2012
03.31

6話目

Category: 怪談話

 怪談話に合う音楽というと、
 やっぱり、♪ヒュ~ドロドロドロ~っていうやつでしょうか?
 お経っていう人もいるかと思いますけど、私は昔からお経が結構好きな
んで、それは却下です(声がいいお坊さんだともう堪らないですよねー。
 あの独特のビブラート。そしてリズム…)。

 まぁ音楽はともかくとして、それっぽい音がする楽器といったら、やっ
ぱり弦楽器じゃないでしょうか?

 ところで、中国に「古琴」という楽器があるのですが、その古琴には
「天」「地」「人」という違う3つのタイプの音を出すことができるん
だそうです(天地人といっても某大河ドラマとは全然無関係です)。

 で、その「人」の音。
 「人」の音を出すには、左手の指で弦をスライドさせながら右指で弦を
弾くのだそうです。
 ギターでいうスライド奏法ですね。
 当然、音も似ています。「ウワァ~ン」っていう、うねる音。

 もうゾクゾクするくらい堪らなくいい音なんですけど、反面あの音って
怪談にも、すごく合うように思うんですけど…!?


 ま、それはさておき。
 実家に琴がありまして。
 琴といっても、さっきの古琴でなく日本の琴です(ちなみに日本の琴は、
中国では筝という楽器にあたるんだそうです)。
 その琴は、親が昔趣味で弾いていた時に使っていたものだったのですが、
その頃は弾かれることもなく、私が寝ている部屋の隅に布のカバーをか
けられ、ずっと立て掛けっぱなしになっていました。

 ある秋の夜。
 いつも通りその部屋で寝ようと、電気を消して布団に入ってすぐの時で
した。
 秋の虫も鳴かなくなった季節の、シーンと物音ひとつしない真夜中。

♪ころ~ん

 一音だけ、琴が鳴ったんです。
「っ!」
 もう、大慌て。
 はね起きて電気を点けましたよ。

 でも、部屋の隅の琴はいつものまんま…。
 赤い錦の布に包まれ、その錦もずっとそのままだからホコリだらけで。
 当然、駒(弾く時につける柱)だってついてないわけですから、鳴るわけ
ありません。

 でも…
 その夜は別の部屋で寝ることにしました。




6話目終わり。フっ!
                   ―――― 第6話「琴」*不許転載
                     メルマガ配信日:09.10.26


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2012
03.31

5話目

Category: 怪談話

 このお話は、とても地味なお話で、怪奇な出来事は一切出てきません。
 でも、なんだか嫌だなーって思ったお話です。


 それは、Mさんが35歳の誕生日が近づいた頃。
 ちょうど区切りだし、自分の人生を占ってもらおうと思ったんだそうで
す。
 たまたま友人から、よく当たると評判の占い師の店を聞いたとかで、
遠くにあるその店までわざわざ出かけたといいます。

 なんとなくわかると思いますが、男性で、まぁなんとかやってるかなっ
ていうような毎日を過ごしている人っていうのは、占ってもらおうなんて
考えません。
 占ってもらおうって考える人というのは、不幸な出来事が続いていると
か、もしくは自分の人生に迷っている人なのではないでしょうか?
 Mさんは、つまり後者でした。


 Mさんが社会人になったのは、バブル崩壊による就職氷河期が始まる
寸前の91年。外資系の広告代理店に入って、いろいろ揉まれながらも
持ち前の強引な性格でそこそこ楽しくやっていたようです。
 仕事こそハードでしたが、それをこなすことで自分に自信もついたし、
それに見合う給料ももらっていました。

 また、大学時代の友人達からは、外資の、しかも広告代理店ってこと
で、なんかちょっと違うように見られ、実際Mさん自身もそれを大いに
意識していたようです。

 住まいは都内のワンルームマンション。クルマは外車のスポーツカー。
 ブランド物に身を固め、年に1回は彼女と海外旅行に出かける。
 こうして書いていて嘘くさい感じすらしてくる生活。それが、Mさん
の暮らしでした。

 そんなMさんが、なんか最近うまく歯車が回ってないなーって思うよ
うになったのは、30歳になった前後くらいだったといいます。
 クライアントや下請けとの軋轢がやたら多く、妙に仕事がうまくまわ
らないことが続く。そして、そのことで焦ってミスを連発する。
 結果、うまくやっている同僚や後輩に差をつけられる…。
 プライベートはプライベートで、ずっと付き合っていていた彼女からは
手ひどい別れを一方的に告げられ。
 休日の夜なんか人恋しさで堪らなくなって、大学時代の友人に連絡し
ても「悪いなー。最近はとにかく景気悪いくせして、やたら忙しくてさ」
のひと言が返ってくるばかり…。
 その結果覚えたのは……

 
 お金で憂さを晴らすこと。
 服や家電・家具、そういった買い物から始まって、次は映画やコンサ
ート、あるいは美術展等に通って、自分は文化的流行の最先端にいる
んだって思い込むことで満足を得ようとする…。
 でも…。
 どれだけお金を使っても寂しさを埋めきれなくなって、キャバクラみた
いな女の子がいる店に通うようになり…。
 最初は月2、3回だったそれが、やがて週1、2回。気がつけば毎日行
っていたなんていう週もあるくらいに。
 酒量がやたら増えて、気がつけば体重が30キロ近く増えている。


 とまぁその頃のMさんの状況を述べたところで、お話は最初のMさん
が当たると評判の占い師の店に行くところに戻ります。

 その店に入ると、まず何を占って欲しいか聞かれたそうです。
 総合運とか、結婚運とか、仕事運とかメニューのようなものがあった
とかで、Mさんは「じゃぁ、総合運で」とお願いしたといいます。

 占い師ということで、よくTVに出てくるガラガラ声のオバちゃんとか、
白髭丸眼鏡のお爺さんみたいのを想像していたのに、ごくごく普通の
中年のおじさんで、Mさん、実はかなり拍子抜けだったらしいです。

 占い師は、しばらく四角い木の棒何本かを机の上に並べちゃひっくり
返したりしてたとかで、Mさんはそれを「ふーん…」みたいな感じで見
ていたそうです。
 ただ、その占い師が、Mさんの顔を時々上目遣いにチラッチラッと見
るてくのは不自然な感じで、ずっと気になっていたといいます。
 実はその占い師、店に入った時からそんな感じだったとかで、Mさん
は「なんだか気分悪いヤツだなぁー」と思っていたんだとか。


 そして、占い師の口から占いの結果が…。
 いやもう、ロクでもない結果だったらしいです。
 何歳の時に肝臓に注意だとか、何歳の時は交通事故に注意だとか、
ムチャクチャ悪い事がないのはともかく、その代わり楽しい事も一切な
い。


 それは、結果を聞いて「もう帰ろう、バカバカしい」と、Mさんが椅子
から立ち上がりかけた時だったそうです。

 占い師が、例の入った時からのチラッチラッと盗み見るような目つき
でMさんを見ながら、そして幾分首を傾げるように「あなたは、どういう
仕事をなさっている方なんですか?」と。
 Mさん、その時よっぽど笑い話のように「占ってごらん」って言おうか
と思ったそうです。
 でも、そう言おうと思った瞬間、ふと気が変わって。
「広告代理店だけど…。」

 すると、その占い師はまた首をかしげてウーンと唸りだして。
「失礼ですけど…。あ、これから先は料金はいりませんので安心して聞
 い てください…。まぁお掛けになって…。」と。
 そしてその後に言ったことというのが…。

「失礼なこと言うようですけど、あなたが店に入ってきた時、思わずドキ
 っとしたんです…。
 というのは、いいですか?怒らないで落ち着いて聞いてくださいよ。
 あなたはね、相当な数の人達から恨まれているようなんです。
 ある意味、これだけ強く恨まれていたら、呪われているって言ってもい
 いくらい…。」

 Mさんは即座に「あっ!これが霊感商法ってヤツか」って、思ったとい
います。
 とはいえ、こうなったら話の種に騙されたふりして、この後コイツが何
を言うのか聞いてやろうって、黙って話を聞くことにしたんだそうです。

 そんなことを知ってか知らずか、占い師は話を続けます。
 呪っているといったって、夜中に藁人形に5寸釘とかそういうことで
はなく、日常生活の中でMさんに対して積もり積もった恨みが、まるで
呪いのように凝り固まっているのが感じられると…。

「あなただって、たぶんあるでしょう。まわりの人がうまくいっている
 のに、自分だけがうまくいかない。そんな時、アイツなんか何かで失
 敗すればいいのにって思ってしまうこと…。」

 Mさんは、最初はその占い師の言う事を「ほぉーそれで?」みたいに、
冷やかし気分で面白がりながら聞いていたといいます。
 ところが、「えっ!もしかしてこの占い師、とんでもないことを言って
いるのかも…!?」と思ったのは、次の言葉だったそうです。

「実はね、私も昔ある中堅の食品メーカーに勤めていたから経験がある
 です。
 そういう給料の安い会社に勤めている人間っていうのは、広告代理店
 の方にいい印象持ってない人って多いと思うんですよ。
 もちろん、その営業の方が一生懸命やっているのはわかるんです。
 でもねぇ…、給料の差を考えちゃうと…。
 俺は毎日こんなに汗水流して働いてあれだけしか稼げないっていうの
 に、こいつは…って。
 その営業が帰った後、見積もり前にして、その営業のことをみんなで
 ボロクソにこき下ろしてたこと、何度もありますよ。」

 というのも実はMさん、それとほとんど同じ事を取引先の食品メーカー
の担当者に冗談とも嫌味ともつかない口調で言われたことがあったんだ
とかで。
 もちろんその時は、その年齢の割にやけに老けた顔の担当者の顔を見
ながら軽く笑って流し、そんなことすぐ忘れてしまったらしいんですけ
ど。

「大人の世界で生じる恨みや呪いっていうのは、よく聞くような死ねなん
 て、そんな子供じみたことは願わないんですよ。
 むしろ、社会的に社会的に葬るとか…。まぁそこまでいかないまでも、
 仕事の失敗や人間関係の失敗を願うっていう風になる方が多いんです
 よ…。」


 Mさん、ひとつ思いあたると、次々に思いあたることが出てきたんだ
とかで…。
 実はMさん、下請け泣かせで有名だったそうです。値引き要請、キツ
い納期、繰り返されるやり直し等々。そして高飛車な態度。
 クライアントの方が、逆に心配することもあったくらいだといいます
からよっぽどだったのでしょう。


 Mさんは、なんだか自分でもビックリするくらい愕然としちゃったと
かで、思わず「どうしたらいいんでしょう?」って聞いたんだそうです。

 でもその占い師は、ただ首をふるだけ…。
 そして、
「こういうのは、どうしようもないんです。
 ただ、相手は恨むという行為を意識してやっているわけではないので、
 時間が経てば自然と消えていくはずなんです。だからそれを待つしか
 ない。それしかないんです。
 ただ、あなた自身が変わらないと、また別の方から恨みを持たれるわ
 けですから、これまでと同じ状態が、それこそ死ぬまで続くことにな
 りますよ。」



 嫌な言い方をするようですけど、人が日々生きていくっていうのは、
ある意味周囲になんらかの「迷惑」をかけるってことなのかもしれませ
ん。
 もっとも、普通は「迷惑」をかけている半面、その「迷惑」と同じく
らいの「寄与」だったり「役立ったり」もしているとも思うのです。
 人は、日々生きていく中で、「迷惑」をかける反面「寄与」もする。
 もしかしたら、その2つのバランスをうまくとりながら生きていくこ
とが、幸せに暮らすってことなのかもしれません。
 Mさんの場合は、そのバランスがずっと悪い方向に崩れた状態だった。
 つまり自らの欲望ばかりを他人に強いてしまい、それに見合うだけの
「寄与」をしなかった。その結果、恨みだか呪いだかに付き纏われた。
 その占い師の言うのが本当だとするならば、たぶんそういうことにな
るのでしょう。

 でも、そう思いつつもこんな風にも思うのです。
 Mさんの場合、20代から30代になるという時期的な体・心の変化と
社会的ポジションの変化が、たまたま極端にネガティブな方向に出たん
ではないかなぁーと。
 ただ、そういうのも含めて「呪い」って言うんだよ。
 と言ってしまうなら、「うーん…」と唸ってしまうしかないわけですけ
どねぇ…。
 あなたは、どう思いますか?


 ところで、そのMさん。それからはずいぶん丸くなったとかで、まぁ
元気にやっているようです。




5話目終わり。フっ!
                ―――― 第5話目「呪い?」*不許転載
                     メルマガ配信日:09.10.25


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2012
03.31

ブログって難しー!(泣)

 いやはや。
 ブログって難しいんですね。
 完全、たかくくってました。

 そもそもは、メルマガの方がやっと80話までいったことで、残り20
話だなぁって思ったら書きにくくなっちゃって。
 パソコンの前にいても全然進まないんで、過去のお話をブログにでも
してみようかなぁって、ホントに軽~い気持ちで始めちゃったんですけ
ど。
 今では、真剣に後悔しています(笑)

 そもそも、なんで文章の右端が揃わないんだよー!
 ブログタイトル下の、内容説明はなんで改行してくれないんだよー!
 (こっちの方は、ズルな方法で応急処置しましたけど)
 他にもいろいろ整えなきゃならないことイッパイあるらしいんですけ
ど、全っ然手がまわりません(というか、チンプンカンプン)。

 というわけで、ほかの方のブログのように人に見せられるようなモノ
になるまでは相当時間がかかりそうですねぇ…(ほかの人のブログって、
なんであんなにカッコイイんだよー!)。
 せっかく『怪談Sweets』って、グッときちゃう(笑)タイトル思いつい
たのになぁ…って。

 ま、そんなわけで。
 せめて後退はしないよう、少しずつ少しずつ充実させたいと思っては
いるんですけどねぇ…。

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2012
03.31

4話目

Category: 怪談話

 百物語と肝試しというのは、怖い系イベントの双璧って感じですよね。
 でも、百物語を本式にやった人っていうのは、案外少ないような気が
するんですけどどうなんでしょうね。
 だって、クソ暑い夏の夜にローソク100本でしょ?
 その熱量たるや、どのくらいになるのか?
 考えただけでゾッとします(←もしかして、それが目的?)

 ということでローソク100本は熱いこともあり、今回は肝試しのお話
でいきましょう。
 肝試しというと、私も小学校時代のある夏休みに子供会でやることに
なったことがあります。
 その時は、私はもう夏休み前から「絶対行かない宣言」(つまり怖が
りだったんです)をしてたんですけど。でも、たまたま何かの係りになっ
てたらしくて、どうしても行かなきゃならなくなって。
 もう、人生最大のピンチ!です。

 暗くなってから、会場の隣りが墓場という集会場に向かいます。
 暗くなってからその場所に行くだけでも怖いのに、ましてやその墓場
の中で肝試しするなんて!(まともな人間のする所業とは思えません)
 その日は、最初に映画を見てから、その後肝試しという予定だったの
ですが、うまい具合に映画の最中に強い雨が降りだして…。
 危機一髪セーフでした。


 その後、子供会で肝試しはずっとやらなかったらしいのですが…。

 久々に肝試しの企画が上がっちゃった時に、たまたま6年生だったの
がDクンです。
 なんだかその時は、Dクン達子供らもその親どももやたら乗り気だっ
たとかで、普通だったらお化け役なんか無しでやるのに、6年生がお化
け役で墓場に潜むことに…。
(まぁ本人達がノリノリでそう決めたことらしいんで)

 Dクン、幽霊のコスプレ&メイクで大いに張り切ってある墓石の影に
潜んでいたんだそうです。
 肝試しで墓地をまわるヤツが自分のところまで来たら、とりあえずは
わざとそのまま通らせて、次のお化けがワー!って出て、ギャー!となっ
たところで、後ろからガバー!って襲って首絞めてギャンギャン泣かせ
てやる。
 な~んて。やたらカタカナと!の多い、よからぬシミュレーションを
していた時でした。

 ゴッチーン!
と、いきなり後ろから頭をゲンコツで殴られ、間髪入れず、
 痛ーっ!
って後ろを振り向いたんだけど、誰もいない。

 ただ黙って立っている墓石達が、ぼわ~んって群青の闇に溶け込ん
でいるばかり……。

 後で聞いたら。
 お化け役で潜んでいた子の何人かもやっぱり…、
「なんか、話し声が聞こえた」とか、
「誰かが笑っているみたいな声がずっと聞こえてた」なんて言ってた
とかで。



 ところで。
 Dクンが「痛―っ!」って後ろを振り向いた時に見た、ただ、暗闇に
墓石がぼわ~んって立ち並んでいる光景……。
 大人になった今でもまざまざと思い浮かべることできるって、Dクン
は言います。




4話目終わり。フっ!
                ――――第4話目「肝試し」*不許転載
                      メルマガ配信日:09.10.23


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2012
03.27

3話目

Category: 怪談話

 もう、ひとつ百物語つながりで。
 このお話は、かなり昔のお話です。
 終戦してからそんなにたってない頃のことだと聞きましたんで、ざっ
と60年くらい前のことだと思います。
 そんな時代のとある農村でのお話です。

 梅雨もあと少しで明けようというくらいのある宵こと。
 ある家の縁側に若い衆が集まって、百物語を始めたんだそうです。
 百物語といったって、縁側でやるわけですからローソク立てるとかそ
んな本式のヤツじゃなっくって。
 その家は、見渡す限り田んぼが広がる高台の上にあり、この季節で
もそこそこいい風が吹いてくるのです。
 まぁ、百物語が目的というよりも、涼むのを目的に集まって、たまた
ま百物語を始めたということなのでしょう。

 その場に何人いたのかはわかりませんが、話は宵の口から始まって、
いつの間にか深夜に。気がつけば81話目が終わり、残すところ18話。
 それとも19話キッチリ話して100話完結させるのか…。
 誰もがそんなことを考えつつ、次の話を待っています。

 昼ならば、この縁側から、はるか向こうまで広がる田んぼが見渡せる
のですが、今は夜。ただただ真っ暗な空間が延々とあるだけ…。
 その代わりといっちゃなんですが、田んぼに住む無数のカエル達が
様々な声で鳴いているのが聞えてきます。
 ゲロゲロゲロゲロ…
 ガーガーガーガー…
 グワーグワーグワー…

 縁側の1人が82話目を話し始めた時でした。
 真っ暗に広がる田んぼの中ほどに、ポッと青白~い火が現れ…。

 それが現れたと思った途端、今度は最初の火から一直線、等間隔に、
ポッポッポッポッポッポッポッポッ……
次々に火が並んでいく。

「おっ!狐の嫁入りか。」
 そう言っている間にも、暗闇の中の火はどんどん長く連なっていく。
 と、思った瞬間、その火の列が一斉にパッと消え…。

 少しの間があって…。
 今度は最初の火の少し向こうに、ポッ…

 点ったかと思うと、また一直線、等間隔にポッポッポッポッポッ…
 さらに。
 今度は、それよりはるか向こうの暗闇にポッと点ったかと思うと、そ
ちらもやはり、ポッポッポッポッポッポッ……

 真っ暗な空間にひろがる2列の青白~い火の列。

 すると、後から点った火の列の中ほどから1つの火がポンと手前に出
たかと思うと、ツツツツーと移動して最初に点った火の列の方に向って
いく。
 そのひとつの火が最初の列に交わった瞬間、全ての火が一斉に、パッ。
 そこには、もとどおりの暗闇が広がっているばかり…。

 21世紀の世に暮らす私達がこんな場面を目にしたら、どんな大騒ぎに
なるのでしょうか?でも、当時こうした「狐の嫁入り」みたいな現象は、
ごくごく当たり前のことだったといいます。
 もちろん夜毎に見られるというものでもなかったようですが、それで
も思い出したように現れては、人々はその幻想的な光景を見入っていた
ようです。

 縁側の若い衆は、現れた直後こそ話を止めその火の饗宴に見ていた
ものの、すぐに飽きて百物語を再開します。
 一方、狐の嫁入りは、そんな若い衆達の話とは関係なく、火が点って
は、次々にポッポッポッポッポッ…と並び、そして消えをずっと繰り返
していたようです。

 話は順調に進み、100話まであと12話となる88話目を話し終えた時
でした。
「あっ、やっぱりだ…。」
 縁側の若い衆の1人が言います。
「どうした?」
「狐の嫁入りを見てみ。なんか変じゃないか?」
 彼はそう言って、向こうの暗闇を指さします。

 相も変わらず、暗い田んぼに並んでいる青白~い火の列。

「えぇっ?どこが変なんだよ?」
 そこにいる誰もが彼に言います。
「俺も、ちょっと前に気がついたんだけどよ、さっきから火が全然動か
 ねぇんだよ。それとな、火の数を数えてみな。12あるだろ。実は、た
 った今まで13あったんだよ。
 88話目を終えた途端にひとつ消えたんだ。」
「お前よぉー、なに変なこと言ってんだよ。」
「本当だって。87話目の時も86話目の時も、話が終わった途端1つず
 つ消えたんだから…。」
「それ、もしかしたら89話目の話のつもりかぁー!」
 誰もがそう言ってゲラゲラ笑うばかりで、彼の言うことを信用しませ
ん。
「そんなこと言うなら、じゃぁ89話目は俺が話すから見てろよ。絶対消
 えるから…。」

 彼がそう言って話しだした話は、やがて佳境に…。
 しかし、誰もが話なんかそっちのけ。息を呑んで暗闇に並ぶ火を見つ
めています。
 そして話が終わって…。

 端の1つがスーっと……。

 真っ暗な空間にゆらめく青白~い火は、残り11。
「なんだ、なんだぁーっ!」
「待て待て、1回じゃわからんぞ。じゃ次、俺が90話目…。」

 それは、話終えるとやはりスーっと消える。
 その不思議さに、縁側の若い衆達は「次は俺が話す」「次は俺が話す」
と言って話しだす。その度スーっと消えていく狐の嫁入りの火。

 そして、ついに闇にゆらめく火は残り2つ…。

「おいっ、あと2話、話し終えるとどうなるんだ?何かが起きるのか?
 連中がやって来るとか──。」

 その途端、また火が1つ、スー……・・。

 それを目の当りにした一同。何も言わずに思わず顔を見合わせ…。
 皆で頷きあって、そーっと立ち上がり、いっせいに室内に飛び込むや
いなや、両側から障子をビシャ!
 後は、夜が明けるまでひたすら仏壇を拝んでいたということです。




3話目終わり。フっ!…。
            ―――――― 第3話「縁側の百物語」*不許転載
                          メルマガ配信日:09.10.18


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2012
03.26

2話目

Category: 怪談話

 百物語といえば、やっぱり『新耳袋』は外せないですよねー。
 私は最初の100話きっかりあったっていうヤツは知らなくて、第二夜
が出た時に本屋で見て、第一夜と一緒に買ったのが最初です。

 独特のトーンが新鮮だったし、怖いって思いましたねー。
 知り合いにめったに怖いって言わない人がいて、その人に貸してみた
ら、「こりゃ怖いわ…」って言ったくらいですから、やっぱり怖いんで
しょう。あの第一夜と第ニ夜…。

 ところで、『新耳袋』の売りのひとつに、「一晩で一冊読み終わると、
読者に怪異が訪れる」っていうのがありますよね。
 あれって、どうなんでしょうねぇ……


 確か、第五夜だったか、第六夜だったか?
 とにかく真ん中あたりの『新耳袋』だったと思います。
 『新耳袋』は毎年6月頃に新刊が出ていましたから、たぶんその時も
6月頃だったのでしょう。
 その日は仕事が遅くなるってわかっていたので、昼休みに会社の近く
の本屋にさっと寄って、『新耳袋』の最新刊を買っておいたんです。

 やっと仕事が片付いて会社を出たのは11時過ぎた位だったか?
 電車に乗り込むなり、早速読み始めて。
 どんどん、どんどん読み進めちゃって、自宅の最寄り駅に着くちょっ
と前に99話読み終えちゃったんです。

 その頃はまだ実家に住んでいた頃。現在住んでいる所より帰り道は寂
しい道で…。
 といっても住宅街ですから街灯もたくさんありますし、そのくらいの
時間だったら電気の点っている家が大半です。
 途中、ちょっと大き目の公園があったりするのですが、そこも街灯が
煌々と点いていますから明るくて薄気味わるいことなんてありません。
 大き目の公園を過ぎ、5分ほど歩くと横に見えてくるのが小さな公園。
 実はその公園、その何年か前トイレで首吊りがあって…。

 でも、その時はそんな首吊りのことなんて、これっぽちも考えてなか
ったと思います。
 まぁ毎日歩いている道なわけですから…。
 また、読んだばかりの『新耳袋』の内容なんてことも特に考えもせず
歩いていたと思います。
 たぶん疲れていたんでしょう。


 それは、家に着いて玄関の鍵を開けドアに入った時でした。
 なんかこう、人のざわめきといったらいいのか?気配といったらいい
のか?
 なんとも表現しようのないものを感じたんです。

「あれっ!?今日はずいぶん遅くまで起きてるなぁー」
 そのざわめき?気配?、私はそれをTVの音と両親だと思ったんです。
 普段、両親は玄関を入ってすぐの所にある洋間で、テレビを見て過ご
している事が多かったんです。でも、11時前には寝てしまうことが多か
ったので、今日は珍しいなぁって思ったわけです。

 靴を脱いで玄関を上がって、ふと廊下の奥を見るとキッチンは真っ暗。
「起きていれば、キッチンの明かりは点けっ放しなのに…」
 もちろんその時点でも、そのざわめきのような、気配のような感じは
ありました。

 その時、私は自分の部屋に行こうとしたのか、キッチンの方に行こう
としたのかは憶えていません。
 憶えているのは、そのどちらかに行こうとして、ふとその両親達がT
Vを見ている部屋のドアのノブを回したこと。

 まるで、モクモク広がる煙の映像を逆回転で早回ししたようなと表現
したらいいのか、いきなりパッと消えて無くなるざわめきと気配。
 真っ暗な中、開けたドアから流れ出る光に浮かび上がったのは、誰も
座っていないソファーの左半分。
 そんな部屋の中に誰もいるわけありません。
 もちろんTVだってついていない。
 ただ、壁にかかる時計の秒針が刻むコチっ、コチっという音だけがや
たら大きく響いていて……。


 百物語っていうのは、ある種システムなのではないでしょうか?
 玉石混交の奇妙奇天烈なお話を連続して聞くことで、心の中にある異
界へのドアの鍵を解除してしまうシステム。
 その結果見てしまうものが、心の中に属するものなのか、それとも外
に属するものなのか、それはわかりませんけど。




2話目終わり。フっ!
                  ───第2話「新耳袋の付録」*不許転載
                          メルマガ配信日:09.10.16


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2012
03.25

1話目

Category: 怪談話

メルマガ『臍曲がり百物語』のアーカイブです。


 百物語なんで、まぁこんなお話から。
 中学校時代のある夏、友人たちと百物語――、というか、
その1/4くらい…、つまりその、「二十五(位)物語」をしたことがあり
ます。

 夜は怖いから…、昼間。
 でも暗くないと気分がでないからって、真夏のクソ暑さの中、雨戸を
ピッチリ閉めて。
 ガラス戸までビッチリでしたから、もう空気なんてそよとも動きませ
ん。
 そんな部屋に中学生の男ばっかり5、6人…。
 汗をたらたら流しながら怪談です(これでローソク点してたら、たぶん
熱中症か酸欠であの世行きだったかも)。

 話の巧いヤツが1人いて、暑か――じゃなくって、怖かったなぁ…。

 その話の巧いヤツが、
 私達が小学生の時、交通事故で亡くなった6年生の先輩の幽霊が、通
うはずだった中学校に現れたという十八番の話を始めて…。

 “それは冬の夕暮れ時…。
  バスケット部の女子生徒4人が、体育館の横の道を歩いていると。
  なぜか閉めたはずの体育館の入口がガラっと開いている。
  そこには、ドアにもたれるような恰好で体育館の中を覗いている、
  半ズボン姿の少年。
  どの部ももう帰って、体育館の中は真っ暗なはずなのに何をしてい
  るんだろうと、声をかけると……“

 てな感じで。
 いや、なにしろ私達自身が毎日通っている中学校が舞台のお話ですか
ら、映像がありありと浮かんじゃって…。
 その話が終わった後、思わずみんな黙っちゃったんです。


 それは、皆がそのお話の余韻でシーンとした、そのほんのわずかな間
をねらったかのように…。

 トントントン…、トントントン…
 それは、階段を上がってくるかすかな音……

「あれぇっ?オマエんちの親、帰ってきたんじゃねーの?」
「だーから、今日はオレんち、みんなして田舎に墓参り行っちゃったっ
 て言ってんだろ。夜遅くなんないと帰ってこねーよ。」
「だって、いま階段上がってくる音聞こえたぜ。」
「うん、俺も聞こえた。」
「なぁーに言ってん――。…!?」

 トントントン…、トントントン…
 その家のヤツが言っているそばから、またその音が聞こえて……
 そして止まる。

「あれー!?変だなぁー。父さんたち、途中で引っ返してきちゃったの
 かなぁー?」
 その家のヤツは、首を傾げるようにそうつぶやいて。
 ったく仕方ねーなーって感じで立ち上がりながら、「なにぃっ!もー
帰ってきたのぉっ!」って怒鳴りながら、部屋の引き戸の取っ手に手を
かけた時。

 トトトトトトトトトトトト……
 階段の方から、かすかーな乾いた音が。
 それはまるで、誰かが階段を駆け下る音のように聞こえて…

「……。」
「……。」


 一瞬後。
 いやもう全員、飛び上がるように立ち上がって、速攻で雨戸開けてま
したね。
 でも、窓の外は盛夏そのもので。
 ギランギランの陽射しと、モックモクの入道雲、軒先のグデーっと伸
びきった1ミリたりともそよがない風鈴の短冊……
 聞こえてくるのは、セミの声とススキ野原を跳ぶバッタのキチキチと
いう音。
 動くものなんて何ひとつない真夏の午後なのに、ススキ野原だけが変
にざわざわしていました記憶があります。




1話目終わり。フっ!
                 ――― 第1話 「まずは…」*不許転載


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