2012
04.28

『春にして君を離れ』アガサ・クリスティ著

Category: R&R

 読み終わった感想をひとことで言うなら、地味な題材の割にやたら面
白く読める本ってとこでしょうか。
 面白い本が読みたい方、また怖いお話が読みたい方には、是非オス
スメします。地味なお話のようで、意外なくらいズンズン読ませてくれま
す。
 クリスティは、それこそミステリの元素みたいなものですから、さすが
にもう古いかなぁ…って思っちゃうのもあるんですけど、この本に関して
は古さは全く感じなかったです。
 ただ、落ち込んでいる時には読まないほうがいいタイプの本かもしれ
ませんね。

 まぁあらすじを言っても、別に面白さを損ねるタイプの小説ではないと
思いますんで書いちゃいますけど。
 表面を取り繕うことに腐心するタイプの主人公の女性が、旅行時の足
止めに遭ったことがきっかけで、自分の今までの生を振り返ることにな
る。
 その様々な場面を断片的に思い出すうちに、自分のいいと思うように
やっていたそれらの行為が、実はそれは家族全員から反感を買ってい
たと気づく(or 考えるようになって行く)。
 その結果、家族の中の良き妻であり良き母親である(と思っていた)自
分のポジションというものが、実は夫からも子供達からも疎まれた存在
でしかなかったと気づく(or 考えてしまう)。
というようなお話です。

 実はこの小説、読みながら、自分、もしくは自分の家族ってものを、こ
の主人公と重ね合わせて考えちゃう人が多いらしいんです。
 いや。そういう私自身も確かに考えました。
 ただ……

     ――― 以下、もしかしたらネタバレかも? ―――

 ただ、ふと思ったのは、読者に思わず自分や自分の家族に照らし合わ
せてそう考えさせてしまうというのが、老獪で狡猾な作者クリスティの仕
掛けだったのかなーっていう気がして。

 だって、人と人のコミュニケーションって、どんな人間関係だって基本
的には独善的なものだし、またそれ以外には方法がないですよね。
 独善的でないコミュニケーションなんていったら、それこそ「悪意」以外
存在しないんじゃないでしょうか。

 変な話、この本の紹介だって、私自身は良かれと思って書いているわ
けです(まぁたんなるブログネタという面も大きいですけど)。
 でも、私が良かれと思っても、それを受け取る人の感じ方は様々なは
ずです。
 紹介されて、いいと思う人、よくないと思う人。
 私の感想に共感する人、しない人。
 さらに言えば、共感できるがゆえに面白いと感じる人、面白くないと感
じる人。逆に、共感できないがゆえに面白いと感じる人、面白くないと感
じる人と、それはこの文章を読んだ方それぞれ違うはずです。

 つまり、私はこの本をこれこれこういう本です。面白いですよと紹介し
た。そして、私のこの文章を読んだ人がいて、その人はこれこれこう思
った。
 人と人の関係・コミュニケーションというのは、結局それ以外にはあり
えないわけです。
 そのことが、良い結果になろうと、また悪い結果になろうと…。
 
 つまりそれって、この主人公がしてきたこと、そしてその時に思ってい
たことと全く同じなわけです。
 しかし、もし私がこの本を紹介すると不快に思う人がいるかもしれない
からと紹介をやめてしまったら、コミュニケーションは成り立たたないと
いうことであり、それは今お読みになっているこの文章自体存在しない
ということです。

 相手の気持ちを慮るっていうのは、もちろん大事なことです。
 普通の人なら誰だってそれは感じているはずですし、また相手を思い
やれなかった、あるいは思いやってもらえなかった経験だって絶対ある
はずです。
 作者であるクリスティも、なんかしらそういった経験を元にこの本を書
いているようです。
 でも、だからってこの本を読んだ読者が、自らを、そして自らの家族を
この主人公に照らし合わせてしまったら、それはこの『春にして君を離れ』
という「サスペンス本」の狡猾な仕掛けに、見事嵌ったということになりは
しないでしょうか?

 とはいうものの…。
 例えばジェットコースターというモノは、そのスリルを素直に怖がるか
ら面白いというのも事実なわけで。
 ジェットコースターを怖がって楽しめなかったら、それこそおサルの
電車以下です。
 そう考えるならば、クリスティの術中に見事嵌まって自分の生を振り
返ってみる。そして、他者から見た自分の存在というものに不安を感じ
てみる。そのことにこそ、この本の面白さはある…。
 というか、それこそが「サスペンス本」であるこの小説の一番の楽しみ
方なのかもしれないなーという気もするんですよね。


 関係があるのか、ないのかわかりませんけど。
 夜中に目が覚めて、その時たまたま日常の不安や悩みを考えてしまっ
た時って、落ち込み度合いが異様なくらい激しかったりしません?
 つまりそれは、眠りから覚めたばかりという心の無防備・無力さゆえに、
つい深刻に落ち込んでしまうのではないかと思うんですけど。
 つまり、この本の主人公の女性が「それ」を考えてしまったのは、旅先
での立ち往生という不安ゆえにすぎなかったということなのかなーと。
 なにより、結末では…
 ま、そこは読んでのお楽しみということで。


 「怪談話」というものが、個々の人の体験の記憶をそれぞれが頭の中
で解釈した結果でしかないように。
 人の「生」というものも、所詮はそれぞれの人が思う(思い込んでいる)
自分の「生」を生きるしかない。
 もしかしたら、そんなものなのかなーと思ったりします。

 ところで…
 結局この主人公の女性って、そしてその家族って、本当のところどん
な人なんでしょうね?



5/21追加:
 偶然知ったんですけど、『タダイマトビラ』(村田 沙耶香著)という小説。
 読んだわけではないんであくまで想像ですけど、あらすじや感想を見ているかぎり、
もしかしたら『春にして君を離れ』と同じ素材を別の方向から見てる?別の調理法をしてる?って気がしたんですけど。
 機会があったら、『タダイマトビラ』って本を読んでみたいですね。
 また、両方読んだ人にぜひ感想を聞いてみたいです。


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2012
04.28

最近のお気に入りは『へいせいせい』


 なんだか、ネットの世界では酷評されまくりみたいですけど。
 大河ドラマの『平清盛』、すっごく面白いです。
 ドラマは、ほとんど見ないんですけどねー。『平清盛』は面白くて見て
います。
 視聴率が低いとかいう話ですけど、そもそも大河ドラマは骨太で面白
いヤツほど視聴率が低いような気がしますしね。
 もっとも、『平清盛』が骨太かっていうのは、まだまだこれから先を見
ないとわからないってことなんでしょうけど。


 ただ、ネットで言われていることっていうのも、いちいちうなずける気は
しますよね。
 カリブの海賊が出てきちゃったのには、「あぁ~あ、やっちゃった…」っ
て気がしましたし…。
(というか、あの海賊さんは去年の暮れにやっていた予告編ですでに出
 ていて、その時点で「あぁ~あ…」でしたね)
 よく言われてる町並みや衣服がボロボロなのは、よくよく考えてみれば
そりゃそうなんですけど(というか、今までが変)。ただ、清盛さんまでボロ
ボロなのは、たぶんヒップホップ的な小汚なファッションで若い世代ウケ
狙ってんだろーなーって気がしちゃうし…。
 そういう意味じゃ、清盛さんの、「みんな一緒。仲間だ、ガンバロー!」
的なあのノリも、若い世代ウケ狙いなんだろーなーって気がするし。
 清盛さんのお父さんの忠盛さんが、やたらオールマイティでカッコイイ
反面、子供達にはやけに物わかりがいいのも同じですよね。
 でっかい直刀振り回してんのは、ゲームファンウケ狙いなんだろーな
ーって感じだし。
 やたら、宮廷のオヨヨヨー的な場面が多いのは、宮廷ドラマが好きな
女性ウケ狙いだろうって気がしちゃいますしねぇ…。
(得子さまのキャラ造形は、ガンダムファン向けとか…)
 ぶっちゃけ、人気があったあっちゃこっちゃのドラマの面影をあっちこ
ちで感じちゃってしょうがないし。
 いくらなんでも桜の花びら散りすぎだし、しかも花びらの一枚一枚が
やたらデッカイし。
 ついでに言えば、オープニングの音楽のCGがキレイすぎちゃって、
いかにも今っぽいって感じの醜悪な映像になっちゃているし(オープニ
ングはカットして保存してます)。
 でも、それらを補って余りあるのが、時代の面白さなんですよねー。

 15回目の、藤原摂関家内の対立があからさまに表面化してきた場面の
後に、崇徳上皇と後の後白河法皇の会話のシーンの流れなんかは、見
ていてもうゾクゾクしちゃいましたね。
 来る保元の乱、平治の乱の役者たちが少しずつ少しずつ、その個性を
発揮し、ぶつけだしていくその様にグッときました。

 そういえば、脚本家の方も今回の『平清盛』では酷評されているみたい
ですけど。
 でも、15回目のそのシーンなんかは、ホント巧いなーって気がするん
ですけどねー。
 というか、あの脚本家は伏線をドラマチックに張るのが巧いですよね。
 やがて平家を滅ぼす源頼朝の命を救うことになる常盤御前を、清盛さ
んと源義朝を一緒に巡り逢わさせるなんて、なかなかニクイ展開です。

 ただ、あの方って、なんていうのかな?
 お話を8まで語った後、いきなり9を飛ばして10に行くような流れが時々
あるんですよね。
 15回目で言えば、清盛さんの弟の家盛さんが急死して母親が、実子で
はない清盛さんが家盛さんに触れるのを、異様な声で拒む場面。
 あの場面なんかすごい迫力だったのに、その回の最後ではあっけない
くらいに母親は清盛さんを受け入れちゃっている。
 つまり、その受け入れる心の過程が、見ている側には全然伝わってこ
ないんですよねぇ…。

 清盛さんの最初の奥さんが死んじゃった時の回なんかでも。
 最後の清盛さんは悲しみで暴れて祈祷のお坊さんを蹴り倒す場面で、
「忠盛は、(白河法皇の血を引く)清盛の物の怪の血を見たような気がし
た」的なナレーションで終るんですけど。
 見てる方は、「え!?その物の怪の血って、祈祷のお坊さんを蹴り倒した
ことを指してるのかな?」って、ちょっと考えないとわからないっていうか、
なんだかお話の展開から置いてけぼりにされちゃったような感じになっ
ちゃうんですよね。

 あとは、Nさんの方がタイトルが『平清盛』だっていうのに、視聴率稼ぎ
で壇ノ浦までやることにしちゃったせいもあるんでしょうけど。
(そこまでやるなら、いっそ平家滅亡後の鎌倉と後白河法皇が打々発矢
 から武家政権樹立するまでか、もしくは承久の変までやってほしいよう
 な…)
 展開を急ぎすぎるっていうか、見てる側が場面ごと場面ごとの余韻を
感じている間みたいなものが全然ないんですよね。
 15回目の、家盛の遺体に触れようとした清盛さんを母親がすごい声で
拒むシーンなんかでも。その迫力のわりには、次の場面にサラっと進ん
じゃうもんだから、見てる方は「迫力の割には、それほど意味のあるシー
ンじゃなかったのかな?」思っちゃたりで。
 また、その場面に迫力があるだけに、次の場面に頭をすんなりと切り
替えられなくて引きずっちゃう。引きずったまま次の場面を見てるから、
今度はその場面が頭に入ってこないんですよー。

 『平清盛』は、わかりにくいって言う人が多いみたいですけど、重要な
シーンの後にそのシーンの余韻を持たせるようなシーンを入れて、次の
シーンに行くようにすれば、見てる人はもっと理解しやすくなると思うん
ですけどねぇ…。
 とにかく、今のテンポだと、見ている方は登場人物の気持ちの変化に
ついていけないって気がします(第一部の最後ということになってる16
回目なんて、場面飛びまくりで落ち着かないのなんのって…)。

 とまぁ、面白いって言うわりには文句ばかりでしたけど。
 文句は、よく見てなければ言えないわけで(笑)
 Nさんにも、脚本家さんにも、役者さんや制作の皆さま方には、視聴
率なんて無視してホント頑張ってほしいですね(NHKが視聴率を意識
したら、それは民業圧迫です)。
 ホントかどうかは知りませんけど、視聴率稼ぐためにホントの奥さん
を出すとか、そんな変な小細工は絶対しないで欲しいですねー。
 だって、「大河ドラマ」って女優さんを見せるだけのドラマじゃないか
ら頭に「大河」って付いてるんだろうし。また、見てる方も別に俳優さん
や女優さんを見たくて見てるわけではないでしょうから。

 で、ふと思ったんですけど。
 『平清盛』が、あんなにボロクソに書き込まれているのは。
 もしかして、チクリチクリとあて擦られている現○○国政府の関係者や、
歴代の悪行がバレちゃった藤原摂関家と比叡山延暦寺の関係者の方々
が書き込んでいるんだったりして…
というのは、だったら面白いだろうなーっていう冗談です(笑)


12.9.9追記

 『平清盛』、平治の乱あたりから急激につまらなくなってきましたね。
 最近は、見る気が失せてきて…(かろうじて録画だけはしてあるんだけど)
 来週の予約欄に「待望の遮那王(義経)登場」なんて書いてあるの見たら、なおさらです。
 今さら、「大河」ドラマで源平合戦見たくないなーって。
 もう、「大河ドラマ」っていう看板はやめて、普通に歴史上の人物を扱った「ドラマ」ってことでいいんじゃないですかねー。
 その方が、見る人だって多いんじゃないでしょうかね。





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2012
04.20

15話目

Category: 怪談話

 C子さんから、お母さんのお話(14話目)を聞いた時というのは、大場
啓さん(怪談話で仮名といえばこの名前ですね)という、この会社のま
た別の霊感の人も聞いていたんです。
 大場さん、私と一緒にふんふんとC子さんが話してくれるのを聞いて
いたわけですが、話が終わってひと言。
「あー、あそこって、やっぱりおかしいんだなぁ…。」って。
 というわけで、以下は大場さんが語ってくれたお話です。


「たまたまさ、その寺で縁日かなにかあるって聞いてさ。
 当時は近くに住んでたからさ、休みだったし彼女と出かけたんだよ。
 意外に混んでてさ。屋台も出てたりで…。
 ひやかしながら歩いてたんだけど、いっきなり誰かと左肩がぶつかっ
 てさ…。」

「結構強くぶつかってさ。イテっ!って、一瞬ムカッてきたんだけどさ。
 ただ、そん時は彼女は俺の右側歩いてから、ずっと右向いてしゃべっ
 てたからさ。
 だからヤベッ!って思って、まず謝ったんだよ。」



「あっ!すみません。」
 即座に左側を見て謝ったのだが、誰もいなくて…。
「!?」
 慌てて後ろを振り返ってみても、近くに後姿の人など見当たらない。

 立ち並ぶ屋台…。
 夢中で話ながら歩いてくるおばさん達…。
 道の真ん中で立ち止まり参道を見つめている大場さんをちょっとだけ
怪訝そうに見て、通り過ぎていく親子連れ…。
「えぇぇーっ!?」

「何よー。どうしたのー?」
 見れば、彼女が強い西日を避けるように額に手をあて大場さんを見て
いる。
「今さ、俺、誰かとぶつかったよな?」
「どこで?」
「ここ、ここ。たった今。」
 大場さんのあまりに真剣な顔に、何を思ったのか笑い出す彼女。
「なーにワケわかんないこと言ってんのよ。」

 気のせいだったのか?
 それにしてもリアルな感触だった。なにより左肩がまだ痛い。
 とはいうものの、何かの加減の気のせいなのだろうとまた歩きだした時
だった。

「よー!おーいっ啓っ!」

 自分の名前を呼ぶ親しげなその大声に、思わず立ち止って振り返る大
場さん。
 でも、先ほどと同じ。
 後ろを見ても大場さんに呼びかけているような人は、どこにも見当たら
ない。

「またなのー?誰もぶつかってないって。だってわたし、今ずっとそっち
 (左側)見てたもん。」
 大場さん、しばらく彼女の顔を見ていたが、喉の奥に何かがこみ上げ
て固まるようなイヤーな感触を覚えて…。

「なんかここ変だ。帰ろう。」
 そう言って、彼女の手を取り引き返そうとするのだが、彼女はせっかく
来たのだからお参りだけでもしていこうと言う。
 仕方なく大場さんは、とにかく周囲に神経をはらいながら足早に本堂
の方へ。

「もー、さっきから何キョロキョロしてんのよー?」
「どうしたの?黙っちゃって…。なに怒ってんのよ?」
 彼女の言葉にも、大場さんはただ「うん」とか「ううん」とうなずく
だけ。顔も見ようともしない。
 ただ、神経をはりつめていたからなのか、それからは特に何もなく…。

 無事お参りを済ませ、参道を足早に通り過ぎる。
 隣の彼女は黙ったまま。
 マズイ雰囲気だなーっと思いつつも、とにかくここを出てからと、やは
り周囲に神経をビンビンさせた状態で歩く大場さん。

 やがて、最初の切妻造りの門が見えてきた。
 あと少し…。
 門をくぐって、門の前の広場のような場所をすぎ、前の通りに出たそ
の時だった。

「おい!なーっ啓っ!」

 まただ。
 さっきと同じ声。たぶん若い男…。

 でも、ここまでくればもう大丈夫だろうと振り返った大場さん。
 当然のごとく、どこを見てもそんな声で呼びかけていそうなヤツなど
見当たらない。

「もー、なんなのよー!」
 彼女ときたら、すっかりおかんむりの様子で。
「なぁ、今誰か俺のこと呼ばなかったか?」
「呼ぶ?わたしが?」
「違う。違う。男の声。若い感じの男の声。」
「知らない…。」
 彼女は、醒めた口調でそう言うと、くるりと背を向け駅のほうに歩き出
す…。
 大場さんは、そんな彼女のことが気になりつつも、もう一度門の方を
振りかえらずにはいられない。

 あいかわらずの雑踏。
 門に入っていく人、人、人…。出てくる人、人、人…。
 それを見ていたのは、ほんのわずかな間だった。

「うわっ!」
 何がなんだかわからなかった。
 いきなり、見ていた風景がグルンと縦に転がった。

「ど、どうしたのよ…。大丈夫?」
 慌てて駆け寄ってきた彼女が、心配そうに顔を覗き込んでいて…。
「イッテー…。」
 顔をしかめている大場さんの手をとって起こしてくれた彼女。



「えっ?えっ?えっ?何がどうなったんです?」
 話の最後がよくわからない私に、大場さんは苦笑いをしながら…。

「膝カックンってあるだろ?ぼーっと立ってるヤツの膝の後ろを、背後か
 らカクンって押すやつ。
 たぶん、あれなんだよ。ほんのわずかの間、門の方を見て、ぼーっと
 してた時にやられたんだと思うんだ。
 もう、見事にひっくり返っちゃってさ…。」

「やられたって、誰に…?」
「そんなもん、わかるわけねーだろ!」




15話目終わり。フっ!
           ―――― 第15話目「わかるわけない」*不許転載
                         メルマガ配信日:09.11.13


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2012
04.20

14話目

Category: 怪談話

 霊感つながりでもうひとつ。
 といっても、前のお話のBさんではなく、その会社のまた別の霊感の
あるというC子さんが、お母さんのD子さんから聞いたお話です。
 D子さんも、やはり娘のC子さんと同じく子供の頃からいろいろと感じ
る人だったということなわけですが……


 秋の日暮れ時、西の空はまだ赤かったといいますから、たぶん5時
前くらいのことだったのでしょうか。
 D子さんは地下鉄の駅を探して、ゆるーく坂になっている道をやや足
早に歩いていたといいます。

 都内とはいえ初めて来た場所で、方角的にそちらに向えば地下鉄の
駅があるはずと歩き出したらしいのですが、何度か曲がったりしている
うちに方向感覚が怪しくなってきたとかで。

 地下鉄の駅のすぐ傍には大きなお寺があり、それを目印に歩けばい
いはずなのですが、その肝心のお寺が全然現れてこないのです。
 その辺りっていうのは、クルマで北にちょっと走れば都内でも有数の
繁華街があるような場所なのですが、やけにうら寂しい感じの街並み
が続くばかり。
 道の左側は高い石垣。右側は首都高の高架。その高架の向こうは
コンクリートの暗い壁が延々…。

 ただ、今歩いている道に沿って首都高が頭上を走っているということ
は、道は合っているはずだし、左側の高い石垣の上は墓地なのかもし
れない。
 ならその目印のお寺に併設された墓地なのかも?とも思っていたそ
うです。


 やがて道は大きな通りにぶつかって…。
 西の空の赤みを遮っていた首都高が、頭上をうねるように向こうに向
かって行くのとは対照的に、道は右に大きく曲がっています。

 すると、ふいに結構名の知れた私立高校が右手に現れて。
 その校門から笑い声とともに生徒が出てきては、D子さんにクルリと
背を向けるように向こうの方に歩いていく…。

 その様子から察するに、駅はどうやらすぐ近くにあるようで、ほっと一
息。
 どこか足早だった歩調も、自然とゆっくりになって…。


 ちょっと歩くと地下鉄の駅の入口が見えてきました。
 駅への階段を下りようとして、ふと右側を見るとそこには切妻屋根の
立派な門。
「ああー、ここがQ寺なんだ…。」
 有名なお寺なので名前だけは知っていましたが、実際に来たのは初
めてです。

 D子さんはわずかな時間足を止め、門を見ていて、ふと…。
「あれっ?」
 門から出てきた人影に見覚えがあるような気がして、目を凝らします。

「E子さ──、ウソっ!そんな馬鹿なこと…。」

 それは、何年も前に亡くなった親戚のE子さん。
 しかもそのE子さん、なんと表現したらいいかわからない恐ろしい形
相でD子さんのことを睨みつけながら、こっちに真っ直ぐ向ってくる。

 ずんずんずん。ずんずんずん。
 その足の早いこと、早いこと。
 あっという間に目の前に!
 眼前いっぱいに迫ってくる恐ろしい形相──。


 ふっと我に返ると…
 満員の地下鉄に揺られていた。

 家に帰ったD子さんは、娘のC子さんにこのことを話した後、最後にこ
う言ったそうです。

「わたしとあんなに仲良かったE子さんが、あんな恐ろしい形相でわた
 しを睨んでくるわけがない。だから、あれは絶対E子さんじゃない。
 あの場所は、なんか変だ…。
 わたしはもう絶対あの辺りには行かない。」




14話目終わり。フっ!
           ―――― 第14話目「都内某所にて」*不許転載
                         メルマガ配信日:09.11.8


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2012
04.17

13話目

Category: 怪談話

 今までウン十年生きてきて、身近で霊感があるっていう人は何人かい
たんですけど、今回はそんな方が出てくるお話を。

 私の知っている会社に、Aさんという人がいまして。
ある年の4月、その会社にBさんという人が新入社員で入ってきたんで
す。
 ちなみにその会社、一緒に仕事をすることがよくあり、私はAさんもB
さんもよく知っていました。

 2人とも生真面目なタイプだったのですが…。
 Aさんが、仕事に対しては真面目だけどプライベートではけっこう羽
目を外すタイプだったのに対し、Bさんというのはとにかく全てにおい
て真面目という、ちょー堅物タイプでした。
 そのくせ、霊感があるとかで、ゆえに当然なのか何なのか?まぁいわ
ゆる「霊」ってヤツを見ることが、よくあるとかで。
 つまり、どっちかっていえばちょっと変わった人みたいなイメージを、
まわりからもたれていたように思います。

 もっともその会社。そのBさん以外にも霊感があるという人が何人も
いて。
 まぁ類は類を呼ぶってことなんですかねぇ。会社自体、ちょっとかわ
った雰囲気ではありました。


 そんなAさんとBさんが、はじめて一緒に仕事をした時のことだったそ
うです。
 たまたまその仕事は作業がやたら多かったとかで、ある夜2人は会社
に泊まりこむはめに。
 大きな机を使った方が作業効率がいいということで、会議室の大きな
机で2人向かい合わせで作業をしていたんだそうです。


 終電も終わってしまった真夜中。
 もちろんフロアにはAさんとBさん以外誰もいません。
 都心とはいえ繁華街ではないですから、通りを走るクルマの音もほと
んどない静まり返った会議室。
 音といえば、机いっぱいにひろげられた書類をめくる音だけ。
 時々出すAさんの指示の声が、やけに大きく感じられる……

 そんな時間を過ごす中、Aさんは向かいに座るBさんに呼びかけられ
たんだそうです。

「Aさん、Aさん…。」
「ああー、ゴメン。疲れたろ?少し休むか?」
 Aさん自身、もういい加減疲れていて、Bさんに話しかけられたのを幸
い、少し休憩でもしようかなって思いながらそう言ったそうです。
 もっとも、たまたまキリの悪い時だったとかで、目は書類を見たままで
した。

「Aさん、Aさん…。」
 Bさんが、またAさんに呼びかけてきます。
 それは、なんだかせっつくように。

「ちょっと待ってくれよ。これすぐ終わるからさ。そしたらコンビ二行って、
 なんか買ってこようぜ。おごるからよ。」
 やはり書類を見ながらそう言うAさん。
「わかりました。すみません。今忙しかったんですね。」
 そう言って、黙ってしまったBさん。


 何分かしてやっとその書類が片付き、Aさんは顔をあげ、Bさんのこと
を見て言います。
「わりィーわりィー。
 コンビ二にでも買い出し行ってよ、少し休もうぜー!」
「いや、Aさん。私、実はAさんにちょっと聞きたいことがあったんです。」

 Aさんは、一瞬「?」と思いつつも、煙草に火をつけてBさんをうながし
ます。
 そのBさん、ふいに机の向こう側から乗り出すような姿勢になったかと
思うと、こう言ったんだそうです。
「Aさんは、今までに神を見たこと、ありますか?」
「……!?」
「…………」


 その沈黙の時間がどのくらいだったか、よくはわからないとAさんは言
います。
「いや、でもすぐそんな風に答えたんだと思いますよ。
 ほら、徹夜で仕事してる時って、テンション上がりまくりで異様なくらい
 頭の回転がよくなってる時ってあるじゃないですか。」
 私にこのお話をしてくれた時、Aさんはそう言って続きを話してくれまし
た。


「神を見たことがあるか?」という質問をした時とまったく同じ、机の向こう
側で身を乗り出したままのBさん。
 そのBさんにAさんは…
「見たことあるっているより、現にこの机の上にもたくさん居るだろ?
 紙(かみ)はさ…。
 さぁさぁ仕事!仕事!
 紙さまの野郎、こんなにタップリ居やがるぜ…。」


 その時、AさんはBさんの唖然としたような、それでいてどこか冷たい視
線を、痛いくらいにビンビン感じていたといいます。
 ただ、今そんな話に関わったら、この仕事は絶対終わらない!って思っ
て、その視線を完全に無視することにしたんだそうです。
 結局その夜は、2人とも朝になって他の社員がくるまで、まったく休憩な
しで作業したんだとか……。


 その後、Bさんは退職しちゃったんですけど、Bさんの思い出話が出る
度、Aさんは必ずこの話をして、そして最後にこう付け加えます。

「ああいう風にBが言うってことはですよ。
 Bは…、たぶんBは、神を見たことがあるってことなんですよね?
 いま思うと…。
 ちゃんと聞いておけばよかったなぁーって……」




13話目終わり。フっ!
              ―――― 第13話目「霊感話解禁」*不許転載
                           メルマガ配信日:09.11.6


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2012
04.17

怪談って何?~その3


 怪談好きとしては、怪談を話すことで楽しんでくれたり(ごくたまぁ~
に怖がってくれたり)してもらえるのが何より楽しいわけですけど。
 でも、それより楽しいことっていうのが、聞いていた側が「そういえば、
前にわたしもこんなことがあってさ……」みたいな感じで、自ら体験し
たor人から聞いたお話を語ってくれることです。

 そんな時ホントに面白いのが、実は普段怪談なんてあまり興味がな
い人、あるいは怪談なんて馬鹿馬鹿しいって思っている人(怪異って
のは、信じる人信じない人平等に訪れるものです)が語るお話なんで
すね。
 つまり、それこそ「いや、俺はさ。幽霊だとかそんなこと信じちゃいね
ぇーよ。いねぇーんだけどさ。あん時のことっていうのはさぁー……」
みたいな感じで話し始まるお話です。
 そういう方のお話っていうのは、いわゆる変な心霊知識のフィルター
や、怪談話にありがちな表現を無視して話してくれることもあって、お
話にすっごくリアル感があるんですよねー。


 怪談嫌いの人っていうのは、実は2種類あって。
 ひとつは、いわゆる「馬鹿馬鹿しいから大っ嫌い!」の人。
 もうひとつは、「怖いからキライ!」っていう人。
 それと、それ以外に「積極的に怪談ファンってわけでもないけど怪談
話を聞くのは結構好き」っていう人がいて。
 さらに、それらからも外れちゃった「いい齢して怪談話なんてもんが好
き」という、私みたいな因果な人もいるわけで。

 で、まぁ。怪談が馬鹿馬鹿しいからキライ!の人はともかく。
 怪談を聞くと怖いからキライ!ってタイプの人たち、。それと積極的に
怪談ファンってわけでもないけど怪談話を聞くのは好きっていうタイプ
の人たちには共通点があって。
 それは、怪談に対してそれらの性向のタイプの人たちっていうのは、
やたら血まみれだったり、悪意に満ち満ちていたりする今風な「実話怪
談」がイヤって言う人が多いってことなんです。
 まぁ、もちろん。それは、統計的なデータでそう言えるってことでなくて、
あくまで私の友人・知人の傾向なんですけど。

 ちなみに、なんで好きじゃないかって聞いてみたんです。
 すると、怖いからキライ!のタイプは「怖がらせようっていう意図が見
え見えなのがキライ」みたいなことを言う人が多いように思うし、また
積極的な怪談ファンではないタイプは「表現がオーバーすぎて嘘クサ
イ」みたいなことを言うことが多いように感じました。

 確かにねぇ…。そんな感はあるような、ないこともないような…(笑)
 今の「実話怪談」に出てくるオバケって、仁義に欠けるっていうか、節
操がないというか。もしくは、オバケが出るのが当り前(の世界)になっ
ちゃっているというか。

 いや。もちろん、怪談なら「(今の)実話怪談」が面白いっていうのは、
スっゴクよくわかるんです。確かにどんなすごいお話だとしても、それ
があまりに昔のお話だと、どうしたって身近感というか、臨場感に欠け
るっていうのがあるわけです。まぁその昔っていうのが、それこそ江戸
時代とかになっちゃうと、今度は頭がそう切り替わっっちゃえるんです
けどね。
 まぁとにかく。
 怪談話に何が大事かって、それはリアル感です(たとえ、それがホント
だろうとウソだろうと)。
 人が、それも特に怪談好きの人が、「実話」の怪談話を好むのはそれ
が「実際にあった事」というリアルさ故だし、逆に「創作」の怪談話を
嫌うのはそれが「創作ゆえに実際にはない事」という非リアルさ故です。

 「怖がれせようという意図が見え見え」とか、「表現がスゴすぎちゃっ
て…」、はたまた「そんなことあるわけねーじゃん!」って言われちゃう
のは…。
 それは、つまり「実話」という枕言葉に甘えて、そのリアルさってことに
細心の注意をはらってないからなんじゃないのかな?って気がしてしょ
うがないんです。

 怪談を語る側っていうのは、エンターティメントである怪談話の送り
手であり、怪談を聞く側っていうのは、エンターティメントの受け手な
わけです。それは、絶対的な構図です。
 受け手に「そんなことあるわけないじゃん。馬鹿馬鹿しい」って言わ
れちゃったら、それは送り手の負け、力不足ってことです。

 観客に「つまんない」って言われて、怒りだすお笑い芸人さんはまずい
ません。また、「俺の芸は特定の人にしかウケないから」と観客をえり好
みするお笑い芸人さんもいません。
 「怪談」というエンターティメントに現在求められているのは、つまりそう
いうことなのではないのかなぁーって思ってみたり…。

                     ―― 怪談って何?~その4につづく



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2012
04.15

怪談って何?~その2


 「怪談って何?~その1」で、怪談話って「超・ハートフル・ストーリー」
とも言えるかも、とか書いておいてなんですけど。
 最近思うようになったのは、「怪談話」っていうのはやっぱり怖くてな
んぼなのかなぁーっていうことです。

 いや。もちろん、「ハートフル・ストーリー」っていう切り口で怪談話を
語るっていうのはあるとは思うんです。それどころか、たんなる怪談話
を語るより、「ハートフル・ストーリー」みたいな切り口で語った方が、よ
っぽど読者層(マーケット)は大きい。
 それは、普通の怪談本と、「怪談話」をハートフルって切り口で語った
浅田次郎の『鉄道員』を比べてみればわかります。
 発行部数とか認知度、読んだ経験率等、実際の数字は知りませんけ
ど、まぁおそらく『鉄道員』の方が上ですよね(まぁ、作家のネームバリュ
ーが違いすぎちゃって、厳密には比べられないんでしょうけど)。

 ただ、怪談話っていうのは、どう屁理屈くっつけようと、所詮エンターテ
ィメントであるわけです。エンターティメントである以上、受け手の期待
に答えるしかないわけです。
 で、「怪談話」というものに対して、受け手が期待することといったら、
それは「怖いお話」です。

 ただ、怪談話というのは、怖さにこだわればこだわるほど、つまらなく
なる…、というか普通の人にとっては馬鹿馬鹿しいお話になっちゃうっ
ていう面があるように思うんです。
 もしくは、そのお話を語る人だけに通じる妄想ファンタジーといったら
いいのか。

 「怪談話」を読みたくて浅田次郎の『鉄道員』を読む人、あるいは「怪
談話」としてそれを読む人はあまりいないと思うんですけど、あのお話
は明らかに「怪談話」です。それも、ある意味「怪談話」としては陳腐と
言ってもいいくらいの。
 なのに、『鉄道員』は世間一般の人にウケる。
 それが何故なのかを考えると、もしかして「怪談話」としては陳腐だ
からなのかもしれないって思うんです。
 つまり、あまりにありふれた「怪談話」であるが故に、怪談ファンでな
い世間一般の人にも受け入れられるのではないかと。

 ただ、間違えてはならないのは、『鉄道員』はあくまで(怪談話でなく)
一般小説だということです。
 『鉄道員』を、いわゆる「実話怪談」のフォーマットで語ったら、それこ
そありがちで陳腐なお話にしかなりません。
 怪談ファンなら、「ありがちなお話かな」くらいのコメントはくれても、
世間一般の人なら鼻もひっかけてくれないでしょう。

 なんだか、際限のない話になってきちゃいましたけど。
 つまり。「怪談話」というのは馬鹿馬鹿しいお話であるが故に、思った
よりも難しいものなのかもしれないなーって。
 それは、受け手の「怖い」という期待に答えることと、語り手の「妄想
ファンタジー」にならないということ。その二つのバランスを巧みにとる
難しさ故なのでしょう。
 もしかしたら。よっぽど「怪談話」なんて枠組みの中でやるのはやめ
て。ただのエンターティメントとして、たんに面白いor面白くないのジャ
ッジの中でやった方が、まだ簡単なのかもしれません。

                    ―― 怪談って何?~その3につづく


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2012
04.15

53話目-2

Category: 怪談話

53話目-2

「どうしたんだよ?誰かいたのか?」
「うん。なんか変なジジイ。足腰が弱ってんのかな?もう立ってんのが
 やっとって感じでフラフラしてやがってよ。嫌ぁーな目でこっち見てや
 がった。」
「ジジイ?寺の坊さんじゃねーのか?」
「違うんじゃねーかな?確かオレが小学校ん時に、ここのジジイの坊さ
 ん死んじゃってよ。で、その息子が継いだって聞いたような記憶があ
 る。
 ま、大丈夫だろ。あんなよぼよぼじゃ、なんもできやしねーよ。」

 そう言って、また定位置の墓石に寄り掛かって落ち着いた2人。
 とはいうものの、すぐにまたシンナーを吸うって気にもなれなくて。2
人は、なぜか桜の木を見上げている。
 そんな2人を、ゆらゆら、ゆらゆら。もぞもぞ、もぞもぞと見返してい
る何千、何万という桜の花の目、目、目、目、目………。
「なんだか目みてぇだな…。」
「うん…。オレもさっきそう思った。」


 そんな時、前の植木の茂みがガサガサと。
 また、あのジジイかと腰を浮かしかけたXクン。
 しかしそれより早く、
「おめぇーら、花見アンパンかよっ!」
 と、半分だけのニヤニヤ笑いが木の間から覗いている。
「なんだ、Tか…。おどかすんじゃねーよ、バーカ。」
 ホっとして、また腰を落ち着かしたXクン。

 そんなXクンに、Tクンはからかうような口調で。
「なんだよ、X。オマエってよ、いつもスカしてっけど、実はユーレイと
 か怖ぇーんじゃねーのぉ?」
「そうそう。Xってよ、案外根性ねぇーんだよなぁー。」
「うっせーんだバーカ!今、変なジジイがあそこにいて、こっち見てや
 がったんだよ。おい、C!オマエも見てたろ?」
「えー?ジジイ…!?オレは見てねーぞぉ。」
 Cクンのその言葉を聞いたTクンは、さっきからのニヤニヤ笑いをさ
らに強める。
「なぁーんだよーX。オマエ、もうラリってんのかぁー。
 それとも、やりすぎてついに頭おかしくなってきたかぁ。」
「おめぇら、ざけてんじゃねーよ。オレは今日は、まだ全然やってねー
 んだよ。
 よっ、そんなことよりよ、T!今日はヤベーんじゃねーのか?こんな
 に花が咲いててよ。さっきのジジイみたく、花見とか来るヤツいるん
 じゃねーのか?」
 Xクンのその言葉につられるように、上を見上げたTクン。
「あぁー、コレか…。昨日の夜は誰もいなかったけどなぁー。」
「なんだよ、オマエ。昨日も来てたのかよ?」
「うん。まあなぁ…。
 でもまぁ大丈夫じゃねーか。もうすぐ12時だぜ。」
「なんだよ。もうそんな時間かよ。まだ全然やってねーっつうのによ。」


 遅れてきたTクンがCクンを挟んでXクンと反対側に、ドサっと腰をお
ろして。
 やっと3人揃ったというのに、なぜか何もしようとしないXクン達。
 3人の上、中空に広がっているもぞもぞと動いている花ばかりの枝
々を、ボーっと見上げているばかり。
 空には雲があるのか?くすんだ空の黒をバックに、白い花を無数に
つけた枝の1本1本が、それぞれ勝手気儘にもぞもぞもぞもぞ揺れ
ているその様…。
 さらによく見ていくと、その1本1本の枝でウジャウジャうごめいている
ひとつひとつの花…。
 そしてその花の中心の濃い部分…。
 それらを見ていると、頭の上の部分だけがキュゥって浮かんでいく感
じに、意識がどこかにいってしまいそうで……

「あぁぁー……、ずっとこのままキチガイになっててぇー…」
「バーカ。X、おめぇはもう充分キチゲェだろうがよ…」
 そう言ったTクン。それにニヤニヤうなずいているCクン。
 実は2人も、Xクンとまったく同じ気持ち……。


「あー、やっぱ冷えるな。ちょっとションベン。」
 そう言って立ち上がったXクン。
 その言葉で、まるでスイッチがはいったかのように我に返ったTクン
とCクン。カサカサ、カサカサとシンナーを吸う準備を始めだす。

 一方、Xクンもガサガサ、ガサガサ音を立てて塀の方の茂みに潜り込
んでいく。
 以前、Cクンが何も考えずにシンナーを吸っているすぐ傍で小便をし
たことがあって。たまたまそっちの方が高かったらしく、座ってシンナー
を吸っていたXクンとTクンの方にジョロジョロと…。
 それ以来、小便は塀の所まで行ってするというのが3人のルールにな
っていた。

 用が済んでまた2人の下に戻ってきたXクン。
 植木を掻き分けまた通路の所に出たXクンの鼻に、夜風に乗ってきた
のか、ほのかに感じられる花の香り。
「!?」
 Xクンはその香りに思わず歩みを止める。
 なんだ?花のにおいか…。
 花のにおいなんて、気がついたのは何年ぶり…、いやもしかしたら初
めてかも…?
 なんだ?なんだろ…?
 清々しい…!?
 ケッ!ダセっ!
 …………………… でも、そんな悪くもねーかもな。

 満開の桜の花の下では、TクンとCクンがシンナーを吸っている。
「おーい!X。オマエも早く来いよー。コレ見上げながらやると、かなり
 くるぜぇぇ~。」
「ああ…。」
 と、答えたもののそこを動こうとしないXクン。
 花のにおいをまた嗅ぎたくて、しきりと鼻から息を吸い込んでいる。
 でも…。
 風向きが変わったのか?
 たった今、感じた花の匂いはどこにもなくて…。
 自分でもなぜだかわからないガッカリ感。
 そんなXクンを、レオレロに笑ったTクンがオイデオイデしている。

 そんなTクンの隣に、どっかと腰をおろしたXクン。
「なにやってんのぉ~?オマエぇ~。」
 Tクンの首に腕をまわしてぶら下がるようにして、クククーっと小さな笑
い声をあげながらXクンを見ているCクン。
 すると今度は、のたーっとTクンの腕がXクンの首に絡まってくる。
 ククククーっ…
 ヘヘヘヘーっ…
 幸せこの上ないって顔でラリっている2人の顔を、Xクンは自分でも不
思議なくらいどこか醒めた目で見ていて。

「っ!!」
 Xクンは、思わずハっ!として、自分の首から手荒くTクンの腕を振りほ
どく。
 今度はそれを探すまでもなかった。

 ハっと見上げた視線のすぐ先。
 さっきのお爺さんが…
 頭上に覆いかぶさる桜の枝をバックに……
 Xクン達3人を見下ろすように立っている。

 その、皮膚が頭蓋骨にペタンと張り付いたような痩せこけた顔。
 なによりその目つき…。
 Xクン、「このクソジジイ、今度は胸倉掴んで揺さぶってやろうか」って
腰を浮かしかけた時。
 そのお爺さんの視線が、ズンっとXクンの両目に入ってきて。
 その視線はさらになおもズンズン、ズンズンと押し入ってくる。

「うっ…」
 怒っている…?蔑んでいる…?憐れんでいる…?
 メラメラ、ユラユラ、グルグル……、その他なんだかわからない感情だ
の光景だのが、次から次へとXクンの両目に押し入ってきて。
 そして、頭の中でグルグルグルグル回りだす。

「み、み、見てんじゃねーっ!ど、ど、どっか行っ──」
 それは、Xクンが空元気をなんとか総動員してそう言いかけた時。
 なんで今の今までそのことに気がつかなかったのか?
 な…、なんで、このジジイは胸から下がねぇーんだよ!?おいっ?
 そう、そのお爺さんの胸から下は真っ暗…。
 胸から上しかない痩せこけたお爺さんが、Xクンが見上げるすぐ前で
ゆらゆら揺れている……

 な、なんなんだよ、このジジイは…
 な、な、なんで、胸から下がねぇーんだよ…
 無、無い。無いって…、無いってどういうことなんだよ。えぇっ?
 そんなわけ──

 夜の墓地
 その暗がりにもっと黒々と浮かんでいる墓石達、卒塔婆…
 頭の上から覆いかぶさるように白い桜の木。
 その無数の枝の1本1本、延々とあるような花のひとつひとつ…
 その他にも狂ったように咲いている花々…
 隣の友人のトローンとした目
 つや消しの空……
 そしてなにより、目の前の胸から下のないそのお爺さん。
 気がつけば、Xクンを取り巻くあらゆる情景、その他ありとあらゆる思い
がゆっくりゆっくりと回りだしている。
 グルグルグルグルグルグルグルグル…………
 グルグルグルグルグルグルグルグル…………
 グルグルグルグルグルグルグルグル…………

「くあっーーーーっ!」
 どんな思いが頭を巡ろうとも、納得のいく結論なんてあるわけもない。
 結局、出たのは悲鳴だけ。
 不思議だったのは、その悲鳴を別の自分が聞いているみたいだったこ
と。
 こんな声、オレの声なのか?って…。


「くあっーーーーっ!」
 その悲鳴に驚いたのは、Xクンのすぐ隣でいい気持ちでラリっていた
TクンとCクン。
「なっ、なぁんだぁ~。X、変な声出してぇ~。」
「なんだぁ~X?ユーレイでも出たのかぁ~」
「えぇぇ~、ユーレイ!?クククク…。Xはやっぱ根性無しだなぁ~。」
「オマエよぉ、ダッセーなぁ~。ユーレイなんて怖がってんじゃねぇ~
 ってよぉ~。ばぁ~か~。ハハハぁ~」
 レロレロの口調で、半腰になったままのXクンの後ろをポンポン叩くTク
ン。Xクンはやっとそれで我に返る。

「オ、オマエら…、ヤ、ヤバイって…。ほ、ほら、立てよ。マ、マジでヤベぇ
 んだって。
 お、おいっ!ほらっ!立、立てよ!ほらっ!」
 必死で、2人を起こして逃げようとするXくん。しかし、ラリった2人はグ
ネグネと地べたでくねっているばかり。
「お、おい!ヤ、ヤバイって。逃げるんだって。お、おいっ!」
「なぁ~にがヤバイぃ~っ!ヘヘへーっ。あぁっ…!?
 うぉぉっ!?なんだぁコイツはぁっ?
 ……うわっ!うわっー!」
「なぁ~んだよ~、Tぃ~。オマエまでぇ~。オマエも根性無──。
 うわぁっ!な、なんなんだよっ!コイツはよっ!!」

 驚いたことに、今の今までラリっていた2人。見上げた先の胸から上
だけのお爺さんを見とめた途端、ソレをヤバイモノだと理解したみたい
で。
「わ、わ、わ、わ、……」
「たす、たす、たす、たす……」
 正気になったはいいんだけど、今度は一斉にXクンにしがみついてく
る2人。
 そんな2人をもてあましながらも、なんとか立たせてその場を逃げ出
そうとするXクン。
 それは、今だ足腰が定まらない2人を、後ろから追い立てるように塀
の壊れ目に向かって庭木の中に潜り込もうとした時。
 ソレを振り返ってしまったのは本能だったのか?

 桜の花が、まるでパァーっと照明でも点けたかのように墓に覆いかぶ
さる中。その中空に、まるで桜の木の枝からぶらーんとぶら下がってい
るように浮かんでいる、胸から下が真っ暗なお爺さん。
 あのなんともいえない嫌ぁーな目つきがペッタンって…。
 まるでXクンの肩か背中に、ペッタンって張り付いているかのように、
あの目つきが追いかけてくる。
 ズンズンズンズン、ズンズンズンズン、ズンズンズンズンと……
「くあっーーーーっ!」



 ところで…。
 Xクンがこのお話をすると、ほとんどの人がちょっと皮肉が混じった目
で笑って、こう言うんだとかで。
「そりゃ、ラリってて幻覚でも見たんだろう」

 Xクン、最初の頃は「そのジジイを見た時は全然やってなかったんだ」
とムキになって言ったりもしたんだけど。
 でも、Xクンがムキになればなるほど、誰もがXクンから目をそむける
ように。そして擦れたような笑いを浮かべるばかり。
 そのどこか蔑んだような笑いは、「いくら現在はやってないって言って
も、その頃そこまでやってたんなら、もしかして現在でもヤバイんじゃな
いか?」って思っているような気がしてきて。

 いつしか、その人が自分から距離を置くようになっているような。
 ふと気がつくと、ギクシャクしている関係……。
 そんなこともあってか、Xクンはしだいにこのお話を話すことはほとん
どなくなっていったんだとかで。
 確かに、シンナー中毒が進むと吸ってない時でも幻覚を見るようにな
るというのは、ほとんどの人が知っていることだから、まぁXクンが何を
言おうと信じてもらえないのは仕方がないのだろう。
 ある意味、吸ってしまったら、その事実はその人に一生付き纏うって
ことなのかもしれない。

 そういえばXクン。実は、現在でも不思議に思っていることがあるの
だと言う。
 それは、あの時あんなにレロレロだったTクンとCクンが、あのお爺さ
んを見た時、瞬時にソレをヤバイと認識したということ。

「ああいうのっていうのはよ、ラリった時みたいに余計な事考えてない
 時の方が素直に理解しやすいんじゃねーのかな?」
 めったに話さなくなったこの話。
 たまぁーに話す時、Xクンは最後に必ずそう付け加えるんだと。




53話目終わり。フっ!
           ――─ 第53話目「サイケデリック怪談」*不許転載
                           メルマガ配信日:10.3.21


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2012
04.14

53話目-1

Category: 怪談話

53話目-1

 この53話目のお話。実は、とある怪談サイトで一度紹介してもらった
ことのあるお話です。
 でもまぁあれから2年くらい経ちましたし、全面書き換えということで、
まぁ目をつぶっていただいて。
 ちなみにこのネタ、なかなかこの季節に重宝なんです。
 ずいぶん前の今くらいの季節、友人達にちょいっと話したら、まぁそ
こそこウケた…。かな?



 当時Xクンは、不良ばっかりが通ってることで、ちょっとは名の知れ
た都内のある高校に通っていた。
 ただ、そのXクン。いわゆる不良っていうよりは、自分の居場所が見
つけられなくて鬱屈してるってタイプだったみたいで。

 いつ頃からだったのか?
 授業で先生が何を言っているのか、さっぱりわからなくなって。
 小さな頃から外で遊ぶのが大嫌いで、家の中にばっかりいるような
子供だたから、スポーツなんかも全然駄目。
 かといって、ツッパって不良を気取るようなことにも興味なく。
 まぁ女の子への興味はあったんだけど。でも、女の子は誰一人薄
気味悪がってXクンには近寄ってこないし、なによりXクンの方でも女
の子ってヤツが薄気味悪くて近寄れない。
 TVに出ているアイドルなんかは、なぜか子供の頃から大嫌いだっ
たし、アニメやTVゲームにはまるわけでもない。
 つまり、学校の他の生徒の誰とも話の接点が持てなくて。
 せめて性格が明るかったり、もしくは愛嬌でもあれば先生や他の生
徒から好かれたのかもしれないが、それもなし…。

 そんなXクンみたいな人間、現代の学校社会に居場所なんてあるわ
けない。
 これが昔だったら、中学校を卒業してさっさと就職して、その中で自
分の居場所を見つけられたのかもしれない。
 でも、今は現代。そんな時代であるわけもなく。
 Xクンにとって、「高校くらい出とかないと…」って無理やり行かさ
れた高校での毎日は、自分の居場所の無さをさらに思い知らさただ
け。それこそ、1日1日が拷問以外なにものでもなかった。
 そんなXクンの鬱屈を、なんとか紛らわしていたのはシンナー。
 中学校時代の数少ない友人Tクンから勧められたのがきっかけだっ
た。

 そのTクン。
 Xクンと友人なくらいだから、彼もいわゆるXクンと似たタイプだった
のだろう。
 ただ、いくらなんでもXクンよりは多少は社交性があったのか?通っ
ている高校で、やっぱり同類の友人を見つけることができた。
 もっとも、1人だけ。
 それがCクンだった。

 そのCクンが、Tクンにシンナーを教えて、やがてXクンをまじえて3
人でシンナーにふけることになるのだけれど。
 つまりはまぁ。このどこにも居場所を見つけられない3人がこのお話
の登場人物ってわけ。


 最初は、TクンとCクンの家でやっていた。
 両親が共働きでどちらも夜遅くならないと帰ってこないTクンの家で
は昼間。
 片親で、親が夜の仕事をしているCクンの家では夜。
 3人で、好きなパンクを聴きながらシンナーを吸って、意識が朦朧と
してくると、授業やスポーツ、先生や友人関係といった自分たちを拒否
する学校生活の全てを忘れられた。
 心の内側の一番弱い部分。毎日の学校生活で赤くひりひりになった
その部分を、グラインダーか電動カンナで削り取られていくような、パ
ンクのガリガリした音。
 そんな心がガガガガガーっと揺さぶられる音の洪水に身をあずけて
いると、カミソリみたいな極薄の刃物で刺されるような甘いシンナーの
匂いが心のひりひりしたところに沁みていって…。

 もっとも。そんなこと、長くは続かないもの。
 シンナーを吸っていることを、まずTクンの親が気がついて。
 仕方なく昼間もCクンの家で吸っていたことで、Cクンの親も気がつ
いた。
 長い目で見れば、それはラッキーだったのだろうけど。
 でも、3人はまた居場所がなくなってしまった。

「オマエんちは?」
 と、TクンとCクン。
 Xクンの家は2DKのアパート。年の離れた弟がいた。
「無理か…。」
 TクンとCクン2人「フっ」と短いため息。


 唯一の居場所を失ったXクンたちの心を、容赦なく苛んでいく毎日の
学校生活。
 時々は、独りっきりで吸ったりもするのだが、なぜか3人一緒で吸う
時ほど気持ちがトンデかない。
 それは、Tクンも、Cクンも同じだったらしい。
 そんなある日。
「おい、X。いい場所見つけたぜ。」

 そこは、XクンとTクンが住む町内にあった、寺の裏手に広がる墓地。
 昼間は無理だけど、夜は墓地だけに誰も来なくて都合がよかった。
 その墓地の一番奥。寺の塀と植木、そして数知れず並ぶ墓石の間。
 そこが、新たな彼らの居場所になった。

 その場所を最初に見つけたのはまだ冬といえる頃だったが、囲われ
ている厚い壁のおかげか、冷たい北風は入ってこない。
 もちろん、だからといって寒くないなんてことはない。
 でも寒いのは寒いのだが、ガンガンに着込んでいればなんとか耐え
ることができた。
 というより、もしかしたらそんなまでして3人はシンナーを、そして何
より自分の居場所を欲していたってことなのだろう。
 とはいえ、真冬の頃はさすがに寒くてめげてしまうことも多いのも事
実だった。
 1人がそうしてめげて、その彼らの場所にやってこないと2人でやっ
ても、いまひとつ気持ちがいかなかった。


 そんな寒い冬も、やっと下火になってきたある日。
 なのに、いつもと変わらずたっぷり着こんで家を出たXクン。
 この1週間くらいでやけに暖かくなった…。
 Xクンは、歩いていてはじめてそのことに気がついた。
 なんなんだよ?今日はやけに汗をかくんだけど…って。
 ふと辺りを見まわせば、すれ違うのは軽快で明るい色のスプリング
コートばかり。
 襟にボアの付いた濃紺のドカジャンで、ぼってり着膨れしてるヤツ
なんて、どこにも歩いていない。
 ふいにシラけた気持ちになったXクンは、キュっと曲がって裏通りに。
 どうせ、寺の裏に回るのだからこの方が近道だし…。
 それに。こんな街灯がやたらと明るい大通りを歩いてると、中学校
の時同じクラスだったヤツとかに会っちまいそうだしな…。


 寺の塀が見えてくると、辺りは何の音もない。
 辺りは古い住宅街なせいか、明かりだらけのマンションがなくいつ
も青黒く静まり返っている。
 そのことに、とても気持ちが安らいだXクンは「ふっ」と短くため息
をついて。
 Xクン、この道で夜に人が歩いているのに出くわしたことはないんだ
けどな…、と思いつつそれでも一応前後に気をくばる。
 そして、それはほんの一瞬のこと。
 寺の塀と古い住宅が並ぶ細くその暗い道を歩いているXクンが、急
に見えなくなった。
 といってもなんのことはない。Xクンは、一箇所だけある塀の壊れた
所からスッと中に入っただけ。

 そうやって入ったところは、やけに植木が密集して生えた場所。
 春先で葉っぱが落ちている木々も多く、顔にはねてくる小枝が痛く
て思わす顔を伏せる。ドカジャンのナイロンの生地にもバチバチと音
をたててあたっているが、そっちは何にも感じない。
 とはいえ、すぐに抜けて──。

「おわっ!」
 やっと植木の中を抜け出て前を見たXクンは、思わず声をあげる。
 それは、普段なら何にも反応を示さない(フリをしている)Xクンには
珍しいこと。
「な、なんだぁっ!?」
 いつもの場所のその意外な光景に、唖然といちゃったXクン。
 青黒く沈んだ墓石達の上に、白いものぼわーんと広がっていて。
 そして、頭にのしかかるように、低く重く垂れ込めている。

「おい!X。早く来いよ。コレ見上げながらやると最高だぜ。グルグル
 回って頭ん中がブッとぶって感じだぜ。」
 桜の下の墓石に寄り掛かって、やけに陽気な声をかけてきたのは
Cクン。
 でも、たった今ちょっとだけ驚いちゃったXクンには、その陽気さが
なんだかとっても気にいらない。
「ちっ!酔っぱらいかよ…。」

 そんなことを言いながらも、Xクンは伸び上がるようにして墓石達の
向こうをサッと見た後は、すぐCクンの脇にドサッと座った。
 そして、その上一面に広がっている桜を見上げる。

 目のすぐ上で、ゆらゆら揺れている枝…。
 そして、そのちょっと上の枝…。
 さらに、横の枝…。
 その上、その横、その周り、そのそのそのそのそのそのその………
 どこまでいっても、ぼってり無数の花をつけた桜の枝が果てしなく揺
れている。
 黒い空の下。白い無数のそれが、小刻みにゆらゆらゆら、ゆらゆら。
ゆらゆら、ゆらゆら………
 もぞもぞもぞもぞ。もぞもぞもぞもぞ………

「なんか、気持ち悪くなってくるな…」
「だろう…。
 なんだかよ、やたらとわめきたくなる…。」
「バーカ。こんなとこで大声出したらヤベぇぞ。」
 Xクンはそう言った後も、なおも頭上の桜を眺めている。

 まるで、無数の目がまばたきしているみたいだ。
 まばたきしながら、オレのことを見おろしている…。
 見おろしてるくせして…。
 うん、なんだ?見おろしてるくせして、見てない!?
 いや、違うか。見てはいる。でも、なにも思っていない。
 ただオレのことを見てるだけなのか…。
 くそっ!フザけんな!

「なに、ワケのわかんねーこと言ってんだよ、バーカ。
 桜の花はフザけたりしねーんだよ。
 そんなこと言ってねーで、オマエもとっととやりゃぁ気持ちよくなん
 だよ。」
 かったるそうな口調で言ったCクンの左腕が、いきなりXクンの首に
ぐるりと巻きついてきて。そして、Xクンの口元にビニール袋を押し付
ける。
 それは、脳天に直接くる、スーっと刺すような甘い匂い。

「よっせよっ!」
 そう言って、Cクンの右手をちょっと乱暴にどけたXクン。
「なんっだよ、オマエ!裏切んのかよっ!」
「バーカ、怒んなよ。桜見てただけだろ。」
「ジジイか、オマエはっ!」

 ふと、Xクン。
 ズキン!となにかを感じて。
 それは…。そう、自分達をじーっと見つめている視線……。

 Xクンは、Cクンの顔を自分の方に向かせて。そして、グイと目をみ
つめてから、「シー!」っと人差し指をたてる。
「誰か、今こっちを見ている。
 ずっと。じぃーっと…。」
 それを聞いたCクンは、思わず体を伸び上がらせて辺りを見回そう
と。
「バカっ、C!オマエ、頭引っ込めてろ!」
 ヒソヒソ声で言ったXクンは、目を皿のようにしてまわりの暗闇を見
透かしている。

 右から左へと、ゆっくりゆっくり動いていくXクンのその視線。
 暗い墓場の隅から隅へと、舐めまわすように。
 少し前にある墓石の向こう…。
 その脇でバラバラたっている卒塔婆のシルエット。
 こんもり黒く丸い植木の横…。
 ツーっと遠くになるにつれ青味が濃くなっている通路の直線。
 その途中にある、一際白い雪柳の花の固まり。その後ろは、塀沿
いの黒々とした植木が植わ──。
「っ!」
 ふいにXクンの頭の中で像が形を成して、視線をすばやく右に戻す。

 それは、闇にぼわぁーんと揺れている雪柳の向こう。
 その暗がりの中、浮き立つようにある一際黒い高い木の下。
 その木の黒さに滲んだように立っているヤツ。
 そう。さっきから、こっちをじぃーっと見ているのはお爺さん…。

 寺のヤツか!
 だとしたらヤバイ。
 と、XクンがCクンを見ると。
 その、きょろんと見返してきて不安そうな目。
 大丈夫。この目なら、まだ一緒に逃げることが出来るだろう。
 声を出さずにうなずきあったXクンとCクン。
 そしてそれは、逃げ出そうとして、その前にもう一度雪柳の白い固ま
りの向こうの真っ暗闇を見た刹那――。
 Xクンは、急に気が変わった。
 よくよく見ればそのお爺さん。立っているのがやっとなのか、体がや
けにフラフラしている。
 けっ!こんな老いぼれなら、一声怒鳴れば逃げてくだろうと、Xクン。
「おらっジジイっ!見てんじゃねーよ。あっち行け! ぶっ殺すぞ!」

 その低くかすれた声。自分でもびっくりしたくらいドスが効いていて。
 その声に驚いたのか、逃げていくそのお爺さん。
 それを見たXクン、
「ヘヘっ。ジジイ大慌てだぜ。よたよた逃げてっちまったぜ。」
 とCクンに向かって笑いかける。
 笑っているくせして、胸の奥では心臓の動悸が止まらない。
 小刻みに揺れている右手…。
 それを慌てて後ろに隠すXクン。
 どこかホッとした顔のCクンを、Xクン軽くどついて、また笑って。
 Cクンもやっと笑った。



 
 ── 本日これまで!
                       53話目-1〈了〉*不許転載
                             53話目-2につづく
                         メルマガ配信日:10.3.20


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2012
04.11

65話目-2

Category: 怪談話

65話目-2

 和尚さんが部屋にお茶を持っていっても、Wの家の嫁さんはやはり庭
を見ていた。
 なにか考えごとでもしているのか?部屋に入ってきた和尚さんの気配
にも気づかずに振り返らない。

「あー、どうそ…。
 お茶、はいりましたから…。」
 その声に、ふっと振り返るWの家の嫁さん。
 それは先ほどと同じ。やっぱりニッコリ艶やかな笑みを浮かべた顔で、
和尚さんの顔をじっと見て。
「どうもすみません。和尚さんにお茶いれさせるなんて…。あたし、バチ
 あたっちゃいますかね?」
「いや、バチなんて…。私はただの僧侶ですから。そんなことはありま
 せんよ。
 それより、どうぞ…。」
「ありがとうございます。じゃ、遠慮なくいただきます。」
 Wの家の嫁さんは、そう言って湯のみを手にとって、そのお茶の入っ
た湯のみを一瞬だけじっと見つめて。
 そして静かに目を閉じて、そしてスススーっとかすかな音をたててお茶
を啜る。
 その音とともに、細いのどがわずかに動いていて…。

「もう、和尚さん。何を見ているんです?」
 Wの家の嫁さんは、いつの間にか湯のみを胸の前で両手で持って、ち
ょっと恥ずかしそうに笑いながら和尚さんの顔を見ている。
「えっ?…。あ、ええ。いや、あ、美味しかったですか?」
「はい。とても美味しかったです。それに、とってものどが渇いていました
 し…。」
「それはいけない。ではもう一杯。」
 和尚さんがそう言って急須を差し出すと、Wの家の嫁さんは湯のみを
前に差し出して。
 そして、急須から注がれるお茶と和尚さんの顔を交互に見ながら、また
ニッコリ。
 和尚さん、思わずその笑顔に見とれてしまっていたらしくて…。


「和尚さん、和尚さん。もうイッパイです。お茶が溢れちゃいます。」
「えっ?あっ!大変だ!あっ!
 ど、どうもすみません。つい、ぼうっとしていて。
 大丈夫ですか、熱くなかったですか?」
「いえ、ちょっと熱かったけど、これくらいなんてことないです。」
 そう言ったWの家の嫁さんは、なみなみとお茶が入った湯のみの前に
顔をそぉーっと持っていったかと思うと、先ほどと同じようにお茶をすすー
っと啜る。
「あー……」
 お茶をひと口、ふた口、飲んだWの家の嫁さんは目を細めて。
 その、声とはいえないような吐息のような声。

「おいしい…」
 Wの家の嫁さんの口からぽつりと出たその言葉は、なぜだか淋しそう
な響き。
 表情は、あいかわらず艶やかでふんわりとした笑顔なのに。
 その様子を観察していた和尚さん。あぁ、やっぱりお姑さんか誰かに
なんか酷いことを言われたのかもしれないなぁーって。
 Wの家の特にそういう噂は聞いてないが、あそこのお姑さんは時々変
にキツイ時があるから…。
 そうそう。あれは一昨年だったか?
 法事の時、急な夕立があって、前の家ですこし雨宿りしていて時間に
遅れたら。私には直接怒れないものだから、あとで寺にもの凄い剣幕で
怒鳴り込んできて…。

「和尚さん…。和尚さん…。」
「うん!?」
「どうしたんですか?急に怖い顔して黙っちゃって…。」
「あっ、いや。うん。まぁ…。
 あ、そうそう。ゆっくり休んでいってください。」
「はい。ありがとうございます。」

 そう言って、嬉しそうに笑ったWの家の嫁さん。
 後はまた庭の方を見ているだけ。
 時々、思い出したようにお茶をすすっている。
 和尚さんも、同じように春の庭を眺めてみたものの…。ちょっとばかし
手持ち無沙汰…。
 すぐ近くでは、ウグイスがいい声で鳴いている。

「そう…。確か、去年でしたよね?この村の嫁がれてきたのは…。」
「はい?」
 和尚さんが声をかけたのがいきなりだったからか、Wの家の嫁さんは
どこかきょとんとした顔で振り返って。
「いや、Wの家に嫁いできたのは去年でしたよね?って言ったんです。」
「はい。去年の今よりちょっと前くらいの頃です。」
「1年か…。早いものですね。
 どうです?この村の暮らしは?
 Wの家では優しくしてくれてますか?」
「えっ…。まぁ…。」
「あの姑さんは、根は決して悪い人じゃないんだけど、言葉がキツイ時
 があるから…。
 あまり気にしない方がいいですよ…。」

 また庭の方を向いてしまったWの家の嫁さんの顔を、後ろから窺うよ
うにそう言った和尚さん。
 ふいに、Wの家の嫁さんの体全体が、ビクンと固まってしまったよう
になって。
 そして、湯のみを持ったまま、下を向いてなにも言わない。
 和尚さん、こりゃ思っていたことが当たってしまったかと。
 どうしたものかと思っていた時──。

 急に和尚さんを振り返ったWの家の嫁さん。
 そのキッとした表情。
 つい今の今まで、若い女性らしい艶やかな笑顔のどこかにあどけなさ
を漂わせていたあの女性とは思えないその表情に、和尚さんは思わず
息をのむ。
「っ…」
「お義母さんたらいつも酷いんです。今朝だって…。
 だから…、だから、つい……。
 あたし、気がついたらここに来ていて…。」

 よくよく見れば、Wの家の嫁さんの顔に、鬼気迫る表情なんて影も形
もない。それどころか可哀相にぽろぽろと涙をこぼしていて。
「それは、辛かったでしょう。
 でも大丈夫。Wのヤツに、今度私からよく言っておきますから。
 Wはね、実は私の後輩なんですよ。学校に通ってた頃は私がよく面倒
 みてやったもんです。
 さ、あなたも元気出して…。Wはね、ちょっと頼りないところあるけれど、
 あれで優しいいいヤツなんですよ。絶対あなたを大事にしてくれるはず
 です。だから大丈夫。」

 和尚さんが、そう言って慰めた甲斐もあって、Wの家の嫁さんはまた
笑顔を見せて。
 和尚さんも、なんだかそのことがやけに嬉しくて。ほっと息を吐きつつ、
そして一緒に笑う。
 こうなったらものはついでと和尚さん。Wの小学校の時の失敗談を面
白可笑しく話して聞かせてやると、Wの家の嫁さんはころころ笑い出す。
 和尚さん、その笑い顔を見るのが楽しくて、次から次へとWの子供の
頃の話をしていて。
 そんな、今日の春のような時間をどのくらい過ごしていたのか……


 それは、本堂の方から聞こえた、かすかな物音がきっかけだったの
か?
 和尚さん自身は、もちろんその物音を気がつきはした。しかし、そん
な物音、特に何がどうとも思わなかったのだが。
 Wの家の嫁さんが、その物音に急にそわそわしだして。

「あたし…、そろそろ行かないと……」
 和尚さん、お姑さんのことが気になりだしたのだろうと。
「まぁまぁ…。大丈夫。
 いざとなったら、道でたまたま私に会って、用事を頼まれたって言え
 ば、誰も何も言わないと思いますよ。」
「まぁ…。フフフ。ありがとうございます。和尚さん。
 でも、ほんと、もう行かないと…。お茶、ごちそうさまでした。のどがと
 ても渇いていたんで助かりました。
 あと、そのほかのことも……。」
 そう言って、目を伏せるように立ち上がったWの家の嫁さん。
 そんなWの家の嫁さんを、なおも引きとめようとする和尚さん。

「あ、和尚さん?行く前に、お寺の仏さまを拝ませてもらってもよろしい
 でしょうか?」
 その言葉を言った時のWの家の嫁さんの表情ときたら…。
 なんとも心細げで、それはまるで少女のまま。
「うん?仏さま…!?ああ、もちろん。もちろん。じゃぁ、とりあえずお上
 がりなさい。こっちから行けば本堂へはすぐだから──。」
 と言いながら、廊下の方を振り返った和尚さん。
 そこに立っていた人の姿に、思わずドキン!と総毛だった。

「っ!」
 部屋の入口に立っていたのは、和尚さんの奥さん。
 和尚さん、なんだか思わず慌ててしまって。
「あっ、いや、Wの家のお嫁さんがたまたまいらして…。
 のどが渇いていると言うものだから、お茶をごちそうして…。
 そう、そうですよね?」
 和尚さん、しどろもどろでWの家の嫁さんに同意を求めると。
 あの艶やかなニッコリを浮かべて、「はい」とひと言。

 「ほらみろ」とばかり、奥さんの方を見る和尚さん。
 なのに、その奥さんの表情ときたら…。
 和尚さん、奥さんのそんな怖い顔を見るのは初めて。
「お、お前…、な、なに変なこと考えとるんだ?Wの家の嫁さんだって、
 こう言っ──。」
 しかし、その和尚さんの必死の弁明は、冷たく言い放つ奥さんの言葉
に遮られ……
「い、今ね…、今、ほ、本堂の方に、Wさんの弟さんが来てるのよ…。
 な、亡くなったって…。
 Wさんのお、お、おかみさん…、な、な、亡くなったからって。
 き、今日のご、午前中……」
「えっ?Wさんのおかみさんが…?
 Wさんって、Wのことか?
 えぇっ!?Wのおかみさんっていったら、まだ全然若いだろうに…。
 確か去年嫁いで──。
 うん!?お前、なに言ってんだ?
 Wのおかみさんは、いまここにこうして。ずっと一緒にお茶飲みなが
 ら、話をして…」
「あ、わわわわわ……」
 和尚さんの奥さんがわなわな震えながら変な声を出したのと、和尚さ
んが縁側のWの家の嫁さんの方を再び見たのは同時。
「うっ…」

 陽光溢れる庭を背景に、Wの家の嫁さんの体がすーっと引いて。
 あの艶やかなにっこりを浮かべたまま、ゆっくりゆっくりと頭を下げて
いく……

 和尚さんが我に返った時。そこにはあったのは、縁側の上の空の湯飲
み。そして、色鮮やかな春爛漫の光景。
 Wの家の嫁さんの姿なんて、もちろんどこにもなくて。


 ウグイスの鳴く声が聞こえる、そんな穏やかな春の日の出来事……。




65話目終わり。フっ!
                  ―――─ 第65話目「春爛漫」*不許転載
                            メルマガ配信日:10.7.29


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2012
04.10

65話目

Category: 怪談話

 先週の金曜日の夜。「タモリ倶楽部」見てたら、お経のヒットチャート
っていうのをやっていて。実は私、お経って結構好きなんで、とっても
楽しく見ちゃいました。

 いろいろなお経が聴けて、ホント面白かったんですけど、もっと面白
かったのは出演してたお坊さんたちのキャラクター。
 お経を間違っちゃった時にどうしたとか、この前(番組収録の前)にも
法事を2つ片付けてきて、気持ちよくお経よんできちゃいましたーなん
て。
 あー、やっぱりお坊さん達って、お経よんでいて気持ちよくなちゃっ
たりするものなんだなー(カラオケや楽器の演奏と同じ感覚なんでし
ょうね)って、お経ファンとしては大いに納得したりだったわけですけ
ど。

 でも、お坊さんって、なんか面白いんですよね。
 一度、ゆっくりいろんな話をしてみたいんですけど(ぶっちゃけ、幽霊
っていると思うか?とか)。でもお坊さんって、なんか弁護士かなんか
みたいに時間単位でお金とられそうなイメージがあるんですけど、どう
なんでしょうね?
 もしこのブログをお坊さんが読んでいたら、ぜひコメントくださいませ。
というか、そもそもあまり読んでいる人いないんですけどねー(笑)


 とまぁ、そんな話はともかく。
 本来なら怪談の10話目なんですけど。でも、その10話目っていうの
がちょっと季節性が強いお話でして。それも秋のお話ってことで、この
陽気に何なんだか?ってなっちゃいそうなんで。
 ということで、この季節らしいお話をチョイスしちゃおうかなと。
 で、そのお話っていうのが、お寺が舞台のお話なんで、まぁ今のよう
なお話をダラダラ続けてたと、そういうわけです。



65話目

 梅が咲いては散って、桜も咲いては散って、ちょっと経ったくらいの
頃。
 庭にはいろんな花が咲いていて、それを目当てに蝶々がひらひらと
んでいるような、そんなすっかりポカポカ陽気になった春の昼下がり。
 場所は、どこかの田舎にあるお寺。

 まぁそんな田舎のことですから、たぶん登場人物が話す言葉っていう
のはお国言葉丸出しだったんでしょう (このお話をしてくれた叔父さん
もそうでしたから)。
 とはいえ、そのお国言葉がよくわからないこともあって、普通の話し
言葉にしました。
 もしどこかのお国言葉がわかる方なら、よかったら会話の部分をその
お国言葉に変えながら読んでもらえたら、もっと感じがでるかもしれま
せん。
 あ、そうそう。それと、かなり昔(たぶん戦前くらい)のお話です。


 和尚さん、その時は本堂から住居の方に向かう渡り廊下を歩いていた
んだそうです。
 ちなみに和尚さんというと、なんだか真っ白い眉毛がやたら長いお爺
さんを想像しちゃいますけど、その時はまだ全然若かったんだとかで。
 若いだけに、貫禄とかはまだ全然なくて。
 でも、若い頃から心根の優しい、誠実な方だったらしいです。

 春の陽光の中、どこからかウグイスの声が聞こえる。
 渡り廊下の両側は、色とりどりの花々に埋め尽くされていて。
 和尚さんはその渡り廊下を歩きながら、それらを見ていたのかいなか
ったのか…。

「うん…。」
 住居の、こちらから見て一番手前の部屋の縁側。
 そこに、ちょこんと腰かけているのは若い女性。
 それは、華やかな春の陽光の中でも、さらにそこだけパッと輝いている
ような。
 でも、なにやらぼーっとした感じ。
 そう、庭の花でも見ているのか…。

 あれは確かWの家の嫁さん…。
 いったいなんの用だろ?
 和尚さん、普通用があれば本堂の方に来るのにと、少し怪訝にも思い
ながら、もしかして何かあったのか?といそいそとその部屋に向かった。

 外があまりに明るかった分、室内は暗くて。
 目が慣れるより早く部屋の戸を開ければ、全開にされた縁側の障子の
外の色がパーっと目に飛び込んできて、一瞬何も見えない。
 何も見えないくせして、目蓋の裏には新緑から反射される色がクッキリ
焼きついている。
 それにしても鮮やかな色だと春の庭の光景を思いながら、目をしばた
かせている和尚さんの目に入ってきたのは、縁側にちょこんと座る小柄
な女性の背中…。
 それは、部屋に入ってきた和尚さんの気配にも気がつかないのか、た
だただ庭の方を眺めているだけで。

「何かご用ですか?」
 和尚さんの声に、ゆっくりと振り返ったその女性の顔。
 ニコッリと、ちょっと艶やかにも見える笑みを浮かべて頭を下げた、そ
の女性は、やっぱりWの家の嫁さん。

 たしか、去年隣村から嫁いできたんだっけかな?
 それにしてもこの時期、この陽気。どこの家も忙しいはずなのに。

「何かあったのでしょうか?」
「いえ。ちょっと…。」
 Wの家の嫁さんはそう言って口ごもる。
 和尚さん、そのどこか重い口調に思わずWの家の嫁さんの顔を見た
けれど。でも、特に何がどうという顔つきってわけでもなく、ただニコニ
コと笑みを浮かべている。

 齢は確か、22、3くらいだったはず。
 顔立ちとか、醸し出す雰囲気とか、そのくらいの女性らしい爽やかな
艶めかしさ、華やかさは充分過ぎるくらい感じられるのだが…。
 しかし、その笑顔の中のちょっと気の弱そうな目の色なんかを見ると、
まだまだあどけなさが残っているということか。

「あの…、お庭のお花、きれいですね。」
「えっ!?」
「いえ、お庭のお花がきれいですねって言ったんです。
 和尚さんが、お手入れなさってるんですか?」
「いえ、私はこういうことは…。寺のことがあるものですから…。」
「あっ、そうですね。和尚さんは、いつもお忙しそうですもんね。
 考えてみたら、あたしもお花をこうしてゆっくり眺めていたのなんて、
 ほんと久しぶりです…。」

 Wの家の嫁さんは、そう言って和尚さんの顔を見てふわっと笑うと、
後は庭の方に顔を向け黙って庭を見ている。
 和尚さん、もしかしたら姑さんか誰かに何か辛いことでも言われたの
かな?と、ふと思いあたって。
「お茶でもいれましょうか。
 私も、今日は特に何かあるってわけでないから、どうぞゆっくりしてい
 ってください。」
 そう言って立ち上がった和尚さん。
 Wの家の嫁さんは振り返って、またニッコリ微笑み頭を下げる。

 その日のお寺は、和尚さん以外誰もいなくて。
 和尚さん、「あれ、誰もいないのか?」なんて、ちょっとブツブツ言いな
がらお湯を沸かしはじめて。
 いや、お茶をいれるぐらいなら和尚さんでも全然問題ないのだが…。
 和尚さん、つい今しがたの春の華やか庭を背景にニッコリ笑っていた
Wの家の嫁さんの艶やかな表情が脳裏から離れない。
 その胸の奥には、なにやら沸立つような触感が……


 ── 本日これまで!
                          65話目-1〈了〉*不許転載
                               65話目-2につづく
                           メルマガ配信日:10.7.28


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2012
04.07

9話目

Category: 怪談話

 談っていうのは意外に身近にあったりするもんです。
 知らないだけ、気がつかないだけなんですね。

 例えば、宇人が隣町に攻めてきたら間違いなく気づくだろうし、ニュ
ースにもなりますよね。
 でも、あなたの隣の家でお化けが毎日出てたとしても、たぶん気がつ
かないと思うんですよ。

 まぁ、そんな風に意外すぎるくらい身近なところに怪談は存在するん
だってことが、怪談の面白さであり、何よりさでもあるのでしょう。


 実は今年の夏、意外なところから身近な怪談を知っちゃったんです。

 それを知った意外なところというのは、意外も意外な主婦向け新聞(フ
リーペーパー)の「サ○ケイリ○ング」。
 まぁ夏という季節柄なのか?それともよっぽどネタがなかったのか?
ある週の特集が「地元の談特集」だったんです(笑)

 とはいっても、そこは「サ○ケイリ○ング」。間違ってもちょー怖ぇ~み
たいなお話は載っていません。

 むか~しむかしの河童のお話。そして、沼の主である大ウナギのお話。
 まぁ面白いのは面白いんですけど、せめて近辺で一番有名な心霊ス
ポットのあの場所のお話くらい載っててもなぁーなんて思いながら見て
いたんです。

 ところが…
 その下にさら~りと書かれていたお話というのが、かなりグッとくるおで…。


 昭和40年代に造成された東京近郊の某団地。
 造成中に、縄文時代の貝塚を掘り当てちゃったもんだから、さぁ大変!
 たちまち毎晩るわ、出るわ……
 (って、もちろん貝殻や土器じゃなくって)

 夜になると、泣き声やら、大勢の騒ぎ声。
 はては枕元に立ってみたり…。


 付近の住民、もうほとほと困り果てて、神主に頼んで古代のしきたりに
則って、お祓いをしてやっと静まったんだとか…。
(まるで、アニメの『平成合戦』です)


 「神主が古代のしきたりに則って」って、神道と縄文時代じゃ時代が全
然合わねーだろ!(いったい何千年違う?)って、思わずツッコミ入れた
くなるのですが、まぁあまりにも興味深すぎるお話なので、その辺は目
をつぶるとしましょう。

 ところでこの某団地、実は私が小さい頃住んでいた所のすぐそばでし
て。
 付近には友人がいまでもたくさん住んでいます。
 いつの日か詳しい内容でお話できる日を夢見ているのですが……



 まぁそんな風に、怪談話っていうのは案外すぐにあったりするようで
す。
 でも、どうやら普通の方(怪談好きじゃない方)って、そういう怪異体験み
たいな事ってあまり語りたがらないようですよね。
 さらに言えば、本当の本当にマジにヤバイみたいな場合だと、その関
係者や近辺の人は、完全に口をんじゃうことも多いらしいですよ。
 そういう場合、極端な話1丁目の人は大人から子供まで全員知ってる
けど、2丁目の人は誰一人知らないっていう風になるんだそうです。

 前に、「心霊スポットと呼ばれる場所で、霊を見るのは地元以外の人だ
け」って迷言(名言?)を聞いて、思わず噴出しちゃったことがあるんです
けど。
 そういう意味じゃ、本当に怖いお話というのは、超有名心霊スポットでな
く、あなたの家の近所(いやり?)に、あったりするものなのかもしれま
せんね。




9話目終わり。フっ!
            ―――― 第9話目「意外に身近にある」*不許転載
                           メルマガ配信日:09.10.29


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2012
04.07

8話目

Category: 怪談話

 のお話は「光物」ということで人魂のお話をしたわけですが、今回は
もうひとつの代表的な光物「UFO」のお話をしたいと思います。

 ただし、UFOといっても、地球外生命体の乗リ物としてのUFOでなく、
ただたんに「未確認飛行物体」としてのUFO。つまり、光物」としての
UFOのお話です。
 やはり親戚の叔父さんのお話なんです。
 (ただし、前の人魂を見た叔父さんとは別の叔父さんです)

 それは、もう何十年も前。
 タケコを掘りに、夜も明けぬうちから裏山に出かけた時のことだった
といいます。


 5、6本も掘り出して、あと4、5本捕れたら帰ろうかなと、まわりの地面
を懐中電灯で照らしていると…。
 いきなり懐中電灯の光がツーっと弱くなったかと思うと、フッとえる…。

 あれっ?電池は入れ替えたばかりなはずなんだが…と、懐中電灯を振
ってみたり、スイッチをON/OFFにしてみたり。
 懐中電灯が消えたばかりで暗闇に目が慣れてないこともあり、とにかく
何も見えない。
 こりゃ困ったなぁーと思っていたら、いきなりパッと点いた。

 ほっ!助かった。こんな日はとっとと帰るに限ると、懐中電灯を横に置い
た途端、またまたツーっと弱くなる懐中電灯の光。
 と思うと、またいきなりパァーっと点いて、ツーっと弱くなる。
 叔父さんは、パァっ、ツーをり返す懐中電灯に、さすがに薄気味悪くな
ってきて…。

 こういう時は心を落ち着けることが何より大事と、どっかと腰をおろし煙草
でも吸おうとポケットをさぐっていて、ふと…。

「うん!?明るくなってきたぞ…」
 って、叔父さんがつぶやくより早く、あたり一面は昼間より明るいにつ
つまれていた。

 無意識に見上げた空には、びっしりと上を覆う竹の葉ごしに見える、あま
りにも巨大すぎる光。
 ただただ驚きだけが次から次へと出るばかりで、声ひとつ出ない。

 それは、空全体が光っているといってもいいような大きさだが、間違いな
く空が光っているのではなかった。
 つまり、高さが全然違う。
 その光が光っている高さは、明らかに空よりはるか下。
 なんだか、がつっかえるような妙な圧迫感がある…


 はっ…。
 我に返った時には、真っ暗な竹林の中で座り込んでポカーンとしていた
叔父さん。
 慌てて空を見上げても、光なんてどこにもない。
 すぐ脇の地面に転がっている懐中電灯が、弱々しく足先を照らしている
ばかり……。


 叔父さんの話では、その光の巨大さときたら遥か向こうに見える山の頂
や山肌が光に照らされているのが見えたくらいだったといいます。
 そして、そ巨大な光は、間違いなくゆっくりゆっくり移動していたと
いうのです。
 なんだか、映画の『インディペンデンスデイ』や『宇宙戦争』に出てくる巨
大な円盤が光って現れたかのようなお話です。



 ところ。実は私も、全然そんなスゴクはないんですけど、不思議な光
を見たことがあります。
 小学生の頃、夜に窓から外を見ていたら、いきなり光がピカーン!って。
 その光のあまりの強さに、一瞬全くなにも見えなくなって。
 でもそれは、本当に一瞬の出来事。光が無くなった後の窓の外はいつ
もの夜の光景が広がっているばかりで…。

 不思議なのは、同じ時間に友人2人もその光を見たと言うんです。
 私はその光を西の方角に見たのですが、友人2人はの方角に見たと
言います。
 私の家とその友人2人の家は1キロくらい離れていたのですが、私の家
から見て西、友人の家から見て東にあったのはやたら藪の深い森。

 はたしてそこで何かあったのか?
 そもそも、私と友人達の見たものは同じ光だったのか?
 今でも不思議な出来だったなぁーって思っています。




8話目終わり。フっ!
       ―――― 第8話目「インディペンデンス・デイ?」*不許転載
                              メルマガ配信日:09.10.28

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2012
04.02

怪談ってなに?:その1


 「怪談ってなに?」ってことで。
 と、その前に、一応このブログに載せている怪談について説明をして
おきますと。
 お話そのものは、3年ほど前に始めたメルマガ『臍曲がり百物語』で
紹介したお話です。 
 お話は、いわゆる「実話怪談」のフォーマットに則って書いてはいない
ので、創作怪談と思われるかもしれませんが、基本全て元ネタがある
お話です。
 怪談が好きじゃない人にも、怪談を楽しく面白く読んで(そして語って
欲しい)もらいっていうのが基本コンセプトですので、ドラマ仕立てっぽ
くしてありますが、怪異の部分については極力元ネタのままで、特にユ
ーレイさんのお化粧等は一切していません。
(だってユーレイさんってのは、出てきただけで充分すぎるくらい怖いわ
 けです。なら、わざわざ血まみれ等のお化粧をして、さらに怖くしても
 あまり意味がないと思うんです)


 ところで。私は、まぁ怪談メルマガを書いているくらいですから、たぶ
ん怪談が好きなんでしょう。
 とはいえ、幽霊なんてモンがいるorあるかどうか、そんなことは全くわ
かりません。
 ただ、仮にいるorあるんだとしたら、信じる人も信じない人も、ソレが人
の心や、人の思いと何らかの関係があるというという点については、(不
承不承ながらでも)肯いてもらえるのではないでしょうか。
 つまり怪談話というのは、もしかしたら「超・ハートフル・ストーリー」とも
言える……の、かもしれません(←ホントぉ?)


 怪談話っていうのは、「キライ!」って言う人が多いんですよね。
 ただ、その「キライ!」。よくよく聞いてみると、最低でも2パターンの
「キライ!」があるようで。
 一つは、とにかくそういう「非科学的な」馬鹿馬鹿しい話には我慢がな
らないってパターン。
 これは、たぶん男性や大人、さらには理系の方や物事を理屈で考える
のが好きなタイプの人が多いような気がします。
 それと、面白いなぁと思うのは、ミステリファンの方は怪談嫌いが結構
多いんですよね。
 読み終わった後、「結局コレって、何でもアリのお話かな…」てな具合
に、ちょっとばかしクールにおのたまわりになられてみたりで(笑)
 いや、私もミステリは大好きなんで、その気持ちはとってもよくわかる
んです。
 本来、怪談っていうものは「何でもアリ」ではないと思うんですけど、
「何でもアリ」が蔓延りすぎちゃったっていうか…(笑)

 で、怪談キライのもう一つのパターンっていうのが、「怖い」からキライ!
って言う人。
 実は私、このタイプの人の気持ちもスッゴクよくわかります。
 だって、怪談って怖いんだもん(笑)

 ただ、怪談話が怖い私が怪談話が大好きなように、上記どちらのパタ
ーンの人も実際に怪談話を聞かせると、意外に楽しく興味深げに聞くこと
が普通であるように思います。
 でも、そのくせ話し終わると「そんなことあるわけねーじゃん!」って大
爆笑してみたり、はたまた「ちょっと!今夜、わたしどうしたらいいのよ
ーっ!」って結構マジに怒ってみたりと(笑)

 とまぁ反応は様々なわけですけど、話している最中だけは楽しく聞いて
いたことには変わらないわけで。
 そういえば、学校に通ってた頃だって、先生が怪談を話し出すと、たち
まちみんな大人しくなって聞いたものでしたよね。

 ま、つまり。ごくごく少数の例外の方はいるんでしょうけど、怪談が好き
っていのは、おそらく有史以前まで遡れる人類の習性なんじゃないかっ
て、個人的には思っているわけなんですが…。

 ま、ホントかどうかは定かではありません。


                                 ―――― つづく  
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2012
04.02

7話目

Category: 怪談話

 3話目で狐の嫁入りのお話をしたんですけど、昔の人はああいう類の
物を「光物」と呼んでいたらしいです。

 ちなみに「光物」とはちょっと違うのですが、私の親なんかも小さい頃
は、雨の夜にお墓で燃える燐の青い炎はよく見かけたといいます。
 (土葬の場合)新しい仏さまが埋められた直後なんかは、墓地を掘り
返したことで古い骨が外に露出し見かけやすくなるんだそうですね。

 しとしとと雨の降る闇夜の中、新しく墓が立ったあたりの地面をチロ
チロっチロチロって青い炎がついたり消えたりしているその様っていう
のは、まさに鬼気迫る光景だったって言ってました。
 もちろん、知識としてアレは燐が燃えているんだとわかってはいても、
湧き起こる恐怖を抑えることが出来なかったといいます。


 さて、燐の話はともかく「光物」です。
 「光物」の代表格といったら、そりゃやっぱり「人魂」ですよね。

 ある家で人が亡くなった時、その家の上や塀の上あたりを、球体や楕
円形のオレンジ色の物体がフラフラと飛んでいるのを見たというお話は、
誰しも一度くらいは耳にしたことがあるのではないでしょうか。

 最も、最近は病院で亡くなる方が大半で、家で亡くなる方というのは
非常に少ないようですから、そういうお話はもうなくなってしまったのか
もしれませんね。
 さらには、繁華街に限らず住宅街でも、とにかく一晩中電気が煌々で
すから(マンションなんか通路の明かりがズララ~ですもんねー)、たと
え人魂が飛んでいても、明かりが強すぎて見えないだけ…。
 な~んてこともあるかもしれません(?)


 私が、人魂を見たって話を聞いたのは、確か親戚の叔父さんからだっ
たように思います。
 それは、その叔父さんが、近所で長患いの家族がいる家の前を夜中
に通った時のことだったそうです。
 塀の向こうの家屋が建っている辺りから、ポーン!って感じで勢いよ
く橙色の丸い物が上がったかと思ったら、屋根のはるか上を越えどこか
に行ってしまったんだとか。
「大きさは、そうだなぁー、ソフトボールを2まわりくらい大きくしたくらい
 だったかなぁー。」
 両手で丸を作りながら、叔父さんはそんな風に説明してくれたもんで
す。

 もっとも、叔父さん。ソレを見た時は人魂とかそんな物だとは考えも
しなかったらしいです。
 ただただ、「なんだいありゃ…?」って感じだったとかで、まぁビックリ
して、一種の興奮状態だったのかもしれませんね。

 で、次の朝のことだったそうです。
 その長患いの方が夜中に亡くなったっていう知らせが来て。
「もしかして、あれが人魂っていうものなのか…。」
 叔父さん、その時になって初めてゾクッときたっていいます。



 ところで。
 昔の怪談映画で幽霊が出てくると、まるで衛星のように青い「人魂」
が幽霊のまわりをふらふらしていますが、あの図式って本当に合って
いるんでしょうか?
 そもそも「人魂」っていうくらいですから「人の魂」、つまり「本体」であ
るわけですよね。
 まわりの人魂が本体なら、じゃあ真ん中でデーンと主役然としている
あの幽霊。ありゃいったい何だ?ってことになっちゃうわけなんですけ
ど……

 もし、周りに人魂、真ん中に幽霊というあの定番の図式が本当なん
だとしたら。
 もしかして、人魂というのは、生前の姿を映し出すプロジェクターみ
たいな機能を有している(!?)という考え方も出来るのではないでしょう
か?

 有機ELは、なんだかお隣の国にお株を奪われちゃったみたいですし。
 この際、我が国の家電メーカーは、幽霊による画像生成システムの
研究を始めちゃうっていうのはダメなんでしょうか?
 もしかして、究極の省エネ・システムが出来ちゃったり?なぁ~んて
ことがあったりするやもしれません(!?)




7話目終わり。フっ!
                 ―――― 第7話目「光物」*不許転載
                        メルマガ配信日:09.10.27



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