国」!
 アレって、いったい何なんだよ!!って(爆)


 宇宙に尾っぽを引いて飛び回るモノなんて存在しないのに、ああやって長大な尾っぽ引いて飛び回ってるって、何の意味があんだよ!
 ハッキリ言って、馬鹿じゃん!!
 暴走族が、ワンワン吹かして、旗振って、目立とう根性全開にしてんのと一緒じゃねーか!

 ていうか、思うんですけど。
 宇宙戦艦ヤマトの作者も私と同じように、彗星は「尾っぽ」引いて宇宙を飛び回ってるって、絶対勘違いしてたんだろーなーって(爆)



 とまぁ。彗星が来るとなると、長年のモヤモヤが解消しちゃったり、太陽に近づいた途端彗星自体消えちゃったり、はたまた地球の空気が一瞬なくなっちゃったりといろいろあるんだなーって(笑)



 で、まぁアイソンといえば、この曲。
 ♪アぁぁ~イソぉぉンって(爆)






 そういえば、この期に及んで思い出したんですけど…
 彗星っていうと思い出すのは……

 そう、あれ…
 あの方のこと…
 赤い彗星……

 つまり、彗星っていうのは、太陽から遠ざかる時は進行方向の前に、あのいわゆる「尾っぽ」がくっつくわけですから……

 そう考えると、「赤い彗星」って名前って……
 カッコワルっ!!(爆)




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2013
11.26

いつの間にやら、もう一ヶ月……



  かくして、時は流れ往く…
  ってことなのかなぁ…

  ことなんだろうねぇ…… 













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2013
11.26

♪お経をたっぷ~り

Category: R&R

 先週末は法事があって。
 久しぶりに東京にある菩提寺に行って、お経をたっぷり堪能してきちゃいました。


はっぱ1


 やっぱり、お経はライブ!
 それも、寺の本堂で聴くのが最高なんだなーって。
 いやー、あらためて実感しちゃいましたねー。

 お坊さんの声がよく響くっていうのももちろんあるんですけど、鉦や太鼓の音の迫力が全然違うんですよね。
 鳴った瞬間、ピクっとくるっていうか、思わず背筋を正しちゃうみたいな、なんだかそんな感じがあって。

 そういえば、お坊さんの方もいろいろ芸があるみたいで(芸とは言わないのか?笑)
 今回、お経を始める前に、仏壇(ていうの?ご本尊がある壇の辺り)の向こうで、やたら高音でピキピキ鳴る鉦を何度も叩いたの、あれなんかは今まで記憶ないんですけど、ホント凄かったですねー。
 もう一回一回のピキ!ピキ!って音が、そのたんび前から来ては脳天を斜め後ろに貫いていく感じなんですよ。
 いやもぉ変な話、うーん、カッコイイぃぃぃ~って(笑)

 途中で叩きだした太鼓も、そんな大きな太鼓じゃないのに、♪どんん♪どんんって、音の最後が跳ねるって言ったらいいのかなー。
 とにかく、迫力があるんです。
 そう。太鼓といえば、今回は木魚の伴奏(?)はなかったんですけど、あれも生で聴くと、♪ぼんんん♪ぼんんんって感じで、いわゆる♪ぽくぽくみたいな木魚のイメージとは全然違います。

 そうそう。
 あと、今回は最後の方でやったシンバルみたいな鉦の音。
 叩くんでなく、摺り合わせるようにして♪しゃりしゃりしゃりしゃり~ってノイズ音を出すんですけど、それがまった無茶苦茶カッコよくって。

 ただ、「あれ?」って思ったのはお坊さんの声。
 菩提寺のお坊さんは、お経を唱える時の声がよくって。
 私がお経を聴くのが好きになったきっかけだったんですけど、今回はいまひとつ伸びが短くなったような。
 「こぶし」にも通じる、のどの奥で転がすようなあのビブラートはいつも通り聴けたんですけどねー。


 ま、そんなこんなで、全体で40分強くらいだったか?
 いやもぉホント、たんま~り堪能しちゃいました。
 お経のあのカッコよさっていうのは、絶対プログレに匹敵しますね(笑)





     冒頭の風の音は、やっぱりピンクフロイドのパクリですかね~(笑)






 菩提寺は真言宗なんですけど、真言宗といえば、空海こと弘法大師ですよね。
 でも、空海って、前はどっちかというとキライだったんです。
 あっちゃこっちゃで奇跡を起こしたりとか、やたらウルトラスーパーな存在で、なんだか胡散臭いヤツだなぁーって。
 ていうか、そもそも醜悪極まりない平安律令体制を支えた張本人の一人ですよね(爆)

 でも、何年前だったか。
 貸した本を最澄が返さなかったことで、空海が怒っちゃって。
 それが原因で、真言宗と天台宗はずっとケンカしてたんだけど、この度やっと仲直りしたってニュースを見た時は、「あー、かの空海も普通にそういうことで怒るんだなぁ…」って。
 なんだか、ミョーに親しみが湧いちゃったんです(笑)

 そういえば空海の顔って、どこかがらっぱちな感じがあって、(最澄の顔と違って)なんとなーく庶民的だなーっていうのは、小学生の頃、教科書を見て思ったよなーって。
 空海は日本全国(それどころか唐の国まで)放浪の旅をしたらしいですけど、そういう意味じゃフーテンの寅さんみたいな人だったのかもしれませんね(笑)

 案外と日本全国、あちらこちらでマドンナと浮名を流してたりして…
 ま、「それを言っちゃぁお終めぇーよ」てかぁ!(爆)





   お経にも、そろそそニューウェーブがきてもいいんじゃないのかなーって(笑)




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2013
11.25

金の無ぇーのは、首の無ぇーのにも劣るって言うけど……

Category: R&R


 「金の無ぇーのは、首の無ぇーのにも劣るって言うけど……」っていうのは、落語『死神』の冒頭、主人公の男がつぶやくセリフですね。
 家庭にお金が無くなったんだか、金策に困ったんだか忘れましたけど、主人公の男は奥さん(おかみさん)に「男だったらお金稼いでおいで」って家を叩き出されて。
 「そんなこと言っても…」と、途方に暮れて町をとぼとぼ歩いている時につぶやくセリフがこれなんですね。

 男は、いっそ死んじゃおうかって思うんですけど、そこを(死ぬのを)死神に止められると(笑)
 でもって、その死神の勧めで、インチキ医者になって大儲けするわけです。


 ま、そんなわけで。
 私は、その「金の無ぇーのは、首の無ぇーのにも劣るって言うけど……」っていうセリフが大好きでして。
 もぉ座右の銘ってくらい、よくつぶやいてるんですけど、でも件のしーさん(男が死神におべっか使う時の呼び方)は声をかけてくれないんですよねぇ…。

 で、まぁ。
 首の無いのなんて言葉が出てくるくらいですから、そこは当然三津田信三の『首無しの如き祟るもの』の感想です(笑)


首無の如き祟るもの (ミステリー・リーグ)首無の如き祟るもの (ミステリー・リーグ)
(2007/04)
三津田 信三

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 ちなみに。
 『首無し…』は文庫の古本が高いんで、安く買えるハードカバーの方を読みました。
 文庫版は取り図が付け加わってるとかで、本当はそっちを読んだ方がいいんでしょうけどねぇ…。



 で、まぁ。
 今回のミっちゃんときたら…… ←ちょっと気安いか?
 いやもぉ、スゲぇーのなんのって。
 最後は「そうくるかー!」って、360度くらい仰け反っちゃったと(?)


 で、そもそも舞台が「奥多摩」っていうのがいいですよね。
 山やってた私としては、とっても馴染みがある場所で(笑)

 そういえば、奥多摩で首無しというと、有名な「首無しライダー」の怪談話が思い出されるわけで。
 また、本の中で出てくる、豊臣軍に攻められて死ぬことになる淡姫の伝説は、やはり怪談話で有名な近くの八王子城の戦いを思わせたり。
 探偵役(?)の刀城言耶ばりに怪異好きな三津田信三としては、その辺り、たぶん相当創作のヒントにしてるんでしょうねー(笑)


 で、まぁあらすじとしては、ぶっちゃけ、奥多摩のなんとかって村の一番の有力者の後継者をめぐる(後継者の周囲で起こるって言った方が適当か?)首無し殺人事件というか。 ←ざっくりすぎ(笑)

 首無し殺人事件は、村の有力者の後継者ということになってる一守長寿郎って人が、ティーンエイジャーの頃と成人してからの2回起こると。
 その2つの事件とその後を、その有力者の家の使用人(?)である斧高(よきたか←キラキラネームか!)の視点と、村の駐在である高屋敷巡査の視点で話が進んでいくわけです。
 ただし、視点は確かにその2人なんだけど、でも書いている人(お話を進めている人)は高屋敷巡査の奥さん(?)だと。

 ま、ある程度ミステリ小説を読んだ人ならすぐにピンとくるように。
 首無し殺人といえば、つまり有名な「顔のない死体」トリックなわけで。
 死んだのは誰?殺したのは誰?の謎(トリック)と、なぜ首を切ったのか?という謎。
 さらに、それら全体を覆っている(俯瞰していると言った方がより適当なのかな?)トリックが層になった結果、読者は思わず最後に「うほっ…」と言ってしまうと(笑)


 いや、これはホント、マジ凄いです。
 まさに、圧巻のドンデン返し!
 (おいおい。そう来たかーっ!って)

 そういえば、三津田信三のミステリー小説を言い表す言葉として、「ホラーとミステリーの融合」というのがありますけど。
 この『首無しの如き…』のラストは、圧巻のドンデン返しだけでなく、まさに絶妙にホラーとミステリーが混ざり合っています。
 特に今回は、ホラーの溶け込み具合が絶妙!
 あの、直接的な場面や描写ではなく、ラストでほのかに漂わして、読者に「うほっ…」って気にさせる流れ!
 いっやぁー、これはホント上質のホラー小説だなぁーって(笑)

 いや、上質のホラー小説なんて書いちゃうと、途端に(ホラー嫌いの)ミステリー小説ファンが敬遠しちゃいそうですけど(爆)
 いえいえ、そんなことはありません。
 この『首無しの如き…』は、むしろ「ミステリー小説」が好きな人ほど(それも、好きであれば好きであるほど)楽しめる「ミステリー小説」だと思います。
 ミステリー小説ファンなら、読んで損は絶対ないと思いますねー。
 ただし、アメリカ系ミステリ(?)とはそもそもテイストが違う…、というか、アメリカ系ミステリファンは、タイトルを見た時点で手を出さないか(笑)





 って、わけで。
 以下はネタバレ全開、イチャモン全開(爆)の感想。

 いや、イチャモンって言うか、いや、このラストはホント凄かったですね。
 そう。「スゴイ」じゃなく、「凄い」って言った方がピッタリくるような。
 そういえば、読み終わった後。
 「そうか。これって、刀城言耶シリーズじゃなかったんだ…」って気づかされた時は、なんだかちょっと呆気にとられちゃったくらい(笑)


 とはいえ、呆気にとられたところはほかにもあって。
 細かいようですけど、最初の首無し殺人で、読者の誰もが伏線と思う鈴江の存在をアッサリ捨てちゃうところ(ミスリードさせるところ)は、まず感心しましたね。
 実は、かく言う私も、鈴江の存在を伏線としか読めなくって。
 そもそも、その時点で完敗でしたねー(笑)

 ていうか、金田一さんの映画に付き物の、何かと言うと「よし、わかった!犯人は○○だ!」って早合点するヒゲの警部さんがいますけど。
 この『首無しの如き…』では私、ほとんどその警部さん状態でした(爆)


 それと、何より「えっ、そうくるんだー!」って思わせたのは、長寿郎と妃女子の入れ繰りと長寿郎の正体。
 ま、基本的に私はトリックがどうのこうのっていう風にミステリー小説を読む方ではないんですけど、これは完全にシャッポ脱ぎました(笑)
 ていうか、このトリックを見破れる読者ってどのくらいいるんでしょう?
 ていうか(“ていうか”が重なりますけどwww)、このトリックを見破れるような人は、逆にミステリー小説なんてつまんなくて読まないんじゃないかって思うんですけど…(笑)


 ハッキリ言って。そのトリックが「うわっ!」って感じだっただけに、その後の毬子の入れ替わりのトリックが大したことないように感じちゃうんですよねー。
(ただ、毬子と蘭子の入れ替わりを、よりにもよって結婚のライバルとなった女2人が見破れないってことがあるのかなぁって気がするかなー)


 そう。『首無しの如き…』を読んで。
 「凄いのは凄いんだけど、でも、うーん…」ってなっちゃうのはそこなんでしょうね。
 確かに凄いのは凄い。
 ただ、あまりにトリックの上にトリック、さらにその上にトリックすぎちゃうっていうのかなぁ…。
 正直、ワン・トリックで最初から最後までいっちゃった『厭魅…』の方が私は好みだったかなーって(笑)


 いや。最後の「え?斧高…!?」って展開は、結構好きなんですよ。
 その斧高が謎の失踪をとげていて、その後高屋敷巡査の奥さんと入れ替わった毬子(?)が恐らく殺されたんであろう新聞記事の辺りとか、読者に「首無しの伝説」の影をちらつかせるとこなんかはホント好きです。
 また、迷宮入りになった原因の高飛車な刑事が謎の首切り事件を起こしちゃうとこなんかも、いい雰囲気だしてます。
(みっちゃんさぁ、ホラーもこんな感じに書いてくんないかなぁ…笑)


 つまり、私が「うーん…」ってなっちゃったのは、その前の展開なんでしょうね。
 事件そのものが迷宮入りになって。
 その後、高屋敷巡査の奥さんの小説の中に、読者の推理とか、さらに刀城言耶を名のる者がやってきて自らの推理を明かすというストーリー展開が始まっちゃった時、ちょっとしらけちゃったんです。

 いや、先にも書きましたように、その後の「え…、斧高?」のドンデン返しはもちろん大好きですから。
 それを思えば、そのストーリー展開でいい…、ていうか、その流れでしょうがないんでしょうけどねぇ…(笑)

 でも、もう一工夫あってもよかったんじゃないのかなーって(笑)
 なんていうんですかねー。気持ちよく聞いていた音楽のメロディーが盛り上がって、盛り上がって、その頂点のすぐ後に突然音がブチ切られたみたいっていうか。
 いや、切ったんなら切ったでいいから、その前の部分と後の部分がちゃんと「対」に見えるようなストーリーで展開してもよかったんじゃないかなーって。

 うん。そう、そういう意味じゃ本を手に取った時…。
 「(本の厚みが)意外に薄いんだー」っていうのが、第一印象だったんです。

 ま、これは、あくまで私の好みになるんでしょうけど。
 いっそ、迷宮入りまでで上巻として。
 その後は、真相編として毬子の軌跡を追う下巻みたいな感じで、高屋敷巡査の奥さん(?)と、新たな登場人物(それこそ、毬子を慕う弟とか)の視点で話を進めたら面白かったんじゃないのかなーって(笑)

 ただまぁそこまでいっちゃうと、ミステリー小説に何を求めるか?ってことなのかもしれませんね(笑)
 私みたいな、トリックよりストーリーの面白さ(物語性)を求める人は、冒頭から迷宮入りまでとその後のボリュームの差に居心地の悪さを感じるけど。
 トリック重視のミステリファンは、そのトリックとドンデン返しの凄さと鮮やかさに魅力を感じるってことなんでしょうね。
(アマゾンのレビューを見ると、トリック派と思われる○○花さんが絶賛してますもんね ←あの方って好みがハッキリしてるんで、良くも悪くも結構参考にしてるんです)


 そういえば、先々週だったかに『テイキング・ライブス』って映画がTVでやってたのを録画しておいて見たんですけど。
 『首無しの如き…』のラスト(の一歩手前)の展開がイマイチ好きになれないのは、もしかしたらそれを見たのもあるのかもしれません。

 つまり、この『首無しの如き…』も、まさにテイキング・ライブなお話なわけですよね。
 で、映画の『テイキング・ライブス』の方は、途中まで楽しく見てたんですけど、ラストのパートでどっとしらけちゃったんです。
 あのラストのパートのドンデン返しって、私には映画の話題づくりのために、つまりドンデン返しために全体のストーリーを作ったとしか思えなかったんです。


 ま、だからって、この『首無しの如き…』もそうだとは全然思わないんですけどねー。

 というのは。
 三津田信三といえば、最近では日本の代表的なミステリー小説作家みたくなってますけど。
 実は、意外とアンチ・ミステリー小説な人なんじゃないかなーって気がしてしょうがないんですよねー(爆)

 ていうか、本籍地は元々「ホラー」の人ですよね。
 で、まぁ。
 ホラー小説が好きな人なら、たぶん一度くらいは経験あると思うんですけど。
 これは面白いと思ったホラー小説を、本が好きな知り合いに貸して。
 その本好きな知り合い(ま、現代で本好きっていうのは大概ミステリー好きなわけで)が本を返してくれる時に言うセリフっていうのが…
「うん。面白かった。
 でも、これって結局何でもアリのお話なんだよねー。」って(爆)

 そう。「これって何でもアリのお話」って思わせてしまうのは、現代のホラー作家や怪談作家が、その“何でもアリ”のストーリー展開に甘えて本を書いているせいだっていうのは、ホラー・怪談ファンは言われるまでもなくわかっているわけです(爆)
 でも、そんな“何でもアリ”のホラー小説・怪談話の中でも、これはまぁマトモって思えたからこそ、知り合いにその本を貸したわけですよ。
 なのに、「何でもアリなんだよね」と、他のアホ馬鹿ホラーやアホ馬鹿怪談本と一緒くたにされちゃう、そのなんとも言えない悲しさたるや……

 そうなんです。
 本籍地がホラーである三津田信三も、もしかしたら、気に入ったホラー小説を知り合いに貸して、そういう悲しい思いをしたことがあるんじゃないのかなーって(爆)

 つまり、三津田信三のミステリー小説の特徴である、探偵役の刀城言耶が何度も自らの推理を覆すのは。
 既存のミステリー小説に出てくる探偵がズバリと正解の推理を明かすことに、「それって、リアリティに欠けない?必ず一発で正解っていうのはあり得ないと思うけどなー」って皮肉ってるような気がしてしょうがないんですよねー(笑)

 だって、よくよく考えればそうですよね。
 どんな探偵だって、一発では真相に迫れないと思うんです。
 ま、もちろんそこはプロですから、閃きはありつつも。
 でも、それをどの段階でするかはともかく、関係者一人一人を「コイツは?」「この女は?」みたいに推理しているはずです。
 ていうか、それをしないで「あなたが犯人だ」って言わないでほしいですよね(爆)

 そういえば、確か横溝正史ブームの時に、金田一さんの推理の間違いを指摘する本があったような記憶がありますけど。
 つまり、そのミステリー小説で明かされた真相(作者の解釈)とは別の真相(他人が考える解釈)って、あってもおかしくないって思うんですよねー。

 そうそう、それともう一つ。
 『厭魅…』の解説では、解説者はその(「厭魅…」の)舞台設定を「シュールでさえある」と書いてましたけど。
 つまり、あのいかにもな舞台設定っていうのは、(もちろん三津田信三の趣味は大いにありつつも)もしかしたら、既存のミステリー小説をパロってる部分もあるんじゃないのかなーって(笑)



 とまぁそんなわけで。
 『厭魅…』に続いて『首無し…』もとっても楽しめたんで、次は何を読もうかなーって(笑)
 ただまぁ、例の落語『死神』の冒頭のセリフじゃないですけど。
 “金が無ぇーのは首の無ぇーのにも劣る”私としては(爆)、次に読む三津田信三は、まぁたぶんアレになるんだろうなーって(嗤)

 でも、みかんさん。
 三津田信三といえば、やっぱりドンデン返しですもんね。
 安い古本をふっと見つけて、そっちを読んじゃうなんてことだってあるだろうし……

 いや、それどころか。
 『首無しの如く…』で刀城言耶を名のった人物が○○だったように、実は私が三津田信三本人だったなんてこともあったりして…… ←ナイナイ(爆)



追記
 『テイキング・ライブス』っていえば、日本にも「テイキング・ライブ」をテーマにした宮部みゆきの『火車』がありましたよね。

 そんな風に、いわゆる「因習に染まった村」でなく、街で活躍する刀城言耶のお話も読んでみたいなー。
 ていうか、都市伝説かなんかをテーマにして、すでに構想してそうな気もしますけどね(笑)








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2013
11.24

百ポ:15話目-4

Category: 怪談話


 百ポ:15話目-1はこちら
 http://kaidansweets.blog.fc2.com/blog-entry-288.html


 前にも言ったと思うけど、姉の入院っていうのは、決められていたことではなかった。
 あくまで医者から「気分転換と療養を兼ねてどうだろう?」的な、そんな話だったように思う。

 ただ、現在になってみると。
 それって本当にそうだったんだろうか?って穿った見方をしてしまうというのもあるわけで。

 というのは、なぜその時期だったんだろう?というのがあるからだ。
 確かに学校は夏休みだし、また学校の行事である8月初めの林間学校が終わった後で差し障りがないというのはあるんだけど…。
 でも、それこそ姉が毎夜悲鳴のような声をあげていた時でなく、なぜそういったことが落ち着いた頃に、しかも「したらどうだろう?」という形だったのか?

 これは現在になって、ふと思ったことなんだけど…。
 もしかしたら、あの入院っていうのは医者が勧めたんじゃなくって。
 父と母は、姉をその頃に入院させたいって思っていたんじゃないかって…。

 つまり、姉が入院を勧められていた時期っていうのは、まさにお盆の時期にあたるのだ。
 長期の入院をしている人が、正月やお盆に一時帰宅するっていうのは時々聞く話だけれど。でも、その反対にお盆の時期だけ入院させるっていうのはあまり聞かない。
 なのに、わざわざその時期だったというのは、もしかしたら父と母はお盆の時期に、姉は家にいない方がいいと考えたのではないだろうか?

 仏壇を拝むことなんてほとんどなかったっていうことをみてもわかるように。
 わたしの父と母が、お盆は先祖の霊が家に帰ってくる時だから、姉が金縛りを起こすかもしれないみたいには考えていなかったと思う。
 ただ、そういう意味じゃ父と母っていうのは、物事をとっても合理的に考える──効率的に考えると言ったほうがわかりやすいか?──人たちだったから。
 「霊云々」とかそういうことではなく、お盆には先祖の霊が帰ってくるという「信仰」が姉の心に影響を与えるかもしれないと考えて。
 なら、その時期は家でなく病院にいた方が、むしろ姉のためになると考えたのではないかって気がしてくるのだ。

 また、これはそれよりずっと嫌な考えだけれど。
 お盆には親戚が泊まりにくるから、姉がそういうことになってるのを知られたくないっていうのもあったのかもしれない…。

 ただ、そう考えつつも、やっぱり医者の方がその時期の入院を勧めたのかもしれないって気もしてくる。
 つまり、医者からすれば、何もそういうい症状の患者っていうのは姉一人ではないわけだ。
 もしかしたら、経験則的に起こる事のある程度の予想はついていたってこともあるんじゃないかって気もするのだ。
 つまり、お盆みたいなそういう時期っていうのは、姉のような患者の心に影響をおよぼす可能性があるわけだから、入院してもらった方が医者としても安心みたいな…。

 うーん…、しかし。
 でも、だとしたら…。
 うーん……。
 あの医者って、その時点でその先で起こる事まで──そう。それはわたし自身に──もしかしてわかっていたりってこともあるのだろうか?
 そんなことを考えていたら。わたしは、ちょっと変なくらいドキドキしてしまった。
 なんだか、今更……



 姉がいなかったとはいえ、お盆は叔母夫婦や従兄弟が来て、ウチはとってもにぎやかだった(叔母たちには、姉はバレー部の合宿でずっと出かけているということにしていた)。
 叔母たち2人──父の姉妹──っていうのは、子供のわたしから見ても同じ兄弟でこんなに差があるのかと思うくらい、父とは大違いの性格をしていて。
 とにかく2人ともあっけらかんと大らかで明るいので、わたしは大好きだった。
 また、従兄弟たちは年齢が近いこともあり仲がよく、そんなわけでわたしは叔母たちが集まるお盆やお正月等が大好きだった。


 先にやってきたのは、下の叔母(父の妹)一家だった。
 下の叔母は子供が多くて、しかもまだ小さい子もいるので、叔母一家が玄関に入ってきた途端、家中もう大騒ぎになった。
 祖母はといえば、久しぶりに見る孫たちの顔を見て、いつもの何十倍もニコニコ元気だし。
 父は父で、子供の頃は妹である叔母を可愛がっていたらしく──正直、それって想像し難い(笑)──やっぱり叔母の子供が可愛いらしくって。
 いつもなら機嫌がいい時ですら、しかめっ面のことが多いくせに、今日はそれがまるで嘘のように、普段ならおおよそ言わないようなくっだらない冗談なんか言ってはしゃいでいた。
 そういう意味じゃ、母はこういう時っていうのは、みんなからなんだかちょっと浮いてしまったようになってしまうのだけれど。
 とはいえ、そんな時でもいつも通り変わらないのが、母らしいところなのかなーとも思う。

「B子ちゃん、大きくなったわよねー。
 えっ、何センチ?
 ウチのJ子より全っ然大っきいわよねー。」
「いやさー。ウチはB子もそうなんだけど、A実も同じでさ。
 なりばっか大きくってさ。
 やっぱり女の子はっていうのはさ、
 J子ちゃんみたく素直で可愛気がなきゃなぁー。」
「なに言ってんのよぉー。
 B子ちゃんも、A実ちゃんもこんないい子なのに。ねぇ?
 そもそもさ、素直で可愛気っていったら、兄貴が一番ないじゃないのよぉー。」
「いやお前っ。
 お義兄さんに可愛気があったら、逆に薄っ気味悪い…。」
「ま、そっか。ハハハ…。」
「そうなのよー。あたしもずっと思ってたんだけどね。
 ほんっと、この子っていうのはさ。
 小ちゃな頃からさ、いつでも変に分別くさい顔しててさ。
 子供らしい可愛さっていうのが全っ然な子だったよね。ハハハ…。」
「いいんだよ。男なんだから可愛気なんて。ハハハ…。」

 そんな、叔母一家が来るなり玄関先で始まった大騒ぎに、わたしも一緒になってゲラゲラ笑っていた時だった。
 ふいに、母がわたしを振り向かせたかと思うと、耳元にあの大きな目を近づけてきて小さな声で言った。
「B子、急いで仏壇の扉を開けてきてくれない。
 鍵は、食器棚の一番左側の引き出しを開けたら、すぐわかるから。」
「え、鍵……!?
 あっ…。
 う、うん。わかった。
 うん。食器棚の一番左ね?」
「そう。食器棚の一番左の引き出しね。
 早く行ってきて!」
「うん。」
「あ、そう。扉開けたら、鍵はすぐ元に戻しておいてよ。
 あんたが持ってたら、また無くすから。」
「うんん…。」


 いや、もうその頃は仏壇の扉に鍵がかかっていたことなんて、わたしはすっかり忘れていた。
 しかし、これは現在になって思うのだけれど。
 その時も仏壇の扉に鍵がかかっていたということは、祖母は毎朝毎夕母から鍵を借りては仏壇を拝んで、そして拝んだ後は母に鍵を返していたってことになるわけだ。
 母のことは、あまり批判っぽく言いたくないのだけれど、でもそれって、祖母が可哀相な気がして。
 今更だけど、もう少しなんとかしようがなかったのかなぁって思う。


 そんなこんなで始まったお盆だったが、午後には父の姉にあたる叔母一家もやってきた。
 家の中は、午前中でもすでに充分にぎやかだったのに、午後からは、わたしの家じゃないみたいな大騒ぎになった。
 それこそ、いつもなら閉まったままの仏壇の扉もずっと開かれたままという、(わたしの家では)普段にない状態で。
 暗くなってからは、みんなで提灯をぶら下げて、先祖の霊をお迎えにお墓に行ったり。
 帰ってくれば帰ってきたで、叔父さん2人がわたしや従兄弟たちを集めて怖い話をしてくれて、みんなでキャーキャー騒いだりもした。
 次の日には、片道1時間くらいの所にある高原にみんなしてドライブにも行ったし。
 それ以外にも、従兄弟たちと近くの川に遊びに行ったり、虫取りしたり。
 帰ってきたら、みんなで縁側に並んで座ってスイカを食べたりと。
 叔母一家が来ていたそのお盆の4日間っていうのは、なんだかいかにも小学生の夏休みって感じだったなーって。
 現在思い返してみても、あの時っていうのはホントに楽しかったなって、つくづく思ってしまう。


 ただ、いつものことながら。
 その4日間が楽しかっただけに、従兄弟たちが帰るその日は寂しくってしょうがないわけで。
 ううん。寂しいのは従兄弟たちみんな一緒なのだろう。
 これもいつものことなんだけれど、なんだか従兄弟たち誰もがみんな、誰にも優しくなって。
 それゆえに、なおさら別れるのが辛くなるみたいな……

 子供っていうのは…。そう、特に現代の子供(それは、戦後や高度成長期以降、現在までの子供って意味だ)っていうのは、実はクラス替えや転校等で「別れ」ってことが意外なくらい日常的にあるせいか。
 案外、「別れ」ってことに慣れているような面があるんじゃないかって気がするんだけれど…。
 わたしだって、従兄弟たちとの別れを、それまでにも何度も経験していたはずなのに(それこそ、その年の正月だって経験したはずだ)。
 なのに、その夏に限って、従兄弟たちが帰る時になぜかわたしはとてつもなく寂しい気持ちに襲われ大泣きしてしまった。

 あの時っていうのは、もうとにかくもう涙が止まらなくって。
 従兄弟たちや叔母・叔父たちが、しきりと慰めてくれるんだけれど。
 そのたんびそれに何か言おうとして、さらに嗚咽が止まらなくって、もっと深い悲しみに潜りこんでいってしまうみたいな……

 終いには、そこにいた従兄弟たちはもとより、叔父・叔母、父や母、祖母、誰もがシーンと黙っちゃって。
 わたしにつられて泣き出しちゃった従兄弟をのぞけば、大人は誰もがみんな、その顔に笑みこそ浮かべているんだけれど。
 でも、その笑みは、なんだかとっても寂しそうな、そんな感じで。
「今よー、俺…。
 B子ちゃんの寂しそうな顔見てたらよ、
 なんだか、とっても悪いことしてるんじゃないかって…。
 そんな気がしてきちまってよ…。」
「そうよぉー、B子ちゃん。
 こんな寂しい想いするくらいなら、
 あたし、もぉここ来たくなくなっちゃうじゃないのよぉー。」
 そんなことを言いながら、やっとクルマに乗り込んだ叔父叔母、そして、従兄弟。
 その、みんなの背中…。
 それは、わたし、現在でもその全部を鮮明に憶えている。



 従兄弟や叔母たちが帰った後。
 わたしは一人、ずっと仏壇のある部屋にいた。
 それは、やっと落ち着いたかと思ったら、その4日間の従兄弟たちとのやりとりを思い出してしまって。
 また、哀しくって、寂しくって、そして何よりその時に戻りたくても戻れないもどかしい感情がしくしくとこみ上げてくる。
 それも、やっと落ち着いてきたかと思ったら、またもやこみあげてくるそれに嗚咽が止まらなくなってしまう…。
 その夕方。わたしは仏壇のある部屋で、そんなことをずっと繰り返していた。

 そんなわたしが、ふと見上げた視線の先に…。
 それは、扉が閉じられた仏壇。
 従兄弟や叔母たちが帰ったのはついさっきだというのに、そこにはやっぱり鍵がぶら下がっていた。
「……。」
 その時わたしは、それをしばらく見つめていたのだが…。
「あぁそっか…。
 いつもにまた戻ったんだな…」って。
 変な話だけれど、それに気がついた途端、わたしは泣くのをやめていた。


 そんなわたしの寂しさって、あの時のわたしの心にどのくらいの影響を与えていたのだろう。
 そのことを考えると、人の感情や思いっていうのは、実はとっても怖いものでもあるのだなぁって。
 それは、ちょっと戦慄に近いものがあるような…。
 ふと、そんなものを、こんな現在になっても思ってしまう。



 それは、叔母たちが帰った次の日の朝だった。
 ううん。わたしがそれがあった日を、次の日の朝だったと言ってしまっては、それはちょっと変なのだろう。
 だって、わたしは眠っていて、それもこれも全て夢うつつだったからだ。
 ただ、現実にそれがあったのは次の日の朝なわけで、こうしてお話しする以上、それは次の日の朝と言うしかないのだろう。

 その時、わたしは深い夢の中を、とぼとぼと歩いていた。
 そこは、暗くって、どこだかまったくわからない。
 どこから歩き出して、どこへ向かおうとしているのかも、なんで歩いているのかも、全然わからなかった。
 とにかく。気がついた時には歩いていた。
 ただ…
 こんなことって、前にもあったような気がして…
 夢うつつながらに、なんでそんな気がするんだろう?って、ずっと思っていた。
 そう。それは、そんな時だった。

「B、B子っ…。あ、あんた…。」
 わたしを呼ぶ母の声に、「あれ?こんな所にお母さんが!」って振り返ったら、目の前がパぁーっと。
 とにかく、目の前がいきなり真っ白に眩しくって、何も見えない。
 そんな中、聞こえてくるのは母の声。
「ちょっと…。
 ど、どういうこと、それって…。
 えっ。つまり、B子。あんただったってことなの?」
「えっ、なに…。」
 その眩しさにやっと慣れたわたしが、辺りを見回せば……
 そこは、あの仏壇のある部屋。
 そして、いつもの大きな目より、さらに目が大きくなった母の顔…。
「えぇっ…。」
「起きたら、台所の食器棚の引き出しが開けっ放しになってるから…。」
 そんなことを言っている母の指が指しているそこは、なぜかわたしの左手。
 ううん。それは本当に何がなんだかわからない。
 なんでわたしは、マッチなんか持って…。
「…!?」
 そして。
 何気なく振り返ったそこには、扉が開いた仏壇が。
 そこに揺らめいていたのは、2つのロウソクの炎……



 なんでも、その後。
 母はわたしを叩こうと、近寄ろうとして。
 でも、わたしはそんな母にカーッと目を剥いて。
 その、まるで威嚇でもしているかのような、見たこともないわたしの顔に、母がはっとしたその一瞬。
 わたしは、もうその場にパタリと倒れていたらしい。
 駆け寄った母が、慌ててわたしを起こしてみても。わたしは体全体がだらーんと力のない状態。
 もちろん、意識も全くない状態だったとか。

 その後。
 救急車で病院に運ばれたわたしは、丸々2日間意識不明だったんだということだ。

 その2日間を含め、わたしは1週間を病院で過ごして…。
 わたしが家に戻った時には、姉ももう家に戻っていた。
 そしてそれは、なんだか不思議なくらいそれだけだった。



 やがて、また学校に行く季節になって。
 ううん。相変わらず、わたしの家では誰も朝の挨拶をしなかったし、「いってらっしゃい」や「いってきます」も一切聞くことはなかったけれど。
 ただ、わたしの家の中の空気には、それまでと違う居心地のよい柔らかさみたいなものがあった。
 ただ、それもやっぱり…
 なんだか不思議なくらいに、それだけのことだった。


 学校に行くようになってからも、わたしは病院へ週に1回の割合で通っていた。
 その病院へはやっぱり姉も通っていたのだが、医者から「もう来なくても大丈夫」と言われたのは姉の方が全然早かった。
 ただ、姉は自分が病院に行かなくてもよくなってからも、わたしが病院に行く時は必ず付き添ってくれた(バレー部の練習があったというのに…)。


 そんな病院の行き帰り、わたしは姉といろんなことを話した。
 うん。それは、今までの話とは全然関係のないこと。
 学校であったこととか、テレビのこととか、あと、それから、クラスで気になる男の子のこととかも。
 ただ、そうやって姉と話していて、ふと思ったのは…。
 そういえばわたしと姉って、今までこんな風にいろいろ話したことがなかったんじゃないかって…。
 そしてそれは、姉もやっぱりそんな気がするらしくって…。
 思い返してみてもそんなことはないはずなのに、それってなんだかとっても不思議だ。

 そう。不思議といえば…
 あの、わたし自身の一連の出来事の中で、姉がああいう体験をしてしまったのってなぜだったんだろう……




15話目終わり。フっ!
                  ──── 第15話目「家族の出来事」メルマガ配信日:13.1.18
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2013
11.16

『震える牛』で、震えちゃった私(爆) ←いや、笑いごとじゃない!

Category: R&R

 いやー、『震える牛』。
 って言われたって、知らない人は全然知らないわけで、つまりはまぁ相場英雄って人の書いたミステリー小説(警察小説?)です。


震える牛 (小学館文庫)震える牛 (小学館文庫)
(2013/05/08)
相場 英雄

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 で、まぁその『震える牛』。
 ハードカバーが出た時から、ずっと読みたいなーって思っていて。
 というのも、そこに描かれるテーマが、現在の日本の食品産業(製造から流通まで)を含めた裏の部分ともう一つ、企業進出によって引き起こされる地方の町の崩壊だと知ったからなんです。


 流通を含めた食品業界の闇の部分については、前々から関心はあったんです。
 というのも、食事というのは毎日ほぼ3回食べるわけで、そこに闇の部分があるとなれば、どうしたって興味を持たざるを得ないわけで。
 それこそ、コンビニの食品部門の製品開発担当者は新商品の試食を一口くらいしか食べないようにしているみたいな話は、間接的にはよく耳に入ってきますもんね。
 ただ、それ以上に、流通系の企業が進出することで地方の町が崩壊していくというウワサ(?)には興味があったんです。


 で、まぁ『震える牛』。
 最近、やっと文庫が古本で安くなってきたんで、つい買っちゃったと。
 いや、例の三津田信三の次、すでに買ってあったんですけどねー。
 でもまぁここら辺りで違うテイストのを読んだ方が、そっちはそっちでまた楽しく読めるかなーって(笑)

 とかなんとか言って、宮部みゆきの『初ものがたり』の完本版も安くなってたんで、ついでに買っちゃったり。
 ま、それは短編だから、三津田信三の次と平行しながら楽しめるかなーなんて。
 ま、現代人にありがちな、いわゆる買い物衝動を抑えるために買い物をする時の言い訳ですね(爆)


 そうそう、買い物衝動を抑えるための買い物をする時の言い訳っていえば、“自分へのご褒美”っていうの と、“一生モノ”っていうのがありますけど。
 ま、私としては、“自分へのご褒美”っていう方だけは、買うかどうか迷った時の「おまじない」として、時々使わせてもらってますねー(笑)
(“一生モノ”の方は、そんな高級品買えないんで、使う機会がないとwww)







 で、まぁ『震える牛』です。
 例によって、まー私の感想なわけで、読もうかどうしようか迷ってる人の参考になりそうなことは全然書きません(笑)
 ただ、この本はマジ読んで欲しいかなーって。
 特に、大都市圏以外に住んでいる人には絶対読んで欲しいなーって思います(いや、大都市圏に住んでる人だって、絶対読んで欲しいと思います)。


 とはいえ、この『震える牛』。
 ぶっちゃけ、ミステリー小説としてはイマイチかなーって(爆)

 ただ、そのイマイチは、あくまでミステリー小説(つまり、フィクション)として評価であって。
 これを、「ノンフィクション」として読んじゃうと、これまった無っ茶苦茶面白くなってくるところが、ミョーに面白いっていうか(←?)
 いや、『震える牛』は、間違いなく「フィクション」ですよ。
 でも、「ノンフィクション」としても十分に読めるんですねー(いや。読めるような気がすると言った方がいいのかな?)。


 ま、私は本のレビューっていうのは、基本的に苦手なんで(笑)
 この本っていうものがどういうものなのか知るには、アマゾンの『震える牛』のレビューに飛んじゃった方が手っ取り早いと思います(ただ、またすぐこっちに戻ってきてね~って 爆)。

 で、まぁこういうことをやっていいのかどうかわかりませんけど。
 この本がどういう内容なのかを示す(のかもしれない)レビューを、よっと引用させてもらいますと。

昨年頃から、食品流通業界辺りからおかしな噂が流れてくるようになった。
ある小説本をターゲットに徹底的に潰してしまえという動きがあり、特にAmazonにおけるレビューで完膚なきまで叩けとの指示が出ているという。


 上記は、アマゾンではpelikanさんという方のレビューの冒頭なんですけど。
 ま、上記のことが本当かどうかは別としても、低評価のレビューに「参考になった」の数が多いのは事実なんですねー。


 で、まぁその『震える牛』。
 先にも書きましたように、ミステリー小説としては確かにイマイチだと私も思います(アマゾンのレビューでも、そう書いている人は多いです)。

 でも、読み終わった後、もしくは読んでいて。
 その、“ミステリー小説としてはイマイチ”とか、そういう次元でないところでもっとドキンとさせられるものがあるんですよ。

 これはホント、あくまで個人的な考えにすぎませんけど。
 この本を読んで、たんに “つまらない”とだけ言える人って、「えぇぇー」って驚いちゃうって言ったらいいんですかねー。


 で、まぁその『震える牛』。
 そういう意味じゃ、帯にある「平成版『砂の器』誕生」というよりは、有吉佐和子の『複合汚染』の平成版の誕生と言った方が、むしろ適当なんじゃないかなーって。
 そういえば、アマゾンのレビューでもレイチェル・カーソンの『沈黙の春』をあげている人がいましたけど、私もそっちの方がよっぽど近いような気がします。

 ただ、『複合汚染』も『沈黙の春』もノンフィクションですけどね。
 とはいえ、『震える牛』は食品の汚染だけでなく、現在の日本企業の体質の汚染とそれと持ちつ持たれつの関係になっているマスコミの汚染、さらには日本の社会システムのそのもの汚染まで描かれているという点で、これこそまさに「複合汚染」だよなーって気がしますね。

 注:『砂の器』は映画の方のイメージで書いています


 もっとも、この本では企業と持ちつ持たれつの関係になっている既存のマスコミを批判的に描き、反対にネット系のマスコミを肯定的に描いているようですけど(肯定的というよりは、ネット系のマスコミライターが主人公の一人)。
 個人的には、その点については、作者は理想を追いすぎちゃって、現実の状況に目をつぶっちゃってるのかなーって気がしますね。

 ま、既存のマスコミが、企業と持たれ合いの関係になっていて、企業寄りの報道をしていないのは確かでしょう。
 特に、この本に出てくる経済系新聞社の報道が、経団連等経済界および政府の提灯記事的なトーンになっているのは確かだと思います。
 それも、ここ数年くらいは経済の基本原則を無視して、組織保身の為だけの論理で不況を伸ばし続けている経済界のフォローに躍起になってるって感じが強いですよね。

 ただ、それはネット系のマスコミだって、大同小異ですよね。
 だって、ネット系のマスコミだって、既存のマスコミと同じく企業からの広告収入で成り立っているわけですから。
 それこそこの本にも、企業側が広告を出すことでネット系マスコミのライターに記事の差し止めを迫るシーンが何度も出てきます。


 ま、『震える牛』からは離れちゃいますけど、ネット系マスコミの記事っていうのはあまりにミクロ視点すぎるというか、ぶっちゃけ言っちゃえば大局観がないんですよね。
(某社○党みたいというか…、小学校の学級委員会みたいっていうか…笑)
 それは書いている人(ネット系マスコミ)がそうだからなのか、その記事をクリックしてもらうために(=広告を見てもらうために)大衆の意見に擦り寄るように書くからなのかはわかりませんけど。

 見出しで大げさに煽るか、もしくはネットユーザー層が心地よいような見出しで興味を引かせてクリックさせて。
 で、実際の記事は中身がほとんどないか、でなければ(ネットユーザー層の)ウケ狙いっていうのがほとんどですよね(爆)
 その辺りは、韓国や中国の反日に関する記事(それもやたら細かいレベル)や、反対に韓国・中国をこき下ろす記事がやたら多いことが象徴しているように思います。

 って。私、そーとーネット系マスコミがキライみたいですね。
 だってさ、ネット系のマスコミの記事ってさ、とにっかく文章がヘタクソでさ。
 さらっと読んだだけじゃ、全然理解できないんだも~ん(爆)



 で、まぁ『震える牛』です(笑)
 それを読んでいたら、なんとまぁホテル・旅館や百貨店での食材表示偽装のニュースで大賑わいで。

 ま、個人的な感想を言うなら、「(高い)クルマエビを使ってるよー」って表示して、実は「(安い)バナメイエビ」を使って、その分儲けてましたっていう、ぶっちゃけ言っちゃえば「それって詐欺だよねー」っていう点はともかく。
 結局、「クルマエビのテリーヌ」と表示した、「バナメイエビのテリーヌ」を、誰もがウマイウマイって食べていたわけでしょ?
 たぶん、「これはバナメイエビだ。だからマズイ」って言った人はいなかったんですよね(たぶん)。

 てことは、そもそもテリーヌという料理に、(高い)クルマエビを使うっていうことは過剰品質だったってことなんじゃないですかね(もしくは、料理人のエゴだったか)。

 そういう、売らんがための企業の過剰品質志向(or料理人の過剰な味追及)を含め、そのバックボーンにある消費者の「クルマエビ=日本産だから高い。日本産だからウマイ/バナメイエビ=外国産だから安い。外国産だから味が落ちる。」という変な信仰みたいなもんを取り去る啓蒙みたいなものが、こういうことを繰り返さない(繰り返させない)ためには何より必要なのかなーって。

 正直、今回の一連の食品表示偽装を見ていてなーんかこう引っかかってしょうがないのは、たぶんその辺なんでしょうね。
 いや、まぁ偽装は何よりルール違反ですから、それが悪いのは確かなんでしょうけど。


 それこそ、バブルの末期に流行った「清貧の思想」みたいなものは、たんなる茶人思想にすぎないって気がするんです。
 だって、毎年こんなに自然災害の被害がある国、そしてそこに住む国民が貧乏でいいわけないですもん。
 そのためには税収って意味でも、個々人の収入って意味でも企業活動が盛んで儲かっていることが大事なのは間違いないんでしょう。

 でも、だからって儲けるために普通のエビで充分ウマい料理に高いエビを使うって考え方はどこかおかしいし、 またその高いエビを使った料理をありがたがる考え方もおかしいんですよ。
 だって、「料理」っていうのは、食材をおいしく食べるためにすることであるはずですもん。

 そりゃ、もしかしたら○○産のクルマエビは味が段違いなのかもしれません。
 でも、それは段違いの味であるがゆえに価格だって高いはずです。
 そんな価格の高いものは、普通にまともに暮らしている人は日常(=「ケ」)的には食べません。
 お祝い等、何か特別な時(=「ハレ」)にだけ食べるのが普通なはずです。

 人の生活において、その「ハレ」と「ケ」っていうものを交わらせてはいけないんですよ。
 つまり、「ハレ」というのは、特別な日やコトなわけで。
 特別な日やコトが日常(「ケ」)的にあったら、それは「特別」ではなくなってしまいますよね。
 というか、「ハレ」の日の食べ物がいくらウマいからって、それを食べ続けてたらお金がいくらあっても足りないって点を考えても、「ハレ」と「ケ」は交わらしてはいけないわけです。

 もちろん、「バナナ」のように、昔は「ハレ」の食べ物だったものが、国が豊かになることで「ケ」の食べ物になるってことはあります。
 また、マイタケのように天然モノは希少であるがゆえに「ハレ」の範疇の食べ物だったものが、大量生産の技術が確立されたことで「ケ」の食べ物になったものもあります。

 でも、おそらく「クルマエビ」は、現在でも「ハレ」の範疇に入る食べ物ですよね。
 「ハレ」の範疇の食べ物だからこそ、企業は「バナメイエビのテリーヌ」を「クルマエビのテリーヌ」と表示したわけですよね。
 それは企業が、一般消費者にとって「ハレ」の食べ物であるクルマエビを日常(「ケ」)に食べられる価格設定にすれば絶対に売れる(儲かる)と考えたからこそ、偽装してでもそれを売ることにしたわけですよね。

 食品表示偽装の根幹にはあるのは、たぶんそこなんだと思うんです。
 いや、「ハレ」を求めるのは全然悪いことではないと思うし、また普通の人なら当り前だと思うんです。
 でも、現在の私たちの生活っていうのは、あまりにも日常的に「ハレ」を求めてすぎてやしないかなーって。
 また、その「ハレ」を消費するための企業からの情報に、日常的に煽られすぎてやしないかなーって。

 どんなにウマいモノでも、毎日食べてたら飽きるわけで。
 飽きるってことは、つまりそのウマいと思っていた食べ物がウマくないって感じるってことですよね。

 それって、はたして私たちにとって幸せなのか?
 そのために毎日あくせくする人生で、それでホントいいのか?



 そう、何年か前、テレビを見ていたら。
 街を歩いている人に、最近気に入っている変わった食べ方をインタビューするっていうのをやっていて。
 その中で、「ショートケーキに七味(唐辛子)をかけて食べるのがおいしい」って答えていた女子高生は、ホント強烈なインパクトがありましたねー。







 そういえば、ずっと乗っていた自転車が壊れちゃったんで買おうと思っていて。
 ま、安いんでネットで買おうかなーって思ってるんです。

 ただ、そのネットで買った人のレビューを見ていると、安いだけに不具合がある場合もあって。買った後に防犯登録も含めて、近くの自転車屋に整備をしてもらった方がいいみたいなんですね。
 ま、なら最初から近くの自転車屋で買えばいいって話なんでしょうけどね。
 でも、自転車屋で売っているものは高くて、ちょっと手が出ないんですよ。
 ということで、たぶんネットで買うことになると思うんですけど…

 ただ、こんな風に誰もが自転車をネットで買うようになったら、近くにある町の自転車屋はきっとつぶれちゃいますよね。
 町の自転車屋がつぶれちゃったら、防犯登録は出来ないし、壊れた時に修理だって出来ないわけで。

 つまり、町の自転車屋がつぶれちゃって一番困るのは、私たち消費者なんですよね。
 でも、だからって町の自転車屋で売っている自転車は高くて、ちょっと手が出ないわけで…


 それこそ10年後(いや、5年後?)。
 私たちの暮らしって、いったいどうなってるんだろうなーって……




 …って、なんだかやけに辛気臭い感想だなーって、
 ちょっと反省(爆)
 ←ちょっとというより、イッパイ反省しろ!



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2013
11.16

百ポ:15話目-3

Category: 怪談話


 百ポ:15話目-1はこちら
 http://kaidansweets.blog.fc2.com/blog-entry-288.html


 姉が入院することは話したと思うけど…。
 実は、入院までには、それ以外にもいくつか出来事があった。
 わたしの頭で整理する意味も含めて、まずそれらから話そうと思う。
 ただ、何度も言うようだけど、このことは頭に入れておいてほしいなーって思うことがあって。

 つまり、それらの出来事っていうのは、結局はわたしが関連していると思っていることだけを話しているにすぎないってことだ。
 もしかしたら、それらはそれぞれが関連しているようでも、実は全然別個の出来事だったのかもしれないし。
 また、反対に本来は関連していた出来事であるはずなのに、わたしがそうは思わなくって話さないことが──あるいは、それこそ忘れてしまったことが──他にもしかしたらあるのかもしれない。

 わたしの話っていうのは、もちろん事実だけれど。
 でも、それっていうのは、いわゆるわたしの中で本当だと思っている「事実」なんであって。
 案外、本当の「事実」っていうのは全然別のものだったりするのかもしれない。
 それこそ、あの出来事を「昔あったこと」と言えるようになってしまった現在となっては。
 もしかしたら、姉や母、父、そして現在はいない祖母も含めて、それぞれがそれぞれに現在思う「あの出来事」という話があるのかもしれないなぁなんて思ったりもする。

 結局、事実や真実なんてものは…
 いや、これはあの出来事のことだけでなく、日々ニュースなんかを見ていてもよく思うんだけれど。確証を得られる「本当」ってもんがない限りは、事実や真実なんてものはいくつだってある──それこそ人の数だけ?──ってことなのかもしれないなぁなんて思う。


 それらっていうのは、どれも夜中の出来事だったのだろう。
 だって、そのどれもが朝になってそれを母が見つけることでわかったのだから。
 祖母の仏壇のロウソクの点けっ放しに始まって、姉の居間のテレビの点けっ放し…。
 それから、居間の蛍光灯の点けっ放しや、洗面所の水道の出しっ放し、そうそう、扇風機が首振って回ってたことも。
 また、朝に母が起きてみたら台所の勝手口の戸が開いていたり、またタンスの戸や引き出しが開いていたりなんてこともあったらしい。
 その他にも道具や細々とした物が動かされていたり…、そういえば、洗って持っていくはずだった給食当番の割烹着がなぜか仏壇のある部屋に置かれてあったあの時は、わたしも大慌てだった。
 大慌てといえば、休日の朝。スイッチを入れてもウンともスンといわない洗濯機に、母がいつもより激しく癇癪を起こしたことで家族中大慌てみたいなこともあった。
 ま、それもあとで見てみたら、コンセントがいつの間にか抜かれていたのだが…。


 とにかく、そういったことがあるたんび母はひどく怒って──というのも朝一番早く起きるのは母だから、それらを見つけるのは当然母だった──姉や祖母、もしくはわたし、そしてたまに父と、それをしそうな家族の誰かを激しい口調で注意した。
 でも、テレビの点けっ放しの時、姉がそれまで聞いたことがないような激しい口調で学校に行っちゃったように。
 それらは、誰もが自分の身に覚えがないことだから──その時は当然わたしだってそうだった──母との間で激しい言い合いになった。

 あれが続いてた頃っていうのは、そんなことがほぼ毎朝だったから。
 そう、そのたんび母と家族の誰かが言い合っていて、家中が嫌ぁーな雰囲気になっていた。
 もっとも。
 母っていうのは、怒る時はやたらめったら激しい口調で怒るんだけど、でも幸いなことにその怒りが後に引かないタイプだったから。
 また、わたしたち家族もそんな母のことはわかっていたっていうのもあったから、まぁなんとかやり過ごしていた。


 そう。まさにあれっていうのは、家族全員なんとかやり過ごしていたってことだったんだろう。
 一見いつも通りなんだけど、家族それぞれに相当なストレスがかかっていたんだと思う。
 それは、たぶん祖母が一番酷くて──何より家族の中で母と過ごす時間が一番多いわけで──わたしが朝食を食べる時に同じテーブルでお茶を飲むという習慣をやめてしまったのは話したと思うけど、夕食の時も「食欲がない」と部屋から出てこないことが時々あった。

 ただ、現在になって、いろいろ考えてみると。
 もしかしたら、あの頃ストレスを溜め込んでたのは、実は祖母よりもむしろ母だったのかもなぁーって。
 うん。それは、医者もそんなことを言っていたらしい。
 いや、もちろん。当時そのことを誰かから聞いた時、そうは全然思わなかったけど…。


 そんなようなことが梅雨の初め頃から、ぽつんぽつんと頻発するようになって。
 でも、そんな時でも時間っていうのは普通に過ぎていくもので、気がつけばわたしは夏休みになっていた。
 また、姉は姉で。その頃父母と医者から、8月の頭の学校の林間学校から帰ってきた後くらいに、気分転換と療養をかねて入院することを勧められていた。
 もっとも、姉はバレー部の練習もあるし、お盆は従兄弟たちが遊びにくるから入院はしたくないと言っていた。

 というのも、例の夜中の金縛りが酷くって…。
 一時はそれが毎夜のように続いて。
 夜中に悲鳴をあげて起きては、ずっとすすり泣いていたりなんてこともあったものだから、さすがに父と母も気がついて姉を医者に連れて行ったのだ。
 医者に行って薬──たぶん精神安定剤だったのだろう。でも、当時のわたしは、それをズバリ金縛りにならない薬だと思っていた──をもらってきてからはかなりよくなっていたんだけど。
 それでも、週に1回くらいの割りでそれが起きることがあって。

 うん。そりゃ、一番怖い思いをしているのは、間違いなく姉だったんだろうけど…。
 でも、姉のその苦しそうな声や物音、時にはそれが終わった後のすすり泣きを、隣りの部屋でわたしはもろに聞いてしまうわけで。
 わたしだって、生きた心地がしないくらい怖い思いをしていた。
 そうそう、あまり怖かったものだから。姉が飲んでいる金縛りにならない薬をわたしにも頂戴って言って、母に怒鳴られたこともあったっけ。


 姉のそのことで、父と母はずいぶん色々と話し合ったらしい。
 ただ、そこはもちろんああいう父と母だから。夜中のうちにある例のテレビや電気の点けっ放しと、その夜の姉の発作──「金縛り」という言葉は、父と母は意識して使わないようにしていたみたいだ──を同列のものとして話すことはなかった。
 ただ、二人とも口にこそ絶対出さなかったけど、心のどこかでそれとなく意識していたっていうのは絶対あったと思う。

 その時っていうのは、父が夕食の時にいたんだから休日の夜だったのだろう。
 夕食を食べ終わった後、父と母は例の夜中にあるテレビや電気の点けっ放しのことについて話していた。
 そう。あの時は姉はいなかったから、バレー部の練習か、それとも友達の家に行っていたのか?──夜の金縛りが怖かったというのがあったのだろう。姉は夏休みに入ってからはよく友達の家に泊まりに行っていた。
 それから、その時その場には祖母もいなかった。
 前にも話したと思うけど、祖母はあの仏壇のロウソクの点けっ放しの件以来、食欲がないから夕飯は食べたくないと言って部屋にこもってしまうことが度々あって、その時もそうだった。

 そんな、姉と祖母抜きで夕食を食べ終わった居間。
 わたしは、そのまま寝転がってテレビを見ていた。
 とはいえ、例の電化製品の点けっ放し等のことで父と母が話しているのもそれとなく聞いていた。

「ねぇ。まさかとは思うんだけどね。
 もしもってことを考えて、一応警察に相談した方がいいんじゃないかって思うの。」
「えぇっ、警察!?
 おい、何言ってんだって。
 そんなの、お袋か、A実か。でなければ……か、が。
 ついうっかり忘れたってことに決まってるだろぉー。」
「だから、もしもってことを考えてって言ってんじゃない。
 あたしだって、誰かのうっかりだとは思うわよ。
 思うけど、でも毎朝そのことで注意するの、もう嫌んなっちゃってきたのよ。
 言うと、誰も知らないって怒るし…。
 あなただってそうじゃない。」
「いや、だから俺は知らないよ。
 言ったろ、あの時…。
 そりゃステレオを使うのは、この家で俺だけだけどさ。
 でも平日に、しかも夜中に聴くわけないだろ。
 それでなくっても、毎日睡眠不足だっていうのにさ。
 第一、ステレオでラジオは俺、ほとんど聴かない──。」
「じゃぁあの朝、ステレオのラジオが点けっ放しだったのは誰の仕業だって言うのよ?」
「知るわけないだろ、そんなこと…。
 おおかたお袋かA実…。
 そう、A実なんかは、そろそろラジオの深夜放送に興味を持ち出す年頃だろ…。」
「だから、その話はこの間も聞きましたっ!
 でも、いくらA実がラジオの深夜放送聴くようなそんな年頃だからって、
 なんでわざわざステレオのラジオを聴かなきゃなんないのよ?
 だって、あの子は自分のラジカセ持ってるのよ。
 それに、あの子は、ステレオはあなたに怒られそうで嫌だから触ったこともないし。
 そもそも、どうすれば音が出るのかも知らないって言ってたわよ。」
「わかるもわからないもないだろ、あんなもん。
 電源のボタン押して、あとはラジオを選ぶだけなんだから…。」
「そんなこと言ったって、そんなのあたしだって知らないわよ。」
「そんなこと言ったって、お前とA実くらいの年頃じゃ違うだろ。
 A実くらいだったら、触ってりゃなんとなくわかるもんだ──。」
「だからっ!
 今はそういうこと言ってんじゃないじゃない。
 お義母さんも、A実も、B子も、そしてあなたも言うように。
 もし、あれがウチの誰でもなかったらどうするのよっ!」
「ウチの誰でもないって、お前、そんなこと…。
 じゃぁ何か?お前は、泥棒かなにかの仕業だとでも言うのか?」
「言ってないでしょ。あたしは、そんな泥棒だなんて…。
 でも、朝起きたらテレビが点けっ放しだったり、
 水道が出しっ放しだったりっていうのがあるのは事実でしょ。
 そして、それはウチの誰に聞いても、それは知らないという…。
 なら、ウチの誰がやってるんでもないって考えることだって必要じゃない!違う?」
「そ、それはそうだけどさぁー…。
 でもさ、それでなんで警察なんだよ?
 第一、そんなことで警察がまともに相手するわけないだろ。」
「だからっ!
 警察って言ったのは、モノのたとえでしょ。
 じゃぁ何?警察が駄目なら、私立探偵?興信所?」
「いや、だから…、わっ!」
「っ!」
「うぐっ!」

 3つ目の「うぐっ!」は、わたしの驚きだった。
 その時っていうのは、わたしは目でテレビの画面を追いかけながら、でも耳では母と父の話をずっと聞いていて。
 いきなり聞こえた父のその驚きの声に胸を潰して、寝転がっていたわたしは反射的に起き上がりながら、父と母の視線の先を追っていた。
 そんな、廊下の方を向いた父と母の顔の先に立っていたのは……

「なんだ、お袋かよ…。
 はぁー、ビックリしたー…。
 もぉーっ。おどっかすなよ…。」
「あ、お義母さん、お腹空きました?」
「もぉお袋さ、夕飯くらい一緒に食べろよ。
 C美だって、一人一人に食べさせてたら大変──。」
「警察なんかじゃなくさ、お寺なんじゃないのかい?」
「えっ…。
 お、お寺!?
 お寺って…。」
「だからさ。相談するなら、警察じゃなくお寺じゃないのかい?」
「お寺?お寺って、何でそこにお寺…!?」
「だってお前、A実の夜のあれ…。あれをどう思うんだい?」
「え、え、A実…!?
 いや、だからお袋。今C美と話しているのはさ、
 A実のあの発作のことじゃなくってさ。
 例のお袋のロウソクの点けっ放しから始まった、
 テレビとか電気の点けっ放しのことを話してるんだって。」
「お義母さん、どうします?
 今日は煮魚とポテトサラダだったんですけど、食べられそう──。」
「お前たちだって、うすうすは思ってるじゃないのかい?
 A実のあの夜のことと、テレビや電気の点けっ放しが関係ある──。」
「ちょ、ちょっと待った、お袋…。
 あのさ、A実の夜の発作のこととそれとは全然違うぜ。
 第一、医者だって言ってんだから。
 中学に入っての環境の変化が、たまたま心に過度なストレスを与えたせいだって。
 なぁ、そうだよな。あの医者そう言ってたよな。」
「そうですよ、お義母さん。
 お医者さんも言ってましたけど、
 あのくらいの年齢だとああいうことがあるのって、
 それほど珍しいことじゃないらしいですよ。」
「あたしは高校も満足に行ってないから、確かに医者の言うようなことはわからない。
 でもね、この歳だからね、それなりにいろんなことは見てきたつもりだよ。
 確かにそう言われてみれば、
 A実のあれはあのくらいの歳の時になることが多いもんだよ。
 EんとこのF子も、それからG叔父のとこのH男も…。
 思い出してみれば、確かにA実くらいの歳のことだったよ。」
「えっ、EんとこのF子って、それってF子ちゃんのこと?
 H男っていうのは、あのいつも小うるさいH男叔父さんのことかよ?
 えっなに、F子ちゃんもH男叔父さんも、
 A実くらいの時に、そんなことがあったの?」
「そんな風に言うかどうかは、あたしは知らないよ。
 でも、EんとこのF子も、G叔父のとこのH男も。
 それがあった時は、お寺に相談して治してもらったんだよ。
 そりゃお前は、子供の頃から勉強がよく出来たから、
 そんな昔のことって、あたしの言うこと馬鹿にするかもしれないけど──。」
「いや、だから馬鹿にも何も、俺は何も言っていないだろ。
 というかさ、今俺たちはテレビの点けっ放しのことを話してるんだからさ。
 A実のことでお寺に相談した方がいいとか、話を混ぜっかえさないで欲しいんだよな。
 まったくー。
 それでなくたって話がややっこしくなってるんだから…。」
「混ぜっかえしなんかしやしないよ。
 あのね。あたしは、お前たちが点けっ放しのことで話してるから、
 だからA実のことも一緒に話したらどうだい?って言ってんじゃないか。
 あのさ、お前たちね。
 A実のこと、もう少し親身になって考えたらどうだい?」

 その時のわたしは、全然その会話の外だったんだけど。
 でも、もうテレビなんかそっちのけで、ただただ両親と祖母のやりとりを見ていた。
 だって、いつも大人しい祖母が父にそんな風にいろいろ言っているとこなんて見たことなかったし。
 なにより、わたしがずっと思ってたこと──つまり、テレビ等の点けっ放しと姉の金縛りって関係があるんじゃないだろうか?──を祖母が言ったからだ。

 ただ、前にも言ったけれど。父と母だって、口に出すことは絶対なかったけど、でもやっぱりそれは心のどこかでは思っていたような気がするのだ。
 そう、その時のわたしにはよく理解らなかったけれど。
 父と母はそれは思いつつも、あえて別個に考えることにした──心のどこかで思っていたそのことは否定することにした──んじゃないだろうか。
 だからこそ、その後母は祖母にあんなに強い口調で言ったんじゃないかって思うのだ。
 そう。そういう意味じゃ祖母はあの時、母の心にある「虎の尾」を無遠慮に──それももろに──踏んじゃったってことなんだろう。

「お義母さんっ……。」
 その母の声のピーンと張り詰めた余韻ときたら…。
 それこそわたし、思わずキチンと座り直しちゃったくらい。
 そう。そういえば、あれはその年の冬のことだったか?
 学校の音楽室の掃除をしていた時。グランドピアノをいたずらしていて、何の気なしに一番高い音の鍵盤を叩いて、出たその予想外の鋭い音に、ビクっとした、あの時の感じといったらいいか…。


 蒸し蒸しと暑い夏の宵だっていうのに。まるで、真冬の朝のようなキーンとしているその空気感に呆気にとられた顔の祖母と、目をつぶって大きく息を吐いている父。
 でも、そんな中、話し出した母の口調は意外に物静かだった。
「お義母さんが、A実のことで
 お寺に相談した方がいんじゃないかっていう気持ちはよくわかります。
 あたしたちだって、
 決してそういうことを考えなかったわけではないんですから…。」

 母は、いったんそこで口を止め、そして父の顔を見た。
 でも、父は相変わらず目をつぶったまま。
「その上で、A実のことは医者の言うことに従うことにしたんです。
 なぜなら、今っていうのはそういう時代だからです。
 それが、普通だからです。
 だから、あたしたちはそう決めたんです。
 それは、お義母さんも了解してください。お願いします。」
「あのねC美さん、昔があるから今があるんだよ。
 今から見れば貧しくて愚かだった昔があったから、豊かで賢い今があるんだよ。
 こういう時っていうのは、昔かっらお寺に相談して解決してきたものだよ。
 そういうことを頭ごなしに否定してはだめだよ。」
「ですからお義母さん。何度も言うようですけど、
 あたしたちは、なにもそういうことを
 何も頭ごなしに否定しているわけではないんですって。
 ただ、今回のA実のことは医者に任すとあたしたちは決めた。
 そういうことですし、それ以外に他意はないんですよ。」
「あのね、いくら今が豊かで賢いからって、
 昔から受け継がれてきた知恵ってものまで無視しちゃったら、
 愚かな昔に戻ってしまう──。」
「だからっ!
 もうお義母さん、何度も言いますけど、
 あたしたちは、何もそういうものを無視しているわけではないんです。
 それにお義母さんだって、
 その昔から受け継がれてきた知恵ってものが絶対だって
 言ってるわけではないでしょう。
 それこそお義母さんだって、A実やB子が風邪ひいたら
 お寺や神社に相談しろとは言いませんよね。
 医者に行けと言いますよね。
 それは、お義母さんは、風邪をひいたらお寺や神社よりも
 医者の方が効果があると思うから、医者に行けと言うわけですよね。
 それと同じなんです。
 あたしたちがA実のことは医者に任すと決めたのは。」
「いいや、違うよC美さん。それとこれとは…。
 こういうことっていうのはね、
 昔からずっとやってきたことの方が正しいんだよ。」

 その時っていうのはわたし、子供ながらに「まずい…」って思った。
 ううん、違う。むしろ、母の子供だからこそ…か?
 そう。それはわたしが母の子供だっただけに、それに敏感だったのだろう。
 つまり、母っていうのは、祖母のその言葉みたいな物言い──現在のわたしならそれを「根拠のない断定」って言える──が一番嫌いだった。

「いい加減にしてください、お義母さん。
 このこと、あたしは何度言えばわかってもらえるんですか!」
「だから、A実のことはお寺に──。」
「お義母さんは、さっきからずっとA実のあのようなことはお寺にって言ってますけど。
 A実のあのようなことって、いったい何なんですか?
 お義母さんは、そのあのようなことがどういうことで、
 そして何が原因で起きているのかわかるんですか?
 原因がわかった上でお寺とかって言ってるんですか?」
「いや、だから昔っから──。」
「昔、昔って言いますけど、
 その昔あったことと、A実のことが同じだってどうして言えるんですか?
 今、お義母さんがそれを言ってくれて納得できるならあたし、
 お寺でも何でも今すぐに行きますよ。
 だって、A実はあたしの子なんですから。」
「………。」
「お義母さんがそれを言う気持ちって言うのは、
 すごくよくわかります。
 A実のことを心配するからこそですよね。
 でも、それはあたしだって同じなんですよ。
 A実を心配しているからこそ、
 あたしたちはこのことは医者に任すって決めた。
 そういうことです、これは…。」

 母がそこまで言った時だった。今までずっと目をつぶって黙っていた父が口を開いた。
「なぁ、母さんよ…。
 C美の言うことも、少しは聞いてやれよ。
 C美が言ってるのはさ。
 正しいからそうする、正しくないからそうしないって
 言ってるんじゃないんだよ。
 俺とC美2人で話し合って、
 A実のことは医者に任すと決めたからそうするんだって言ってるんだよ。
 だって、それが正しいか正しくないかなんて、
 今だろうが昔だろうが誰にも絶対わかんないだろ?」
「あのね、お前──。」
「だからさ、最後まで聞けって。
 もしかしたらさ、結果的には母さんの言うことが正しいということもあるのかもしれない。
 俺たちの決めたことが間違ってるということがあるのかもしれない。
 でもさ、だったとしても、それはそれでどうしようもないことだろ。」
「お前ね、そんなこと言ってA実のことなんだよ。
 自分の子供だよ。
 今は口でそう言えるかもしれない。
 でも、もし間違ってたらどんなに後悔するか…。」
「そう。だからだよ。
 だって、母さんの言うことが絶対正しいって、母さんは言えるのかよ?
 言えないだろ?
 それが正しいとか、正しくないとか、そんなことじゃないんだよ。
 昔だろうが今だろうが、
 そんなことは誰にも絶対わかるわけないんだから…。
 もちろん、母さんの言うように
 昔のように寺に相談するって人もいると思うよ。
 でも、俺とC美は話し合って、医者に任すって決めたんだよ。
 なら、そうするしかないだろ。
 それが一番って思って、そうするしかないだろ。」
「………。」
「………。」
「………。」

 あの時っていうのはわたし、父母と祖母のその話を聞いていてどう思ってたんだろう。
 うん。現在なら、父と母の言っていたことっていうのは、すごくよくわかるって言える。
 特に母の言っていたこと、というかその思いが…。

 でも、反面祖母の言ってたことにも一理はあるような気もする…。
 まぁなんだ。
 わたしも大人といえる齢になって、その辺りは小ズルくなったってことなのかもしれない。
 というか。人の知恵なんて、昔だって今だって所詮は大差はなく、同じようなものにすぎなくって。
 いいとこ、小ズルい程度のものなのかもしれないなーなんて思ったりもする。
 だからこそ、思いもかけないことが起こるのだろう。
 そう。あの時だってそうだった。


 あの時居間では、それっきりしばらくは父母も祖母も何も言わずにそのままで。
 また、わたしはわたしで、子供のながらにやっぱり何か考えていて。
 テレビは相変わらず点いていたけど──その後で消した記憶が残っている──もはやわたしも含め誰も見ていなかった。
 そう。それは、そんな時だった。

「わっ!」
「っ!」
「ひっ…。」
「うっ!」
 最初に驚いた声をあげたのは父だった。
 わたしや母、祖母はその父の声に何より驚いて顔をあげ、そして父の視線の先を見た。
 ぼーっと。
 そこに、そんな風に立っていたのは姉だった。
 そう、姉なのに、わたしも、父も母も。そして祖母も、なんだかとっても驚いていた。
 というよりは…
 うん…。
 なぜだかわからないが、誰もが一様に怯えたような顔をしていた。

「な、なんだ。今度はA実かよ…
 もぉっ、おどっかすなよ。
 はぁー、ビックリした…。」
 居間の戸のところから半分だけ体を出して立っていた姉は、なんだか浮かないような表情をしていた。
「A実、どうしたの?気分でも悪いの?」
「ううん…。」
「なら、夕ごはん食べちゃいなさい。」
「ううん…。」
「え、なに?どこかで食べてきたの?
 もぉー、A実。ご飯どこかで食べるなら連絡してって、
 いつもあれほど言ってるじゃないの。」
「うん。ごめんなさい…。」
「ま、いいわ。そう、A実、薬は?」
「うん。そっちも大丈夫…。」
「そう…。あ、ならお風呂──。」
「ねぇお母さん。
 わたし、今日これからI子のとこに泊まりに行くから…。」
「えっ、泊まりに行くって?
 ちょっと、I子って誰よ?どこのうちよ?」
「バレー部の友達よ。前に言ったでしょ。
 あと、わたし、やっぱり入院する…。
 だって、怖いのもう嫌だもん。」
「えぇっ!入院って、A実…。
 えっ、A実!A実っ!」
 その、すーっと居間の戸から姿を消してしまった姉の姿。
 そして、その姉の口調に、何とも言い難いものを感じた母と父が立ち上がった時だった。
 バターン!


 あの、激しく閉まった玄関の戸の音は…
 父も母も祖母も、そしてわたしも。
 そこにいた誰もの動きを一瞬止めてしまう何かがあったように思う。




──── 本日これまで!
           百ポ:15話目-3〈了〉/15話目-4につづく メルマガ配信日:13.1.15
                                             *無断転載禁止



*ブログの無断転載は、呪い・祟り等ご自身に大過を招くこととなりますのでご注意ください。



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2013
11.12

そういえば、最近このブログって怪談ばっかなんでー



 そういえば、このブログって、最近怪談ばっかですよね。
 怪談ばっかだと、怪談が好きな人と思われちゃいそうで、なんかイヤだなーって(爆)

 でもまぁ、よくよく考えてみれば別に思われてもいいかなーって。
 だって、怪談好きだもんなーって(失笑)
 でもさ、あんまり大っきな声じゃ言えないんだけど、最近の怪談ってホっントつまんないのばっかなんだよなー(怒!)
 ぶっちゃけ、怪談ファンにとって予定調和なお話ばっかっていうかさー(爆)







 そうそう。怪談って言えば、先週の金曜日、ハリー・ポッターの最終話やってましたよね(なんで、ハリー・ポッターの話題が“怪談っていえば…”で始まるかはともかくwww)。
 ハリー・ポッターっていえば、前編を通じてのストーリーの流れが、どっかスターウォーズとどっか似てるんだよなーっていうのがあるんですけど、『死の秘宝』のPart1&2なんか見ると、まさにスターウォーズだったなーって。

 最後のヴォルちゃんとハリーの戦いなんて、思わず“あれっ、これってパクリ?”(失礼。オマージュ&パロディですよねwww)なんて場面もあったりで。
 ハリーが、いつダークサイド…、じゃなかった、闇の魔術側(結局ほとんど同じ意味じゃん!笑)に落ちて、黒いマスクに黒いヘルメットかぶって「フーハー、フーハー」って言うのかな?って楽しみにしてたんですけど(←ウソ)、結局ヴォルちゃんが死んじゃって終わりでしたね。

 ま、結末はたぶんあれしかなかったんだろーなーって思うんですけど、でも、いまひとつ何かこうなかったのかなーって気もしないでもないですよね。
 ハリー・ポッターといえば、たんなるファンタジーというよりは、学園ファンタジーみたいな面や、学校が始まる時に乗る汽車で食べる変な駄菓子に代表されるような作者の夢想の部分が面白かっただけに、最後の最後でそれがなくなっちゃったのはちょっと寂しかった気もしますね。

 ただまぁそう言いつつも、個人的には、『エピソードⅢ』よりは全然面白かったって気がするかなー(爆)
 ていうか、スターウォーズ(エピソードⅠ~Ⅲ)は、映画にする時代を間違えたって気がしますよね。
 だって、エピソード1~6全部通すと主人公はあきらかにダースベイダーなのに、その肝心の主人公がⅠ~Ⅲでは出てこないんだもん。

 あれはやっぱり、アナキンを見つけたⅠからダースベイダーになるⅢまでを「エピソードⅠ」として。
 「エピソードⅡ&Ⅲ」は、それ以降「エピソードⅣ」の前までのダースベイダー大活躍のお話にすれば、もっと面白くなったんじゃないのかなーって思うんだけどなー。

 とはいうものの、スターウォーズって。
 結局、ハン・ソロとC3POとチュウイーくん、あの3人(2人+1体?)の掛け合い漫才がないと、スターウォーズ見てる気がしないって思うんですけど、それって私だけですかね?(爆)


 で、まぁ金曜日はハリー・ポッターを見ちゃったわけですけど、TVっていえば、最近土曜日の夜にやってる『妄想ニホン料理』って番組が大好きで。
 *妄想ニホン料理

 要は、外国人に「親子丼」とかニホンの料理の簡単な説明文を見せて、イメージしたものを作ってもらうって番組なんですけどね(月に一度、ニホン編アリ)。
 番組のキャッチフレーズが「誤解は発明の母」ってくらいで、元のニホンの料理と全然違ってたり、逆にいい線いってたりと様々で。
 ただ、いつも感心するのは、そのどれもが「うーん、ミョーにウマそーだーっ!」って思っちゃうところなんだよなー(笑)

 とはいえ、困ったこともあって。
 それは、番組中に流れる“♪どげ~なもんでしょな”っていうラテンテイストの曲。
 あれ、なーんか口グセになっちゃって、気がつくといつのまにか歌っちゃってると(笑)
 ねぇ。報告会なんかやった後に、つい“♪どげ~なもんでしょな”な~んて歌いだしちゃった日にゃぁ、どうなっちゃうんだよぉーって(爆)


 で、まぁいつの間にか寒くなっちゃいましたねー。
 そういえば今夜の風は、なんと関東地方の木枯らし一号なんだとか。
 冬の強い北風がゴーゴー吹いて星がギラギラ光ってる夜って、子供の頃からなーんか好きで、ちょっとウキウキワクワクしちゃいますね(笑)
 そうそう。寒いといえば、先週の土曜日がやけに寒かったんで、思わず日曜日にコタツを出しちゃいました(笑)
 コタツなんて、つい何年か前まで12月の中旬くらいにならないと出さなかったのになー。

 あらあら。
 つまりはまぁ、いつのまにやらそういうお齢ごろってこと?
 ま、お後がよろしいようで。





    うーん。子供の頃聴いたのとは、歌ってる声が微妙に違うような…?



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2013
11.10

百ポ:15話目-2

Category: 怪談話


 百ポ:15話目-1はこちら
 http://kaidansweets.blog.fc2.com/blog-entry-288.html


 母が言っていた仏壇というのは、仏間…。いや、ただ、それは決して仏間っていう部屋ではなくって。
 1階の居間の隣りにある、あまり使っていない部屋に、それはあった。
 ただ、元々は居間にあったらしい。
 その居間の隣にある部屋に移したのは、なんでもわたしが小さい頃、よちよち歩きをしていて、仏壇にぶつかって。その衝撃で、線香立てが真下で仰向けにひっくりかえっていたわたしに落ちてきたってことがあったんだとか。
 ま、幸い大したことはなかったらしいのだが。
 でも、もし頭や顔に落ちてたりしたら大変だったということで、使っていなかった隣りの部屋に移したらしい。


 そこは4畳半の部屋で。
 さらに隣りには、祖母の部屋があった(ちなみに、祖父はわたしが幼稚園の時に亡くなった)。
 その仏壇のある部屋の反対側の隣り──玄関の側──には、前に言ったように普段家族がテレビを見たりして過ごす居間があって。
 また、その居間は、朝食を食べたりするテーブルのある台所と、廊下を挟んで接していた。

 うーん。ちょっとわかりづらいのかな?
 つまり、わたしの家というのは、玄関を入って廊下を進んでいくと、左側に居間、仏壇のある部屋、そして祖母の部屋という順番で並んでいて。そして、その3部屋は南に開けた庭に面していた。
 そういえば、3部屋って南に面していたんだから、当然日当たりだっていいはずだと思うんだけど…。
 ううん。その3つの部屋のうち、居間と祖母の部屋は日当たりがよく明るい部屋なのだ。
 でも、窓の大きさのせいなのかなんなのか、仏壇のある部屋というのは、なんだか妙にうす暗い感じのする部屋だった。
 ただ、うす暗いっていっても、それは、陰気とか、ひんやり寒いとか、もしくはジメっとしてるっていうことではなくって。
 というか、むしろそのうす暗さゆえに、わたしにとっては不思議と落ちつける気のする部屋だった。

 そう…。
 その頃も、その前も、その後も。母にキツく怒られた後や、学校で嫌なことがあった時なんかには、わたしはよく仏壇のある部屋で時間を過ごしたものだった。
 そして、それはどうもわたしばかりでなかったらしくって。
 何かの折につけ、その部屋に姉の姿がぽつんとあるのを見かけた。
 そんな時に、その部屋に入って姉の顔を見ると、そこには涙の痕があったり、目が赤く腫れていたりしていたものだった。

 ただ、これは現在になって思うんだけど。
 もしかしたら、それは祖母も同じだったのかもしれないなーって。
 もちろん祖母は朝起きてすぐ、夜寝る前と日に何度か仏壇に線香をあげるのが習慣だった。
 でも、それより何より祖母のことを、その仏壇のある部屋でよく見かけたような気がする…

 そう。そうなのだ。
 たしかに、わたしも姉もその仏壇のある部屋にはよく出入りしていた。
 でも、それは仏壇を拝むためでなく、たんにそこが落ち着ける場所だったからにすぎない。
 つまり、わたしと姉はその部屋に行ったとしても、仏壇に線香をあげたりすることはほとんどなかった。

 そういえば、わたしの家は、朝起きた時や夜寝る前に挨拶をする習慣がない家だったというのは話したと思うけど。
 それは、仏壇に関しても同じだった。
 現在思い出してみても、わたしの両親が仏壇を拝んでいるのなんて、ホントお盆や彼岸、あとは法事で叔父や伯母が来た時くらいだったように思う。
 ただ、母っていうのは、常に何かしてないといられないっていう質だったから。
 その仏壇のある部屋も、掃除をするために毎日出入りしていた。
 それから、朝夕のその部屋の雨戸の開け閉めは母がしていたし…。
 そう、そういう意味じゃ、あの部屋に全くといっていいくらい出入しなかったのは、家族の中で唯一父だけだったかもしれない…。


 と、そんな仏壇のロウソクの火の一件だったけど。
 実は、それっきりだった(ううん。それっきりと言ってしまっては、ちょっと正確じゃないんだけど、でもまぁそれはまた後で)。
 というのも、母からその一件を聞いた父が、仏壇の扉に鍵を取り付けてしまったからだ。
 つまり。その鍵は母が管理していて。祖母は、仏壇に線香をあげに行く時には母に言って鍵を受け取って、終ったらまた母に鍵を返すという…(現在になって思うと、それってちょっとなんだかなぁーってつくづく思う)。


 ところで、これはあとから母に聞いたことなんだけど。
 母は父に、「それではお義母さんがさすがに可哀相だ。要は、ロウソクの火の点けっ放しが怖いだけなのだから。仏壇からロウソクと線香立てを取り去って、お義母さんには拝むだけにしてもらえばいいんじゃない」みたいなことを言ったらしい。
 でも、それに対して父は「仏壇に線香がなかったら、拝んだ気がしないだろう。それこそお袋が可哀相だ」と言ったとかで。
 もっとも。祖母もそんな父の思考パターンに慣れていた──この子にして、この親ありと言ったらいいのか(笑)──というのもあったのか(考えてみれば、なんといっても自分が生んで育てた子だ)。
 その時は、「あたしも齢だし、火の点け忘れが絶対ないとは言えないし。何より火事になったら大ごとだから、その方がいい」みたいなことを言っていたらしい。

 その時っていうのは、わたしも子供だったから。母からそれを聞いて、単純にそれでいいのかなって思ったんだけど。
 でも、それなりに世間ってものを知るようになったこの齢になってみると、わたしの家…、というより家族っていうのは相当変わってたんだなぁ…って、なんだかちょっと笑ってしまう。
 だって、「仏壇からロウソクと線香立てをなくしちゃえばいい」という母も母だけれど。
 「仏壇に線香がなかったら拝んだ気がしない」という変わった価値観で、仏壇の扉に鍵を取り付けちゃう父っていうのも相当変だ。
 というか。仏壇の扉が開くのが、朝起きた時と夜寝る前だけで。昼間はずっと閉まっている家というのも、相当珍しいんじゃないだろうか。
 まぁそれ以前に、仏壇を拝むのは祖母一人っていう家自体が変わってるんだろうけど・・・


 まぁとにかく。
 つまり、ここまでがあの出来事の第一幕だったと言えるのだろうなーって。

 そう。これは、今ふと思ったことなんだけれど。
 わたしの家族の仏壇をめぐるその話というのは、もしかしたら読んでいて不快感を感じる人も多いのかもしれないなって思う。
 だって、世間一般というのは「ご先祖は大事にしなきゃいけない」、「仏壇は大事にして日々拝まなきゃいけない」みたいなのが常識だからだ。
 ただ、何度も言うように、わたしの家というのは、家族で朝の挨拶とかしない家だった。
 家族では挨拶をしないのに、でも仏壇は拝むって──つまりそれは挨拶をするってことなわけで──わたしには逆に変に思えるんだけど…。

 もしかしたら、わたしのこの話が終わった後。
 「ほらみろ。先祖を大事にしないから罰があたったんだ」とか言う人もいるのかもしれない。
 うん。まぁ確かに…。
 そういう考え方にも「一理」はあるのかもしれないなぁ…とは、わたしも最近は思ったりする。


 そうそう。話を第二幕に進めなくっちゃ。
 しかし、第二幕って…
 うーん、ずいぶん他人事な言い方だなぁ…。
 だって、この話ってわたし自身の話なのに…
 もっとも。他人事みたいに話せるくらい、わたしの心の中で突っ放せてなきゃこんな話、そうそう他人に話せるものじゃないかなぁって気もするかな?
 なぁーんて。

 そう。第二幕の始まりも、やっぱりわたしは布団の中だった……


「A実、あんた、昨日の夜っ!
 また居間のテレビ点けっ放しだったでしょ!」
 階下から響いてきた、その激しい口調のその母の声に。布団で寝ていたわたしは思わず跳ね起きた。
 いや。それは決してオーバーに言ってるんでなくって。
 その前の夜に、試験の点数のことで母からかなりキツく注意されていたってこともあったのだろう。階下から聞えてきた母の怒った声に、それこそ目が覚めるより早く体の方が反応してしまった。
 「わっ!」って思った時には、わたしは布団から飛び起きるなり回れ右をして、ドアを向いて立っていた。

「一昨日の夜も、点けっ放しだったよね。
 朝起きて、居間の雨戸あけようと思って行ったら、戸の向こうがチカチカしててさ。
 ホンっト、いったい何んなのかと思ったわよ。」
 なおも聞こえてくるその階下からの声に、わたしは思わず、
「うぅーん…。なんだ、お姉ちゃんかぁ…。
 もぉ…。気持ちよく寝てたのにぃー…。」
 そんなようなひとり言をブツブツと言いながら、そして再び布団にペタンと腰を下ろした。
 階下から家を通じて低く聞こえてくるのは、姉が母に何か言っている声なのだろう。

「ふぅー…。」
 時計に目をやれば、6時半前。
 起きるには早いけど、でもまた寝ちゃうには危険な気がする時間。
 これで寝すぎちゃったら、今度はわたしがあの声で叩き起こされることになる。
 とはいえ、まだ眠い。
「うぅぅーん、もぉぉ…」
 布団の上でぺたんと座り込んだままのわたしが、くちゃくちゃなタオルケットを抱え込んで頬をつけ、そんな風にぼやいていた時だった。
「だから、知らないって言ってんじゃない!」
「へっ!」
 聞いたことがないような姉の激しい声に、わたしは思わずビクッ!
「A実っ!あんたっ!」
 母のその激しい口調と時を同じくして、階下の廊下をダンダンと音をたてて歩く音の後、鋭くギぃぃって玄関のドアの開く音がし高と思ったら。
 いきなり、ドドーンっ!
「きゃっ!」
 それは、まるで家全体が揺れたんじゃないかってくらい激しくドアが閉まった音だった。


 しかし、こうなると…。
 朝っぱらから、母と姉が階下でこれだけの騒いでいて、わたしが起きないのはどう考えたって変だし。
 かといって、怒っている母と顔を合わすの気まずくて嫌だ(というか、わたしがとばっちりを食いそうだ)。
 しかし…(それに、まだ眠い)。
 うーん…。もぉ何なのよぉぉー!
 なんて、布団で思っている間もなかった。
 ダダダダダダーってもの凄い勢いで階段を上がってくる音がしたかと思ったら。
 わたしの部屋の戸を思いっきり叩く、そのドン!ドン!って音がするより早く母の激しい声が飛び込んできた。
「いつまで寝てんの、B子っ!」
「は、はい!」
 わたしが思わずそんな声を出しちゃった時には、母が向こうの部屋でカララララーっとガラス戸が開ける音が聞こえていた。


 顔を洗ったわたしが朝食を食べようと台所に行くと、そこはやっぱり誰もいなかった。
 そう。それは、祖母が仏壇のロウソクを点けっ放しにして、そのことで母がいろいろ言った一件以来ずっとだった。
 そういえば、あれからというもの、祖母はどこか元気がない。
 ううん。というよりは、たぶん母となるべく顔を合わせないようにしていたのだろう。
 そんなわけで、最近すっかりそれが当り前のようになってしまった、一人っきりの朝食を食べていた時だった。

「B子、ちょっと訊きたいんだけどさ…。」
 朝食を食べていて後ろから聞えてきた母のやけに静かな声に、わたしは、なんだか変なくらい胸がドキリとしていた。
 それは、とんでもないところを見つかってしまった時みたいな、なんだかそんな…
 だから、返事したわたしの声はわずかに震えていた。
「え、え…?な、なに…。」
 振り返って見た母の顔は、ついさっきの声のように怒っているという感じの表情ではなかったのだが。
 でも、なんと言ったらいいのか?
 今までわたしが見たことがないような表情をしていた。

「A実、あの子…。何かあったのかなーってさ。
 あんた、もしかして何か知らない?」
「何かあった?
 え、えぇっ!?」
「昨日、今日って、テレビが点けっ放しだったのよ。
 夜中…。」
「夜中?」
「朝起きたら点いてたんだから、夜中でしょ。」
「えっ、それってお姉ちゃんなの?」
「だって、夜中にテレビ見るなんて、考えられるのはA実くらいじゃない。」
「でも、夜中にテレビ点いてたら、2階まで聞こえると思うけどな…。」

 テレビのある居間は階段に近く、その居間の音は意外なくらい2階まで聞えてきたし。
 また、わたしの部屋は階段を上がってすぐ。つまり、居間のほとんど真上だったから、テレビが点いていると、なんとなく「わーん」ってテレビの点いている気配がした。

「うん。だからボリュームは下げて点いてたのよ。
 昨日も今日も。
 だからあたし、なおさら驚いたのよ。」
「えっ。でもその点いてたチャンネルって何番だったの?
 お母さんとお父さんが昨日の夜見てたチャンネルだったってことは?」
「そんなのは知らないわよ。とにかく朝起きてビックリだもん。
 あ、なに?B子。
 あんた、それ、あたしとおとうさんが
 点けっ放しにしてたんじゃないのかって言ってんの?
 あのね、そんなわけないでしょ!
 だって、あたしは毎晩テレビや電気や戸締り。
 ガスの元栓だって、全部ちゃんと確認してから寝るのよ。
 あんた、そんなこと知らないでしょ。」
「あ。う、うん…。」
 母の口調がまた怒った感じになってきたのを感じたわたしは、反射的にそう口を濁していた。

「あんたの部屋って、A実の隣りじゃない?
 あの子ね、最近夜中にトイレに行くことが多いのよ。」
「トイレ?」
「いや、だから、普通夜中に起きて行くとこっていったらトイレでしょ。」
「あ、うん…。」
「A実って、前はとにかく寝ちゃったら
 朝まで何があったって起きないって方だったでしょ。」
「えぇ、知らないよぉ~。
 お姉ちゃんが寝ちゃったら朝まで起きないなんて、そんなのわたしぃ~。」
「だからっ!
 あんたは部屋、隣りでしょ。
 夜だもん、物音とか聞こえるでしょ。
 夜中まで音がするとか、起きてるみたいとか、
 そういうことで気がついてたことがあったら教えてって言ってんじゃない。
 もぉさ、あんたって、そういうとこ、嫌んなるくらい察しが悪いのよねぇー。」
「そ、そんなこと言われたってー。。
 わたしだって、夜はぐっすり寝ちゃうし…。
 お姉ちゃんだって、部活で朝は毎日こんな早いし、帰りだっていつも遅いし。
 夜なんて、疲れちゃっててすぐ寝ちゃ──。あっ…。」
「ちょっと、B子。何よ、また、“あっ”て?
 こないだもそうだったんだけどさ。
 あんたの“あ”は、変に疲れんのよねー。」

 いや。わたしは、その時。思い出したことで「あっ」と口から出てしまったそのことを、母にすぐ言おうとしたのだ。
 でも、それを言うつもりで母の顔に視線を向けた時、その後ろでこっちを見ていた目に気がついて。そのことで、ちょっと驚いてしまって開きかけたわたしの口を思わず閉じてしまったのだ。
 たぶん、わたし…、その時って、とっても変な顔をしていたのだろう。
 母はわずかな間、わたしの顔を怪訝な顔でじっと見ていたんだけど。
 でも、すぐにハッとした顔になって、わたしが見ている視線の先をくるっと振り返った。
「あら、お義母さん…。
 お茶…、ですか?
 あっ、お湯…、沸いてたっけ?」

 わたしの母っていうのは、どんな時でもさっさっていう風に動く。
 その時もそうだった。
 母だって、祖母のあのどろりとした目にドキリとしていたはずなのに。
 そう。あの台所の入口のほんの間際のところから、わたしと母をじっと見ていた祖母の目は…
 そう、たぶん何かを考えていた目……だったんじゃないかなって。
 それは、わたしと母の会話をひとつひとつじっくりと、まるで言っていたことのひとつひとつを舐めるように確かめていたみたいな。
 うーん…。というよりは、わたしと母の会話の内容をはなっから疑って聞いていたみたいって言った方がいいのか?
 ううん。そんなことはないと思うんだけど。
 でも…。
 間違いないのは、祖母はその時わたしと母の会話をそこでじぃーっと聞いていた。
 そして、その会話の内容について何か思うところがあったんだと思う。
 なぜなら祖母は、わたしの視線が母から祖母に移ったことに全く気がつかなかったから。
 その祖母の目は、間違いなく話しているわたしと母を見ているというのに。
 でも、それはむしろ自分の頭の中をとろっとろっと覗いているんじゃないかって思っちゃったくらい、そんなような目の動きをしていた。

 そういえば、そんな祖母の顔がいつもの祖母の顔に戻ったのは、母が声をかけてからもちょっと間があったように思う。
 それに、その時の母の口調もどこか変だった。
 もしかしたら、母も祖母のその表情に何か感じていたってことなのかもしれない。

 でも、その時。
 いつもの顔に戻った祖母は、母が言ったその言葉にも、学校に行くわたしにも何ひとつ言うことなく、すーっ自分の部屋のほうに行ってしまっただけだった。


 祖母が行ってしまった後。
 母は、まるでなにか大事な忘れ物でもしたみたいに、しばらく台所の入口の向こうをポカーンと見ていた。
 でも、ふいに、
「あっ!ちょっと、こぉんな時間じゃない。
 あんた、早く学校行きなさいよ。遅刻するわよ。
 もぉー。そういえば、今朝って洗濯もまだ途中なんだっけ…。」
 そう言って。
 後はわたしのことを意識的に視界から外すようなそんな目の動きで、いつものように忙しげにどこかに行こうと。
 そんな母に、わたしはつい今母と話をしていて、姉のことで思い出したことを話そうと…。

「ねぇお母さん…。」
「え?何よ?」
 もう台所の入口の所にいて、半分だけ振り返ったその母の顔は…。
 なんだか、今までわたしと話をしていたことなんて全く憶えていないみたいな、そんな顔で。
 だから、わたしは、つい…
「ううん。何でもないの…。」
「うん。あんた、早く学校行きなさい。」
 それを言い終わるより、母の姿が見えなくなくなった方が早かった。


 その朝、母と姉のことで話をしていて、わたしが思い出したことというのは…
 それが、その何日前の夜だったのかはよくわからない。
 その時というのはわたし、夜寝ていて何気にふっと目が覚めて。
 ううん。それって本当に目が覚めたのかどうかはよくわからない。
 気がついた時は、またいつの間にか寝入っていて──何か変な言い方だ──そして朝、目を覚ました時だったから。
 そう。もちろん、朝になって目を覚ました時は、そんなこと憶えてなんかいなかった。
 そんなすっかり記憶からなくなってしまったことを思い出したのは、やはり母に姉のことで何か気づいたことない?って聞かれたからなのだろう。

 そう…。
 その時、わたしはふっと目を覚まして。
 ううん。目が覚めてそれに気づいたのか、それで目を覚ましたのか。
 それは、隣りの姉の部屋からだった。
 それは、うなされているような、荒い呼吸をしているような…。
 わたしは、布団の中で「お姉ちゃん、どうしたんだろう?大丈夫なのかな…」って、夢うつつに考えていた。

 うーん…。
 ただ、それって、どのくらいそう思っていたのだろう。
 隣りの部屋から聞こえてくる姉の苦しそうな声に、わたしは何かしなきゃ、何かしなきゃって思うんだけど。
 でも、わたしの大部分はまだ眠ったままみたいで。
 なおも聞こえてくる姉の苦しそうな声。
 わたしが、どうしよう、どうしようって、夢うつつに煩悶していたそんな時だった。
「きゃっ!」
「うぐっ――。」
 その姉の声を聞いたわたしが、布団の中でドキンとした時──そう。これも変な言い方だけど、もしかしたらあの瞬間が一番目が覚めていたかもしれない。
 その後、ちょっとして、いかにもそーっとって感じの、姉が部屋のドアを開けた音がして。
 パチンっていう、階段の電気のスイッチを点けた音がしたのは、そのすぐ後だったような気がする。
 そう。そういえばあの時、自分の部屋のドアの隙間から明りが洩れていたのを見た記憶がある。
 ただ、その後って…!?
 姉が静かに階段を降りていく音がしたのまでは、うっすらと憶えているんだけど…。
 たぶんわたしは、その後あっという間に眠ってしまったということなんだと思うんだけど…

 そう、あの夜の姉って、もしかしたら…。
 わたしがそのちょっと前になってしまったように、もしかしたら金縛りにあっていたんじゃないかって。
 わたしはその朝、それを母に言おうとしたのだ。
 でも、その時たまたま祖母がわたしと母を見ていたからなのか、それとも、いつものように母が忙しげにわたしのいうことを遮ってしまったからなのか。
 とにかく、そのことを言う機会は失われてしまった。

 でも、わたしのその予感って、実は当たっていた。
 そう。その後姉は、夜毎のそのことに苦しめられるようになり、やがて病院に入院することになる。



 現在になって、あの出来事っていうのをあらためて思い返し、そしてわたしなりに考えてみると。
 姉が入院…、ううん。入院って言ってしまうと、なんだかスゴクとんでもないことのようになってしまうんだけど。
 決してそんな大げさなことではなく、あくまで医者から気分を変えた方がいいんじゃないかと入院を勧められたくらいのことで、期間だって、確か1週間か10日くらいだったと思う。

 まぁつまり。
 その姉の入院までが、あの一連の出来事の第二幕だったのかなぁーって。
 ううん。何度も言うようだけど、第一幕とか第二幕とかって、ホント他人事な言い方だって思う。
 だって、これって全部わたし自身のことなのだから。
 でも、これも何度も言うようだけど。
 こんな風に他人事みたいに話せるくらい、わたしはあの出来事っていうのを心の中で突っ放せるようになったんだなぁーって。
 そのことは、自分でもなんだか不思議なくらいだ。


 うん。
 そんなことより、現在になってつくづく思うのは。
 あの出来事の中で姉がああいう体験してしまったのって、いったいなぜだったんだろう?




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2013
11.04

百ポ:15話目

Category: 怪談話


 B子さんが言うには。
 それがあったのは、小学4年生の時のことだったと……



 そういえば、「こっくりさん」の初体験って、いくつぐらいが多いんでしょうね。
 そういう私だと、確か小学4年の時だったような…(その記憶に小5の時に転校しちゃった友人が出てくるんで、たぶん小4だったんじゃないかと)
 現在の子供だと、もしかして、もっと早かったりするんですかね。

 ま、それはともかく。
 そういえば、子供の頃学校で「こっくりさん」とかが流行った時(タイミング)って、クラス替えがあったの後の5月に入る前後くらいから6月にかけてくらいが多かったように思うんですけど、どうでしょう?
 つまり、「こっくりさん」みたいなものって…。
 クラス替えという、クラスの誰しもがちょっと不安定な状況の中。
 やっぱりまだ不安定な関係である、新しく出来た友だちとのコミュニケーション手段という側面が、もしかしたらあるのかなーと。


 で、まぁ。そのB子さんもそうだったのかはわかりませんけど。
 B子さんも「こっくりさん」を初めてやったのは、やっぱりクラス替えをした小4のはじめ頃だったとかで。
 B子さん、連休はとっくに終っていたと思うと言いますから、まぁ5月の中旬か下旬くらいのことだったのでしょう。

 実はB子さん、「こっくりさん」みたいなことって、その時まで全く知らなかったんだとかで。
 それを始める前。
 友だちが書いていた、鳥居やら、五十音やらが書かれた用紙を見た時は、普通の小4の女の子の生活にはまず見かけないその違和感に、怪し気なドキドキ感があったといいます。
 その時っていうのは、B子さんは10円玉を押さえる係ではなかったらしいんですけど。でも、友達が押さえていた10円玉がするすると動き出した時は、ホントにびっくりしたらしいです。
 そして、それは他の友だちも同様だったようで。
 その一瞬、声にならない驚きが一斉にあがったといいます。

 とはいえ。
 まぁ内容的には、「誰々ちゃんが好きなのは誰?」みたいな、誰でもやるようなことを聞いたくらい。
 そんなこんなで終った時は、B子さんはじめ誰もが「ほっ…」っとしつつも。反面、「ちゃんと、しきたり通りに終らしたよね…。こっくりさん怒らすようなことしなかったよね…」って、心の中でドキドキしながら、誰もがどこか引きつったような笑みを浮かべていたと。
 そんな、みんなの顔に浮かぶ引きつった笑いが消えたのは、「こっくりさん」終了の約束事である、使用した10円玉で買い物をしたその後だったとB子さんは言います。

 ところが…
 B子さんにとって、その「こっくりさん」の刺激って、ちょっと強すぎたのか?
 いや。B子さん、もちろん、自分でそれを意識していたわけではないらしいんですけど。でも、その時の興奮が、夜まで残ってしまったみたいで。
 なんと、初「こっくりさん」をしたその日の夜に、初「金縛り」という……


 いやもう、そりゃビックリしたでしょうねー(笑)
 と、言ってしまえるのは、まぁそれは他人事だからで。
 B子さんに言わせると、あれはホントに怖かったんだと。
 なんでも、寝ていてふっと目が覚め、目が開いたその瞬間──。
 カっツーンっと音が聞えたような、聞えなかったようなと思ったら。
「はっ…。体が動かない!」
 何が起こったのかわからない、何が起こるのかわからないという、言いようのしれない恐怖感。
 やがて…
 それは、枕元とも、胸の上とも、よくはわからないんだけど…
 何か、白い人のような姿が感じられたと思ったら…
 そこからすーっと手が伸びてきたようなそんな気がして。
 さらに、急に息苦しくなってくる…
 その息苦しさは、なおも強くなっていって……

「わ、わ、わ、わーっ!」
 いや、B子さん。実際に、そんな声を出したんだかどうかはわからないんだと。
 ただ、B子さんがその声を出したと思った途端。
 ぽっつーんと。
 自分がいつも寝ている部屋の、暗く静まりかえったその光景を見回していたことだけは憶えている。
 でも、その後のこととなるとよくわからない。
 いや。それこそ金縛りのその時くらい怖い…、いや、もしかしたら正気に戻っているだけに、それ以上に怖い時間を過ごしたはずだろうに…

 ただ、B子さんが後から両親に聞いた話では、B子さんがわんわん泣きながら部屋に入ってきたってことらしい。
 でも…
 B子さんには、その記憶はまったくなくて……


「今だから言えるけど…。
 あれはホント、絵に描いたような金縛りだったなぁー。」
って、まぁB子さん。
 そんな人事のように言えるのは、現在ではこのお話の出来事──もちろんその金縛り初体験も含めて──が、過去のお話とスッパリ割り切れるようになったから。
 つまり、それっていうのは。
 B子さんの家で起きた、一連の出来事の始まりだったんだと……



 それに、最初に気がついたのは母だった。
 その時っていうのは平日の早朝で、わたしはまだ布団の中で。
 そう、確か…。
 あの金縛りからは1週間か、2週間くらい経っていたように思うんだけど。
 ううん。でも、このことを話すのに、その金縛りのことまでひとくくりにして話していいものなのかな?
 うん…。
 ホントのこと言うと、わたし自身、それってよくわからない。
 まぁ人って、普通…、こういう時のことっていうのは、思いつくこと、全部一緒のこととして話しちゃうものなんだろうけど…。

 そういえば。子供って、とっても怖い体験をしても、その時こそわんわん泣くけど、でも、あとは意外にケロッとしてたりする。
 そう。それは、あの金縛りの時のわたしも同じだったみたい。
 その時は、金縛りにあったことはほとんど気にしていなかったように思う。
 そうそう。例の「こっくりさん」の方は、あれからクラスでみんながやるようになっていたんだけど。
 たぶん、わたしはああいうことが合わないタイプだったのかもしれない。
 あの時以来、することはなかった。
 一切……


 そう、その朝っていうのは…。
 すごく蒸し蒸していたような記憶があるから、もしかしたらもう梅雨に入っていたのかもしれない。

「お義母さん!
 仏壇のろうそくは、その都度その都度必ず消してくださいね!
 昨日の朝も点けっ放しだったんですよ。
 あたし、起きて仏壇の扉が開けっ放しだから、
 あれって思ってみたら、ロウソクが点けっ放しで、
 もぉびっくりしちゃって、慌てて消しましたんですよ。
 ほんと、火事になったらどうするんですか。」

 その朝。わたしは布団の中で、怒ったような口調で何か言っている、母の声で目を覚ました。
 その後に聞こえてきた低いもごもごとした声は、たぶん祖母なのだろう。でも、それはまたすぐに母の大きな声に変わった。
「お義母さん、とにかく。
 火事なったら大ごとなんですから。
 このことは本当に注意してくださいね。お願いしますよ。」


 わたしの母っていうのは、気が強い人だった。
 一方、祖母は、母みたいな人にぽんぽん言われちゃうと、口ごもって何も言えなくなってしまうようなところがあった。
 わたしは子供の頃、気が強くて怖い母よりも、どちらかといえば祖母に親しみを感じているところがあったように思う。
 それは、母はずっと会社勤めをしていて、わたしは小学2年の夏まで祖母に育てられたからということが大きいんだと思う。
 それから、母に叱られた後なんかに、よく祖母に慰めてもらってたというのもあるだろうし。
 ただ、不思議なのは。現在の齢になってみると、むしろ母の立場──うん、気持ちというべきかな?──の方が、なぁーんか理解るって気がする。


 その朝、わたしが朝食を食べようとテーブルについた時。
 そこには祖母の姿はなかった。
 いつもだったら、朝食を食べるわたしを嬉しそうな顔で見ながら、お茶を飲んでいるのが祖母の毎朝の習慣なんだけれど。
 たぶんその朝は、母にキツイ口調で何か言われたことで、自分の部屋に戻ってしまったのだろう。
 だから、わたしが朝食のテーブルについた時、そこには誰もいなかった。
 父はいつも家を出るのが早かったし、姉は中学のバレー部の練習で、とっくに学校に行ったあとだった。

「あ、起きた?早くご飯食べちゃって。」
 たまたまその時台所に入ってきた母は、起きてきたわたしに半分だけ顔を向けてそう言うと。後は、母らしいテキパキした動作で、味噌汁の鍋に火を点け、せわし気にご飯をよそって。
 バタンとちょっと乱暴な感じにテーブルに置いた思った時には…。
 もはや母は、せかせかと台所を出ていった後だった。

 ううん。別に、わたしの家の家族関係が希薄だったとか、わたしと母は仲が悪かったとか、特にそういことはなかった。
 わたしの家族の雰囲気っていうのは、現在になって思えば両親の性格──それはたぶん特に母の性格──によるものだったんだと思う。
 そういえば、わたしの家では、朝起きた時の「おはよう」や、夜寝る前の「おやすみなさい」を言う習慣がなかった。
 まぁわたしも姉も、小学校の低学年の頃は、「行ってきます」や「ただいま」くらいは言っていたように思うんだけど。
 でも、それもいつの間にか言わなくなっていた。


 その場面っていうのは、なぜか現在でもよく憶えている。
 それは、朝食を食べ終わったわたしが、歯を磨こうと洗面所に行った時だった。
 その時の母っていうのは、洗濯物の入ったカゴを持って、洗面所をいそいそと出ようとするところで。
 そんな母に気がついたわたしは、慌てて道を開けるように廊下の端に寄った。
 というのも、母が家事等で忙しい時っていうのは、そうしないと母に怒鳴りつけられるからで──そう。母が仕事をやめてすっと家にいるようになったばかりの頃は、わたしも姉も母をイラつかせて、よく怒鳴られたものだった。

 せかせかと向こうに行ってしまった母の代わりに洗面所に入ったわたしは、ちょっとだけぼーっと立っていた。
 それは、すぐに歯を磨くでなく、鏡に映ったわたしの顔を何をするでなくぼーっと見ていた、そんなタイミングだった。

「B子。ちょっと…。」
「えっ!あっ…。」
 いや、その時っていうのは、わたしは、母はとうに洗濯物を干しに行ったと思っていたから。
 いきなりの後ろから聞こえた母の声に驚いてしまって。
 だから、急いで歯を磨いていた風を装おうと──。
 うん。わたしとしては、そうしたつもりだったんだけど。
 慌てていたせいか、手に取った歯ブラシを床に落としちゃって…。

「何やってんのよ、あんた。」
「う、ううん。歯…。歯、磨いてたの…。」
 歯ブラシを取ろうと屈みながら、わたしが言うと。
「磨いてたのって、まだ磨いてないじゃない。」
「う、うん…。そう…。」
「あのさ、B子。ちょっと…。」
「え?」

 その時っていうのは、わたし、母がそんな風にためらいがちに話をすることってあまりなかったから──それも、辺りの様子を伺うような仕種──ちょっと奇異な気がしたのを憶えている。
「B子…。」
 潜めた声で、わたしを手招きする母に。
 わたしはといえば、その手招きに引き寄せられるように母のすぐ傍らに寄っていったのだが。
 でも母は、そんなわたしを無視でもするように、サッと後ろを振り返った。
 そんな母の視線に わたしも思わずそっちを見たんだけど。
 でも、特に何もなくって。
 「…!?」って、戻したわたしが視線は、今度は、思いもよらぬ間近にあった母の大きな顔と大きな目にぶつかった。
 わたしはそのことで、おどおどしてしていたのだが、でも母は特に気づく様子もなかった。

「B子、お祖母ちゃんのことなんだけどね。」
「お祖母ちゃん?」
「うん。お祖母ちゃん。
 お祖母ちゃん、最近ちょっとボケてきちゃったみたいでさ…。
 あ、うん、ゴメン。
 そう…、最近ちょっと物忘れが多いっていったらいいのかな?」
「…!?」
「うん。それがね、仏壇の──。」
「あ…。」
「あっ、なに。もしかして、B子も気づいてたの?
 仏壇のロウソクのこと。」
「え…。」
「お祖母ちゃんが仏壇のロウソクを点けっ放しにしてたのを、
 B子も見たの?」
「お祖母ちゃん?仏壇?ロウソク?
 えっ…!?」
「B子ね、あんたがお祖母ちゃんのこと好きなの、それは全然いいんだけどね。
 でもこれは、大変なことなの。
 ロウソクの火、そんままにして、
 もし火事になっちゃったらどうなるか、B子もわかるよね。」
「う、うん…。」
「なら、正直に言って。
 いつ見たの?
 お祖母ちゃんが、ロウソク点けっ放しにしてたの…。」
「え…。わたし、そんなこと知らない…。」
「だからっ…。
 うん。ねぇB子。
 あんただって、仏壇のロウソクを点けっ放しにしてたら、
 危ないことくらいわかるよね。
 あたしだって、お祖母ちゃんにそんなこと言いたくないのよ。
 でも、言わなきゃしょうがないでしょ?
 だって、火事になったら大変だもん。
 あたしが気がついたのは、今朝と昨日の朝の2回なんだけどね。
 だから、それは今朝お祖母ちゃんに言ったの。
 気をつけてくださいねって。
 でもね。あたしが気がついたその2回以外にもあったんなら、
 もう一度お祖母ちゃんに言わなきゃいけないのよ。
 それはB子だって、わかるよね。」
「う、うん…。わかる…。」
「じゃぁ教えて。いつ見たの?」
「だから…。わたし、そんなこと知らない…。」
「B子っ──。」

 一瞬大声を出しかけた母は、はっとした顔で慌てたように振り返った。
 でもすぐに、またわたしの顔のすぐ傍にまで顔を近づけきて。
 怒った時と同じ、あの大きな目がわたしの目の中をグイと見つめて、そして言った。
「別にあんたが言ったなんて、お祖母ちゃんには言わないわよ。
 だから、正直に言って。
 いつ見たの?
 お祖母ちゃんが仏壇のロウソク点けっ放しにしてたこと…。」
「だから…。わたしは知らないのよ、ホントに…。」
「B子、あのね…。」
「ホントよ!ホントだって、お母さん。
 わたしのこと、信じてよ。」
 でも母は、大きくため息をついて、そして。
「あのね、B子。あんた、あたしがこの話し始めた時…。
 あんた、あたしが仏壇って言った途端、
 “あ…”って言ったでしょ。」
「え…。」
 そう。確かに。あの時わたしは、お母さんのその「仏壇」って言葉を聞いた時、思わず「あ…」と声を洩らした。
 ただ、それっていうのは…。
「言ったわよね?何か思い出したっていう顔して…。
 それは、つまりお祖母ちゃんが仏壇のロウソクを
 点けっ放しにしてたのを見たってことなんでしょ?」
「ち、違う…。違うの、それはね、お母さん…。」

 そう。あの時…。
 母が「うん。それがね、仏壇の…」って言った時。
 思わずわたしが「あ…」って言葉が出てしまったのは。
 そう。それは、何かこう…、唐突にイメージのようなものが脳裏に浮かんだから。
 ううん。イメージのようなものっていうか…
 ようなものっていうよりは、それはわたしの家の仏壇そのもので…
 真っ暗な部屋で、わたしは扉が開いているその仏壇を見ている。そんな、やけに鮮明なイメージと言ったらいいのか…
 その時わたしは、母にそのことをわかってもらおうと、一生懸命説明したんだけど。
 結局それは、母には伝わらなかったみたいだった。

 いろいろ説明しているわたしをじっと見つめる母の大きな目…。
 でも、それは、ふいに違う方を向いて。
「ふぅぅぅーーー……」
 そう大きくため息を吐いたと思ったら。
「うん。わかった。
 もういいわ…。
 でも、B子。
 あのさ、もし今度、お祖母ちゃんが仏壇のロウソクをつけっ放しにしたのを見たら、
 その時は教えて。
 それは約束出来るよね?」
「うん。わかった…。」

 わたしがそう返事したのは、もちろん祖母が仏壇のロウソクを点けっ放しにしたのを見たら母に教えるって意味だった。
 でもその時。母は、次からは教える──でも、前に見たのは教えたくない──という意味でわたしが返事したと解釈したような気がして。
 だからわたしは、そんな母に何か言おうとしたんだけど。
 何か言おうと思った時には、母は、また大きくため息を吐いて、私にクルリと背を向け廊下を向こうに行こうとしているところ。
 いや。わたしはその母の後ろ姿に向かって、何か言おうと──もちろん弁解を──したのだけれど。
 でも、その時わたしに出来たことといえば…
 口を2、3度、パクパクさせただけだった。




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2013
11.02

いやはや…



  ブログ、久しぶりにログインしようとしたら、
 パスワード忘れちゃってて(爆)

 いやはや…



 まだ、ちょっとバタバタしてますんで、皆さまのブログ。
 もしかしたらこの三連休はおじゃま出来ないかもしれません。
 週明け以降、時間を見ておじゃまさせてもらいますのでよろしく~








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2013
11.02

13話目-6

Category: 怪談話


百ポ:13話目-1はこちら
http://kaidansweets.blog.fc2.com/blog-date-20130923.html


 Rさんによると…

 Jクンとの電話の最中にいきなりあったその玄関の戸の音。
 その音の前と後では、Rさん自身の気持ちっていうのをまるっきり逆転させてしまったんだとか…


「そんなわけでさ、いやもーびっくりしたぁー。
 だってよ、いきなりだぜ。
 ホントまるでさ、外から誰かが玄関の戸を持ってさ、
 ガタガタ外そうとしてるって感じでさー。
 そういえばよ。
 この雨と風って、いつになったら止む──。」
「おい!なぁR…。」
 ふいにRさんの言葉を遮ったJクン。
「なぁそれってさ、ホントに風なのかぁ~?」
「だーから、Jぇー。
 オマエ、変なこと言うなよなぁー。
 なんかさ、オレ。今の戸のガタガタで驚いたせいか、
 ちょっと薄っ気味悪くなってきちまって──。」
「なぁR。オレのカンが当たんのはオマエも知ってんだろ。」
「カ、カンんん?
 ……。
 あ、うん!?え…」
「いやよー。
 オレ、自分でもカンがいいとは思ってたんだけどよ。
 なんかよ、今日のことでよ、
 オレって霊カンも強いんじゃないかって気がしてきてよ。」
「へー。」
「なぁR。オレのカンだけどよ、それ…。
 その今の玄関の戸がガタガタ鳴ったのって…。
 やっぱよ、Cなんじゃね…。」
「おいJぇ~。オマエ、それやめろってぇーっ。」
「Cがよ、今日自分のウワサをしてたヤツの家に順々にさ…。」
「バカか、オマエはぁー。
 そもそもCはオレのウチ知らねーし。
 ていうか、オレのことすら知らねーだろ。
 だって、口聞いたこともないんだぜ。」
「いやぁー。
 Cがオマエのこと知らねーかどうかはわかんねーぜぇ…。」
「おい、カンベンしろよぉぉ~、オマエ…。」


 Rさんによると…

 そんな風に、Jクンと愚にもつかない話をしていた時だったと。
 Jクンが煽ってくるんで、ついそうなったんだかどうなのか?
 Rさん、ふいに背筋がぞわぞわーっと冷たくなってきて。
 思わず、「うっわ、ぉぉぉ…」って首をすくめた時。
 ふっと、玄関の引き戸に目がいったRさん。
 その曇りガラスの格子越しに映った風で激しく揺れている庭木の影を見ていたら…。
 あの、さっき玄関先で何かを人の姿と見間違えた時の映像が、脳裏にまざまざと甦ってきたんだとか。

「……。」
「なんだよ、Rぅー。
 どうしたんだよ、いきなり黙っちゃって。」
「あー、J。
 そう。そういえばな…。」
 いつものパターンならRさんがひと言言えば、あーでもないこーでもないと、愚にもつかないことばかり何倍もしゃべりだすJクンなのに。
 その時に限っては、なぜか口を開かずRさんの話すのを待っている。

「そういえばよー、さっきな……」
 そう言って、Jクンに先ほどのことを話し始めたRさん。
 こんな雨風の夜に玄関の外に出ることとなったいきさつから話はじめて、そういえば、それってやっぱり今と同じく玄関の戸がガタガタ鳴りだしたからだったんだっけ…なんて思い出しながら。
 玄関先で、風雨に荒れる夜の光景を見ていたこと……
そう。あの大量の雨に覆われた真っ黒な夜の光景。
 そんな時、玄関の戸の様子を見終わったお父さんが、その夜の光景の中に懐中電灯の光をぽつんと照らしたこと……
あの、頼りない感じのオレンジの光の輪。
 そんな時、玄関の外に出たままのお父さんとRさんを心配して、お母さんが後ろから声をかけてきたこと……
「おとうさん。どうなの?玄関の戸…。」
 その声でお父さんが振り返った動作にわずか遅れて、さーっと横に流れた懐中電灯のオレンジ色の光。そのオレンジ色の光が横に流れる途中、ぱーっと人の姿が浮かび上がったように見えたこと……
そう。あれはまるでこっちを見て立っていた…、
ように見えた。
 そして、その人の姿に見えたものは、Rさんも持っている学校指定の合羽を着ていた……、
ように見えた。

「うん。だからさJ…。
 いや、うん。なんていうかなー。
 ほら、だって一瞬のことだろ?
 何かを見間違えたに決まってるんだけどな。
 でもよー。あとで思い返してみるとよ。
 それに気がついたのは、ソレが着ていた合羽がびしょ濡れになっててよ。
 懐中電灯の光が一瞬当たって、
 そのびしょ濡れの合羽が反射したからのような気がしてよ…。
 でさ。これもあとで思い返して思ったことなんだけどな。
 その合羽っていうのがよ、
 ウチの学校の自転車通学用の合羽…。
 ほら、あのゴム引きの合羽…。わかんだろ、オマエだって。
 あれだったような気がして、しょーがねーんだよなぁ…。
 あと、そう。
 ソレの背っていうのがよ、
 ちょうど、オレくらいの背だったかなーって……。」

 そこまで言って、ふーっと大きく息を吐いたRさん。
 今までRさんの話に、全然口を挟まずに黙って──珍しく──聞いていたJクン。まるで、そのRさんが大きく息を吐くのを待っていたかのように。
「お、お、おいぃー…。
 ちょ、ちょっとそれって、オマエ…。
 えぇぇっ!?
 なぁR。
 なんかよ、それってまじヤベぇんじゃねぇのかぁー。」
と、Jクンの口調はなんだかちょっと怯えているような。
 一方Rさんは。確かに、電話をしている最中に玄関の戸が急にガタガタ鳴ったことで、気持ちが不安定になってはいたんだけれど。
 とはいえ、その瞬間はまだそんなには怖いって感情が…、それこそそんな感情が次から次へと湧いてくるってわけでもなかった。
 だからこそ、何気にそんな話をJクンにしちゃったわけだけど。
 でも、それを誰かに話しちゃったことで、自分まで怖くなってくるっていうのは往々にしてあること。

「おい、R…。
 オマエ、それってさ…。
 うぅぅ~。オレ、なんかヤダ……。」
「なんだよ、オマエぇ~。
 オマエがそんなこと言ってっから、オレまでなんか…。」
「いやよー、R。
 オレ、今、思わず後ろ見ちまったよ。
 うわぁー、なーんかイヤーな感じだなぁ…。
 っていうか、オマエよ。
 それは、マジにCが来たってことだろ。
 だってよ、学校の合羽着てたんだろ?」
「いや、だから…。そんな風に見えた気がしたって──。」
「だってよ。オレが聞いた話もそうなんだぜ。
 この雨と風の中、
 誰も歩いてない真っ暗な道を傘も差さないで。
 合羽の上だけ着て、ずぶ濡れで歩いてた…って。
 オレが聞いたのは、ただ合羽ってことだったけど。
 でもそれって、
 大人の人が見たからたんに合羽って言っただけでよ。
 オレとかオマエが見たら、
 たぶんウチの学校の合羽ってわかったんじゃねーのかぁ?
 だから……。」
 ふいにそこまで話していて、急に黙ってしまったJクン。
 Rさんとしては、それが変に気になってしょうがない。
「だから…って…。
 おい!な、何なんだよ、それ…。」
「だからよ、間違いねーってことだよ。
 それ…。
 オマエが見たのは、絶対Cなんだって。」
「いやだから、オマエ…。」
 なんだか、思わず後ろを振り返っちゃったRさん。

「オマエっ、Jぇぇーっ!。
 それっ、マジやめろよなぁぁーっ!」
「いやな、R。
 オレは、そういう霊とかそういうことって、
 詳しくねーからなんとも言えねーけどよー。
 なぁR…。
 ホント言うとよ。オレ、オメぇの話聞いてる間中、
 ずっと背中がゾクゾクってきててよ…。」
「あっ。それってオレも…。」
「だぁろぉぉぉう?
 だからヤベぇんだよ。たぶん、この話ってよ…。
 あぁー、オレ、なんか寒くなってきた…。」
「さ、寒くっなってきたって…。
 おい、J。いくらなんだって今は夏だ――。
 えぇっ!?
 あれっ?うん。そういえば…。」
 Rさん、その時はじめて暑さを感じない、それどころかやけに涼しいってことに気がついた。

 な、なんなんだよー。
 えぇっ…。
 なんで、いきなりこんなに涼しくなってんだよぉー。
 そんなRさんの目は、いつの間にか、あてどもなく辺りをさまよいだしている。

 廊下の向こう…
 そして、その奥…
 それは、その奥に行くにしたがって暗くなっていって…
 さらに奥は台所…
 そこは、曇りガラスの窓から外の灯りが入ってきているのだろう。
 青黒く、ぼんやりと照らし出されているテーブルとイスの黒いシルエット…
 心無し、それらが揺れているのは、もちろん外からの光が風で揺れているからなのか。
 台所の手前には、居間の戸から洩れくる黄色い光。
 さらに手前の、暗くシーンと静まり返っている階段の上り口…
 一方、振り返れば、玄関の格子戸の曇りガラス越しに、やっぱり青黒く揺れている庭木のシルエット。
 それはなんだか、さっき玄関先で見た人の姿を…、ううん。見間違えたモノを思い出させるような……
「ううっ…」
 そんな、Jクンと電話で話しているっていうのに、ぽかんと現れた一瞬の静寂の間。
 いや、もちろん。外は相変らず激しい雨と風が吹き荒れていた。


 それは、いきなりなんてもんじゃなかった。
「わーっ!
 な、なんだっ!
 おいっ!な、何だよ、これーっ!」
 Rさんは、受話器の向こうのそのJクンの絶叫──それは絶叫という言葉が決してオーバーでない声──に、思わず飛び上がった。
「な、な、なんだよぉー!オマエっ…。
 ホント、オマエ、やめろよなぁ…。」
「えっ、雨…!?
 こ、これって、雨の音なのか…。」
「なんだよ、どうしたって言うんだよ。
 なぁJ。何がどうしたんだよっ!」
 Jクンが電話の向こうで、雨がどうのこうのと言っているのは、もちろんRさんの耳には聞えていたた。
 でも、その前のJクンの絶叫と言っていい声に。Rさんとしては、電話の向こうで何が起こっているのかと、もう気が気ではない。
「なぁJっ。何がどうしたっていう──。」
「うぉわぁー!うぇー…。
 ア、アセっったぜ、Rぅ~。
 いっきなりよ、すっげー雨が降り出してよ。」
「雨ぇぇぇえ~?
 すっげーぇえ~?」
 何言ってんだ?Jのヤツ…。
 すごい雨って、今日はずっとすげー雨が振り続いてんじゃん。
 そう怪訝な思いで、また何気に辺りを見回すRさん。Jクンが雨って言ったせいなのか何なのか、今度は無意識に天井の方も見上げた。
「うっわぁー。すっげー雨だー。
 オレ…
 こ、こんな雨、生まれて初めてだよぉー。」
 辺りを見回しているRさんが持つ受話器の向こうから聞えてくるJクンの声は、まだなんかうわずった口調。

 雨って…?
 雨なら、しかもすっげー雨なら、昼からずっと降り続いているよなぁ…。
 え?それとも、Jの家の辺りはそんな降ってないんだろうか…!?
 いや、そんなバカなことあるわけないよなぁ…なんてRさんが思っていると。
「うん。Rぅ~……。」
 受話器の向こうから、やっと普通の口調になったJクンが、また何かしゃべりだした。
「…!?」
 そう。受話器の向こうで話しているJクンの声は、いつもの口調に戻ったんだけど……
「うん!?。」
 いつものJクンのおしゃべりと一緒に、それとは違う声が…
 あ、うん。声じゃないのか…
 うん!?
 なんだ、これ……

「こんな雨ってあんのかよー。
 オレ、もぉブっとんじまってよー。」
 それは、Rさんの耳にあいかわらず聞えてくる、Jクンの声とダブる変な低い音。
 な、なんだよ、これ…。
「なぁ、R。こんな雨降ったらよ。
 Q川って、ヤベーんじゃねーのかぁ~。」

 そんな受話器の向こうの、Jクンの声とダブって聞える音が…。
 受話器の向こう側がいきなりこっち側に来ちゃったような、そんな気配をふいに感じてRさんが視線を天井を走らすように振り返った時だった。
 ドドドドドーーーーーっ!
 それは、Rさんの背後からやって来たかと思うと。
 一気にRさんの真上を突っ走っていって、さらに向こうに一気に駆け抜けていく。
「うわぁぁぁーっ!」
 それは、つい今さっき受話器の向こうでJクンが発していた声と全く同じ。
 Rさんのその絶叫と言っていい声に、受話器の向こうでもJクンが飛び上がっていた。



 Rさんによると…

 あの時のあの雨っていうのは、雨というよりはデッカイ滝が屋根の上を通り過ぎていったみたいだったと。
 ドドドーーーっていうあの音は、雨音なんてレベルでなく。
 戸や壁が共鳴してズズズーンと鳴りだすような、むしろ地響きっていった方がピッタリくる感じだったと……


 Rさんによると…

 いや、大変だったのは実はその後だったんだと。
 電話の最中の玄関の戸のガタガタで、そもそも心が不安定になっていたところに。Rさんが見た玄関先の人の姿と、Jクンが聞いたCクンの幽霊話の合羽という符合。
 そして、その後の生まれて初めて体験した、怖くて震えがくるようなもの凄い雨。
 いや、さすがにその豪雨自体は30分くらいで収まったらしい。
 でも、その後も雨と風は一晩中続いて…。
 それに、雨や風、さらには湿気と気温が急激に変化したせいもあったのだろう。ビシバシ家鳴りの音も加わって、いやもうRさん、それこそ一晩中ビクビクし通しだったとか。
 そう。このお話の最初の方にも書いたことだけれど。
 Rさん、強い雨の音をずっと聞き続けた夜がやっと開けて、庭に太陽の光が射しているのを見た時は、なんだかわからないくらいほっとしたと言う。
 そしてそれは、家の誰もが同じだったみたいで、みんな一様にやっぱりほっとした顔をしていたと……


 Rさんによると…

 Rさんの町は、雨のあがったその日から、町を横断したCクンの幽霊のウワサでしばらくもちきりだったんだと。
 そして、その広まったウワサは、どうも例のJクンのおしゃべりも大いに関与していたみたいで。
 Rさんの家に、友だちやら昔の同級生から電話がかかってきては、「オマエ、あのCってヤツの幽霊見たんだって!」って。
 とはいえ、Rさんも、あの怖くてしょうがなかった一晩のことなんかすっかり忘れちゃったのか?
 「いやよー。間違いなくアレは学校指定の合羽着てたぜ」とかなんとか煽ったり、笑ったり話していたんだと。

 つまりはまぁ。
 オバケだ幽霊だとかなんとか言っても、咽喉元過ぎればなんとやらってことなのだろう。



 しかし…
 そんな町の怪談話が、まるで風船から空気が抜けるみたいにあっという間に話されなくなったのは、夏休みが終わり、学校が始まって間もなくのことだったらしい。
 その始まりは、亡くなったCクンと釣りに行っていた例のAクン。
 「あの幽霊のウワサ…。あれって、たぶんオレのことなんじゃないかなぁー」って、Aクンが学校の友だちに話したのが始まりだったらしい。

 そのAクンの話によれば。
 雨宿りに寄った親戚のDさん(従兄弟のEクン)の家があるのは、L町だし。
 L町から、自分の家のあるF町に向かうとなれば、その後はM町、N町、O町、S町を通るのが最短ルート。
 まぁAクン、実際当日にどの道を通って自分の家に帰ったかは完全には憶えていないらしいのだけれど──あの日っていうのは、とにかく雨と風が強くって。また、雲が低くって夏の夕方だっていうのに夜みたいに真っ暗だったから…と。
 あの時は、従兄弟のEクンに貸してもらった傘は歩き出してすぐに壊れちゃったから捨てちゃったし。
 それに、Eクンの家を出る時は、雨は小止みになってたからって合羽も上だけしか着てなかった。
 そんな状態だったから、雨足がぶり返したらすぐに全身びしょ濡れになってしまって、結局そんな状態で家まで歩いていたんだと言う。


 ただ…
 そんなAクンでも、首を傾げることがあるのだとか。
 それは、Aクンの家と亡くなったCクンの家の場所に関すること。
 確かに、二人の家は同じF町にあるのだけれど。
 でも、Aクンの家が町の中心部寄りの地区にあるのに対して、亡くなったCクンの家というのは町のはずれ側にある。
 つまり、例の幽霊の噂の正体がAクンなのだとしたら、Aクンの家より向こう。つまり、Cクンの家の方にはウワサはないはずなんだけれど……



 Rさんによると…

 あれからウン十年経った今考えてみても、あの日の雨っていうのはどう考えたって異常だったような気がすると。
 そう。
 あの、雨が屋根や庭の木にあたる、バツっバツっバツっという音とか…
 忙しない雲の動き…
 あの昼の暗さ、そして独特な夜の暗さ…
 空で鳴っていた風の音…
 そして、あの怖くなっちゃうようなドドーーっという雨の音……


 確かに、あの日のような雨や風の日っていうのは、その後も時々ある。
 でも、あんな肌触りを感じた日というのはない。

 そう。あれは、ホントそんな異常な日だった。
 そんな日だもん。そりゃ帰りたかったろうなぁーって思うよと、Rさんは言う。




13話目終わり。フっ!
                        ──── 第13話目「噂」 メルマガ配信日:12.11.13
                                             *無断転載禁止



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 怪談話の中でも、この13話目のような「帰る」系のお話っていうのは、独特の不思議感がありますよね。
 もちろん、その「帰る(帰りたい、ひと目会いたい)」っていう気持ちはわかりすぎるくらいわかるんです。
 でも、その帰る途中に何故あかの他人に姿を見せるのでしょう?(orあかの他人が姿を見たりするのでしょう?)
 もしくは、何故タクシー等の公共の交通機関を利用するのでしょう?

 その辺りがわからないんですよねー。
 というか、わからないというよりは…
 つまり、「魂」といえども、この世の法則に従って物理的に移動するしか術はないってことなんでしょうか?

 「魂」とか、はたまた「幽霊」とか「お化け」とか。
 人は、それらをわからないがゆえに「超自然」という線引きをして、それこそ物理的法則に反することでも何でも出来る「人とは全然異質なもの」として捉えがちですけれど。
 でも、それらは「超自然」でも何でもなく、あくまで普通の「自然」な何かなのであって。自然の摂理とか物事の道理とかいった、生者と同じく「自然の理(ことわり)」の中に属しているってことなんじゃないのかなーって、なんだかそんな気がします





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